第92話 作戦決行

「ふーん。雰囲気を変えてこないってことはやっぱりバレてるぞおっさん」

 


「なぜそう思うのじゃ?」

 


「おっさん言ったろ?簡単には連れてこれないって。なら難しくてもいいなら鍵なしでいけるんだろ?昨日わざわざ雰囲気を変えたってことはデキウスは来て欲しいんだ。今日もやばい雰囲気に戻ってたらたまたまかもって思っていたが戻らなかった。わざわざやばい雰囲気を出せるやつはそもそもそんなヘマはしない。それでバレていると確信した。

 


オレ達が鍵を狙っているのがバレている。バレているのになぜか焦らしの計は成功している。来てくれないのかなとデキウスは不安になっている。どうあっても来て欲しいんだ。オレなら基本行かない。だっておっさんが盗りに行かなくてもできるんだから。オレ達を無駄に知り過ぎている故にデキウスは焦る。

 


予告状でデキウスを焦らしている時点であいつの心を既に奪ってあるから予告状の内容はもう達成済みだ。だから本来であればオレにはどうあっても行く義理がない。来て欲しくないのであれば今日雰囲気を戻してるはずだ。オレ達に機を逸したと思わせるために。今まで危険な匂いがしていたのに2日連続隙を見せているのは不自然だ。来てくださいというやつのメッセージが隠されている。これは・・・罠がありそうだな」

 


「うーむ。難しいことはようわからんぞ。がははは。要はバレた上で誘われていると言いたいのじゃな?」

 


「そういうこった。じゃあ行こうぜ」

 


「てっきりやめようと言うかと思ってたんじゃがの」

 


「漢なら引けない闘いもあるんじゃないのか?」

 


「がははは。その通りじゃ。やると決めたらやるぞ。例えなにが待っていようと引かぬ。お主も真の漢になってきたのぉ」

 


「だから誰の弟子だと思ってんだ。予告を出しといて行かないなんて漢が廃るぜ」

 


「よう言うた!ほれ正装じゃ」

 


「ただの変態でしかねーぞこれ・・・」

 


「でもするじゃろ?バカ弟子よ」

 


「ああもちろんだ脳筋師匠。このスースー感と解放感が堪らないな」

 


「やはりぶらぶらさせるのが1番良いじゃろ?」

 


「ははっ!違いない。誰かに見せつけるのもまた良いよな」

 


「やはり真の漢に近づいてきておるな・・・お主!」

 


それは漢とは呼ばない。変態と呼ぶものだ。変態2人はデキウスの住処へ侵入する。

 


「おっさんやはり無警戒過ぎる。バレてるのにこれはおかしい」

 


「まぁここは正面突破じゃな」

 


「結局変わらないんだなそれは・・・んで物はどんなやつだ?」

 


「おーあれじゃ!あれじゃ!ご丁寧に机に1つ置いてある」

 


「おっさん!待て!」

 


「なんじゃ!?もう盗ってしまったぞい」

 


「この光。この感触・・・転移の罠か」

 


「儂らは怪盗紳士漢組じゃ。計画通り物はもらった。あとはいつものように即興で切り抜けるぞ!小僧!」

 


2人は光に包まれていく。彼らはいったいどこに転移させられたのであろうか。

 


「さぁ個人戦勝戦が始まったわけなのだが・・・誰も動かないね。周りの7人は全員敵。迂闊に動けないといったところかな。前回まで猛威を奮っていた美女達はいない。本当の個人戦が始まっている。でもきっとなにか起きる。僕はそう感じている。

 


ラブレターをくれたのにこんなに焦らすなんて酷いよねぇ。もう僕は待ちきれないんだ。早くきて欲しい。僕に熱烈な愛を届けてくれ。実況することがないからそろそろ誰か動いてくれないかなぁ。

 


おっと突如として眩い光がゆっくりと舞台上に現れてきたぞぉぉぉ。きたきたぁぁぁぁ!やっと僕に愛を届けにきてくれたんだね。どんな愛を僕にくれるんだい?

