闇と光 第154話 赤壁の闘い

ゴブ良の元へゴブ羽が援軍として合流した。僅か1週間足らずの合流に驚いている暇すら今のゴブ良には残っていない。淡々と状況を話す。ひと月維持するビジョンが浮かばなかったゴブ良にとって天から降ってきたような助け舟であった。

 


「ならば救援に向かうっ!!良いな?ゴブ良っ!?」

 


「兄上っ!!待ってくださいっ!!おそらく兄上でも辛い闘いになるかと思われます・・・それに総大将自ら救援など・・・」

 


「蜀との闘いはその総大将自ら単騎で籠城して単騎で追撃したんだぜ?今更だよなぁ・・・そんなもん」

 


「・・・先生っ!?総大将になんてことさせてんだよっ!?敗北条件を前線に突っ込ませるとか逝かれてる・・・あぁ・・・兄上がこうなったらもう言うことは聞きませんね。ゴブ超殿っ!!ゴブ吉殿、ゴブ子殿、ゴブリー殿とともに救援をお願いしたいっ!!ゴブ蔵殿は周囲の警戒をお願いしますっ!!ゴブ美殿は待機をっ!!あなたに何かあっては先生に顔向けできません・・・」

 


「私も行くわっ!!守られるだけの女なんて勘弁よ。私はゴブロリの隣に並んで立ちたいのよっ!!」

 


「ねぇあなた?先生を行かせてあげて」

 


「あとで私達があなたをいかせてあげるから・・・ね?」

 


「わかった!!でも無理はしないでくださいゴブ美様っ!!」

 


ゴブ英、ゴブ姫の誘惑の前にあっけなく手の平を返すゴブ良。彼女達はメロメロの旦那をうまく誘導する方法をゴブ美から手解きを受けていた。チョロい師の弟子もまたチョロかった・・・。

 


黑州兵伏兵部隊への救援部隊は出陣した。果たしてゴブ羽は味方を助け出すことができるのだろうか・・・。

 


「ゴブ瑜っ!!向こうに着いたらすぐに祈祷台を建設せよっ!!2時間でやれっ!!」

 


「御意っ!!しかし何をなさるのですか?」

 


赤壁は天然の要害となる内海・・・風はつねに我が軍に向かって吹いてくる。だからオレが祈祷して逆風を起こすという奇行に走る。それを敵軍に広めさせる。そこからはゴブ策にも協力してもらいたい」

 


「おぅよっ!!任せろロリ先っ!!」

 


「ゴブ信っ!!そわそわするなっ!!お前はいつも通りでよいっ!!しかしお前が1番重要なポジションだ。主役だぞ?心せよっ!!」

 


「えっ!?ホントにっ!?任せろっ!!燃えてきたぜぇぇぇぇっ!!」

 


「燃えるのはいいけど急ぎながらやれっ!!ゴブ羽を援軍に向かわせたのはいいが・・・出過ぎなければよいのだがな・・・展開次第ではゴブ羽の首が危険だ」

 


ゴブロリの一言により空気が張り詰める。ゴブロリは懸念があった。ゴブ羽の脳筋度合についてだ。いかにゴブ羽といえども魏軍の猛将を複数相手にするのは無理である。それがゴブロリのひいき目なしの評価であった。そして赤壁ではゴブロリの懸念が現実のものになっていた。

 


「ゴブ羽っ!!覚悟せよっ!!このゴブ遼がその首貰い受けるっ!!」

 


「総大将自ら出てくるとは片腹痛し・・・その愚行が己の首を絞めていることをこのゴブ順が教えてやろうっ!!」

 


救援にかけつけたゴブ羽はゴブ布に匹敵する武勇ゴブ遼。そして攻め入った陣は必ず陥とす鬼のゴブ順。2人の猛将に押されていた。

 


「くっ・・・強ぇな・・・ちっ!またきやがったか・・・」

 


増援に駆けつける5大将・・・ゴブ淵(えん)、ゴブ仁(じん)、ゴブ徳(とく)、ゴブ供(こう)、ゴブ進(しん)。徹底的にゴブ羽を狙いにきている魏軍。敵軍の総大将が目の前にいる。それは当たり前のことであった。ゴブ羽が攻撃を捌ききれずに体に傷を受けていく。

 


「やらせないわよっ!!ゴブ羽を守ってっ!!」

 


ゴブ羽への攻撃をカットするゴブ美。ゴブ吉、ゴブ子、ゴブリーも増援に駆けつけている。4人とも多界命唱を重ね全力である。総大将の危機に温存している場合ではない。しかし魏軍の将を1人たりとも打ち倒すことができない。

 


「ちょろちょろと目障りなっ!!お前から散れっ!!そこの女ぁぁぁぁっ!!」

 


ゴブ遼の鋭い斬撃がゴブ美に襲いかかる。ゴブ美はその時死を覚悟した。

 


ガキンッ!!

