闇と光 第107話 ライブ当日

「気持ちいいか?」

 


彼女は答えてくれない。でも気持ちよさそうな表情をしている。ふふ。可愛いやつめ。

 


「ダーリン凄い・・・」

 


「ハイロリ様慣れた手つき・・・」

 


「ご主人様気持ちいいですっ!」

 


「慶太がパパやってる・・・」

 


「・・・何言ってるんだ。2人いるって言ったじゃん。もう慣れてるわ」

 


オレは今六花をお風呂にいれている。六花専用のお風呂も作ったのだよ。ちょうどいれやすい高さにしてあるぜ。ぴくぴくと動く顔の表情が気持ち良さそうだ。普通にいれているだけなのになぜか驚かれている。まぁ褒められてるしいっか。アリスは六花の言葉を代弁してくれていた。

 


最近オレは進化した。ノールックオムツ交換という技を取得した。マナにより気配を察知し、視線は六花の可愛らしい顔に固定。その結果、我が子と遊びながらにしてオムツも交換できる。なんて便利な技なんだっ!

 


彼女達はカルガモの親子のようにいつも六花の後をついてくる。産まれながらに我が家のアイドルとなっている。吉子やサリーも興味津々で見ている。そして鳥達がなぜか周囲を警戒している。

 


理由を聞いたら六花を守るためと言っていた。アリスの血を引いているだけあってもう動物達に気に入られてしまったようだ。なかなか才能を秘めた子なのかもしれない。アリスの子だからな。オレと違ってハイスペック間違いなしだろう。

 


部屋の中に六花専用ベッドも備え付けた。これは4英雄達の権力と財力が注ぎ込まれた至高の逸品である。最初からこんなベッドを体験してしまってはもう安物では寝れなくなってしまうだろう・・・。

 


吉子達による野生児ルートか高級品好きのお嬢様ルートのどちらかに既に乗ってしまっている気がする。普通の女の子ルートは消滅してしまった気がするのはオレだけなのであろうか・・・考え過ぎだと信じたい。

 


そして庭に六花のドレスルームも配置することとなった。だって部屋に入りきらないんだもん・・・。

 


まず彼女達が各々の好みの服を大量に持ってきた。そして4英雄・・・あいつら金とコネを持ってるからタチが悪い。頭おかしい。大量と呼んでは物足りないほどの尋常じゃない量を持ってきた。

 


バカなの?そりゃ嬉しいのはわかるけどさ、なんでそれぞれがオレのこの部屋を埋め尽くすほどの服とおもちゃ持ってくるの?英雄ともなるとスケールが違うらしい・・・。そのせいで庭の六花特別ルームをオレは増築せざるを得なかった。

 


吉子とサリーが六花のベッドの下で仲良く寝ている。六花もすやすやと寝ている。可愛すぎるぞその寝顔・・・。

 


さて、明日はいよいよライブ当日である。準備が早い?オレはやる時は早いのだよ。やらない時はナマケモノもびっくりするくらいやらないのは内緒だ。

 


ちなみにファン達にも確認してある。驚いてはいたが大丈夫と言っていた。あいつらが訓練フィールドのプライベートフィールドに入り浸っていたのは知っている。

 


そのことでアサ吉から前線が減ったと苦情がきたのだが、漢には引けない闘いがあるのだと諭してやった。まぁ不思議そうな顔をしてたけどな。言っているオレも正直意味がわからないのは秘密だ。

 


悪爺、フーカ、ラル爺がはりきって出店を出している。フーカの配下が味を監修しているのではっきり言って出店のレベルを超えている。

 


三ッ星を獲得しているような店が露店化しているようなものだ。しかも席までくノ一のお姉さんのデリバリーサービス付きだ。ファン達はがっつり心が掴まれてしまったようだ。君達違う目的できたんだよね?なんでそっちに夢中になっているの?

