闇と光 第132話 スパイ大作戦
オレは昼夜問わず、首都を目指して毎日制圧戦を仕掛けた。湿地帯での激しい攻防戦が繰り広げられたのは言うまでもない。しかし闘いというものに終わりは存在しない。オレは死ぬまで嫁達に制圧戦を仕掛けてしまうのだろう。
オレの第6回支部別対抗戦は激闘だらけで幕を閉じた。今回は円卓の騎士・カポネ組・ゲイボルグ連合が結構活躍していた。アヤネとの愛の結晶である道場に通わせたのがよかったのかもしれない。
まだ優勝できないものの近い将来やってくれると信じたい。実際にオレは見ていないのでどのぐらい強くなったかはよくわからない・・・すまん。
ちなみに今道場の師範はヨシツネになっている。こないだオレ対道場の乱戦稽古をした。弟もなかなか強くなっていた。これも愛の力というものなのだろう。弟の彼女からお兄様と呼ばれるのも悪くない。
ヨシツネにはいつか六花に教えてもらいたいと思う。獣魔達が闘い方を既に教えてるみたいだがそれだけでは不安である。そして最初から4英雄に教えられてしまうと基本がすっ飛んでいくような気がするからだ。
アヤネとアリスは秘密の実戦とやらで忙しいのだそうだ。最近2人の実力がぐんぐん上昇しているのがわかる。どうやら相当厳しい修行をさせられているようだな。2人とも生き生きとしているので良しとしよう。聞いたわけではないがおそらく2人とも絶理命唱できるはずだ。
六花にも新たなお気に入りが出来ていた。キングウルフ。通称うるたん。六花は基本的にうるたんにライドオンしている。たぶんというか六花が走った方が速いと思う・・・しかしオレは最近六花の騎乗していない姿を見たことがない。いつもなにかしらに乗っている。
嫁達がぱつぱつのライダースーツを着せていた。ウルフライダー六花ちゃんの誕生である。かっこよさの中にある可愛さ。野獣戦隊は更なる力を手に入れていた。
よし飯は食った。準備は万端だ。とりあえず今回は1人で行ってくる。1人の方がやりやすい。ハイロリ潜入ゲームの始まりだ。ハイロリスパイ大作戦といったところかな。
何度見たであろうこのムービー。スキップ機能をあとでデキウスに要望しておこう。時間の無駄である。
今回は道を進まない。必ずお馴染みのゴブ信くんと戦闘になってしまうからな。森の中を進もうと思う。盲点であった。わざわざ道を進む必要はない。右と左どっちにしよう。まぁ結局どっちも行くことになりそうだから右側から行きましょう。
気配は消していく。見つかったらいけない。野良ゴブリンもたまに見かけるがただの国民だろう。ゴブリンも個体ごとに警戒範囲が違うようだ。
まずいっ!!見つかった!?
オレは逃走する。しかし徐々に囲まれているようだ。なかなか統率がとれているようである。・・・50メートル圏内に入ってもムービーが発生しない?・・・兵士ではないからか?
「ゴシシシッ。有り金全部おいていってもらおうか?」
なるほど野盗ゴブリンといったところか。命唱しなくてもいいなら喜んで相手してやるよ。
「さぁお前ら色々とこの星のことを教えてもらおうか!答えなかったらわかってるよな?痛い目見ることになんぞっ!!あぁん!?」
「な、なんでも話しますからお許しください!もう足を洗いますので・・・」
オレは軽くボコボコにしてやった。そして尋問している。情報を得るためだ。
ゴブリンキングの名はゴブ卓(たく)。おっしゃ!当たっていたと心の中でガッツポーズをするオレがいた。宰相もやはりいるらしい。あとであいつらに教えてやろっと。また盛り上がれるな。
・・・なにっ!?そうか・・・てっきり海軍にいるかと思っていたがこっちにいたのか。オレ達の読みは外れていた。宰相の名はゴブ詡(く)。やはり王に相応しい頭脳を抱えているか・・・。
ゴブ卓の悪政によりゴブリン星の民達は苦しんでいるのだという。新たな王を求めている。こいつらも重税に耐えきれず野盗に成り下がってしまったらしい。元は農民なのだそうだ。どっかで似た話を聞いたことがあるがここは素直に聞いておくとしよう。
