闇と光 第171話 開かれる開星への扉

っふ・・・思ったよりダメージが大きい。いってぇな・・・しかし痛いということは生きているということ・・・ゴブ羽よ・・・オレはまだ生きているっ!!

 


・・・!マナが語りかけてくる・・・手伝ってくれるというのか・・・我が友よ。託されたくせに無様な姿を見せてしまったようだな・・・ははっ・・・任せろってか・・・ならばマナの流れの趣くままに・・・行かせてもらいますかねっ!!

 


ゴブ羽の背後にハイロリが現れる。治療に集中していたゴブ羽は反応が遅れた。ハイロリの拳がゴブ羽の体に向かって放たれる。しかしさすがのゴブ羽。しっかりと防御態勢をとってきた。

 


ゴブ羽の防御していた腕が弾き飛ばされる。すぐ様ハイロリが追撃の拳を放つ。拳こそが最速の攻撃。師から教わったことである。再び放たれた拳がゴブ羽の体に突き刺さった。

 


この戦闘で初めて見せる苦悶の表情。ハイロリの攻撃は防御を突破していた。ゴブ羽の第6感が叫んでいる。これはまぐれではない・・・すべての攻撃は防御を突破してくると・・・。

 


マナが囁いてくれている・・・心地よい・・・お前の愛を感じるぞ・・・ゴブ布・・・体の動かし方が手に取るようにわかる・・・だけど同じじゃつまんないよなぁ・・・ハイロリ流にアレンジさせてもらうぞ・・・我が友よっ!!

 


「八星双剣赤鬼流とでも名付けようか・・・さぁゴブ羽・・・反撃の時間だ」

 


ハイロリが再び二刀流の構えになる。しかし動きはまるで別物。八星大剣が振るわれるその姿はゴブ布の動きとシンクロしている。それが2振り・・・器用にハイロリは使いこなしていた。展開されたハイロリハンドには双鞭刀。ハイロリファントムからの変則三刀流の攻撃がゴブ羽を襲う。

 


ゴブ羽は斧槍で丁寧に受けている。かつて虎牢関で対峙したゴブ布とゴブ羽。両者ともにあの頃よりも激しくそして洗練された動きになっていた。先ほどまで苦しめられていた全方位攻撃はハイロリがその手で斬り裂いている。

 


ハイロリとゴブ羽は1対1で闘っている。ハイロリゲンガーによる分身、ゴブ馬俑はともに使用していない。意識を分散させる余裕が両者にはないのである。それだけ実力は拮抗していた。しかしこうなると緊急回避性能を持ったハイロリの有利となる。戦況は徐々にハイロリに傾きつつあった。

 


「このままじゃ埒があかねぇっ!!全力の一撃をくらえっ!!ゴブリンクラッシャァァァァッ!!」

 


「・・・受けて立つ。八星双剣赤鬼流・・・

 


ゴブ布クラッシャァァァァッ!!」

 


ゴブ羽の一撃を受けハイロリも攻撃を放つ。ハイロリの体には漆黒の闘気に黄色の光が蠢いてる・・・大剣をクロスさせ突き出し、回転しながらゴブ羽に突撃する姿。某クラッシャーを彷彿とさせる動きである。

 


2人の技と技がぶつかり合う。妖精の星の大気が震える・・・空を2人のマナの残光がオーロラのように煌めいている。両者激突したまま押し合いが続いていた。いつのまにか立ち上がっていたゴブ良、ゴブ信、ゴブ策、ゴブ瑜がその様子を静かに見守っている。

 


「皇帝を舐めんじゃねぇぇぇぇっ!!」

 


ゴブ羽の咆哮とともにマナが膨れ上がった。押され出すハイロリ。その時、押し込んでいたゴブ羽の目には映っていた・・・ハイロリの後ろにゴブ布そしてゴブ厳達の姿が・・・。

 


「師匠に勝つなんて100年はぇんだよっ!!いくぜっ!!力を貸してくれ・・・お前らっ!!」

 


急激にマナが増幅するハイロリ。ハイロリの体からは茶色の閃光があふれ出ていた。均衡が崩れる。ゴブ羽の体にハイロリ達の一撃が叩き込まれる。ゴブ羽が星の大地に吹き飛ばされた。動かぬ皇帝・・・。

 


「開星しろよ・・・オレはこれから自分の星を制圧するつもりだ。多くの同族の命が失われることになるだろう・・・それでもオレは止まらない・・・妖精の星で闘ってきたように・・・オレの道を邪魔する者はすべて叩き潰す。

 


ゴブ羽よ・・・他星のゴブリン達を人族から救うというならば未来の人族の王が力を貸そう・・・そんなやつらはいらねぇ・・・人族だろうが他種族だろうが関係ない・・・オレの理想郷を作るためならば不必要なものはすべて排除してやるっ!!

 


妖精の星の民達よっ!!オレは人族であろうがなかろうがすべて平等に扱うっ!!我が友ゴブ布に向かってそれを誓うっ!!オレとオレの仲間以外の人族は別に信じなくていい・・・このオレのこれから作る星の人族達を信じろっ!!

