闇と光 第41話 アリス対アヤネ
今オレは道場にいる。アリスとアヤネが向き合っている。非常に気まずい。なぜこうなったかと言うと、アヤネがオレに剣を教えると言った。アリスがそれに対し、教えるに相応しいか見定めてあげると言ったのが発端だ。何気にアリスが戦うのは初めて見る。まぁアヤネもだけど。
「ご主人様に相応しいかどうか見定めてあげましょう」
「ハイロリ様に剣を教えるのは私よ。泣かせてあげるからかかってきなさい」
「ご主人様の彼女候補なので手加減はしてあげますので安心してくださいね」
「私も手加減してあげるわよ。ハイロリ様の大切なものを壊す気はないからね」
お互い手加減してくれるらしい。確かに2人のどちらもオレは失いたくない。2人とも優しいなぁ。ますます好きになっちゃうじゃないか。
「ご主人様を待たせるのも悪いのでそろそろ行きますよアヤネさん?」
「ええ。そうね。早く可愛がってもらいたいわ。さっさと沈めてあげるわね」
2人とも可愛い笑顔をしている。でも目は笑っていない・・・。心の中はヒートアップしている模様です。そう言った後2人は闘気を解放した。
はっ・・・?何この子達。オレは勝てる気がしないぞ。先日の道場の師範はなんだったんだってくらいレベルが違う。アリスは若干緑色のマナを纏っていた。一方アヤネは青だ。再びアヤネが話し出す。
「命唱。我はアヤネ。ハイロリ様に愛されし彼女なり」
「命唱。我はアリス。ご主人様の寵愛を受けし第1の彼女なり」
「ご主人(ハイロリ)様!!」
「は、はじめっ!!」
命唱使ったよこの子達。命唱句は触れないでおこう。命唱って名乗り合う仕組みなのね。だから獣達が使ってきたわけか。ていうか速すぎて目で追うのが辛い。オレも闘気を解放する。ちなみにオレにはまだ色はない。木刀と木刀の凄まじい打ち合いが始まる。2人の匂いが遅れてやってくる風にのってきて役得である。もっと細部まで見たいのでオレもこっそり命唱する。
「命唱。我は見る。アリス、アヤネの体の細部までしっかり見る者なり」
よく見えるようになった。2人の小さなお山がわずかに揺れているのがよく見える。2人ともいい体してるよな。って違う。ちゃんと戦いもついでに見なければ。
一方が打てば一方が受け、下段に攻撃されれば飛び跳ね避ける。髪がなびく。お山が揺れる。いいぞもっとやれ。オレのマナちゃんは暴走している。
「なかなかやるね。得物が違うからって負けた時の言い訳にするんじゃないわよ」
「あなたこそなかなかやりますね。ご心配なく。このぐらいのハンデなんともありませんので」
「ならいくわよ。桜花冥月流壱の型乱れ桜!!」
アヤネが高速の突きの連打を放つ。アリスは木刀で突きを打ち払い、時には残像付きで避けていく。アリスがかっこよくて惚れてしまいまそう。あ、既に惚れてたわ。アリスがジャスパを決めた。アリスが突きを放つ。なんなのこの子。
「もう終わりですか?」
「まだだよ。陸の型桜月」
アリスの突きが決まるかと思いきや、アヤネは右手から弾かれた木刀を離し、左手で剣を握りアリスの突きをパリィした。そのままアヤネは回転しながら、右手に木刀を持ち替えアリスに上段から斬りかかる。アリスはジェット噴射をしたかのように後方に急加速。アヤネの木刀を避け水平斬りを放つ。
2人のレベルが高すぎる。オレが弱すぎて泣けるくらいだ。もっと気合をいれて鍛錬せねばならないようだ。
しばらく打ち合い、アリスとアヤネは1度距離を取る。2人とも笑っている・・・。可愛い・・・じゃなくて楽しそうだ。どうやら2人とも闘うのは好きらしい。
「やりますね。ならば少しレベルをあげましょう」
「命唱。我が風のマナよ。我に力を授けよ。我疾風の如く撃ち倒さん」
「命唱。我が水のマナよ。我に力を授けよ。我流水の如く迎え撃たん」
アリスの命唱に呼応したようにほんの少しだけアヤネが遅れて命唱を始める。アリスの緑色のマナがさらに色濃く大きくなる。アヤネも同様だ。アリスのスピードが格段に上昇している。アヤネはそれを流れるような動きで対処している。まるで花びらが舞っているようだ。袴のひらひら具合がより色っぽさを感じさせる。
