闇と光 第157話 散りゆくゴブ卓

ゴブ瑜の指揮のもと空からゴブ羽軍が魏の殿へと襲いかかる。地上からは猛将ゴブ信が進撃。残る魏軍の5大将が命懸けでそれを食い止める。ゴブ史慈も加わり、見事に5大将を撃破。

 


ゴブ卓軍は3将軍が燃え盛る炎を斬り裂き退路を確保。そこへ回り込んでいた黑州兵が襲いかかる。3将軍がそれぞれ奮戦。そこへゴブ史慈、ゴブ信の追撃が迫る。

 


ゴブ卓はゴブ布とともに退却。ゴブ遼、ゴブ順はゴブ史慈、ゴブ信とそれぞれ激闘を繰り広げている。どんどん逃げてゆくゴブ卓。そこへ待ったをかけるものがいた。

 


ゴブ操である。虎視眈々と内部からゴブ卓の首を狙っていた男がついに動き出す。ゴブロリの火計成功を読み、ゴブ操は旧海軍を後方へ避難させていた。今が好機と見たゴブ操はゴブ卓より離反。

 


「おのれゴブ操っ!!謀りおったなっ!!貴様ごときにやられてなるものかっ!!」

 


「ゴハハハッ!!ゴブ卓よ。そなたは名将である・・・将としてだけならば優れている。しかし王としての才は備わってはおらぬっ!!貴様の命もこれまでぞっ!!」

 


「父上っ!!ここはお任せくださいっ!!ゴブ操っ!!このゴブ布がいる限り父上には指1本足りとも触れさせぬぞっ!!」

 


「行けぃっ!!ゴブ褚っ!!ゴブ典(てん)、ゴブ艾(がい)とともにゴブ布を葬り去れっ!!」

 


数多の兵に取り囲まれるゴブ布。なんとかそれを持ち堪えている。逃げるゴブ卓。それを追うゴブ操。一方その頃3騎の馬が疾走していた。ゴブ羽、ゴブ良そしてゴブロリである。

 


彼らはゴブ卓が撤退するであろう軍事拠点を先に占領してしまうつもりだった。3人とも大量のマナを使い疲弊している。しかし名だたる将兵赤壁に出払っているため、守備兵くらいならば容易に突破できるであろう。

 


この追撃戦を経て、ゴブ卓率いる魏軍は滅亡することとなる。

 


殿を務めた5大将の討死

 


ゴブ信の手によりゴブ順討死

 


しかし被害を受けたの魏軍だけではなかった。ゴブ遼にゴブ史慈が討ち取られてしまったのである。ゴブ遼はそのままゴブ操軍に合流し離反。それによりゴブ布はなす術なく捕縛されることになる。

 


そしてゴブ卓・・・ゴブ操の巧みな指揮により追い詰められる。さすがの名将ゴブ卓。用兵術が優れていた・・・しかしゴブ操はさらにその上をゆく。散りゆくゴブ卓。彼の亡骸は首都へと移送され、城門から吊るされた。民達からは石を投げつけられ、その体は穴だらけであったという・・・。そしてゴブロリ達は魏軍の巨大駐屯地を奪取。軍事施設を得たことにより妖軍の勢力が拡大する。

 


しかし拠点を奪取して1日後・・・事態が急変する。ゴブ蔵より一報が届く。

 


ゴブ操。新たなる魏を建国。さらにゴブ羽軍の抑えた拠点を奪取するため進軍中。その数30億。赤壁の生き残りすべてが向かってきている。

 


魏軍に対しこちらはたった4人。争えば敗戦濃厚。ゴブ羽軍の緊急会議が行われる。いつもは強気なゴブロリであるが、命唱を使い切ってしまった以上無茶はできない。さらに赤壁でゴブ羽はあわやのところまで追い込まれている。

 


「ゴブ良・・・これは仕方ないよな?」

 


「えぇ・・・そうですね。やはりここはこれでいくしかありませんかね・・・」

 


「よし・・・じゃあ言い訳しよう。占領の意思はない。先に到着して待っていただけだと言い切ろう」

 


「苦しい言い訳ですが・・・逃げても追撃されるだけですからね」

 


「じゃあそうしよう。ここ鴻門城をゴブ操に返すために先に占領して待っていた。

 


いいな?ゴブ羽・・・何が何でも言い訳し通せっ!」

 


「まぁやるだけやってみるけど・・・ダメだったらどうすんのっ!?」

 


「「気合で逃げるっ!!」」

 


