闇と光 第165話 立ち上がる叛逆者

妖精の星妖王国。新生王国軍による政治方針が示される。鎖星は解除しなかったものの、ハイロリの教えを継承した素晴らしき方針であった。元より民達に人気のあったゴブ羽軍。あっという間に民達に慕われる王となる。重役の任命式も行われた。そこにゴブロリの名前はない。

 


「ねぇ?慶太・・・これからどうするの?」

 


「行かなければならないとこがある。オレは約束を守れなかった。それを謝らなければならない。そして美貴にはまだ紹介していなかったな・・・今から会いに行こう」

 


ハイロリは美貴を抱き締め、闇に包まれ転移していく。

 


「すまんっ!!オレの力不足だっ!!約束を達成することができなかった・・・お前の好きなようにしてくれ・・・」

 


ハイロリは土下座をして謝っている。美貴はその様子を呆然と見ていた。

 


「いきなりどうしたハイロリ。ゴブ羽の公布は我らも聞いた・・・いつまでも謝るな。済んだことを悔いても何も変わらない。何があったか話してみろ」

 


ハイロリが会いに来たのは隠居生活をしているゴブ布。ゴブ布は真紅の薔薇500人をすべて妻として娶った。ゴブ布の表情は優しいものへと変わっている。

 


ハイロリはゴブ布にありのままを話す。そして原因は己の力不足。そして友との約束を果たせなかったことを謝り続けている。

 


「ハイロリよ。お前は1度ダメだったら諦めるのか?遥か昔より守られてきた鉄の掟。そう簡単に壊せるわけなかろう。我が闘っていたゴブロリというやつはそんなヤワなやつではなかったであろう?」

 


「・・・今のオレ達は命唱が使えない。オレ達は弱い・・・弱者は強者に対抗する術はないんだ・・・たとえ美貴と2人でまた行ったとしても今度は本当に投獄されてしまうだろう。助けてくれたゴブ蝉の気持ちを無駄にすることはできない」

 


「・・・2人でならであろう?」

 


「ゴブ布様っ!!こちらをっ!!」

 


ゴブ厳がゴブ布に大剣を差し出す。

 


「我ら真紅の薔薇部隊はゴブ羽軍に対し反乱を起こす・・・公布を聞いた時からそのつもりであった。きっとくるだろうとハイロリ・・・お前を待っていた。

 


我には武がある。しかし知がない。このまま反乱してもゴブ羽の心を変えるのは難しいだろう・・・それこそ犬死するだけかもしれない。

 


だがそれでも我らは行くぞ・・・我が夢の成就のために。我が友よ・・・お前はどうするのだ?我らは寡兵。類い稀なる頭脳を欲している」

 


微笑みながら手を差し出すゴブ布。

 


「っふ・・・そんな熱烈なアプローチを受けちまったらお前に惚れてしまいそうだなゴブ布・・・ここに星中を掻き回した頭脳なら落ちてるぞ?

 


開星のためオレは友とともに命をかけることを誓う。

 


さぁ一緒に星の未来を変えようぜっ!!相棒っ!!」

 


ハイロリもまた微笑みながらその手を掴む。再びハイロリとゴブ布が手を組む。僅か503騎の反乱。敵はかつての仲間達・・・歴戦の強者が揃っている。

 


「ハイロリよ。何か策はあるか?」

 


「・・・堂々と宣戦布告しよう。それもできるだけ目立つようにだ。まずは喧嘩の舞台にゴブ羽にも上がってもらわないといけない。

 


仮にも皇帝軍・・・民達の前での宣戦布告ならば受けざるを得ないはず・・・ましてこのオレとゴブ布によるものだ。注目度は高くなるだろう。ゴブ良、ゴブ瑜の策による宣戦布告の隠蔽もそれで防ぐ。

 


普通にすれば暗殺部隊が編成され、襲いかかってくるはずだ。ゴブ羽は皇帝に即位したばかり・・・いきなり反乱されてしまっては民達に不安が募ってしまうからな。だからこそ民達を証人とするために真正面から喧嘩を売る。

 


それにこそこそやったって心を変えれる気がしない・・・なんだかんだゴブ羽は脳筋属性。言葉じゃない・・・拳を通して伝えるしかあるまい。はっきり言って勝算はないが・・・勝つための戦ではない。開星させるための戦だ。

 


少しでも可能性を上げるためオレも練兵に加わる。できるだけ力を上げておきたい・・・あっという間にやられてしまっては伝える時間すらないからな。

 


