闇と光 第136話 翠天已に死す 黑天当に立つべし

ゴブ蔵と数騎のゴブリンを引き連れてオレ達は旅をしている。少数ながら騎馬隊の完成だ。ゴブ吉、ゴブ子、ゴブリーも馬に乗っている。鳥とトカゲが騎乗するという不思議な光景を目にしている。いずれは配下にも見栄えの良さだけのために馬を与えたいと思う。ゴブロリ騎兵隊としていずれ名を挙げれたらいいなぁと期待を募らせる。

 


ゴブ蝉には淑女通信なるものを定期的に届けさせ、村で育成しているところだ。やはり教材がなくては育てられないからな。教材をクリアするとゴブロリシールなるものを発行している。これを集めると特典を受けれるようになっている。特典はまだ決めていない。ゴブ蝉のやる気を出すことが重要だ。

 


ゴブ蝉の村は農業と牧場に特化させた。ハイロリ騎兵隊の馬の産地として利用させてもらう。調教の監修はアリス師匠の手ほどきを受けた3匹に担当してもらっている。我ながら有能な部下を持てて、幸せ者だなと感じる。

 


今はゴブロリ軍の総大将となれるゴブリンを探して村々を転々としている。そしてついにある村でオレ達は救世主とも呼べるようなゴブリンと運命の出会いを迎えることとなった。

 


陸軍にいなくておかしいと思っていた。きっと彼こそがこのゴブリン星攻略の鍵なのだろう。彼の名前はゴブ羽(う)。軍神と畏れられるその名に秘めたる才能をしっかりと発揮してもらいたいと思う。

 


練兵を始めるとこのゴブ羽・・・やはりなかなかの才能があると思う。マナの先天属性は地属性。かのゴブ布も地属性なので、目には目を、地には地をである。オレの配下となったゴブリン達はまたもや黒く進化した。闇のマナの影響をがっつり受けているらしい。

 


「ゴブロリ先生!今日は何を学びましょうか?」

 


「そうだな。ゴブ羽よ・・・王たるものに必要な要素は何であるかわかるか?」

 


「・・・天地人にですか?」

 


「惜しいな。天地人は重要だ。だがそれよりも王たるものにとって重要なものがある」

 


「それは何ですかっ!?」

 


「女だ。真の王には女が必要なのだ。王たるものに必要なこと・・・それは天地人に非ず・・・愛天地人である!

 


今日は1番重要な女の子を愛でる方法を教えてあげよう」

 


ゴブロリ先生。オレはゴブ羽にそう呼ばれるようになっていた。ゴブ羽は素直にオレの教えることを吸収してくれるいい生徒だ。オレはゴブ羽をこの星の王へと必ず成り上がらせてみせるっ!!

 


ゴブ羽よ。君は才能がある。王しての才能がある。真の漢となる才能がある。変態道を極められる才能がある。共に極めようではないかっ!

 


ゴブ羽はオレと共に変態道を突き進んだ。そろそろゴブ女の味を覚えさせてもよいかもしれない。女の子を大切にする精神はもれなく継承できたはずだ。ちょうどゴブ蝉の育成が終わったのでゴブ羽の元へ嫁がせた。

 


我が愛ゴブリンを嫁がせるのは悲しいが、愛弟子にならば預けられる。ゴブ羽とゴブ蝉の初夜が終わった後、さらにゴブ羽の体は大きくなり進化した。やはり愛が王にとって重要なのだ。オレは間違っていなかった。

 


天地人。王たる者に必要な要素だ。機は熟した・・・ゴブ羽をゴブリン星の新たな王にするための闘いを始めようと思う。

 


愛・・・ゴブ蝉を嫁がせたことによりゴブ羽の能力は格段に上昇した。いずれもっと嫁がせ、さらなる進化を遂げてもらいたいと思っている。

 


地・・・ゴブ羽が地属性なのでもうそれでいいだろう。どうせこの星の王とするつもりなのでこの星すべてはゴブ羽のものだ。

 


人・・・オレはゴブ羽を見つけた時、ゴブ蔵に指示を出している。各村のゴブ材を発掘せよ。まだ埋もれた才能が眠っているかもしれない。それを可能な限り吸収するつもりだ。ブラックスピードスターゴブ蔵にしか任せられない役目である。

 


天・・・これはオレが与えよう。この星の民達の不満は爆発寸前なのだ。それをオレが起爆させる。それに乗じてゴブ羽の旗揚げとさせてもらおう。

 


ゴブ材発掘の際、オレはある言葉を民達に広めよという指令を出していた。

 


翠天已に死す黑天当に立つべし

 


