闇と光 第86話 ハイロリの闘い8
「先輩やばいです!バイタルが一向に安定しません!」
「あーー慶太!!なにやってんのよもう!!」
「先輩見てください!円卓の騎士が全員痛められ続けてます!」
「なんとかしないと全員死んじゃう!手が追いつかない・・・」
「先輩!行ってきてください!彼を止められるのは先輩だけです!」
「でもここを離れたら手が足りないわよ!?」
「少しの間ならなんとか持ちこたえます!私を誰だと思ってるんですか?先輩の後輩ですよ」
「・・・わかった!行ってくるね!」
「とは言ったもののきつい・・・こんな時に司さんは何してるんですか!?」
「清十郎様ぁぁぁ!もっとぉぉ!!」
「戦を観ていると燃え上がってしまうぞ。がははは」
「ハイロリは追撃を加え続ける。落ちては再び飛ばされる・・・空中の者達を一向に地上に落とさない。ピストン地獄に突き上げ地獄が合わさってしまった!羨ましい・・・これはいったいいつまで続くのであろうか?」
「やめろっ!!!ハイロリぃぃぃぃ!みんなは僕が守るっ!!」
「おっとアーサーが抜け出してきているぞぉぉぉぉ!!ハイロリの追撃を潜り抜けている!・・・しかしハイロリは見向きすらしていない!?アーサーが抜けてきているぞ!?それでいいのか!?」
「みんなを解放しろぉぉぉぉ!!!」
「全員死ね・・・もはやこの世界は存在する価値などない・・・もうどうでもいい・・・」
「アーサーがハイロリに届くかと思われたその時っ!!ハイロリソードが行く手を阻む!そしてそのままアーサーは斬られ続ける。アーサーは空中で止まっているかのように見える。だがそれは・・・ハイロリソードによる高速の連撃によるものだっ!
円卓の騎士は全員空中でボコられ続けている。みんなの脳がまずいことになっているね。しかしハイロリはただ無表情のままその様子を見ている・・・本当に殺す気なのであろうか!?」
パパパパパパパンッ!!
「なんだ今の音は!?ハイロリに向かって弾丸が飛んでいく!!誰だ!?この場にまだ誰か残っていたのかぁぁ!?
ハイロリは弾丸を切っている!そして音の鳴る方へハイロリソードの光線が飛んでいく!!」
「くっ・・・止まりなさい慶太!!」
「あれは誰なんだ!?ふむふむ・・・なるほど・・・彼女の正体はハイロリのナビだ!ハイロリは無表情で・・・いやちょっと哀しそうな目をしているぞ!ハイロリソードで攻撃しながら彼女を静かに見ている。しかし彼女はそれをすべて避けている!規格外のナビの力も規格外だというのかぁぁぁぁ!?」
「ばかっーーー!!私になんてことするのよっ!!早くあの人達を解放して!私は物凄く怒っている!あんたのせいで大変なんだからね!っていい加減にしないと嫌いになるわよっ!」
「ハイロリソードの動きが止まる。しかし円卓の騎士は未だに追撃を受け続けているぞぉぉぉ!!」
「・・・やめろって言ってんだろうが!?あぁ!?ふざけてんじゃないわよっ!私の言うことが聞けないのっ!?もう・・・あんたなんか大っ嫌い!!
・・・早くやめてよ・・・ばか」
「円卓の騎士達が地上に叩きつけられていく。そして四肢が順番に刈り取られる・・・最後に首にゆっくりと黒い刃が入っていく・・・彼らは想像を絶する痛みを伴っているに違いない・・・彼らは消えていく。真っ赤に染まった刃だけが地面に立ち並ぶ・・・」
「・・・いい!?あとで話があるから待ってなさい!私は忙しいから戻るわよっ!!」
「おっと・・・彼女は言葉を言い終えるとすぐに光になって消えていった。
戦場に立っている者はただ1人・・・すべての敵は倒れた。彼はたった1人で戦い抜いた。この場に残る者は何を思う・・・今この戦いを制した者が決まった。
勝者は・・・ハイロリだぁぁぁぁぁ!
彼は戦場に1人佇んでいる。彼の背中にはどこか虚しさが感じられる。先ほどまでの騒々しさがまるで嘘のようだ・・・彼はどこか元気が無さそうに見える」
「カラスさん・・・哀しそう。苦しくなってくる」
「・・・どうしたの?私まで胸が締め付けられちゃう・・・」
「キングの様子が変だ・・・」
「ご主人様?」
「ハイロリ様の心が苦しんでいる・・・」
「この感覚・・・ボクは知っている」
「彼を闇が包んでいく。どこかに行ってしまったようだ。彼の姿はどこにもない・・・勝利者インタビューをしようと思ったが残念だ。さてボーナスイベントの結果だが・・・」
こうしてハイロリによる心を折る報復戦は終わった。彼の恐怖に押し潰された者。彼を畏怖する者。彼に怨みを持った者。彼に魅了された者。彼に触発された者。彼を信奉する者。彼に付き従う者。変わろうとしている者。全財産を失った者。彼の異変に気づく者。この日様々な者が生まれた。
「・・・いやぁ暴れていたねぇ。ハイロリ君」
「お前の方がよっぽど悪人じゃないかハイロリよ・・・」
「いいじゃないかい。オレの女に手を出したらこうなるって他の来訪者はわかったんじゃないかい?あたしは嫌いじゃない。リヒテルもそう思うでしょ?」
「ん?ああそうだな。いつか闘いたい。しかしあいつ・・・。フーカ。しばらくアリスに付いていてやれ」
「ん?なんだいいきなり。アリスにはハイロリがいるじゃないか?さぁそれより飲もうよ。夜はまだまだ長いよ!」
ハイロリが現れる。
「カポネ」
「アニキ!お疲れ様っす!」
「今後の話なんだが・・・」
「わかったっす」
「ああ頼んだ」
ハイロリが消え、また現れる。
「これでギルドはできたぞ。何がしたいのかはわからないがとりあえずオレの部屋にいるアリスという女の子に色々教えてもらえ。彼女は教えるのが上手いし面倒見がいいからな」
「「「「「ありがとうございます」」」」」
「アースだったか?」
「はい。私がアースです」
「アリスに会ったら伝えてくれ。今まで幸せな時間をありがとう。オレは彼女達をずっと愛していると」
「サプライズですか!?いいなぁ。私達もいつかされたいです」
「そんなところだ。オレはガキには興味がない。もっと大きくなったら考えてあげるよ。いい女になれよ」
ハイロリはまた消えた。
「・・・ご主人様帰ってこないですね」
「美貴と一緒にいるならいいんだけど・・・」
「・・・とりあえずダーリンを待つしかないね」
この日ハイロリが帰ってくることはなかった。
「・・・はぁはぁ・・・血か。体は重いが痛みは感じないか・・・終わったな・・・夢のような時間ではあった。ありがとう」
ハイロリは1人静かに血を吐いていた。