闇と光 第57話 おっさんはオレのものだ
「待てぃ!!そいつはオレのものだ!オレのものに傷をつけるなら地獄を見るぞ?」
「なに言ってるんだこいつ。頭いかれてんのか?こんな役立たずに何の価値がある」
「動けないおっさんはただのおっさんなんだよ。サンドバッグになるくらいしか価値がないんだよ。オレ達は最前線組だぞ?逆らうならお前もただじゃすまないぞ」
「オレの女に何を言っている?1度しか言わない。失せろ雑魚ども」
「女?目もおかしくなってるのか。どっからどう見てもおっさんじゃねぇか。痛い目見ないとわからないようだな」
「やっちまえ」
おっさんを囲んでいた8人の男達が一斉にハイロリに襲いかかる。ハイロリに攻撃がヒットしたかに見える。地面を斬る音が鳴る。その瞬間男達の間を風が吹き抜ける。
「お姫様は見ない方がいい」
そう言うとハイロリはおっさんを抱きかかえる。お姫様抱っこされているおっさん。絵面的にやばいものがある。おっさんは顔を赤らめる。その後ろでは男達の上半身と下半身がばらばらに崩れる音が鳴っていく。
「え・・・ボクにかかわっても損するだけですよ?」
「君の名前は?」
「・・・アーロンです」
「違う。オレが聞きたいのはそんな名前じゃない。アバターごときでは隠しきれぬその魅力。美しき姿。オレの腕の中にいるお姫様の本当の名前を聞いている」
「マリア・・・紅羽マリアです」
「いやそんな名前じゃない。我が麗しの姫は日本人だろう。セクシーさの際立つミディアムの前下がりボブの黒い髪。グラデーションとして添えられている青緑銀桃水紫赤のカラーリングが素晴らしい。君の魅力を何倍にも引き立てている。君の名前が知りたい」
「見えてるの?・・・この名前、そこそこ有名なはずなんだけどな。ホントに知らない?」
「知らない。君を見たのは今日がはじめてだ。テレビとか見ないし新聞も雑誌も興味がない」
「あはは。そっか。ボクもまだまだだったんだね。ボクの名前は七瀬唯(ななせゆい)だよ。あなたの名前は?」
「オレの名前はハイロリ。悪七慶太だ。唯ちゃんオレの女になってくれないか?」
「え・・・。いきなり過ぎて。そりゃドキっとしたよ。誰も見向きすらしてくれなかったボクを。こんな姿なのに。肩書きのないひとりの女として見られるのもはじめてだし・・・。でもまだあなたのこと知らないし」
ハイロリはマナを唯に注ぎ込む。彼女の顔はどんどん赤くなっていく。自身の愛を彼女にどんどん注ぎ込んでいく。
「これでもまだ知らないのか?オレは君をこんなにも愛している」
「あはは。恥ずかしいよ。そんなに想ってくれてありがとう。でもこんな姿だから迷惑かけるよ?」
「あらお兄さん達いいわね。あたし達の仲間にならない?」
女物の服をきた男。普通の女もいるが本当の中身は男。これは関わるといけないやつだ。
「アーロンちゃんまたいじめられてたのね。だからあたし達のギルドゲイボルグに入りなさいって言ったじゃないの」
「悪いがこれはオレの女だ。誰にも渡さねぇぞ」
「みんな聞いた?あたしも言われたい。お兄さんみたいな男に。ねぇお兄さん。あたしにもそのセリフいってくれたら嬉しいな」
顔を赤らめながら言うでないお前ら。すまん。オレはそっちの趣味はない。他を当たってくれ。需要と供給のバランスだ。オレ以外に君達にはきっと誰かいる。
「唯。しっかり掴まってろ。離れるなよ」
「・・・はい」
「オレは今このお姫様を口説いているとこなんだ。邪魔をしないでくれ。それにオレの守備範囲じゃない。もっといい男がいるはずだ。では失礼する」
そう言うとオレと唯は黒いなにかに包まれて消えた。
「慶太さん今のなんですか?」
「オレの闇のマナで転移しているだけだ。場所を認知できてないと使えないんだけどな。行ったことがない場所でもオレのマナが潜り込める場所ならどこでも行けるぞ」
「そんなことできるんですね。・・・もしかしてあなたが噂の彼ですか?あの他の支部の女性達を口説き3人彼女がいるという」
「噂の彼かはわからない。どういうことだ?」
「今3回目の支部別対抗戦の個人戦バトルロイヤルの代表決定の決勝戦をしてるんですよ。明日その代表達によるバトルロイヤルが開催されます。日本支部以外は毎年代表者は変わってないんですが、その代表者3人を口説いた人がいるんです。その人にはご主人様と呼ぶ彼女がいて、その彼女が3人いるうちの女の1人って言ってたんです。未だに謎の多い男の人です。それが噂の彼です」
うん。アリスだ。3人に確かに熱烈な愛を伝えた。届いていてよかった。じゃなくて間違いないオレだ。大方、美貴が特権使って転移させ、アリスがなにかにブチ切れた。そんなとこだろう。みんな行動力がありすぎてすごいな。早く会いたくなってきた。甘えたい。
「噂の彼はたぶんオレだ。何人も女がいるのは嫌か?それでもオレは唯が欲しい。幸せにするから一生ついてきてくれないか?」
「ボクなんかでいいの?ボクは・・・」