黑巾(こっきん)の乱。今オレはゴブ角(かく)と名前を変え民を扇動している。新たなる配下も村から見つけてきた。ゴブ宝(ほう)とゴブ良(りょう)。本当はゴブ梁を見つけたかったのだが、どこにも見当たらなかった。だからゴブ良で代用した。響きでどうにかなるはずである。声に出したら字なんてわからない。きっとそうである。

 


さぁ・・・ゴブリン星すべてを巻き込んだ民達の乱が始まった。ゴブ卓の抱える幼き皇帝の勅令。実質はゴブ卓の勅令である。それにより陸海空軍は乱を鎮めるべく動員されている。義勇兵としてゴブ羽には戦功を立ててもらおう。数多のゴブ民はこの星の未来のための生贄とする。犠牲なくして平和など訪れないのだ。

 


やはり腐っても陸海空軍・・・それぞれ強いな。民兵達の強さではやはり歯が立たない。しかし民達の声を受け取れ。お前らはゴブ卓如きの器に入りきる者達ではあるまい。お前らの魂の名がそう言っているぞ。黑巾の乱は単なるゴブ羽の旗揚げのために非ず・・・ゴブ卓の戦力を削ぐという二重の意味を持つ。

 


ゴブ羽の名声を上げるため、オレは大軍の前でゴブ角としてゴブ羽に討たれるという盛大な演出を行った。ゴブ角ゲンガー。この技はやはり応用の幅が広い。拘ってよかったと思う。

 


ゴブ角が討たれたことにより、黑巾兵達は総崩れとなった。ゴブ宝も討死。しかしゴブ良だけはなぜか生き残った。ぱちもんだからなのかもしれない。何事も無かったかのようにゴブ羽の拠点にいるゴブ良さん。ちゃっかりしてるぜこいつ・・・。

 


黑巾の乱があらかた収束するとムービーが発生した。狙い通り陸海空軍はそれぞれゴブ卓から離反する。そしてゴブ卓に対して連合軍の反乱が始まる。連合軍は敗れ去るがここでさらにゴブ布の離反。ゴブ卓はこの世を去ることになる。

 


どんどん時代が進んでいく。陸海空軍はそれぞれ蜀魏呉とそれぞれ国を立ち上げ、戦乱の世となっていく。最終的にゴブ懿(い)の一人勝ちとなってしまった。

 


ちょ待てよ・・・なんでムービーでこんな話が進むんだよ。ゴブ羽さんは!?名声が足りなかったっていうの?ゴブ角さんの首では足りないとでもいうのか・・・。はっ?逆賊?なんもしてないじゃんかよ!?えっ?ゴブ角?そうです私がゴブ角です。ってちげぇよ!

 


はぁ・・・結局こうなるのね。オレ達は星の戦力に屈することとなる。新たなる将ゴブリンらしき者達もいたがこいつらはきっとバッドエンド用だな。産まれてすらいないゴブリン達・・・ゴブ蔵リストには載っていなかった。

 


まだ何か足りないと言うのか・・・ゴブ蔵リストを思い出せ・・・ゴブ羽がキーなのは間違いない。あいつにはオレが認めるほどの才能が秘められている。それこそリュカウスに匹敵するほどの力を秘めていると思う。

 


ひとつひとつのピースを組み合わせろ・・・星中のリストはあるんだ・・・あとは組み合わせ次第・・・オレの裁量次第なんだ・・・今までのゴブリン星での出来事を思い出せ・・・デキウスの用意したエリア・・・なんだかんだあいつは頭が良い・・・攻略不能な状態にすることはありえない。

 


ハイロリはマイルームに戻るなり、座禅を組み黙祷していた。剣道をしていた時に座禅を組まされた。その名残で無意識的にそうしている。周りの者達の声すら聞こえていない。嫁達が触れてもまったく反応しない。いくら刺激してもノーマル状態のままである。そんな新鮮なハイロリの柔らかな感触を嫁達は群がり楽しんでいる。

 


しかしハイロリは微動だにしない。全神経を頭に集中させていた。ハイロリは2時間ほどこの状態が続いていた。

 


ハイロリが突然抜刀状態に変わる。刀がアヤネの喉元へ突き刺さる。それを受けアヤネは刀を鞘にすぐ様納刀する。流石に刀の扱いにかけては天下一品である。

 


「・・・見えたっ!!・・・ん?」

 


ハイロリは突き上げ攻撃の連撃を放っていく。この後共鳴大会に発展したのは言うまでもない。

 


しかしハイロリはどうやらゴブリン星制圧の糸口を見つけたようだ。混迷していたハイロリの妖精の星制圧作戦が始まろうとしていた。

 


今日は忙しそうにしているのでたぶん明日からであろう。