闇と光 第79話 ハイロリの闘い1

「開戦だっ!!

 


ハイロリが闘気を解放している。漆黒に包まれし男が立っている。相手からは聞いていない。誰だ参加すると言ったやつなど焦燥の声が聞こえるね。もう始まってるのにね。あははっ」

 


「命唱!我はハイロリ!小魔王なり!」

「命唱!我が深淵なるマナよ!我に力を!すべてを蹂躙せし力を!」

「命唱!我が名において命ず!我が最愛の者を侮辱したる者達への断罪を!その身を持って受け入れよ!極刑に処す!」

 


「名乗りながら瞬く間に命唱を3つ重ねていく。ハイロリの闘気はより一層黒く染まっていく。相手はそのままでいいのだろうか?立ち止まる者達が多い中いくつかの集団が前に進んでいる。

 


おっと?なにかに阻まれて進軍できないようだ。これは・・・結界?かな。ハイロリが進軍を妨害しているようだ」

 


「瞬殺じゃ気がおさまらねぇ!ひとつひとつと遊んでやる!最初に死にてぇやつらはどいつだ!?」

 


「くはははっ!ハイロリぃ!!オレらが相手だぁぁぁ!お前らぁ!!敵はラスボス級だ!ハナから全力でいく!ぶっ潰せぇぇぇ!」

 


「カポネ組が隊列を組み、命唱を重ねながら進軍していく。鶴翼の陣のような陣形だね。どうやらカポネ組の前に立ちはだかる結界は解除されたようだ。他にも結界を壊そうとしている者達がいるがびくともしない。頑張って壊してね」

 


「命唱。我が判決を言い渡す。死ねない苦しみを。終わらない痛みを。その命朽ち果てるまで。永遠にその身に刻め」

 


「進軍するカポネ組に闇が二股に分かれ向かっていく。カポネ組の両翼の者達が次々に闇に包まれていく。

 


闇が晴れていく。彼らは触手のような闇に捕縛されている。なにか棺桶のようなものがでてきたぞ。棺桶が開くと・・・おぉ・・・漆黒の棘が出たり入ったり、高速ピストン運動しているね。どんどん捕縛され閉じ込められていく。時折棺桶が小刻みに揺らされているぞ!痛そう・・・でも僕も入ってみたい」

 


「カポネぇ!!足りねぇぞ!もっとこい!侠の魂を持ってるなら漢気を見せやがれ!そいつらは死なねぇ!回復させながら意識を保てる限界で痛みを与え続けている!てめぇらの心が折れるか脳がぶっ壊れるまでやめねぇぞ!」

 


「ちっ・・・ちんたら時間をかけている暇はないってか・・・お前ら散れっ!広域に展開しろっ!各小隊ごと突撃隊形を組めっ!全軍っ!やつをぶっ潰せっ!!」

 


「カポネ組は陣形を崩し始めたぞ。小さな集団が広く展開されている。ミニ魚鱗の陣といったところかな?ハイロリに向かって鱗が殺到していくっ!!

 


ハイロリが立ち止まったぞ?広範囲に渡る闇がハイロリから放出されていく!闇がお返しと言わんばかりに鶴翼の陣を敷いているかのようだ!一斉に闇が鱗を呑み込んでいってるぞぉぉ!

 


次々にカポネ組の者達が棺桶に閉じ込められていく。悲鳴は聞こえない。だけど中の様子は想像したくないねぇ・・・瞬く間に数が減っている。あちゃー・・・あっという間にカポネ含め数人となっている。あははっ、そんなに早くちゃ満足できないよねぇ」

 


「はは・・・笑えねぇ・・・あいつは化け物か・・・」

 


「若!殿は私達が!一旦お引きください!円卓の騎士に合流し、我らの雪辱を!!」

 


「しかし無情にも彼らの背後にいつのまにか闇が回り込んでいるぞ!?これまでかぁ!?」

 


「若!ここは私が!」

 


「よぉ・・・あんた久しぶりだなぁ」

 


「?・・・何を言っている?」

 


「覚えていないのか?ただ楽しく遊んでいたオレに刃物をつきつけたことを。熱い血を流し殴り合った仲じゃないか?寂しいこと言うなよなぁ!?おい」

 


「・・・あの時の」

 


「思い出してくれて嬉しいよ。あの人は元気にしてるのか?」

 


