闇と光 第109話 動かされる者達

唯とともにライブ会場に戻ってきた。心無しか彼女の表情は晴れやかだった。

 


はじめてを唯に奪われてしまった!お嫁にいけないっ!・・・さてライブも終わりに近づいてきたようだな。・・・ったく最後までこいつらおとなしいままかよ。いいファンだと言うのはわかるが・・・それで納得しているのか?

 


姦9達は歌い終わると感謝の言葉を放っている。君達もそれでいいのか?それに歌いたいという強い意志が感じられない。何故トップアイドルを目指している?別の理由でもあるのか?

 


メンバーを改めて紹介している。そしてなぜかオレの名前が呼ばれている・・・。開催者挨拶?・・・ちょうどいいから問い掛けてみよう。彼女達を見習ってオレは黒い光となってステージ上に立つ。

 


「まず喜んでくれたようなのでよかった。その一言に尽きる。しかしオレは君達に問いたい。

 


君達はこのようなライブで満足していただけたのかな?」

 


拍手が巻き起こる。大満足という声が聞こえる。・・・やれやれ。

 


「返答ありがとう。君達は地球での以前のライブの形が良かったのではないか?オレは確かにダメと言った。でも実際は騒ぐことを期待していた」

 


ざわざわし出す。姦9もえ?みたいな表情をしている。アリスと唯は笑顔で見ていてくれてるな。リヒテル叔父様の配下達が少し警戒し始めている。

 


「なぜ君達はそれを簡単に受け入れる?開催者であるオレが言ったから?歌声を聞きたかったから?そんな我慢の上で実現して何が楽しいかわからない。

 


歌を聞ければ満足。言い訳するな。小さな幸せがあるからってそれで納得するな。貪欲に自身の求める形を追求しろ。なぜ君達は自分に言い聞かせ、自分を押し殺している?

 


本来何を選び、行動するかはひとりひとりの自由のはずだ。オレが言ったから?開催してやるから死ねとオレが言ったら君達は従うのか?違うだろう?

 


命に上も下もない。ここにいるすべての者は平等な立場にある。そして個人の自由は尊重されるべきだ。何をするにも個人の自由なのだ。いつから君達は不自由を選択するようになった?

 


もっと派手にやるのが君達のライブの形なのだろう?なぜしない?何度も言うが・・・するかしないかは君達の自由だ。自由に生きる。それが自然界においての絶対的なルールのはずだ。良いも悪いもない。

 


1人だけやったら周りに叩かれる?否定される?その行動自体も自由だ。しかし自由には自身で負わなければならない責任も伴ってくる。

 


オレにはやりたいことがある。オレはたとえ1人でもやるぞ?オレの自由だからな。何で秩序や調和を求めている?君達が求めなくても既に秩序や調和はとれている。

 


すべての命は平等だ。そして自由という絶対的ルールがある。君達が何をしようがそれは変わらない。一部の者達によって作られた社会の中で育ってきたから簡単には受け入れられないだろう。統治しやすいように民衆は操作されていく。

 


もう一度言う。君達ひとりひとりは自由なのだ。自分の行動に自分で責任を持つならば何をやってもよい。その結果肯定されるか否定されるかは知らん。結果の報いは受けなければならない。それに抗うのも抗わないのも君達の自由だ。

 


さて住人の子供達。ライブはどうだった?

 


・・・そうかそうか。楽しんでもらえてよかった。また聞きたいか・・・次はもっとウキウキできるようなものにしてあげたいと思う。アリスっ!」

 


彼女は名前を呼ばれると緑の光となってステージ上に舞い降りる。アリスを抱き寄せ2人で六花を包み込む。

 


「この子はオレとアリスの子供だ。先日産まれた。はっきり言おう。ここは仮想空間などではない。現実だ。住人達はみな生きている。この子が何よりの証拠だ。

 


つまり来訪者も住人も関係ない。同じ命ある者同士、同族だ。みな平等だ。子供達は次を期待してくれている。騒いで欲しくないと思うのは住人達の自由だ。でも同族なんだから分かり合えるはずだ。

 


君達の求めるライブを実現するために住人達を巻き込め。住人達にも観たいと思わせろ。そして住人達の不満や意見も聞け。それが平穏なライブ開催のための道だと思う。

 


彼らの不満を聞き、取り除く。そしてライブというものはこんなにいいものなんだと伝えろ。子供達は理解してくれたんだろう?なら大人達だって理解してくれる可能性があるだろ?

 


我々は自由だ。ルールになんて縛られるな。しかし相容れない時だってある。その時は争いになる。この世は弱肉強食の世界だ。もし住人達と争うようなことがあればオレが最前線に立ってやる。

 


だから己の望む形に向かって努力しろ。ただし相手の自由を否定するようなやつがいるならオレがそいつを踏み躙る。それだけは覚えておけ。

 


お前らの見たいそしてしたいライブはなんだっ!?本当にこの形で満足するというならいくらでも開催してやる!満足していないというならばその望む形をオレに見せてくれっ!

 


オレはライブというものを見たことがないのでな・・・頑張れよ」

 


ファン達の目は変わっていた。どうやら動く気になってくれたらしい。暗部も警戒を解いてくれたようだ。アデルソンのやつ・・・またにやにやしてやがる。悪爺め・・・。

 


とりあえずやりたいライブを盛大にやってもらいたいと思う。その方が彼女達も楽しいだろうしな。今はアンコールに応えてもらっている。

 


しかしアンコールってさ・・・それも含めてライブなの?はい!終わり!じゃダメなわけ?うーむ・・・ライブというものは奥が深い・・・。