 


ん?光が人型に変わってきたぞ!僕の待ち焦がれた漢組の登場かぁ!?」

 


「「「「「きゃぁぁぁぁぁ(・・・おっきぃ)」」」」」

 


「お〜〜!!アリス見ろ。あたしちょっと今日の夜出掛けてくるね」

 


「ダメです!フーカお姉ちゃん!落ち着いて下さい。あっちはご主人様ですから!」

 


「あれがハイロリの・・・じゅるり。ねぇアリス。お姉ちゃんやっぱりハイロリと「お姉ちゃん?」・・・一晩だけでいいからいつか・・・ごめんなさい。そんな目で見ないで・・・」

 


「そうなのアリス?そういえばハイロリ様の普通って見たことない・・・」

 


「ダーリンいつも元気だもんね」

 


「いやでも・・・慶太だと思いたくない・・・」

 


「ご主人様に頼んで見せてもらったことがあるので間違いありません!」

 


「「「「「アリスに負けてる・・・」」」」」

 

 

 

「わぁお。変態紳士達の登場だ。纏っているのは覆面のみ。あとはありのままの姿!!これぞ漢!あぁゾクゾクするよ。しかし2人とも立派だねぇ。僕の体が引き裂かれてしまいそうだよ。女子達からは黄色い悲鳴が聞こえる。でも彼女達は顔を隠しながら舐め回すように指の隙間から彼らの姿をじっくり見ている。恥ずかしがらなくていいんだよ?本能に身を任せるんだ!

 


一方男子達は少し落ち込んでいるね。なにがあったんだい?」

 


「小僧。縮こまってるんじゃないか?」

 


「はん?何を言っている。オレだっていつもフルバーストなわけじゃないんだぞ。そういうおっさんこそ・・・なんだと!?ずるいぞ!自分だけ女の子の匂い堪能しやがって。まだ本気ではないな・・・オレだって負けてらんねぇ!

 


あ・・・この匂いは・・・みんな一緒にいるのか・・・まぁ終わったことだ・・・。

 


てかおっさん!ほれオレの勝ちだな!」

 


「馬鹿者!儂はスロースターターなんじゃ!見ておれっ!ふんっ!

 


どうじゃ小僧。しかしまだまだ若いのぉ。最初から飛ばしては最後まで続かないんじゃないのか?儂はスタミナには自信があるでの」

 


「はん?おっさんこそ老いてるんじゃないか?あいにくオレはフルバーストで10年はいけるぞ!」

 


「儂なんか100年いけるわい!」

 


「口の減らねぇおっさんだな。ならどっちが優れてるか第2の勝負をするしかないな」

 


「がははは。よかろう。どっちがより長く抜刀できるか勝負じゃ小僧!負けて泣くでないぞ」

 


「あぁ望むところだ!おっさんこそ泣いても知らねぇかんな!」

 

 

 

「「「「「・・・(凄い・・・こんなの見たことない)」」」」」

 


「おっとぉ!!漢組は一瞬にして漢の剣を抜刀し出したぞ!なにがしたいんだぁ!?女子達はもはや隠す気はない。ガン見してるね。獲物を見つけたような目で一点を見つめている。そうだよ。それでいいんだよ。それが生物の本能だよ。

 


時折小刻みに刀は動いているね。こんな名刀を見ることはなかなかできない。じっくり目に焼き付けてくれたまえ。

 


男子達は・・・涙を流している子もいるね。僕の胸に飛び込んできなよ。たっぷり可愛がって慰めてあげるよ。

 


いいね。いいねぇ!さすが僕が待ち焦がれた者達だ!」

 


「          慶太ね

   ・・・ハイロリ様だ

              ダーリンだ」

 


「あは。カラスさんすっごーい!でもおっきぃカラスさんを受け止めきれるかな私・・・」

 


「日本にはスカイツリーより立派なものがあるのね。今日の私は獰猛な肉食獣よマイラブ」

 


「キング・・・もう私はこのお方以外受け入れられないぞ。でもちょっと怖いから・・・優しくしてね」

 


「おっほぉ!!アリス!!お姉ちゃん我慢できない!やっぱりハイロリに告白してくる!!アリスと一緒に奥さんになる!」

 


「うう・・・ダメって言ってるのにお姉ちゃん・・・。でも気持ちが変わっていないようで嬉しいです。うふふ。私達にだけ見せてくれる癖がでています。可愛いですご主人様」

 


「「「「「癖ってなに!?」」」」」

 


「それはですね・・・」

 


アリス先生によるハイロリ講座が始まっていた。ハイロリとアリスはお互いをほぼすべて知り尽くしている。2人の秘密の時間のおかげだ。しかしこれから先の未来でもこの秘密をアリスが皆に話すことはない。だって彼女にとっての1番大切な秘密なのだから。

 


デキウスの望み通り混沌としている舞台。漢達は好き勝手に名刀を振る舞う。第2回漢選手権が始まってしまった。2人は隠すこともなく、むしろ魅せつけるようにポージングをしている。デキウスの思惑以上にデキウスが喜んでいることを彼らは知らない。そして少し落ち込んでいることは誰も知らない。

 


「やっぱり僕の完敗だね・・・」