ゴブロリ、ゴブ良の出した策・・・それはもはや策ではない。挙げ句の果て、失敗した時は根性で逃げる。適当なゴブ羽軍の味がここにきて存分に出てしまっていた。

 


ゴブ操率いる魏軍が鴻門城へと到着する。城門はすべて開かれていた。そして1人のゴブリンが門の前に立っている。

 


「お待ちしておりましたゴブ操殿。重要拠点を取り返そうと先に占領していた次第・・・貴殿にお返し致します。お受け取りくだされっ!!」

 


「ほぅ・・・有り難く頂戴しよう。ならば宴を開こうっ!!勝利の宴じゃっ!!ゴブ羽殿もご参加いただけるかな?是非とも新生魏軍の星下を祝ってもらいたいものだ」

 


「共に城を落とした配下2名も一緒にお招き頂いてもよろしいですかな?」

 


「構わぬよ・・・とびきりの旨いものを用意してやろう。貴殿らの労をねぎらわねばならぬからな」

 


物陰から3人はその様子を見ていた。ゴブ羽は今丸腰なのである。戦闘になった際にはすぐ様助けなければならない。そしてうまくやっているかどうか気が気でならなかったのだ。

 


「先生・・・」

 


「あぁ・・・確実に罠だな」

 


「しかし兄上・・・ファインプレイです。我々も参加することができる」

 


「まだ打開の余地はあるはずだ・・・なんとかするしかあるまいな」

 


鴻門城にて宴が開かれようとしていた。それはまるでかつて行われた鴻門の会のようである。しかし状況がまったく違う。項羽劉邦暗殺を踏み出せずにいた。一方ゴブ操は自ら暗殺に乗り出そうとしている。

 


魏軍は軍議にて既にゴブ羽の抹殺を決定している。魏軍の星下を阻むものは妖軍・・・もはやゴブ羽軍しか残されていない。

 


3人以外はすべて敵である。彼らはこの危機を無事に乗り越えることができるのであろうか。

 


ゴブ羽軍の現在の兵力は約10億。仲間が到着するまでにはまだ時間がかかる。ゴブロリとゴブ良は話し合ったが結局何も思い浮かばない。結論としては得意の即興でなんとかするということになった。魏軍が鴻門城に到着する前となんら変わりない。使えない頭脳達である。

 


逆にゴブ羽は堂々としている。さすが元脳筋と言ったところだろう。何も考えずにきたのでこっちの方がやはり気楽なようだ。そうこうするうちに宴の準備が終わってしまう。

 


ゴブ羽ら3人は案内され会場へと向かって行く。会場には各将兵さらには猛将ゴブ遼、ゴブ褚の姿もある。また10賢人も同席していた。彼らはかつて曹操の抱えた名軍師達の名を継承しているようであった。

 


当然のことながらゴブ操が上座。ゴブ羽らは対面の末席に座らされている。

 


「先生っ!!これ美味いなっ!!」

 


「ほんとうめぇなっ!!レシピ教えてくれないかな?嫁にも作ってもらいたいっ!!

 


あぁぁぁっ!!ゴブ羽っ!!それオレのっ!!」

 


「教えてもらったじゃんかよ。戦は先制攻撃が重要なんだぜ先生?ここは食事という名の戦場だ」

 


「ゴブ羽には負けていられんっ!!どっちがいっぱい食べれるか勝負だゴブ羽っ!!」

 


「ゴハハハッ!!我が師よ・・・王に勝てるとでも思ってるのかっ!?」

 


「ゴハハハッ!!よいぞっ!!存分にやれっ!!馳走ならいくらでもあるっ!!満足するまで食べるがよい・・・」

 


「はぁ・・・何やってんですか・・・兄上に先生。こんなことしている場合じゃないというのに・・・」

 


悪意渦巻く宴にてゴブ羽とゴブロリの大食い合戦が始まった。そんな2人を見てゴブ良は1人頭を抱える。魏軍は見世物であるかのように2人を見物し、笑みを浮かべながら騒いでいる。軽い笑みを浮かべるゴブ操。これは冥土の土産。ゴブ羽に最後の晩餐を振る舞うつもりであった。

 


ゴブ操率いる元海軍だけではゴブ卓打倒はなし得なかった。ゴブ羽軍がいたからこそ成功したのだ。だからこそそんなゴブ羽達を最大限ねぎらいそして・・・息の根を止める。すべてはゴブ操の思惑通りにことが進んでいた。