「二重命唱もできるのですね。なかなかやりますね」
「あなたこそこんなにやれると思わなかったわ」
2人は戦いながら会話をしている。オレは匂いも堪能していたがいつのまにか戦いに見入ってしまっていた。今度はアヤネが仕掛ける。
「命唱。我は激流。その流れにてすべてを呑み込まん」
「命唱。我は嵐。その暴風を身に纏い彼の者を斬り刻まん」
今度はアリスが呼応し、命唱を重ねる。命唱ってどんどん重ねて使うものなのね。アリスは風の刃を身に纏っているようだ。目にはっきりとは見えないがマナの流れがそう言っている気がする。ただ触ったらやばそうな風だというのはわかる。たとえ体が切り刻まれようともオレは抱き締めたい。闘っている2人に欲情してしまう・・・。
「桜花冥月流合技参・伍・漆式冥殺鏡月!!」
「飛烈刃!!」
アリスが高速の振りで斬撃を飛ばす。アヤネはその斬撃を避けながらアリスに近づいていく。アヤネが急加速しアリスに斬りかかる。そこへアリスの斬撃がアヤネにヒットする。しかしアヤネの姿は花びらへと姿を変え消える。アヤネは別の方向から斬りかかる。
アヤネの技はどうやら上下左右すべての方向から突如として斬りかかる、そんな技のようだ。アリスは身に纏った風を全方位に飛ばし始めた。道場が壊れます。あとで建て替えるからいいけども・・・。アリスさん自重してください。ついでにオレにも飛んでくる。剣で薙ぎ払う。審判のオレがなぜ戦うはめになるのかと誰かに問いたい。
アリス、アヤネともに服が所々破れる。血も飛び散る。大事な2人が傷つくのは心苦しい。だがいいぞもっとやれ。ポロリ期待してます。血を見るとゾクゾクしてくる。血を彼女達ごと啜りたい。今すぐにでも2人を食べてしまいたい。あとで傷は治してあげるから存分にやるがいい。2人の心の傷も癒してあげるからね。
2人とも息が荒くなっている。服には血が滲んできている。あぁ・・・2人とも輝いている。お互い命を取り合うつもりはないようだが、命と命がぶつかる時が一番セクシーだ。今すぐ止めて2人を堪能したい・・・。ところで真面目な話・・・これってどこで止めればいいの?審判なんてしたことないんだけど。
「このままでは決着がつきそうにありませんね」
「そうだね。次で決めさせてもらうよ」
再び両者距離を取る。両者ともにエロい。もっと2人を見ていたい。だがしかしそろそろやばそうな気がする。道場も崩壊寸前といったところだ。どうやって止めよう。この間に入っても死ぬだけな気もするが、2人の男として優しく止めなければまずい気がする。
・・・はっ!オレも命唱を重ねればいいんだ。
頭の中で4つの自分に分ける。4重命唱をやってみよう。2人のどちらかが傷つくのをこれ以上黙って見ていることはできない。かっこよく止めてもっと惚れてもらおう。
「命唱。我がマナよ。我に力を授けよ。オレの呼び掛けに応えやがれ」
[命唱。我はアリスの男。愛するアリスを止める力をオレによこせ]
[命唱。我はアヤネの男。愛するアヤネを止める力をオレによこせ]
[命唱。我は望む。妖艶な2人を欲さん。我は2人を貪り尽くす者なり]
・・・あ、頭がいてぇ。だがなんとか耐えられなくもない。マナが急速に減っていく。減った分を呼吸するかのように周りから吸収する。オレのマナの色は黒かった。周りがスロー再生してるかのようにゆっくり見える。2人の鼓動がよく見える。・・・2人とも最高だよ。
「いきます!嵐破閃」
「こっちもいくよ!桜花冥月流奥義月冥閃」
アリスの木刀から暴風が吹き荒れている。アヤネの木刀は光り輝き熱を放っている。2人の距離がゆっくりと近づいていく。頭が割れそうなくらい痛い。だが愛する2人を止めなければならない。もっと見ていたいが・・・オレは駆け出す。
2人はもうぶつかり合う寸前だ。オレは間に入る。短剣をそれぞれ抜く。右の短剣でアリスの木刀を。左の短剣でアヤネの木刀をジャスパする。ちっ・・・だんだん目の前が暗くなってくる。
「それまでだ。もう我慢できない。2人を食べた・・・」
オレの意識は途切れた。