闇と光 第87話 消えたハイロリ
ハイロリが消えてから1週間が経過した。
「みんなごめんね。仕事が手間取っちゃってやっと戻ってこれたわ・・・。ってみんななんで泣いてるの?慶太はどこ?」
「ハイロリ様が帰ってこないの・・・」
「ダーリンいなくなっちゃった・・・」
「ご主人様・・・」
「え・・・?なんでなの!?ちょっと待って!私ならナビだから慶太の近くにいけるはず・・・拒否されてる。・・・ってなんであの子達がいるの?」
「ご主人様のギルドのメンバーです・・・。あの子達から伝言があったんですがお別れの言葉に感じました・・・」
「アリス邪魔するよー」
「また泣いてんのかい・・・自分の信じた男を信じなくてどうするんだい。おっ!ようやく美貴とやらも来たのかい・・・ちょうどいいついてきな!ほらお前達も稽古の時間だよ!ハイロリから頼まれてたんだ。いくよほらほら!(リヒテル・・・恨むぞお前!毎回呼びにいくあたしの気持ちにもなれっていうんだ。ハイロリはなにかに苦しんでいる・・・言うなとリヒテルに言われてるしあぁーーもぉーー)」
その頃1人の男は静かに座っていた。
「なんだ・・・またきたのか。今日はこれをくれるのか?ありがとうな。いつもこういう時に慰めてくれるのはなぜかお前らなんだよな。ほらおいで」
「この馬鹿弟子が!誰が勝手にサボっていいと言った?」
「ああ脳筋師匠か・・・」
「して何をしとるんじゃ?動物達に随分と懐かれてるようじゃが」
「傷心中だよ。昔から落ち込んでると動物達が慰めてくれんだよ。バカだからなのかな?動物は昔からすぐ懐いてくれた。脳筋師匠も単純だから逃げてないんだろきっと」
「儂の場合は儂のカリスマ性のおかげじゃな。ほう・・・小僧から女の匂いがしないとは珍しいな」
「オレは捨てられたんだよ。まぁ別れの言葉を言われるのが嫌でここに逃げてきたんだけどな」
「痴話喧嘩でもしたのか?がははは。フラれたのか。どれ師匠の儂が慰めてやろうではないか」
「お優しい師匠なこった・・・。ところでおっさんはなんで鬼嫁と別れないんだ?」
「別れないんじゃない。別れられないんじゃ。おかげでコソコソ他の女に会いにいくしかない」
「ふっ・・・おっさんが別れられないってどこの魔神だよ」
「魔神・・・その名ではぬるいかもしれぬ・・・小僧は怖さを知らぬから言えるのじゃ」
「調子に乗ってたかもなぁ。本能に身を任せてたら気づいた時には遅かった。彼女達全員殺すぞと言わんばかりに怒ってたもんな」
「がははは。1人でも大変なのに全員とはな。しかし直接聞いたわけじゃないのじゃろう?」
「いや鬼嫁が怒ってたらおっさんは聞きにいけるのかよ?」
「いや無理じゃ!」
「・・・やっぱりな。まぁオレの場合は嫌いになりました。だから別れてくださいって言われて捨てられるパターンなんだろうけどな。彼女達からならたとえ殺されてもいいんだけど・・・別れの言葉だけは言われたくない。現実逃避中だ」
「まぁそう落ち込むな。宇宙には星の数ほど女がいる。そのうち代わりが見つかるじゃろうて」
「代わりがあるならそれでもいいさ。でも彼女達の代わりはいねぇよ」
「そうゆう時には一心不乱に剣を振るのみじゃ。ほれ稽古にいくぞ」
「いや死んだら部屋に戻っちゃうじゃん。だから稽古はいいよ」
「死ななければよいのじゃ」
「いや無理・・・まだ無理。今のオレじゃまだおっさんの相手にすらならねぇ」
「ったく・・・うじうじしょうがないのぉ。もっと単純に物事を考えよ。お主はあれこれ考え過ぎじゃ。死なないように稽古してやるからついてこい」