 


ゴブ遼の攻撃を受け止める者がいた。ゴブ超である。黑州兵の撤退を完了させたゴブ超が戻ってきたのだ。

 


「ゴブ美殿・・・ゴブロリ殿へお伝えください。あなたの語ってくれた夢のような世界・・・必ずや成し遂げてくだされと。・・・どうやら共に見ることは叶わないようだ。

 


我が名はゴブ超っ!!これより一世一代の晴れ舞台っ!!我が最後の勇姿とくとその身に刻めっ!!魏軍よっ!!」

 


ゴブ超がスパーキング状態に変わる。さらに生命力をマナに変換させたようだ。爆発的にゴブ超のマナが高まる。ゴブ遼が吹き飛ばされていく。ゴブ超の隣へ並ぶ3つの影。

 


「あるじのことは頼んだよっ!!美貴ちゃんっ!!」

 


「ここは任せてくださいっ!!ゴブ羽を必ず連れて帰ってねっ!!美貴ちゃんっ!!」

 


「血をよこせぇっっっ!!まだまだ足りないんですのよぉぉぉぉぉっ!!」

 


1匹ほど血に飢えた獣が混じっている・・・すべてはゴブ羽を逃すため・・・あるじの第2エリア攻略のために命を懸ける獣魔達。ちなみにこいつらはマイルームに戻されるだけである。死ぬことはないのだがノリノリでやっているのであった。

 


配下の鳥ゴブ達とともに殿となるゴブ超達。しかしゴブ羽は退却しようとはしなかった。

 


「ゴブ羽っ!!退却するのよっ!!」

 


「ゴブ美姐さん・・・王たるもの民が逃げ切るまでは闘わなければならない。漢には引けない闘いがある・・・だからオレは闘わないといけないっ!!」

 


「ゴブロリから聞いていないのっ!?王たるものは仲間の思いを受け止めないといけないのよっ!!突っ走るだけじゃ誰もついてこないのよっ!!今は引く時よっ!!彼らの思いを無駄にする気なのっ!?あなたを失っては星下をとれない・・・この星の王はあなたしかいないのよっ!!」

 


「・・・申し訳ないっ!!オレは生きるっ!!必ずや魏軍を討ち倒し星下を獲ってみせるっ!!」

 


ゴブ美の言葉を受け、ゴブ羽は退却を決意する。

 


「そうですかとやらせるわけはあるまいっ!!」

 


すぐそこまでゴブ順の攻撃が迫っていた。ゴブ美が体を盾に攻撃を受け止めようとする。弾き飛ばされるゴブ順。

 


「誰が通ってよいと言ったっ!?このゴブ超がいる限り・・・我らが王に触れられると思うなよっ!!下郎がっ!!」

 


配下の鳥ゴブ達が次々に倒されながらも猛攻を耐えしのぐ獣魔達。しかしその数はどんどん減っていく。ゴブ羽に肩を貸しながら朱愛に跨りともに退却するゴブ美。3キロほど後退することには成功した。

 


ゴブ吉、ゴブ子、ゴブリー討死。しかし3匹とも意地でゴブ仁、ゴブ供、ゴブ進と相討ちにまで持っていく。

 


ゴブ超は立ち尽くしていた。その胸にはゴブ遼、ゴブ順の武器が突き刺さっている。ゴブ超の槍もまたゴブ徳の胸に突き刺さっていた。

 


「敵ながら天晴・・・しかしゴブ羽の首は貰い受けるぞっ!!ゴブ順っ!!」

 


「ああっ!!この好機逃してなるものかっ!!全軍ゴブ羽への追撃を開始するっ!!全速力で突っ込めっ!!」

 


ゴブ超は死にながら立っていた。弁慶の如きその死に様。決して語られることはない。しかし彼の思いはゴブ羽にしかと引き継がれていく。

 


ゴブ超赤壁の地に死す。