野盗のリーダーの名はゴブ蔵(ぞう)。オレがそんな王は認めないと、ぼそっと怒りを露わにしたら感動してくれていた。種族が違うのに怒ってくれたのが嬉しいのだと言う。
そういやデキウス・・・生きているとか言ってたよな?ここも宇宙のどこかにある惑星なのか?時間が入る度に元に戻るが・・・変態神ならありえる・・・?時を止めれるぐらいならそのくらいできてもよさそうな気がするが・・・まぁいい。この星のゴブリン達にも感情はあるようだ。
マナもぶっちゃけひとりひとり違ってるんだよなぁ・・・村のお姉さん達のマナは同じだった。前例があるから生きていると仮定してこれから過ごしていこう。すべての命は平等であり同族だからな・・・姿は違えど同じ命だ。人族とゴブリン族はざっくり言えば色が緑っぽいかの違いだけだしな。うんうん。緑ってことは光合成とかできるのかな?あとで聞いてみよっと。
なるほどな・・・デキウスめ。これはアクションではなかったようだな。どおりでクリアできる気がしなかったはずだ。
「おや?無双ルートを外れてしまったようだね。まぁ様々なルートがある。好きに選んでいいよハイロリ君。よく考えて選ぶんだよ。君の決定が妖精の星と地球の関係を決めるんだからね。妖精達が君の敵となるか味方となるか楽しみだねぇ。あははっ」
オレはゴブ蔵を配下に加えた。星を制圧するという目的を話したら参加したいと言い出したからだ。中々熱い魂を持っているようだなゴブ蔵。気に入ったぞ。
命唱なしでも配下を作れることがわかったのが大きな収穫だ。そして光合成はできないと言っていた。じゃあなんで緑なのよって突っ込みたいけどたぶんそれは彼らも知らない。
オレとゴブ蔵は辺りの野盗達を次々に吸収し突き進んでいった。スパイするつもりだったのにもはや普通に行軍している。
「大将っ!前方に砦確認!突撃しやすか!?」
こちらのゴブリン兵力は1000ほど・・・士気は申し分ない。あるのは小さな砦である。兵力差はそこまでない。
「ゴブ蔵!!君の意見が聞きたい?どうすべきだ?」
「あっしらならやれますぜ!大将行きやしょう!」
「皆の者・・・決して歩を止めるな・・・我らがひとりひとりが矛となり敵をぶっ潰すっ!!全軍突撃っ!!」
「「「「「ゔおおおお!!」」」」」
やばい・・・この子達ノリよくて楽しい。気分は総大将だな。あれ?体が動かない。これは・・・ムービータイムか?
「我こそはゴブ蔵!!砦の大将出て参れっ!一騎討ちを所望する!!」
え・・・ゴブ蔵さん?
「良かろう!いざ尋常に勝負せよっ!!」
お馬に乗ったゴブリンさんが砦から出てきたぞ?2人が激突する。農民の底力見せてやれっ!いけっ!
「ゴブ蔵おおおおおおお!」
なんてこった・・・簡単にやられてしまった。ゴブ蔵の首がこちらに飛んでくる・・・お前いいやつだったのに・・・なんでこんなことに・・・。
「おめぇらいくぞっ!ゴブ蔵の仇をとんぞおらっ!」
「・・・オラ達降伏するだっ!」
はい?えっ!?ちょっと待って・・・なんでよ!?ちょ?なんで君達オレに剣を向けてるの!?さっきまで味方だったよね?・・・くそったれ!
オレは砦の兵もろとも一掃した。
またひとりになってしまった。スパイ作戦をリスタートするしかないかな・・・なんか今オレは虚しい気分だ。・・・?地鳴り?はっ!?
ハイロリは音の鳴る方に恐る恐る振り返る。
「いたぞぉぉ!侵入者を発見した!」
「各軍に伝令を飛ばせっ!!我らは突撃する!全軍突撃ぃぃ!!」
忘れもしないその声・・・また会ったなゴブ信さんよぉ!!
「なんでここにいんだよ!?」
「砦からの伝令を受けたからなっ!侵入者がここにいるとなっ!!」
伝令ってなによ・・・どうなってるのよ。てかあれ?ムービーは?一騎討ちはないの?うわぁ・・・光がいっぱい光ってて綺麗だねぇ・・・はぁ・・・結局こうなるのね。
「ゴブ信!オレの首をとれるもんなら取ってみろやっ!!たとえひとりになっても抗い続けてやらぁ!!」
ハイロリよ。お前は最初からひとりである。ハイロリは抗い続けた。いつものように抗い続けた。無事ゴブ布が謀反を達成する。そしてハイロリはいつものように葬り去られたのであった。