闇と光 第49話 1年後

彼は未だ目を覚まさない。私達3人はそれぞれのしたいことをし、夜は彼のそばで共鳴する。事前に彼に私達は言われていた。今度倒れた時、自分のことは寝るついででよいと。自分のために時間を使えと。私達は彼の願いはすべて受け入れる。そんな日々をこの世界で1年過ごした。5倍速とはいえ実際に体験しているので長い。

 


アリスはひたすら修行している。自分のマナの量が上がれば慶太への効果が高まるからだ。アデルソンさんやラルカスさん、ヴェルンドさんが心配してくれていたがアリスがちゃんと説明し落ち着いてくれた。無限に収入があるために生活には困っていない。というかなんでこんな稼げるシステムを作れたのか不思議でならない。

 


そうそう。ピヨ吉とピヨ子が進化し大きくなった。そして仲間がたくさん増えた。魔獣を次々と拾ってくるし自ら繁殖する。鳥軍団が誕生している。アリスの指導のおかげで全員従順である。アリスを見るとプルプル震えるがアリスはいったい何をしているのだろう。

 


鳥軍団達はシフト制で働いている。ハイロリ鑑定場で魔獣チェックをして自分達の餌代を自分達で稼いでいる。卵は未だに孵っていない。生きてはいるみたいだが注ぐマナの量がまだまだ足りないらしい。

 


アヤネも同様に修行をしている。あの後、彼女は彼の指示通りすべての道場を平らげた。そして新しい流派。鏖殺冥月流(おうさつめいげつりゅう)を生み出した。文字通り物騒な流派になっている。初期の門下生達が師範代となり現在指導にあたっている。来訪者達にも参加希望者がいたが入門試験の段階で全員弾かれていた。門下生と10対1で闘うのが試験内容だ。来訪者は10人にボコボコにされて終わる。トラウマになりそうなレベルだったわね・・・。慶太がアヤネに言った言葉が原因だ。

 


手段は問わない。闘いならば相手の心を折れ。2度と刃向かえないようにしろ。

 

慶太が魔王なら勇者がレベル1の段階ですべての街、城を攻め落とすと言っていた。ラスダンに籠るのが魔王じゃない。ラスダンにメタル系モンスターを引かせ繁殖させ、さらにそこで初期モンスター達を育成させつつ、ラスダンの魔物達でいきなり街を包囲し、兵糧攻めや水に毒を入れすべてを根絶やしにする。経験値を手に入れるチャンスを作らせるな。それが彼のモットーらしい。正直クソゲーでしかないけど・・・理には叶っている。

 


私はできるだけこの世界にダイブするようにしている。睡眠食事といった行動はなぜか現実世界にも反映されているからだ。原理はわからない。調べたいけどそれよりもやることがある。私も慶太のために強くならなければ。

 


最低限の仕事だけ現実でこなし、警報がなった場合は直接こちらに通知がくるようにした。そうだ、司さんに報告に行った時にはお咎めなしだった。むしろよくやったと褒められた。そしてなぜか追加の再生薬があった。なぜあったのかは未だにわからない。この訓練が始まってからまだ2ヶ月半足らずしか経っていないがこちらの世界で過ごした分感覚がおかしくなる。

 


現在は来訪者達もだいぶ増えてきた。9割くらいは身体強化のチュートリアルをクリアした。日本支部はまだ第1エリアを突破していない。ボスまでは辿り着いているがまだ倒せていない。

 


そして開始1年を記念して全世界の支部同士の対抗戦が行われている。円卓の騎士、カポネ組を中心に頑張っていたが日本支部は惨敗。アリスとアヤネが出ていればいい勝負ができたと思う。慶太なら・・・。だが彼はまだ起きない。そもそも彼は参加しないと思う。そうゆう人だ。興味のないものにはまったく関心を示さない。

 


今は明日行なわれる最後の競技。個人戦バトルロイヤルの代表決定戦が開催されている。現在ちょうど決勝戦をしている。最後に残ったのは円卓の騎士アーサーとカポネ組カポネ。どちらが勝っても他の支部には勝てないと思う。私の権限で覗いてみたがレベルが高すぎる。そしてあのクソ女はアーサーの応援をしていると思う。彼女の特別枠はアーサー君だ。

 


どうやら決まったようだ。日本支部代表はアーサー。カポネの攻撃を紙一重で躱しアーサーがカウンターを決め勝利した。これで代表が出揃った。

 


日本支部

アーサー

 


北ユーラシア支部

エカチェリーナ

 


東アジア・オセアニア支部

ズーハオ

 


南アジア・中東支部

イシャン

 


ヨーロッパ支部

ジョシュア

 


アフリカ支部

マンドゥーハ

 


アメリ支部

シャーロット

 


南アメリカ支部

アドラシオン

 


明日アリスやアヤネと一緒に見ることになっている。慶太のライバルになり得るかもしれない存在達。各支部の1位だ。なにか強くなるためのものが掴めるかもしれない。私達3人は・・・慶太風に言おう。見た技術すべてを喰らい尽くし、血液の一部にしてやる。

 


私達は慶太のそばで明日の話をしている。私は特権を利用し全員の予選データを入手した。今3人で見ている。

 


「どう?戦ったら勝てそう?」

 


「そうですね。まだ本気は出してないようですが1対1なら負けないと思います。でもバトルロイヤル形式だと運次第ですね」

 


「私も同じかな。複数で攻められた時のまぐれ当たりが怖いなぁ。だけどハイロリ様の足元にも及ばないよこいつら」

 


「ええ。あの時のご主人様の方が遥かに強いです。ご主人様なら今の私達の全力すら軽く弾きそうですもん」

 


「さすが・・・アリスとアヤネだわ。私だったら勝てないもの」

 


「もう少しすれば美貴の方が強くなるよ。ぐんぐん強くなってるし」

 


「しかしこの女性3人。きっとご主人様の好みですね」

 


「やっぱり?私もそう思う」

 


「ハイロリ様のことだからもう既に接触してたりして・・・」

 


「アヤネ・・・慶太なら本当にありそうだから言わないでおきましょ。もしかしたらこれが倒れる原因だったりして・・・」

 


「起きた時にご主人様に聞けばわかることですよ」

 


「じゃそろそろ今日も共鳴しよっか。無抵抗な慶太とするのがドキドキしちゃうのよね」

 


「美貴もそうなんですね。ご主人様が愛おしくてはりきっちゃいます」

 


「2人もそうなんだね。さすがに気が合うね」

 


3人はいつものようにマナの共鳴作業に入った。女の勘は恐ろしいものである。逃げろ。ハイロリ。起きても起きなくても地獄が待っている。そんな気がする。予言なんて大抵外れる。有名な予言者だっていっぱい外れる。そうなることを祈ろう。