闇と光 第152話 ゴブロリ軍対ゴブ信軍!?

3つに部隊を分けた呉軍。それぞれ全速力でゴブロリ達に向かって殺到している。呉軍の隊列は崩れ、すっかり伸び切ってしまっている。伸び切った隊列はもれなく3人のゴブロリにより殲滅させられている。ゴブ策が痺れを切らして攻撃を仕掛けたのがことの始まりだ。競い合うように3人が敵軍の先頭集団を始末していく。

 


このままではゴブロリを逃してしまう。そこでゴブ権は3提督に助言を求める。返ってきた答えそれはこうであった。

 


逃げているのはゴブロリ、ゴブ策、ゴブ史慈である。闘い方を見ればわかる。いずれの武も兵を分けては被害が増えるだけだ。故に本物のゴブロリへと全軍で襲いかかるというものであった。

 


進言通りに1人のゴブロリへ全力で追撃を仕掛ける。すると余った2人のゴブロリの行動が変化。背後から呉軍に襲いかかってきたのだ。その瞬間3提督は確信する。今追っているゴブロリが本物であり、背後にいるのはゴブ策とゴブ史慈であるということを。

 


3提督がそれぞれの方向へと散る。追撃を維持しつつ、手の内がわかりきっている背後の2人の息の根を止めるためである。周囲を囲むように後方のゴブロリ達を誘い込む。そして遂に包囲が完成した。

 


ゴブ蒙、ゴブ遜はゴブロリの動きを見て確信が確定に変わる。あれはゴブ策とゴブ史慈であるということに。徐々に追い詰められていく2人のゴブロリ。その時それは起こった。

 


「ロリ来来っ!!」

 


その声に2人は思わず反応してしまう。そこには新たなゴブロリの姿があった。一瞬見せてしまった隙・・・それは致命的なものへと変わる。

 


囲んでいたゴブロリから漆黒の手が大量に展開される。気づいた時には遅かった。手は兵士達の羽と足を拘束している。

 


ゴブロリは好機と見て拾連段状態に変わっていた。囲まれていたゴブロリ。それはゴブロリゲンガーによる分身であったのだ。ゴブロリがゴブ策とゴブ史慈の動きを模倣していたに過ぎない。

 


新たに現れたゴブロリがゴブ策とゴブ史慈なのである。再び囲んでいるゴブロリに視線をやる。一瞬の間に兵士達の両足、両羽が捥ぎ取られていた。状況を確認していると新たなゴブロリが2人のすぐ後ろまで迫っている。振り返った時には遅かった。

 


一撃の元に首を刈り取られるゴブ蒙とゴブ遜。辺りに残されているのは足と羽を失い、這い蹲ることしかできないゴブリン達。

 


ゴブロリはそんなゴブリン達に火を放つ。闇のマナの使い手といえども他属性が使えないわけではない。火のマナはリュカウスと闘いながら嫌というほど見てきたゴブロリ。並大抵のレベルではない。

 


蒼き巨大な篝火が2つ、呉軍の後方に突然現れる。ゴブ策とゴブ史慈はその様子を眺めていた。

 


「これがロリ先か・・・ノータイムでやりやがった・・・敵には一切の慈悲すらない・・・表情もまったく変わってない・・・味方で良かったぜ・・・」

 


「かつての仲間達・・・安らかに眠れ。この星の平和は我らがきっと成し遂げてみせようぞ・・・」

 


ゴブロリの容赦なく命を奪う姿に2人は恐怖すら抱いていた。燃えゆくかつての仲間達に思いを馳せる。

 


「まだ戦は終わってないっ!!ぼさっとするなっ!!ついてこいっ!!」

 


ゴブロリの言葉により現実へと引き戻される。4人のゴブロリは呉軍の追撃を再開した。一方ゴブ権は怯えていた。突如として巨大な炎が2つ背後に現れたからだ。

 


「ゴブ粛っ!!あれはなんだ!?」

 


「・・・わかりません。もしかすると後方のゴブ蒙、ゴブ遜がやられてしまったのかもしれません・・・」

 


「ぐぅ・・・このままではまずいっ!!どうすればよいっ!?」

 


「ゴブ備軍と合流しましょう。もはや我らの方が寡兵。同盟の力を借りる他ありますまい」

 


「ならばゴブ備の元へ行くぞっ!!全軍っ!!敵に悟られるなっ!!追撃すると見せかけて合流するぞっ!!」

 


「「「「ロリ来来っ!!」」」」

 


ゴブ粛の助言通りに行動に移そうとした時、背後からゴブロリ4人衆が呉軍に襲いかかる。

 


「くっ・・・早い。ゴブ権様っ!!ここは私が持たせますっ!!早く合流してくださいっ!!」

 


「す、すまぬ・・・後は頼むぞっ!!ゴブ粛っ!!」

 


ゴブ権は10億の兵を率いてゴブ備の元へ急ぐ。ゴブ権は困惑していた。自身が追撃していたはずなのに追撃される立場に変わっているということに。しかしゴブ香への思いは断ち切ることはできなかった。

 


すべてを犠牲にしてでもゴブロリだけは討たなければならない。そのためには合流する必要がある。ゴブ権の心を弄ぶかのように追撃の手が緩んだ瞬間、反転した男がいた。

 


「ロリ来来っ!!」

 


後方からゴブロリが追撃をかける。ゴブ権もまた反転する。ゴブロリに対して突撃を仕掛ける。その刹那、自身の背後から悪寒を感じる。

 


「みぃー・・・つけた・・・弟よ。ちゃんと逃げないと駄目じゃないか・・・でもゴブ香はオレだけのものだぞ?