 


オレ達人族とゴブリン族が共に手を取り合える未来を創るとここに宣言するっ!!」

 


その言葉を聞き、ゆっくりとゴブ羽が体を起こす。

 


「・・・オレの負けだ・・・もう体が動かねぇ・・・師匠超えはまた今度にお預けだな。

 


聞けぃっ!!この星の民達よっ!!皇帝が宣言するっ!!

 


妖精の星は鎖星を廃止し・・・開星を行うことするっ!!そして他星の同胞達を救うため侵略を開始することをここに宣言するっ!!」

 


その様子を見ていた民達が一斉に歓声を上げる。声は共鳴し、再びこの星の大気を揺らしていた。この後・・・ゴブ羽とハイロリ。2人の王が首都洛陽にて誓いを交わす。妖精の星とハイロリが作る未来の地球。2つの星の和平そして同盟締結の調印・・・共に手を取り合っていくことを誓った。

 


[ワールドニュース!!プレイヤーハイロリが第2エリアのエクストラボスエリア妖精の星を制圧完了!!

 


エクストラシナリオクリア妖精皇帝とプレイヤーハイロリが同盟を締結!!]

 


世界中の支部へとハイロリの第2エリア突破が報じられた。来訪者達の心はみんなシンクロすることになる。

 


「「「「「同盟?」」」」」

 


星そして同盟とわけのわからない情報に首をかしげる来訪者達。しかし日本支部だけは違った。この日、最前線組はこの報せを受け、盛大な宴を開くことになる。カポネ組が主導となっていたのはいうまでもない。待ちわびた漢がついに同じ場所にやってくる。

 


時は少し遡る・・・ハイロリがゴブ羽と押し合っていた頃、コロシアムは普段の数倍盛り上がっていた・・・。

 


「さぁ・・・ただいまよりソロ部門の決勝戦を行いますっ!!今回はチャンピオン不在となる波乱の展開・・・幾度と無く同じ組み合わせとなっていた決勝戦・・・それも終わりを告げました。彗星の如く現れた新星達がぶつかり合う・・・今宵新たなチャンピオンの名がこの星に刻まれる・・・それでは入場していただきましょうっ!!」

 


漆黒の門が開く。

 


闇の門から来たるは今話題の道場の元師範。鏖殺冥月流創始者。そして皆も知っているかの有名な来訪者ハイロリの妻。出場する度に実力はメキメキと上がっている刀使い・・・準決勝は前回チャンピオンを下しとうとうここまで駒を進めた。アヤネ選手の入場ですっ!!」

 


会場には大歓声が響き渡る。知っている者は知っている・・・親のいない幼きアヤネがヨシツネの世話をしながら、毎日懸命に剣を振り努力し続けていたことを・・・。観客席にはヨシツネそして門下生の姿もあった。そして純白の門が開く。

 


「光の門から来たるは英雄の忘れ形見。我らの愛しき英雄アステラが娘にしてこちらもハイロリの妻。アヤネ選手と同じく実力はメキメキと上昇している。その闘い方は両親の姿が重ねって見える・・・ビーストフェンサー。こちらも準決勝で前回ファイナリストを下し駒を進めた。アリス選手の入場ですっ!!」

 


再び大歓声が巻き起こる。今回のコロシアムはいつも以上に湧いていた。数千年の間、同じ名前が連なっていたソロ部門決勝に新たなニューヒロインの名があったからである。

 


さらに1人は遥か昔、命を救ってくれたあのアステラの娘。その雄姿を一目見ようと星中の実力者達が集まっていた。

 


「アヤネ・・・今回は手加減なしで相手してもらいますよっ!!」

 


「手を抜ける相手じゃないのはわかってるわよアリス。今回はちゃんとした得物・・・ゾクゾクするねっ!!」

 


アリスの雰囲気が変わる。

 


「ピヨ吉っ!!ピヨ子っ!!サリーっ!!おいでなさいっ!!

 


・・・わかってますね?ご主人様の力にもなれずおめおめと帰ってきておいてさらに無様な姿を晒した時は・・・?」

 


「「「ら、らじゃっ!!」」」

 


怯えながら答える3匹の姿がそこにはあった。ハイロリの横に最後まで並び立つことなく戻ってきたので、アリスによって恐ろしい叱責を受けていた3匹。実のところ3匹は現実でも死にかけることになったのである。呼び出された獣魔達を見てアヤネもスイッチが入っていた。

 


「あら?アリス・・・たった3匹でいいのかしら?」

 


「ふふっ・・・アヤネ相手に他の子達を出したって弾除けにもなりませんよ」

 


2人は妖艶な笑みを浮かべている。

 


「命唱。我はアヤネ。ハイロリ様の妻にしてハイロリ様の剣なり」

 


「命唱。我はアリス。ご主人様の妻にしてご主人様の盾なり」

 


「「・・・殺し合いましょう(愛し合いましょう)」」

 


アヤネとアリスがコロシアムソロ部門の決勝戦を舞台に再び激突する。