 


リヒテル叔父様は暗部を率いて警備そして騒がないかを監視している。最悪ファン達が騒いでしまった場合、リヒテル叔父様と念願の闘いが発生するかもしれない。ちゃんとおとなしくしてるようだし・・・望みは薄そうである。

 


座席はそれぞれ可能な限り離した。1テーブル最大でも8人。間隔は10メートル以上離してある。そしてテーブルの上には姦9の姿が立体映像で映し出される。まぁミニバージョンなんだがな。等身大の姿は空気中に映し出される。オレが緻密な計算を行いライブの邪魔にならない場所に出現するようにした。パズルやっているみたいで楽しかったなぁ。ただスカートの中はオレの闇のマナで隠す。中を見ていいのはオレだけだ。

 


そして騒ぐこと、立ち上がること、大声を出すことを禁止にした。守ってくれるかはわからなかったがこのファン達ならきっと守ってしまうだろう。さらに住人達の子供達を中心に呼んでおいた。気に入ってくれたら幸いだ。

 


会場の周辺から光を奪う。暗転させた形だ。メンバー達それぞれの髪の色の光が飛び交っている。そしてそれがステージに降り立つ。見事なポージングを決めている9人。衣装も似合っている。ちょっとドキドキしてしまったじゃないか。今日の夜はその衣装で決まりだな。

 


音が鳴り出す。そしてステージを盛り上げるべく擬似照明が輝き出す。すべてマナちゃんの力である。

 


楽しそうに歌ってるな。はじめて見たが踊りも上手じゃないか。いい声もしている。しかしオレには歌には聞こえなかった。

 


100人に聞けば100人が歌だと言うだろう。オレがきっと変わっているだけなのだ。オレにはどんな歌もただの台詞にしか聞こえないんだ。例外も実はあるのだがその人の名前すらオレは知らない。

 


話し声。音楽の音。自然界の音。小鳥の囀り。車の音。工事の騒音などそれらすべてがオレには同じに聞こえる。

 


すべて八音音階でできている。それを元にそれぞれの特色を出しているに過ぎない。それ故にオレは音楽を好んで聴くことはなかった。日常に流れている音とまったく代わり映えしない。

 


ファン達の雰囲気が・・・変わった?ライブと言ったら光るペンライトのイメージがあったので9色のペンライトをヴェルンドに作らせて安価で販売していたのだ。オレはライブに行ったことはない。ただの空想でしかないんだけどね。受け入れられているので思い込みではなかったようだ。

 


光を一斉に降り出した。座りながらにして連携が取れている。これが噂の技というやつなのか。レベルが高いぜ・・・どうやら特訓していたのはこれのことのようだ。ファン魂恐るべし・・・でもそれを戦闘に活かしきれていないのが残念である。

 


しかしこれで満足しているのか?表情を見ると満足しているように見える。自分を押し殺して何が楽しいんだ?本当は地球の時のように騒ぎたかったのではないのか?まぁ一応、場は提供したが・・・本当にそれでいいのか?なぜ不自由を選択する?聞けるだけで幸せだというならオレはなにも言うまい。

 


小さい幸せを大事にするのはいい。いつからお前らはそんな言い訳をするようになったのだ?できないから仕方がないで済ませるのか?何を選ぶのもひとりひとりの自由だ。

 


いつから周りに合わせるようになった?オレの本心としてはダメだと言っても騒ぎたいように騒いで欲しかった。なぜなにも考えようとせず黙って付き従う・・・自分だけの意志というものをお前らはどこに捨ててきた?

 


住人達とはオレが争ってやるつもりだった。形式上では仲間だが・・・これから先仲間で無くなる可能性が高い。まぁいい・・・あとで問いかけよう。

 


ステージ上の9人を見るとふとオレは思ってしまった。唯も歌いたいのではないかと。ちらっと唯のいる場所を見る。そこに唯の姿はなかった。オレは唯を探しに行くことにした。1人にしては行けない気がしたから。