闇と光 第149話 白馬の闘い

ゴブ邦の首が飛び、ゴブ授、ゴブ豊の顔色が青ざめていく。ゴブ紹が手を掲げる。2人の首も宙を舞うことになる。

 


「裏切り者が消えて清々したわっ!ゴブ正よ。次はゴブ羽だな。なにか言い残すことはあるか?」

 


「ゴブ紹よ。その程度の器で我が王の器を砕こうとは片腹痛い。そのような愚行・・・たとえ天が許そうともこの星が・・・愛がお前を許さないだろう」

 


「おのれぃっ!!ゴブ正よっ!首を刎ねろっ!」

 


ゴブ正の剣がゴブ羽の頭上に掲げられる。

 


「斬られる前にひとことあるか?ゴブ羽よ?」

 


「やれるもんならやってみろっ!!てめぇみてぇな小人にやられたりはしねぇっ!!暴れてやるっ!!」

 


「ゴブ正やれぃっ!!」

 


ゴブ正の剣が放たれる・・・そこには首をポキポキ鳴らしているゴブ羽がいた。

 


「動いていないと死んでしまいそうになっちまうよ。先生っ!!」

 


「やれやれ・・・そんな風に育てた覚えはなかったのだがな」

 


ゴブ正はゴブ羽の拘束具を破壊していた。

 


「ゴブ正っ!!貴様っ!!何をしておるっ!?」

 


「これはこれは・・・ゴブ紹殿。お久しぶりですね。木偶の坊の盟主ははりぼての王にしかなれないようですね?」

 


「き、貴様はぁぁ!?おのれぃ・・・謀りおったなっ!!ゴブロリめっ!!」

 


ゴブ正がゴブロリの姿へと変わっていた。

 


「謀る?そんなことしたつもりはないんですけどねぇ・・・勝手にあんたが騙されただけだろ?」

 


「くっ・・・悪名高きゴブロリ・・・ゴブ羽軍の悪魔めがっ!!

 


であえっ!であえぃっ!!ここは我が拠点・・・鼠どもの首をとれぃっ!!」

 


蜀軍の兵士達に取り囲まれるゴブ羽・ゴブロリの両名。しかしまったく慌てた様子はない。

 


「ゴブ紹よ。冥土の土産だ・・・戦の必勝パターンというものを教えてやろう。闘う前に勝ちを確定させる・・・それが最善の手だ」

 


「えっ!?暴れんじゃないのかよ・・・先生っ!!」

 


「戯言を・・・やれぃっ!!褒美はいくらでもとらすっ!!」

 


ボンッ!!

 


「なっ・・・何をしたお前らぁぁぁぁっ!?」

 


「食べてなかったやつもいたのが幸いしたな・・・裸の王様にならなくてよかったなぁ?ゴブ紹くん?」

 


取り囲んでいたほとんどの兵士達の体が四散する。ゴブロリは鳥巣であることをしていた。兵糧に自身のマナを流し込んでいたのだ。

 


兵糧を口にした者の体内にはゴブロリのマナが刻まれている。それを暴発させたに過ぎない。

 


「鳥巣にまとめて貯蔵してはだめでしょ?おかげで工作が簡単だった。兵糧を口にした者はこのオレに命が握られていると思えっ!!

 


投降するものは受け入れるっ!!さぁ自己申告でいいぞっ!!生きたい者はゴブ羽の旗の下に付き従えっ!!」

 


「先生?誰も寝返らないけどどういうことなんだ?」

 


「あぁ・・・さっきこの場にいたやつは全部殺してたわ・・・忘れてた。

 


・・・ほらっ!!暴れていいぞゴブ羽っ!!」

 


ゴブ羽の目の前に闇が蠢いてる。そこから現れたのはゴブ羽の斧槍であった。

 


「よっしゃぁぁぁっ!!任せろっ!!

 


我が名はゴブ羽っ!!死にてぇやつからかかってこいっ!!」

 


スパーキングゴブ羽になってしまったようだ。なに?動かないとストレスで強化されんの?どうなってんのこの脳筋・・・。

 


「ところで盟主殿?今回は逃げなくていいのかい?」

 


以前こいつは真っ先に逃げていた。盟主でありながら行く末を見守ることなく、劣勢と見るやすぐに撤退。上に立つ才器はない。

 


「くっ・・・」

 


逃げ出すゴブ紹。彼にはもはや僅かな兵士達しか残っていなかった。

 


「ゴブ羽あとは任せるぞ?必ずゴブ紹の首をとれ。隊長達に計を授けてある」

 


「先生はどこに行くんだ?」

 


「オレはゴブ策の元に援軍に行く。挟撃を防ぐ予定だったからさすがにまずい。ゴブ備はそっちに漁夫の利を狙いに行ったようだからな」

 


「いいけど間に合うのか?」

 


