闇と光 第70話 アリスの告白

おっさんに挑み始めてから半年が経った。やっと30秒くらいは闘えるようになった。本日2度目の挑戦中だ。

 


「ぬぅ。ちょろちょろ小賢しいわっ!」

 


「しょうがねぇだろ。マナそれなりに入れないとあんたに効かないんだから努力を褒めやがれ」

 


「漢と漢の闘いに罠なぞ卑劣じゃぞ!」

 


「卑劣でもなんでもいい。オレは強くなる。そのためだったらオレは女にでもなってやらあ!!」

 


オレのマナ操作速度は以前とは比べものにならないくらいに成長していた。ちなみに命唱はおっさんに禁止された。光速連段命唱を使えるようになったのだが、2人とも参連段を超えてしまうとここが壊れるそうだ。もっと頑丈にしとけやおっさん!

 


オレは防御や回避だけでは手が足りなかったので防御や回避をしながらおっさんの次にきそうな進路へ、おっさんにダメージが通る絶妙な威力の罠をフルパワーで隠蔽して先置きしていた。

 


まぁおっさんには結局バレるんだけどな。でもそれによっておっさんは進路を変えないといけない。おっさんはそのまま突っ込んでくるかと思ったがしなかった。優しい師匠だよまったく。

 


進路を変えさせることができるとどうなるか。僅かに時間的余裕が生まれる。それによってオレにも択が発生するようになった。

 


距離を取るか。体勢を立て直すか。攻撃を仕掛けるか。罠をさらに設置するか。敢えて何もしないか。など様々な選択肢が生まれる。おっさんに攻撃できるようにもなったんだぜ。まぁ普通に振り下ろしても当たらないんだけどな。攻撃を成立させるにもフェイントがいる。中途半端だとぬるいわっ!って言われてカウンターされて終わる。何回もされたから身を持って知っている。あと迂闊に剣を振るとジャスパ決められて終わる。おっさんまじチート。

 


色んな囚人達とも触れ合った。狂人と呼ばれそうな性格だけど戦い方は素直だったりする。基本的に頭がぶっ飛んでる者が多かった。でもオレも頭がぶっ飛んでるので悪いやつらには思えなかった。普通に仲良くなってしまった者達もいる。中にはオレが思わず関心してしまうよう手を使ってくる者もいた。だからそれを参考にした。ついでに道場に脱獄させておいた。新たなる発展のために。

 


だがそれでも30秒が関の山だ。もっとなにかがいる。剣技じゃオレは勝てない。だから他のベクトルからの攻撃が必要なんだ。28秒か。なかなか伸びないな。おっさんの強さは謂わば純粋な強さ。対してオレは歪んだ強さ。おっさんが言ってた。闘いなんだからどっちでもいいだろ師匠よ。卑劣とよく言われるが破門にされてないからセーフなんだろ。うん知らんけど。

 


「ただいまアリス」

 


「お帰りなひゃい。ごひゅひんひゃま」

 


アリス・・・待っているのは知っていたが早すぎる。流れるような動きに惚れ惚れしてしまう。あれから毎日アリスと2人きりでみんなより多く運動している。女の子の日でもタオルを常に大量に使っているので問題ない。2回殺された後はアリスと昼食の準備になるまでずっと運動だ。アリスとはお互いにほとんど知らないことはないと言える深い関係になっていた。フーカお姉様には未だ会っていないのだがな。

 


しかし今日はいつもと違っていた。昼食の準備に入る前にアリスにあるお願いされる。可愛いからなんでも聞いちゃうよ。

 


「ご主人様。今日のお風呂2人きりで入ることはできませんか?」

 


「どうした?」

 


「2人きりでお話したいことがあります」

 


「わかった。じゃあ2人で入ろう。最初はアリスと2人だったから懐かしいね」

 


「ふふ。そうですね。また腕枕してくださいね」

 


笑顔のアリスさん。今日も素敵です。昼食を済ませてオレは3デス目に向かった。そして無事にデスし、今夕食を食べ終えたところだ。

 


「美貴。アヤネ。唯。悪いんだけど今日はアリスと2人でお風呂に入っていいか?」

 


「すみません。あとでみんなにも理由を話すので今日だけはお願いします」

 


「わかった。いいわよ」

 


「はーい」

 


「じゃあアリスごゆっくりどうぞ。唯と美貴と訓練場にいってるね」

 


「ありがとうございます」

 


アリスと2人きりの入浴だ。入念に洗い合い運動してからお風呂に入る。アリスを腕枕しながら夜空を見上げている。アリスといるととても落ち着く。やっぱりみんなと2人きりタイムが欲しいと改めて思った。ハイロリゲンガーを真面目に覚えようかな・・・などと考えているとアリスがオレの手を握ってきた。動かされていくオレの手。アリスさんそっちはいけません。お風呂から上がれなくなります。

 


「ご主人様・・・子供を授かりました」

 


アリスとオレの手はアリスのお腹の上で止まっている。今なんと・・・?

 


「うふふっ、なにびっくりしてるんですかぁ?ご主人様と私の赤ちゃんですよぉ。えへへ」

 


聞き間違いではなかった。できたとなるとやはりここは現実?アリスはキャラクターなどではないのか?まぁそんなことはどうでもいい。アリスを強く抱き締める。

 


「産んでくれるのか?」

 


「もちろんですよ。やっと授かれました」

 


「アリス。愛してる」

 


「ご主人様。愛しております」

 


しばらくアリスとお風呂ですりくんタイムに突入していた。アリスにこれから運動は控えようと言ったが大丈夫だと言われた。マナで保護するからいつも通りして欲しいと頼まれた。マナちゃんが優秀すぎてマナちゃんがこの世を作ったのではないかと思える。

 


お風呂を上がり3人に報告する。するとみんな喜んでくれた。美貴は涙を流しながら喜んでいた。なんだ・・・美貴も人のこと言えないじゃないか。ただ今言うと殺されそうなので言わない。

 


この日オレ達に家族が1人増えた。