「いや脳筋師匠なら笑いながら殺すでしょ」
「馬鹿者!偉大なる師匠を信じろ。儂にできぬと思うのか!?」
「・・・わかったよ」
「その前に腹ごしらえじゃ。ほれゆくぞ」
清十郎がハイロリの肩に触れると2人は光に包まれた。
「ここは?」
「儂の別の訓練場じゃ。ここなら前の場所より頑丈じゃ」
「・・・脳筋過ぎだろ。どんだけ訓練したいんだよ」
「ほれ。できたぞ」
「これは何だ?」
「卵かけご飯じゃ。漢の飯じゃよ。スパッと飲める」
「オレ卵かけご飯嫌いなんだよな」
「なんじゃと!?卵が嫌いなのか?」
「いやスクランブルエッグとかなら好きだ」
「生卵がダメなのじゃな?」
「いや卵って調味料だと思うんだ。卵かけご飯は醤油を食べるための調味料だな。オレはバターを食べるスクランブルエッグが好きなんだ」
「お主天才か!!確かに儂は醤油派じゃ!何にでも醤油をかける。だから卵かけご飯が好きなんじゃな!?」
「そうゆうことだ。ほら枝豆とかは塩を食べるための調味料なんだぜ」
「確かに・・・あの塩気がいいでの。がははは。お主やっぱりなかなか頭が良いのぉ」
「オレ塩ご飯食べるわ」
「おう食え食え。おかわりはいっぱいあるぞ」
「腹も膨れたことだしそろそろ稽古するぞ」
「どんな稽古するんだ?」
「今までと変わらんよ。ただし3分じゃな。そして儂相手に3分耐えるんじゃなくて闘えるようになれ」
「いやそれこそ死ぬだろ」
「がははは。慌てるでない。儂を誰だと思っている?」
「脳筋師匠」
「違うわっ!馬鹿者っ!超絶なる漢・・・漢of漢・・・その正体はモテモテ漢じゃぞ!」
「・・・意味わかんねーよ」
「なんじゃ頭が良いと思ってたのに大したことないのぉ」
「いやおっさんよりはいいと思う。武は完敗してるけど」
「おうわかっとるのぉ。頭が良いのか悪いのかよくわからんわい」
「悩んでるのが馬鹿らしくなってきたよ・・・で結局死ぬんでしょ?」
「いや儂がダメージを与えぬように相手してやろう。ただし死んだと思ったら一から仕切り直しじゃぞ」
「嘘をつく可能性はあると思わないのか?」
「がははは。お主はそうゆうところで嘘はつかんよ。弟子のことならわかっておるわ。まぁあの闘いはお主らしくてよかったと思うぞ。女の子をメロメロにさせるとはさすが儂の弟子じゃ。特に女達の集団はよかった。お主が誘えばみんな喜んでついてきたじゃろうに・・・もったいないのぉ」
「見てたのか。ならわかるだろう?あの途中の視線の怖さを」
「あれは思い出したくないのぉ。儂もちょっとビクッとしたわい」
「じゃあそろそろやろうか。おっさんは夜にまた野暮用があるんだろ?早くしないと間に合わなくなるぞ」
「飯と風呂の時間以外はひたすら稽古じゃ。睡眠の時間もとらぬぞ?クリアできるまで終わらないからの?ついてこれるかバカ弟子よ」
「脳筋師匠の弟子なんだぜ?そのぐらい余裕だ!しかし野暮用はいいのか?」
「がははは。よう言うたっ!可愛い弟子のためじゃ。気にするな!」
「鬼嫁にバレたとかじゃないだろうな?」
「な、なぜそれを!?」
「師匠のことならわかってるさ。さすがオレの師匠だ」
「がははは。ではそろそろいくぞ?」
「ああっ!こちらから行かせてもらう!」
「ほぅ・・・やはり無駄な力が抜けて前よりよいではないか」
「お褒めに預かり光栄だ。そのうち喋れないくらいまで追い詰めてやるからな!」
「楽しみにしとるぞ。さぁ見せてみよ!小僧の力を」
1人の勘違い野郎と1人の自由人は共に嫁から逃げてきていた。ハイロリの新たな修行が始まる。ハイロリが嫁達に再会する日はくるのであろうか。