 


ロリ来来っ!!」

 


反転したゴブ権の背後にゴブロリファントムで転移してきたゴブロリの姿があった。

 


「おのれぃっ!!ゴブロリめっ!!くらえっ!!」

 


ゴブ権が剣を振る。しかしゴブロリの姿は闇へと変わり、別の方向からロリ来来という声がする。その度にゴブ権は進路を変更し突撃している。もはや合流することは頭から消えていた。目の前のゴブ香を奪ったゴブロリへの殺意しかゴブ権の頭には存在していなかったのだ。

 


ゴブロリに弄ばれながら四方八方に突撃を繰り返す呉軍。何度も繰り返す内に確実に体力が奪われていく。方向ランダムのシャトルランを呉軍の兵達は永遠に繰り返しているのだ。そして進路はゴブロリの手により着実にゴブ備軍の元へと誘導されている。

 


「「「「ロリ来来っ!!」」」」

 


一方、ゴブ粛はゴブロリ4人衆相手に奮戦していた。突然示し合わせたかのように一斉に空中へ飛翔する4人。ゴブ粛の視線は空へと固定されてしまう。そこへ潜んでいたゴブ瑜の剣が突き刺さる。

 


「粛よ・・・視野は広く持ちなさい。これが最後の教えですね」

 


「参りました・・・さすが提督殿・・・」

 


一閃・・・ゴブ瑜の剣が振り抜かれた。ゴブ粛の体は真っ二つに斬り裂かれる。その様子を見て、呉軍の兵士達は武器を捨て投降の構えをしていた。そこへ再び漆黒の手が襲いかかる。武器も持たない兵士達の体は次々に絞め千切られてゆく。

 


「ゴブロリ殿っ!?何をっ!?」

 


「ゴブ瑜よ。禍根は残すな・・・奴らはゴブ策を捨てゴブ権についた裏切り者だ。裏切るやつは何度でも裏切る・・・そのような者を生かしておく必要はない。その甘さが後に己に突き刺さると思えっ!!」

 


「・・・理には叶っているが何故そこまで非情になれるっ!?同族の命を何故簡単に消し去ることができるのですっ!?」

 


「・・・ゴブ瑜よ。何故ゴブ羽軍がある?何故今同族で争っている?何故同族で命の奪い合いをしている?

 


すべては星の平和のため・・・目的のためには甘さは捨てよっ!!敵はすべて殺してでも平和を作り上げる・・・たとえそれが同族の命であろうと揺るがない・・・それがゴブ羽とともに旗揚げした我らの誓いであるっ!!」

 


「「「・・・」」」

 


ゴブ策、ゴブ瑜、ゴブ史慈はその言葉を黙って聞いていた。それぞれが覚悟が足りていなかったと自覚する。

 


「ゴブ瑜っ!!次になすべきことはっ!?」

 


「ゴブ権共々裏切り者達の首級をとるっ!!全軍追撃を開始せよっ!!」

 


ゴブ瑜の号令の下、ゴブ策軍は追撃を開始する。3人はスパーキング状態になっていた。その時ゴブロリの姿は消え去っていた。ゴブロリゲンガーを解除したのだ。

 


誘導されていた呉軍は恐慌状態となっているゴブ備軍の姿を捉える。ようやく見えた同盟軍。その背後から再び魔の声が聞こえてくる。

 


「ロリ来来っ!!」

 


視線がそちらを向くと再び背後から声がした。

 


「ロリ来来っ!!」

 


振り返ると、ゴブ権の視界には見渡す限りのゴブロリの姿。ゴブ備軍の姿はすっかり消え去っていた。

 


「信来来っ!!」

 


ゴブ権の背後から声が上がる。ゴブロリは拾乗状態にあった。ゴブ備軍の姿をゴブロリの姿へ。そして呉軍の姿をゴブ信へと変化させたのだ。

 


突然現れた大量のゴブ信を見てゴブ備軍は死を覚悟した。決死の覚悟で呉軍へと突撃してくる。ゴブ権達には大量のゴブロリが迫ってくるように見えている。両軍混乱状態。生き残るには目の前の敵を打ち倒すしかない。己の生存をかけ、全兵士がスパーキング状態に変化する。

 


大量のゴブロリと大量のゴブ信が互いに激突した。ゴブロリ軍団対ゴブ信軍団の殺し合いが始まっている。