闇と光 第54話 修行の終わり

感覚のない空間を漂っている。懐かしい感覚だ。どれくらいここにオレはいるのだろう。どれくらい時間が経っているのだろう。感覚が戻っていく。どうやら次のステージにいくらしい。

 


「やぁ。聞いてもいいかい?」

 


「ならこっちからも聞いてもいいか?」

 


「なんだい?」

 


「どれくらい時間が経っている?」

 


「ここだと・・・20年くらい?」

 


「うんそのぐらいだね」

 


「そんな経ってるのか。あっちはどうなってるんだ?」

 


「向こうの世界では2年くらいかな」

 


「10倍速かよ。そろそろオレの女達に会いたいんだが?」

 


「さっきまで会っていたじゃないか。なんで自分から殺されにいったの?」

 


「あれは本物だけど本物じゃない。でもオレは彼女達を愛しているからな。オレを攻撃するのが彼女達なら、その彼女達を受け入れるだけだ」

 


「殺した方が簡単だったよ?というか殺せるかの修行だったんだけど」

 


「愛してる女は殺せない。裏切られた上で敵になるなら殺せると思う。また傷口大きくなるけどな。殺す必要があるなら殺すよ。ただオレの命と彼女達の命が天秤にかけられたら迷わず彼女達を選ぶ」

 


「まぁいいか。格が上がればとりあえずいいや。デーデンッ!ここで悲しい知らせと嬉しい知らせが同時にありまーーす」

 


「どっちから聞くとかじゃないのかよ。早く言え」

 


「次が最後の修行だよ」

 


「最後だね」

 


「ああ。お前らに会えなくなるから悲しいよ。で何をするんだ?」

 


「でしょ。悲しいでしょ」

 


「大人な対応してもらってるのわかってるの?」

 


「え〜〜そうなの?では発表します」

 


「「ボク(ワタシ)達の分体を倒せ」」

 


「理の外にいるから姿はなかったんじゃないのか?」

 


「うん。そだね。君の分身を操らせてもらうよ」

 


「能力は同じ。でもこちらの中身は2つ。変則デスマッチだよ」

 


「まだまだお前らとここにいることになりそうだな。まぁ遠慮なくいくぜ。我が友よ」

 


ハイロリの最後の修行が始まった。ハイロリはいつ目覚めることができるのだろうか。

 


「いつ起きるのよまったく・・・。3人とも褒められたいし可愛がってもらいたいのに」

 


「ご主人様の匂いだけで私は・・・」

 


「お風呂も入れてあげるのが当たり前になったよね。起きてる状態でしてあげたい」

 


「寝ていても落ち着くんですよね。私達が近づくとご主人様のマナが包み込んでくれますし」

 


もうすぐこちらの世界で2年になる。第2回対抗戦が始まるのだ。慶太は寝るのが好きと言っていたがここまで好きだとは聞いていない。また彼女達が現れるのか。何人女の子待たせてるのよ。そもそも出てくるかもわからない。違う場所にいる彼女達は何を考えているのかな?

 


「エカチェリーナは対抗戦でるの?」

 


個人戦しかでないよ。レナやチャーリーと戦いたくない」

 


「なになに。その笑顔をしてるってことはまた日本の彼のこと考えてるの?会ったこともないのによくそんなに思えるね」

 


「約束したから。それにとっても大好きって言われた。私も彼のマナ大好き」

 


「鮮血の魔姫様が気になる相手か。早く見てみたいな」

 

 

 

「テイラー様。今回の対抗戦はどうなさいますか?」

 


個人戦以外でないわ。レナやカーチャと争うつもりはないわよ。彼がきてくれるのかはわからないけどね」

 


「また彼ですか・・・。部下達は文句を言ってますよ。みんなテイラー様が大好きですから」

 


「彼は私を捕まえにきてくれるわ。その時にいくらでも相手してもらいなさい。でも殺されないようにね。彼もあなた達の上に立つ存在よ」

 


「男に興味がないテイラー様が変わられたものですね。私も彼に早く会ってみたいものです」

 


「ふふ。お好きになさい。あなたも男に興味がないじゃない。私は男に興味がなかったわけじゃないのよ。私にはつまらない存在でしかなかっただけよ。いずれあなた達は認めることになるわよ。彼の魅力を」

 


「それは楽しみです。私は世界最高の頭脳を持つ凄腕のスパイにしか興味はありませんがね」

 


「あら。懐かしい話ね。でも残念。今はただのテロリスト・・・いいえ・・・恋するテロリストよ」

 

 

 

「ボス。また対抗戦がはじまりますぜ。どうしやす?」

 


「そうだな。個人戦以外は出ないつもりだ。チャーリーやカーチャと闘いたくない」

 


「みんなボスに天下をって燃えてやしたけど」

 


「血に飢えてて可愛い家族達だな。彼が私を力尽くで奪いにくる時いくらでも闘えるぞ。天下をとるより楽しいぞきっと」

 


「ホントにそこまでの男なんですかね?その時は本気でお相手しやす」

 


「でも死なないようにな。私が彼のものになったらお前らも彼のものになるんだぞ」

 


「へへ。そうなったら悪魔にでもオレらは付き従いますよ」

 


彼女達、そして全支部中の興味が再び彼に向いていく。しかし彼が現れることはなかった。彼は存在していないという噂が流れ出す。否、彼は存在しているのだ。彼は未だ目が覚めない。彼は今も闇の中で分身と闘いを繰り広げている。そして遂に終わりを迎えることとなる。

 


「お見事」

 


「負けたね」

 


「終わったのか?」

 


「終わったよ」

 


「10年くらいかかった?」

 


「うんだいたいそのぐらい?」

 


「君とお別れか〜〜」

 


「寂しくなるな。またいつか会いたいものだ」

 


「「会えるよ」」

 


「君が君である限り」

 


「君は必ずまた会いにくる」

 


「ならまた会おう」

 


「またね。これから闇のマナをさらに君に馴染ませる」

 


「ここの時間で1年くらいかな」

 


「もう1年も10年も変わんねーよ。時間感覚が狂ってるから」

 


「次に目覚める時は現実世界に戻るよ」

 


「なぁ?お前らに名前はあるのか?」

 


「あるよ」

 


「次に会った時にご褒美として教えてあげよう」

 


「やる気でるでしょ?」

 


「ふっ・・・ああやる気がでるよ。世話になった」

 


「こちらこそ世話をした」

 


「それ使い方間違ってるからね。じゃまた会おう」

 


「「君に闇の加護を」」

 


視界が急速に無くなっていく。再び感覚のない世界。マナがオレの中に入ってきているのがわかる。心地よい居場所だ。美貴。アリス。アヤネ。待っていろ。もうすぐオレは戻る。その時はいっぱい甘えさせてくれ。

 


彼の目覚めの時は近い。彼を待ち受けているものはなんなのだろうか。それは神のみが知っていること。誰も知ることはできない。

 


「ようやくか。よくやってくれたよ。我が友よ。しかし彼の者が彼に既に目をつけ待っている。でも面白そうだしいっか。あはは」