「オレの分身体を乗せた黑愛がそろそろ向こうに着くはずだ。そこに転移すればひとっ飛びだな」

 


「・・・。いつの間に・・・さすがゴブロリ先生」

 


「ゴブ紹を討ち取ったら残党狩り。オレがさっき言った言葉で脅迫。そして兵を吸収した後・・・ゴブ良の元へ急行しろ。おそらくかなり厳しい闘いになっていると思うからな。

 


ではオレは行ってくる。後は頼んだぞ」

 


ゴブロリは闇に包まれ消えていった。ゴブ羽によるゴブ紹追撃戦が始まる。

 


逃げるゴブ紹。逃げた先に転移し、襲いかかる愛天地人の隊長率いるエリート黑州兵。ゴブ紹は困惑していた。伏兵からなんとか逃げ切ってもすぐ様、また伏兵が現れる。ゴブロリが授けた計。それは無限埋伏の計である。

 


ゴブ紹の退却先はわかっている。黄海を渡り、白馬より後方の砦へ行く。進路がわかっているが故に伏兵を配置するのは簡単である。かつて戦で使われていた難易度の高い十面埋伏の計。それは奇しくも袁紹曹操により追い詰められた計。

 


ゴブロリはそのことを知っていた。そして転移を使えば難易度が遥かに落ちる。十面どころか無限に伏兵を当てられる。この計をゴブ羽の敵に対して成功させる為にひたすら黑州兵の上位を鍛えてきた。ゴブロリ鬼軍曹となり自ら教えてきた。その結果、黑州兵隊長以下各部隊100名・・・全員が転移を習得することとなる。

 


その過程でエリートゴブリン達の体はすらりと変化し、さらに漆黒の体となる。巻きツノが2本ずつ生え、髪型は銀の長髪へと変わっていた。さらに目は銀色と漆黒のオッドアイ

 


天地人の隊長達はそれぞれ漆黒と桃、青、茶、緑のオッドアイ。さらに漆黒の翼が生え、悪魔のような尻尾も生えている。もはやゴブリンとは呼べないほどの変貌を遂げていた。

 


「もうすぐ黄海につくっ!!皆の者持ち堪えろぉぉぉっ!!

 


くっ・・・また伏兵か・・・なんなのだ・・・悍ましき姿の兵士達・・・あれは本当に同族なのか?」

 


「ゴブ紹観念しろっ!!既に黄海の向こう側の拠点はすべて陥落済みであるっ!!黙ってこの刃を受けよっ!!反ゴブ卓連合の盟主の名が泣いておるぞっ!!」

 


「ゴクククッ!!馬鹿めっ!!援軍が到着したわっ!!この戦・・・我が軍の勝利であるっ!!」

 


追撃するゴブ羽の背後に各拠点の兵が地鳴りを起こしながら接近している。

 


「てめぇらの命はゴブ羽軍が握っているっ!!死にたくなければ投降せよっ!!」

 


蜀軍の兵士達はゴブ羽の元で止まり、臣下の礼をとっている。ゴブロリが既に手を回していたのだ。ゴブガード達に残っていた蜀軍の拠点に勧告していた。

 


兵糧を食べた者には爆弾が取り付けられている。死にたくなければゴブ羽に降れ。一方的過ぎる勧告であったが、蜀軍の兵士達は数十人ほど体が四散するとおとなしく勧告を聞いていた。ゴブロリが頃合いを見て一斉に各拠点の兵のマナを暴発させたからだ。かつての主君ゴブ紹に一斉に刃を向ける元蜀軍兵士達。その数20億。

 


「な、なにをしておるのだ貴様らっ!!このゴブ紹様を裏切るつもりかっ!?」

 


「やれやれ・・・観念しろっていったのにな・・・こんな兵に頼らなくても兵力は足りてんだよっ!!

 


ゴブ馬俑っ!!」

 


ゴブ羽がそう叫ぶと、海面からゴブ馬兵達が浮上してくる。その数1億。ゴブ紹の周囲はゴブ羽によって包囲されていた。

 


「や、やめろっ!!まだ死にたくないっ!!私が死んではこの星の平和がっ!!」

 


「死に際くらい華麗に散れよ・・・ゴブ紹・・・お前に王としての器はないっ!!その首貰い受けるっ!!」

 


「ま、待てっ!!そうだ・・・私と手を組もうっ!!星下を治めた暁には星下の半分をやろうっ!!私とお前が手を組めばそれも簡単に行くだろ・・・」

 


ゴブ紹の首が宙を舞っている。

 


「そんなの願い下げだよ・・・木偶の坊めがっ!!

 


我が名はゴブ羽っ!!蜀軍総大将ゴブ紹討ち取ったりぃぃぃぃぃっ!!」

 


ゴブ羽の斧槍からは紅き血が滴り落ちていた。

 


ゴブ紹・・・妖精の星の名門・・・ゴブリン界の巨星・・・白馬の地に墜つ。