「あの後から我々は勢力をどんどん拡大していった。そして日本最大級と名乗れるまで成長した・・・お前に火をつけられたと言っていたぞ。てっきり普通に暮らしているかと思っていた・・・まさかこんなところで再会するとは・・・ここまでの力を手にしているのは予想外だがな・・・」

 


「おい!どういうことだ!?」

 


「若も何度も組長から昔話を聞いていたでしょう?その男が目の前にいるやつですよ」

 


「ところで自分から語りかけておいてなんだが・・・あんまり悠長にしている暇はないぞ?あの中は感覚の電気信号の速さを数倍に上昇させてある。擬似時間加速ってところかな?5倍速以上に脳に負荷がかかっている。

 


・・・早くオレを倒さないとみんな脳を破壊されて死ぬぞ?話しているうちにみんなとさようならになってしまうから立ち止まっているのはあまりおすすめできないな」

 


時は少し遡る。

 


「高橋さんっ!」

 


「ひっ・・・こないで!私に近寄らないで!もうやめて!」

 


美貴は彼女を抱き締める。

 


「大丈夫よ。私はあなたになにもしない」

 


「・・・私はあんたを散々こけにしてきた!私をバカにしたいならいくらでも勝手にして!私はもう戻れない!あんな姿をみんなに見られてもう生きてられない!」

 


美貴はしばらく彼女に語り続けた。自分の過去を・・・自分の傷すらも彼女にすべて曝け出していた。

 


「・・・ぐす・・・ぐす。ごめんなさい。先輩。先輩より私の方がビッチです・・・。先輩がモテるから嫉妬してました・・・」

 


「いいのよ。大丈夫だからね」

 


美貴は彼女を抱き締め続けた。我が子を可愛がるかのように彼女の頭を撫で続けていた。

 


「・・・先輩。私も変われますか?」

 


「変われると思うよ。私も変われた・・・慶太に出会えて昔の自分も好きになれた」

 


「先輩羨ましいです・・・最初の彼氏がそんないい男だなんて。私なんか・・・」

 


美貴は彼女の過去を聞いていた。なかなか遊ばれてきていたらしい。それが原因で彼女は自分も遊び返してやろうとなっていったのだった。

 


「私も先輩のハーレムに混ぜてもらおうかなぁ・・・」

 


「そ、それはダメよ。ただでさえヤキモチ妬いちゃうのに」

 


「うふふ。先輩可愛いですね」

 


「アーサー君はどうなの?」

 


「彼はいい人なんですけどちょっと真面目過ぎるというか・・・ズレてるんですよね」

 


「じゃああなたが変えてあげたらいいんじゃない?自分も変わりながら彼と一緒に変わっていくの。慶太も私達と一緒にいながら少しずつ変わっていったのよ。最初は弱さを見せてくれなかった。でも今じゃ見せ過ぎなくらいよ・・・ホントビビりなんだから・・・でもまだ少し壁を作ってるのがちょっと寂しいかなぁ。いつか壁を全部壊してやりたいと思ってるわ」

 


「先輩・・・彼のこと大好きなんですね。乙女の顔になってますよ」

 


「え、え?・・・そうね心の底から愛してるわ」

 


「いいなぁ・・・私もいつかそんな人が欲しい・・・」

 


ビーッ!ビーッ!警告音が鳴り響く。

 


「・・・イエローシグナルがこんなに」

 


「先輩こっちもです!」

 


「まずいわ。あの後慶太と戦うことになってしまったみたいね。結構本気でキレてたから・・・もっと増える気がする。もう止めれない。あーー!もうっ!!ちょっと目を離すといつも好き勝手やるんだから!!」

 


「困った彼氏さんですね?せ・ん・ぱ・い」

 


「な、なによ。ほらメインルームにいくわよ!」

 


「はぁい。でも先輩そういうとこも好きなんですよね?もっと迷惑かけられたいんですよね?」

 


「・・・うん。っていいからなんとかするわよ。私達がやるしかないんだから!」

 


「先輩いいなぁ・・・自分のためにそこまでしてくる人私も欲しいなぁ」

 


「今は口より手を動かす!頼りにしてるからね?高橋さん」

 


「はぁい。あとでいっぱいラブラブエピソード聞かせてくださいね?せ・ん・ぱ・い」