闇と光 第61話 乱入する8人目の特異点

「慶太・・・ダメって言ったのに」

 


「素晴らしい一撃です。ご主人様」

 


「あの黒いのなんなの?」

 


「ダーリンの闇のマナって言ってたよ」

 


実況席にある闇に会場中の視線がいく。観客達が口々に叫んでいる。

 


「あはっ!カラスさんだ〜」

 


「カーチャあれがそうなのね」

 


「ついにきたか・・・さぁ力尽くで手にしてみろっ!!」

 


その闇が彼女達の背後に一瞬で移動する。彼女達が気づいた時には遅かった。彼女達は3人ともフードを纏った男に抱きかかえられていた。その男は彼女達にだけ聞こえるように小声で言う。

 


「遅くなったけど会いにきたぞ。ここではハイロリと名乗っている。本名は悪七慶太だ。愛している」

 


「カラスさんはじめまして。私はエカチェリーナ・キリルイェブナ・タラソワ。カーチャって呼んでね」

 


「あら。待ちくたびれちゃったわ。私を殺す気なの?そんなに熱くされちゃ私溶けちゃう。シャーロット・アヴァ・テイラーよ。チャーリーって呼・ん・で」

 


「熱い抱擁だな。どうやっても勝てそうにない。私はアドラシオン・レイナ・サンタマリア・ドゥアルテだ。レナって呼んでくれ」

 


「3人に渡すものがある」

 


そう言うとフードの男は3人の左手の薬指に指輪をはめる。

 


「オレの女になれ。一生幸せにしてやる。結婚したいがそれは他の彼女達が全員揃ってからOKすると言われている」

 


「もちろんカラスさんならいいよ」

 


「いいわよ。私があなたの女になってあ・げ・る」

 


「いいぞ。強い男にならすべてを捧げる」

 


マントの男は3人の唇を奪っていく。3人と熱いキスを交わしている。

 


「さすがご主人様。速いです!」

 


「別の意味でも早いね」

 


「慶太・・・会場が静まり返ってるわよ」

 


「ダーリン。あとでボク達にもしてね」

 


アーサーが言った。

「何をしているんだ!いきなり現れて。非常識にもほどがある!」

 


「カーチャ。チャーリー。レナ。愛してる。ずっとそばにいれないのが残念だ」

 


「カラスさん私も好き」

 


「あん。はじめてを奪われちゃったわ。責任とってネ」

 


「はじめてだがいいものだな。もっとしていいぞ。私はあなたのものだ」

 


「僕を無視するなーー!!神聖な戦いの場をこれ以上汚すな!」

 


フードの男は溜め息をつく。

 


「3年越しの愛を確かめ合っているところだ。邪魔をするな。ピィピィ言うことしかできないのか。ああそういえばうちのペットにもいたな。アサ吉よ。人の恋路を邪魔するのは無粋ってもんじゃないのかね?」

 


「突然の乱入者によって僕は吹き飛ばされたぁぁぁ!!電光石火の早業で美女達を虜にしていく。この乱入者はいったい誰なんだぁぁぁ。僕もそこに混ざりた」

 


ズドォーン

 


デキウスが黒い弾丸によって再び吹き飛ばされる。舞台を煙が包み込む。

 


「混ざりたい?ふざけたことを言ってんじゃねぇ。オレの女だ。手を出すやつは許さねぇ。文句があるやつは全員かかってこい」

 


3人の女達は嬉しそうにしている。

 


「ご主人様。私と同じこと言ってます」

 


「アリス。そこ嬉しそうにするとこじゃないから」

 


観客達の一部が舞台へと飛び降り、乱入してくる。

 


「ボスから離れろ」

 


「テイラー様から離れなさい」

 


「お前ら下がれっ」

 


「あら・・・きてくれたのは嬉しいけどそれは賢くないわね」

 


観客席から飛び出した者達が地面に着くことはなかった。空中で闇に次々と捕縛されていく。

 


「レナ。チャーリー。2人の部下か?」

 


「すまない。血の気が多くてな」

 


「好きにしなさいって言ってたの。ごめんなさいね。でもあなたなら気にすることもないでしょ」

 


闇がそのまま観客席に飛んでいく。闇が晴れていく。観客席に戻された者達は沈黙して、こちらを見ている。

 


「2人の部下だから殺していないだけだ。次は首が飛ぶと思え。死にたいやつから入ってこい」

 


うん。静かになった。いい子達だ。未来のお仲間なんだから仲良くしようぜ。あ、そうだ。忘れてた。

 


「デキウス!お願いがあるんだけど聞いてくれるか?」

 


「僕を2度も吹き飛ばしておいて図々しいにも程があるぅぅぅ。アーサー君の声はどうやら彼にはまったく聞こえなくなったようだ。でなんだい?」

 


「よく言うな。ダメージなんてこれっぽちも受けてない癖に。1人アバターの姿から戻して欲しい女がいる。イエスorデス。選んでいいぞ」

 


「まさかの選択肢ぃぃぃ。はいと言わなければ殺す。その姿勢は魔王そのものだぁぁぁ。で断ったら?」

 


「殺し合おう」

 


フードの男から殺気が放たれる。なにか話していたアーサーも静まり返る。3人の女達はそれぞれ違った表情を浮かべている。1人はとびきりの笑顔。1人は蕩けた表情。1人は恍惚な表情。

 


「戦ってあげてもいいけど舞台が壊れちゃうな。いいよ聞いてあげるよ。あとで名前を教えてくれ」

 


「わかった。神様へのお供物はいるか?ちょうど生きのいい男が5人ほど転がっているな」

 


「乱入者から5人への挑戦状だぁぁぁ。5人の男達はどうする?ちなみに供え物はいらない。やばいと思ったら戦わなくてもいいよ」

 


ズーハオは言った。

「・・・遠慮しておく。出直してくる」

 


イシャンは言った。

「強者に出会えたことを嬉しく思う。だが力の差は歴然だ。棄権する」

 


ジョシュアは言った。

「勇気と無謀は違う。ここはスマートに棄権させてもらう」

 


マンドゥーハは言った。

「呪いがこれほどとは・・・修行し直してくる」

 


アーサーは言った。

「そんな不届き者・・・僕が成敗してくれる!!」

 


「おおっと。1人だけ戦う気がある者がまだ残っていた!さぁこれからどうなるぅぅぅ」

 


「デキウス。オレはあとどのぐらい3人と一緒に過ごせる?」

 


「サービスしてあげたいけど・・・5分ってところかな」

 


闇が観客席に向かっていく。

 


「お前らさっきは悪かったな。お前らのボスはオレが必ず幸せにする。許可はもらえるのか?」

 


「「「「「ボスをよろしくお願いしやす!!」」」」」

 


「「「「「テイラー様をよろしくお願いします」」」」」

 


「お前ら・・・」

 


「あら。ハビーのこと認めてくれたのね。嬉しいわ」

 


「3人が場外となったぁぁぁ。舞台に残ってるのはただ1人。勝者はアーサーだぁぁぁ」