闇と光 第163話 許昌城の闘い

「ゴブ操様っ!!妖軍全軍が許昌城に向かって進軍中に御座います」

 


「ここで迎え撃つしかあるまい・・・ゴブ遼っ!!我が軍の命運はお主に託したっ!!」

 


「御意っ!!必ずやゴブ羽軍を打ち崩して見せましょうぞっ!!」

 


許昌城での魏軍の籠城戦が始まる。

 


東門からはゴブ信軍

 


南門からはゴブ策軍

 


西門からはゴブロリ軍

 


北門からゴブ羽軍

 


それぞれが門を打ち破ろうと襲いかかってくる。しかしさすがの魏軍。徹底的な守備で突破を許さない。さらに神出鬼没のゴブ遼。あらゆる場所へ猛将ゴブ遼が現れる。

 


門からではなく城壁から飛来するゴブ遼。最強の武が妖軍の前に立ちはだかる。そして頃合を見て迷わず退却。かつてゴブロリ達が用いたように遼来来という言葉で兵達は翻弄される。ゴブ遼により妖軍には多大な被害が出ていた。

 


魏軍の兵力は5億。妖軍の兵力は1億。徐々に攻勢が弱まっていく。ある時を境に妖軍は攻めてこなくなった。四方でひたすら陣を敷いて睨みをきかせている。

 


まったく動きのない妖軍。夜には四方からの地鳴りが共鳴し、許昌城へ地震のような揺れが襲う。魏軍にとってこれは恐怖でしかなかった。数の上では優勢。しかし打って出れば妖軍の猛将達によりすぐさま討ち取られてしまう。ゴブ遼の奇襲を仕掛けようにも距離が離れすぎている。

 


妖軍は持久戦に持ち込もうとしていた。いかに許昌城といえども兵糧は有限。兵糧が尽きるまでじっくり待てばよい。対して妖軍は優れた農業技術、そして移動式農園ハイロリ園による輸送で外からいくらでも兵糧を引っ張ってくることができる。持久戦での優位がどちらにあるかは明らかであった。

 


「なかなか老練な策を用いてくる・・・攻め続けられた方がまだ楽であったな。ゴブ良、ゴブ瑜・・・そしてゴブロリ・・・3人の頭脳にひとりでどこまで対抗できるか・・・先に動きたくはないが・・・背に腹は変えれない。こちらから動くとするか・・・」

 


膠着状態の続く中、ゴブ操がついに動く。深夜地鳴りが鳴り響く頃、工作兵が密かに許昌城を出立する。工作兵はゴブ羽軍の水の貯蔵庫へ毒を流し込んでいた。勝つためなら手段は選ばない。

 


工作兵が毒の混入に成功したとの報せを受け、ゴブ操は安堵する。夜が明ければ形勢は一気に魏軍へと傾くはずである。しかしゴブ操はこの時気付いていなかった。ゴブロリが戦の当初から既に動いているということに・・・妖軍が持久戦を選択したのにはもうひとつ理由があったのだ。

 


ゴブロリは神出鬼没のゴブ遼を見た瞬間にすぐに行動を起こす。それは許昌城攻略戦が始まった初日であった。ゴブロリは許昌城の水源となる川の上流からずっと毒を混入し続けてきている。遅効性蓄積型のマナ毒である。無味無臭・・・マナの量も感じ取れないほど微量の濃度で確実に敵の体に毒を溜め込ませていた。

 


許昌城攻略戦開始から1ヶ月。奇しくもゴブ操が毒を混入させた翌日であった。ついに毒が牙を剥く。朝目覚めるとゴブ操の体の動きが悪くなる。急死する兵士達が次々に現れた。マナ量の弱いものから順に死んでいく。

 


この1ヶ月間、川の下流さらには海沿い・・・その近くの村々では謎の変死が相次いでいる。ゴブロリの流した毒の影響だ。壊滅した村の数は計り知れない。死者の数も数え切れないものであった。

 


ゴブロリはすべての命は平等であると思っている・・・平等であるが故にゴブロリは命を消耗品であるかのように扱う。人を殺せば人は騒ぎ立てる。しかし虫を殺しても人は騒がない。ゴブロリにとって虫けらと人の命の価値は変わらない。故に興味のないものなら無感情のまま命を奪うことができるのだ。

 


目的のためならば容易く命を奪える漢ゴブロリ。命があるものはいつか朽ち果てる。それが早いか遅いか・・・殺されるも自然に死ぬのも・・・その程度の違いでしかない。弱肉強食の世界・・・自然の摂理の中ではそれは当然のことであった。

 


両軍の兵達もまた次々と毒死する。なんでもありの命の奪い合い。これが争うということ・・・即ち戦争である。ルールありの戦争など遊びでしかない。強いものが勝つ。弱奪強奪。弱きものは強きものによってすべて奪われる。