そして美貴・・・作って欲しいものがある。それができるまでは訓練と作戦会議だな・・・早ければ早いほどいいが焦ってはいけない」

 


朝は食料調達。昼は練兵。夕方は軍議。夜は地鳴り。そんな生活を1ヶ月ほど続けた。はっきりいってゴブ布にオレは負けていた。地鳴りの強さが遥かにゴブ布の方大きかった・・・ふと冷静に考える。

 


500人もの妻と共鳴してゴブ布の強さはどのぐらいまで成長しているのだろうか?共鳴なしであの強さ・・・ゴブ布がいればもしかするかもしれない。反乱の成否はゴブ布にかかっていると言っても過言ではない。

 


ゴブ厳を筆頭に真紅の薔薇もかなり強くなった。ゴブガード達は助からなかったが、愛天地人の隊長らは生きている・・・さらに黑州兵の1軍は未だ健在である。そこで真紅の薔薇全員に転移技術を叩き込んだ。

 


ゴブ布に至ってはハイロリファントムすら使えるようになっている。こいつはやはり天才だ。実際に触れ合ってわかったことだが、間違いなく才能はゴブ羽以上だ。

 


真紅の薔薇部隊は深紅の薔薇部隊となった。体に少し黒っぽい色が加わったのだ。そんなオレの漆黒の闘気も少し茶色の色が混じるようになった・・・ゴブ布とオレの友情のおかげなのかもしれない。

 


「慶太っ!!できたわよっ!!」

 


美貴が走りながらこっちに向かってきている。ついにできたようだな・・・そろそろいくとしよう。この闘いで普通に死ぬかもしれない・・・チャンスは1度きり・・・命唱を使うことすらできないオレは少しでもゴブ布の力を発揮できるようにサポートに回ろうと思う。

 


ハイロリ、ゴブ布の2人は今海上にいる。美貴が作ったものは船である。黄海を進み、首都の港に巨大な船で乗り付け宣戦布告するのだ。2人できたのはわざわざこちらの戦力を確認させる必要がないからである。

 


首都までゴブ布と2人でくるのは少し感慨深いものがあるなぁ・・・この星にきてはじめてゴブ布を見たのはアイシステムでの城の中。随分と仲良くなってしまったな。

 


「これで港までいくのか?2人きりの旅というのもなかなかよいものだなハイロリ」

 


「妻達のいない漢2人旅もできるし面白いだろ?

 


それじゃあ今日の夕飯当番をかけた勝負をしようぜゴブ布っ!!ドラコン対決でどうだっ!?」

 


「ゴハハハッ!だから我慢してろといったのか・・・もう我が膀胱はパンパンであるぞ」

 


「より遠くまで飛んだ方が勝ちだからな?いくっぜ!」

 


ハイロリとゴブ布のしている勝負。それは小便ドラコン対決である。2人は刀を解き放ち、優しく手を添え角度を調整する。もの凄い勢いで放出される黄金の雫。

 


「かぁ・・・また負けちまったか。連戦連敗じゃねぇかよ・・・んじゃ今日は鳥の丸焼きにでもしようかねぇ・・・」

 


ハイロリはゴブ布とのくだらない勝負に連敗し続けている。基本的にハイロリが料理当番となっていた。作る料理は丸焼きか生。これぞ漢の料理である。そんな料理をゴブ布は美味いと言って笑顔で食べる。

 


「ゴブ布っ!!急接近する船を確認したっ!!恐らく皇帝軍の巡視船・・・敵だっ!!」

 


「我に任せよっ!!唸れっ!!八星剣っ!!

 


ゴブ布が愛剣八星剣を振るう。その斬撃は海をも斬り裂き、海上の船は真っ二つとなる。船は海の藻屑と消えた。幾度と無くハイロリの命を奪ってきた大剣・・・威力も格段に上昇している。

 


「さっすがぁっ!頼りになるぜっ!!ゴブ布っ!!そろそろ首都が近いはずだっ!!かっ飛ばして港に行こうぜっ!!」

 


「ゴハハハッ!あの程度造作もないっ!!もっと褒めてもよいのだぞ?ハイロリよっ!!」

 


2人は進む。ハイロリが諦めかけた開星・・・かつての仇敵ゴブ布とともに再び立ち向かう。同じ志を持つ友2人が鉄の掟を打ち崩すため・・・妖精の星最後の闘いへ赴こうとしていた。