闇と光 第99話 その名はリュカウス

「命唱。我はリュカウス。人狼の王にして一星の主なり」

 


「命唱。我はハイロリ。人類の王となるものなり」

 


「お前も王の器を持つ者と聞いていたが・・・なるほどな」

 


「オレの踏み台になってもらうぞリュカウス。王という名を持つ者に負けるわけにはいかないな」

 


「やれるものならやってみろ」

 


2つの生物が同時に間合いを詰める。彼は剣を振るう。獣は拳で受け止め、別の拳を彼に向かって放つ。彼は剣で拳を受け止める。そのまま膠着状態が続く。しかしそれも長くは続かなかった。

 


獣が口より火球を放つ。ハイロリハンドを展開し防御する。それと同時にハイロリソードから闇の弾丸が放たれる。咄嗟に獣は躱すが彼の仕込んだ罠に当たる。しかし獣も黙っていなかった。被弾と同時に尾による一撃を彼の横腹に直撃させていた。彼らはお互い被弾し距離を取っていた。

 


「シールド連装」

 


手数が足りないと見た彼は武器を連結し投げる。ハイロリソードを片手に持ち弾丸を放出しながら間合を詰めた。さらに別の手にはマナを溜め込んでいる。

 


獣は罠に細心の注意を払いながら双鞭刀を避ける。放出された弾丸も紙一重で躱していく。彼の斬撃が眼前に迫る。その時後方から避けたはずの双鞭刀が同時に迫っていた。避ければ罠が、避けなければ攻撃が自身に被弾する。獣は受ける選択をした。

 


尾で後方の攻撃を去なす。弾丸に対しては火球を。斬撃には伸ばした爪で。拳には拳で対抗する。彼が吹き飛ばされる。拳同士の威力は獣の方が上のようだ。獣が追撃に向かう。罠が獣を襲うがそれは止まらない。ダメージを受けながら獣は彼に蹴りを放つ。

 


蹴りがヒットする。しかし彼の体は闇に変わり獣の体を縛る。ハイロリゲンガー。彼はまだ長くは持続できないが使えるようになっていた。元々彼女達に使うための技であるために本人の五感、さらに相手の五感に与える感覚は本物と変わらない。故に清十郎ですら見抜けなかった。

 


まさしく分身。マナの残骸を吸収すれば分身の経験した感覚、感情などはマイナス効果以外はすべて本人に反映される。彼女達を同時に1対1で堪能したいという欲望が産んだ拘り抜いた反則級の技である。しかしこの技は誰でもできるわけではない。物心ついた時から常時並列思考をし、たとえ相反する思考ですらもひとつひとつすべてが自分であると認識してきた彼だからこそできた。この事実は本人すら誰も知ることはない。闇の彼方へと消え去っていく事実となる。

 


彼は地中から現れお返しと言わんばかりに回し蹴りを放つ。獣は拘束を抜け出していたが間に合わず直撃し吹き飛ばされる。しかし再び彼を尾の打撃さらに後ろ蹴りが襲っていた。彼も同様に吹き飛ばされる。

 


「ちょろちょろ目障りな尻尾だな。ちょん切ってやろうか!?」

 


「お前こそちょこまかと目障りだ。こそこそせずに正面からこい!」

 


「でたよ脳筋思考。あいにくこれがオレの正々堂々でな。持っているすべての力で戦う。それがお前へに対してのオレの最大限の敬意だ」

 


「くっくっ・・・なるほど。主よ感謝する。このような敵と見えることができること恐悦至極なり。まだまだゆくぞハイロリぃぃぃ!!」

 


2つの生物は互いを打ち倒すために防御を減らした。その分攻撃に割くためだ。双方ダメージが蓄積されてゆく。しかしお互い止まらない。止まれば相手に回復の隙を与えてしまうからだ。もちろん互いのマナを攻撃の度に相手の傷に練り込んでいるため、即座に全回復することはできない。しかし僅かな回復だけはできる。自分の身を削り相手に与えたダメージを回復されては堪らないからだ。

 


身体能力ではリュカウス。読み合いテクニックではハイロリ。それぞれがそれぞれの強みを生かし互角の勝負を繰り広げている。互いに相手の強さを認め、闘いに夢中になっていた。獣は恍惚な表情を浮かべ闘っている。彼もまた血が湧き踊っていた。格上ではなく同格の相手と闘う初めての悦び。

 


己の体を削り相手の体を削る。極限まで研ぎ澄ませた集中力の中での超高速の闘い。彼は楽しくて堪らなかった。彼のどこかに残っている野生の本能が刺激されていく。戦闘種族である人類の本能が蘇っていく。互いに肩で息をしている。だがなかなか相手を切り崩せそうにない。突然彼が背中を向けた。

 


「なんだ?どうした?まだまだ闘れるのは知っているぞ」

 


「主が脳筋師匠ならこの言葉知らないことはないよな?腹が減っては戦はできぬ。ということで昼飯を食べにいってくる」

 


「ふっ・・・その通りだ。ではまた待っているぞ。我が好敵手よ」

 


彼は獣に一瞥し去っていく。この先2つの生物は極限状態の闘いの中、互いに急激に成長していくことになる。

 


マイルームに帰る。アリスではなく違った女の子が出迎えてくれる。髪の色が赤。火影(ひえい)だな。本名は獅子王茉莉花(ししおうまりか)。いつもはミニスカくノ一なのだが今は伝説のエプロン姿だ。オレの姿を見るなり抱きついてくる。姦9はアピールが激しい。オレの彼女にしてもらいたいそうだ。それも彼女達公認だからタチが悪い。オレさえよければ9人も彼女が一気に増えることになる。

 


今我らがギルドホームは2部屋から構成されている。オレのマイルームと姦9の部屋だ。ちなみに彼女達のゴリ押しにより部屋の出入りは自由となっている。なにがあったのかぜひ知りたいところだが聞くのが怖いのでやめておこうと思う。

 


オレと彼女達がすりくんタイムネオをしている時この9人はなぜか周りでオレ達を見ながら9人でネオしているのだ。アリスの指導だというのは一目でわかった。だって全員ワンフィンガーなのだもの・・・。

 


オレが貧乳好きということもあり大きい者はアリスのマナにより小さくさせられていた。アリス先生の手腕を褒め称えたいと思う。ちなみにお風呂も実は一緒に入ってくる。知らない方がよい世界もあるということだな。

 


彼女達のご飯は普通に美味しい。アリスの指導能力は神クラスだと思う。日替わりで姦9が家事を担当している。

 


茉莉花・・・。気持ちは嬉しいがもう少し大人になってからな。匂いはだいぶ好みに近くなってるから落ち込むな」

 


姦9は皆成人しているのだがまだまだセクシーさにかけるのだ。オレの好みにどんどん近づいてしまっているのでいつか彼女になると思うが、今ではないはずだ。オレの言い訳に過ぎないんだけどな。正直に言うと初々しい感じがしてそれがまたよい。ばっちりとオレのストライクゾーンに侵略されている。

 


頭を撫で撫でして慰める。ご褒美として彼女の唇を塞ぐ。その時オレの弱いところを的確に攻撃してくる。さすがアリスの生徒だ。ご褒美の後に浮かべる笑顔はとても可愛い。しかしながら、公認とはいえ9人も一気に増やす勇気がオレにはない。チキンな男ですまないお前ら。

 


みんな帰ってきて食事になる。随分大所帯になってしまったものだな。もうすぐもう1人増える。アリスと一緒に名前は考えて既に決定済みだ。産まれてきてから発表しようと思う。