 


両軍による毒殺。魏軍は残り1億。妖軍は残り2000万まで兵力を減らすこととなる。両軍の陣営には数多くの死体が転がっている。しかし闘いは終わらない。この星の星下をかけどちらかが絶滅するまで続く。

 


ここにきて妖軍に変化が起こる。夜に起こっていた地鳴りが昼も続くようになった。さらに大量の兵達が四方に広がっている。これはゴブ羽によって放たれたゴブ馬俑によるものであった。

 


四方は夥しい数の敵兵に囲まれている。ゴブ操は妖軍の増援がきたものと誤認した。ゴブロリチェンジャーを使いマナもそれぞれ変化させていたのだから無理もない。

 


「もはやこれまでか・・・我が天命の終わりが近い。されどこそ我らの闘いは語り継がれる・・・命は尽きようともその灯火は永遠に残るのだ・・・星下最強の海軍の底力・・・思い知るがよい・・・王としてこの星に君臨するというならば我らの死を越えてゆけ・・・ゴブ羽よ。

 


全軍っ!!これより魏軍最期の戦を始めるっ!!誰が倒れようとも歩みを止めるなっ!!妖軍に一矢報いよっ!!我らの闘いは無駄ではないっ!!星の人々が忘れようとも・・・星は決して忘れないっ!!我らの戦乱の世を生きた証・・・星という大地へと刻みこめっ!!我らが軌跡は未来永劫この星へと残るであろうっ!!

 


出陣じゃっ!!」

 


ゴブ操はこの戦の負けを悟っていた。されども自害などしない。最後の1人となるまで闘い抜く。それが星下最強と謳われた海軍の意地なのである。魏軍の体は激しくばちばちしていた。一層強いスパーキング状態となる。

 


深夜・・・静かに北門が開門される。猛る炎を抑え、静かに息を潜め、夜になるのを待っていた。夜戦最強の妖軍に対して真っ向からぶつかるためである。

 


ゴブ遼を先頭に魏軍の兵1億が疾走する。陣形は鋒矢型魚鱗の陣。背後や横からの攻撃はまったく気にしない。いわば守備力皆無、攻撃力倍増の突撃陣形。ただ前方の敵を攻めることだけに特化している。狙うはゴブ羽ただ1人。

 


異変を察知する妖軍。既に目と鼻の先まで魏軍は迫ってきていた。しかし夜戦状態である妖軍。彼らもまた激しいスパーキングが体を迸っている。視認と同時に激突する両軍。

 


ゴブ信・ゴブロリ・ゴブ策軍もゴブ羽の元へと殺到する。ゴブ遼の勢いが止まらない。ゴブ羽へと襲いかかるゴブ遼。そこへ真空波が飛来する。

 


「夜に仕掛けてくるたぁ命知らずなやつらだなっ!!いきなり王手をかけさせるわけはないだろうっ!!我が名はゴブ良っ!!夜戦の覇王っ!!いざ参るっ!!」

 


「王の首・・・とれるもんならとってみろっ!!このゴブ羽は逃げも隠れもしないっ!!ゴブ遼・・・今日が貴様の命日だっ!!」

 


ゴブ羽・ゴブ良とゴブ遼の戦闘が始まる。スパーキング状態となった2人を相手にゴブ遼は押していた。ゴブ布を超えた最強の武が猛威を奮う。さらに兵達から抜け出しゴブ羽を目掛けて魏軍が殺到してくる。そんな彼らを激しき蒼炎が襲う。

 


「羽ーくんとこには行かせねぇぞ?通りたくばこのオレを倒してからいけっ!!」

 


「策だけではなくこの私も倒してからにしてもらいましょうかっ!!」

 


いち早く空から救援に駆けつけるゴブ策・ゴブ瑜。突貫する魏軍に対し、立ちはだかる2人。それでも魏軍の勢いは未だ止まらない。突然黑い水のマナの閃光が戦場を切り裂く。

 


「我こそは億夫不当の豪傑ゴブ信っ!!命が要らぬならかかってこいっ!!」

 


ゴブ信の登場である。ゴブ信が加わったことにより魏軍の突撃の勢いは完全に止められてしまった。その頃ゴブロリは大将首を狙いにいっていた。付き従うはゴブガードそして愛天地人の隊長達。

 


「ゴブ操よ。貴様の覇道も今日で終わりだ。逃しはせぬぞ?」

 


「ゴハハハッ!元より逃げるつもりなどない。今宵の戦場に立つものには生きるか死ぬかの2つしか存在しない。では参るぞ?

 


我が名はゴブ操っ!!妖精の星の皇帝であるっ!!」

 


10対1の闘い。しかしゴブ操ひとりの手によってゴブロリ達は劣勢に追いやられている。命唱を使えないことがゴブロリの首をじわじわと絞めつけていた。