闇と光 第67話 2人だけの秘密

「また女の匂いが濃くなってるな。同じ女か。お主も好きよのぉ」

 


「当たり前だ。最愛の女の子の1人だぞ。いくらでも欲しい。防御するにはフェイントが必要。攻撃は最大の防御。防御するには攻撃がいる。そうあんたは伝えたかったんだろ?」

 


「なに難しいことを言っておるんじゃ?確かに攻撃は最大の防御じゃ。闘いは攻めて攻めて攻めまくる。これが漢の闘い方じゃよ。ぐわははは」

 


前言撤回。やっぱり脳筋だ。感心して損した。もう2度と感心するのはやめよう。おっさんは脳筋。この世の真理なんだ。そういうものだと心に刻もう。

 


「だからそんな目で師匠を見るんじゃない。3回目が終わったら銭湯にいくぞ。稽古の汗は流さんといけないからな」

 


「汗なんてかいてないだろおっさん。ところでご飯用意してあると思うんだけど食べてからでいいの?」

 


「なんじゃ・・・まぁよい。師匠と弟子といったら一緒に風呂に入るもんじゃろ。明日からは予定を空けておけ。それか昼飯を食べてから稽古にこい。今日はしょうがないのぉ」

 


「・・・わかったよ。明日からそうするよ。んじゃ今回はこっちからいくぞっ!」

 


オレはそういうと剣を両手に抜きながらおっさんに向かっていった。だがおっさんの姿が消えた。

 


「遅いわっ!」

 


キンッ。甲高い音が鳴り響く。後ろからくるって知ってたよ。回転しながら別の手で突きを放つ。

 


っておっさんがいねぇ。今度は上か。剣を手から放し後ろに急加速する。やべぇ剣がねぇ・・・。ハイロリシールドしか持ってきてねぇのに。ハイロリソードは幸せボケして忘れてきたのだ。オレの肉体で剣を受けれる気がしない・・・避けるしかできねぇ。現在超加速を使い紙一重でおっさんの次々繰り出される連撃を躱している。開始から3秒くらいは経ったのであろうか。1発1発がはえぇんだよくそ。

 


その時だ。オレの脇腹に攻撃がヒットする。蹴りか。オレの体は宙に吹き飛ばされる。急いでマナを移動させたが遅かった。バキバキと骨が折れていくのがわかる。だが痛みで目を逸らしはいけない。きっと次がくる。どこだ?

 


下か・・・オレの体は2つに分かれ宙を舞っている。赤い雨を降らせながら・・・。

 


3度目のただいマイルーム。アリスが料理してる。普通のエプロン姿もいいものだ。

 


「ただいまアリス」

 


「お帰りなさいませご主人様。もう少しで支度が終わるので終わったらまた一緒に運動してください」

 


「アリス。みんな帰ってきちゃうよ?それにせっかくのアリスの料理が冷めちゃうからだーめ。明日からは朝2回稽古に行って昼から1回って形になると思う。だから2人きりはまた明日でもいい?」

 


「・・・ご主人様。今の話は皆さんに内緒にしてもらってもいいですか?」

 


アリスは懇願するようにうるうるとした目で甘えた表情をし、オレを見上げながら言ってくる。それはビッグバン並の破壊力だぞ。

 


「・・・わかったよアリス。2人だけの秘密な」

 


言い終わるとアリスに口を塞がれてしまった。オレの体はアリスの手によってアリスに引き寄せられていく。アリスさん。これ以上オレを惚れさせないでくれ。

 


「「ただいま〜」」

 


アヤネと唯の声が聞こえる。

 


「ハイロリ様。私にも

    ダーリン。ボクにも」

 


現場を目撃されてしまった。2人にも同じことをした。美貴は夕食には帰ってくると言っていた。4人で食事をしている。

 


「ダーリンってなんで食べ物くんくんするの?」

 


「はじめて見るものはくんくんしてしまうんだよな。特に嗅いでわかるわけじゃないんだけど」

 


「ご主人様は野菜を以前雑草と言ってましたからね」

 


「いや見た目的には雑草だよね?河川敷に生えてそうって唯ならわかるよね」

 


「あはは。そう言われるとそだね〜〜」

 


「ハイロリ様。あ〜ん」

 


「ご主人様は野菜を食べないので交代制で食べさせてます。放っておくとドレッシングしか食べませんからね」

 


「・・・否定はしない」

 


「じゃあ明日はボクが食べさせるね」

 


「そうそう。ご主人様って食べるの凄い早いんですよ」

 


「確かにハイロリ様食べるの早いよね。食べる量も多いけど」

 


「理由があるんですよね?ご主人様の可愛い理由がね」

 


「昔杞憂という言葉の起源を知ることがあってな。それ以降早く食べるようになった。最近はマナが増えたせいで余計に食べたくなる」

 


「もっとちゃんと説明してあげてくださいよご主人様」

 


「そんな笑顔で言うなよアリス。空が突然落ちてきたり地面が崩れたりするのが語源なんだよ。それを聞いてオレはいつなにかが起こって食べれない状況になるかわからない。だからなにかが起こる前に食べなければって考えたんだ。今目の前にある食べ物だって爆発して消えちゃうかもしれないだろ?それで食べれなくなる前にいっぱい食べて栄養を蓄えようってわけだな」

 


「臆病で可愛いんですよご主人様は」

 


「ハイロリ様。そんな心配しなくても私が守るから大丈夫だよ」

 


「ダーリン。ボクがいっぱい抱き締めてあげるから。安心して」

 


結局3人にいじられる。最近はチキンなオレがいじられて可愛がられる。そんな流れがなぜかできている。なんか母性をくすぐられるそうだ。自覚がないのでよくわからない。普段強気の発言してる時も内心ドキドキなんだよ実は。ただ1回発進したら止まらない。ネジが吹っ飛ぶと暴走モードに入る。こんなオレで本当によいのだろうか。いやまぁ捨てられたらめっちゃ泣くけど。

 


過去にアリスには弱さを少し見せていた。なんでも受け入れてくれたから。1番多く時間を過ごしてるのはアリスだ。アリスもたまに弱さを見せてくれていた。アリスは両親を知らない。家族同然の人はいるが本当に血の繋がった家族を知らない。そのことでたまに心が弱くなる時がアリスにもある。

 


だがそうゆう時は言葉にしなくてもわかる。アリスの表情を見ればわかる。甘え方も少しだけ変わる。そんな時はいつもよりちょっとだけ強く抱き締めている。そしていつも以上に優しく撫でる。そうするとアリスは元気になる。

 


逆にオレが弱さを見せている時はアリスが同じことをしてくれている。これは2人だけが知っている事実。2人ともそのことを口には出していないが、2人とも自然とやっていること。2人だけの秘密。この先誰にも明かすことはないこと。

 


2人だけの秘密が今日もうひとつ増えてしまったな。これからしばらく続くであろうアリスと2人きりの時間。アリスだけ2R多くなってしまうな。みんなに悪い気もするがアリスにお願いされたからな。2人だけの秘密だぞアリス。