闇と光 第33話 無体剣

「またきやがったのか!」

 


ん?住人達の怪我は治らないわけか。ふーん。じゃあ最初から師範代とやれるわけね。リトライ機能つきとは素晴らしい。じゃあいっくぜぇ!!

 


ふぅ〜。45回目の死に戻りである。漆の太刀までは引き出せた。組み合わさると厄介である。まだ先があるのかね。ということでいきましょ!あれ戸が開いてるぞ。

 


「なんで戸開けてるんだよ!!蹴り破れないじゃないか!?」

 


「「「「「毎回お前が壊すからだよ!!」」」」」

 


ちぃ・・・出鼻をくじかれたぜ。まだまだいくぜ!

 


通算62デス目にして師範代をジャスパまで攻略できた。次は2人目の師範代か。8以降のアーツがあるのであろうか。ふむ。速さはそこまで変わらんな。

 


「捌の太刀以降じゃないと当たらんぞ。使えるなら早く使えよ。もっと技をオレに見せろ。もっとゾクゾク感じさせろ」

 


「くっ・・・悍ましき笑みを浮かべおって・・・。望みどおり見せてくれるわ!捌の太刀!」

 


単体なら初見でも見切れるようになってるんだよ!剣筋は!ひゃはははっ!もっと見せろ!オレの糧になれ!なんだこれで終わりかよ・・・まぁそんなものか。1デスもすることなく突破した。

 


「くっくっ・・・ようやく師範のお出ましか。あんたは何を見せてくれるんだ?もっとゾクゾクさせろ。こんなんじゃ足りねぇぞ」

 


「死んでも蘇る来訪者か。げに恐ろしきものよ。無体剣術の真髄を見せてくれるわ。かかってこい悪魔め!!」

 


師範は玖の太刀、拾の太刀を使えるみたいだった。どれもこれも物足りないな。速さは上がってはいるが・・・もういいかげん慣れたぞ。動体視力はいい方だからな。視覚強化もついてるし。ジャスパできるぞもうその剣は。もう終わりなのか?

 


「致し方がない。受けよ。我が流派の奥義。無体剣」

 


奥義か。拾が最後の太刀だったらしい。そしてこれが正真正銘最後のアーツか。ちっ・・・捌ききれなくなってきている。無体剣を受けれないことはないがその重さで次への対応が遅れる。これまでか・・・。

 


「じゃあすぐくるから待っててね」

 


笑顔で捨て台詞を放つ。若干師範が引いていた気がするのは気のせいだろうか。

 


はい。84デス目です。現在85周目でございます。受け流しはできるがなかなかジャスパができないんだよな。7割はいけるんだが、10割まで持っていきたいよな。このジャスパミスるとかなり隙ができる。次の相手の手への対応が遅れる。普通にパリィをした方が簡単かつ安全。でも訓練だからな。お、いい感じ。9連続成功中。あと1回できたら合格にしよう。ああああミスった。またくるぜ師範ちゃん。

 


「お、お帰りなさいませ。ご主人様。急に現れてびっくりしましたよ」

 


「アリスお帰り。アリスの汗もいい匂いだね」

 


「は、恥ずかしいです・・・。ごめんなさい。汗をいっぱいかいてきました」

 


「昨日もかいてたし、オレはアリスの汗の匂いも大好きだけどなぁ。あっ・・・そういえば師範攻略戦の途中だった。次で終わらせてくるからいってくるね。いい子に待ってるんだよ」

 


「は、はい。いってらっしゃいませご主人様」

 


アリスが既に帰ってきてた。アリスの汗の匂いも素晴らしかった。待たせるわけにはいかない。ということで急いでやってきましたよ。

 


「待たせたな。続きをやろうぜ」

 


「帰ったかと思ったのに。またきたか・・・」

 


「あんたを倒すまではやめないよ。とはいえ・・・人を待たせている。悪いが本気でいかせてもらう」

 


命唱は使いませんよ。相手も使ってないし、訓練にならないからな。闘気は使っている。師範ちゃんも使ってるし。それに闘気なしじゃオレなんてただのチンパンジー。一般人程度の能力しかないもん。ではオレの必殺アーツを見せる時が来たようだ。

 


「いくぞ・・・。簡単にやられんなよ?」

「最終奥義!!輪廻転生」

 


オレの剣が真っ赤に光り出す。オレの後ろには漢字で最終奥義の4文字が浮かび上がる。ちゃんと1文字ずつドンッ!っていう効果音付きで出てくる設計だ。だってその方がかっこいいでしょう?ちなみにこのアーツただ剣を光らせているだけだ。アーツっぽいけどアーツではない。偽装アーツとでも言うべきか。相手にアーツを使っていると誤認させるためのものである。本来アーツは同じ動きにしかならないから隙をつける。輪廻転生という名前はなんとなくだ。響きが強そうだから。それだけである。

 


さてあえて次の一撃で一旦光を終わらせる。この硬直を師範ちゃんは狙ってくるだろう。硬直なんて本当はないのに・・・。

 


はい、いらっしゃい。ここで再び輪廻転生の出番だ。真っ赤に光らせジャスパを決める。とどめはもちろんあれだ。無体剣。無体剣とは簡単に言えば、斬り下ろし攻撃だ。美しさすら感じる。ただ恐ろしく速く、かなり重い。洗練された一撃だ。

 


「オレの勝ちだな。看板はもらっていくぞ。その前に回復してやるよ」

 


そう言うとオレは道場の者達へマナを注ぎ込み回復させてやった。

 


「じゃあまたくるからな。その時は付き合ってくれ」

 


「お待ちください。その変幻自在の奥義。見惚れましたぞ。我ら全員あなた様に弟子入りさせてください」

 


ん?弟子などとっていないが、試し打ちできるサンドバッグと思えばいいか。

 


「基本的にはオレはこないぞ。師範お前が今まで通り指導を続けていろ。オレが練習したくなったらまたくる」

 


「はい!お待ちしております」

 


「「「「「ありがとうございました」」」」」

 


ハイロリは動くサンドバッグを手に入れた。