闇と光 第88話 怪盗紳士漢組誕生
あれから数ヶ月経過した。2人はいつものごとく風呂に入っていた。
「がははは。まだまだ甘いのぉ小僧」
「おっさんが化け物なんだよ!あと1分だかんな。それにおっさんも話す余裕がなくなってきてたじゃないか?」
「儂は寡黙でクールな漢なのじゃ。まだまだじゃのぉ」
「いや正反対だぞおっさん・・・。しっかし最初はなんでって思ってたけどサウナ終わりの牛乳は格別だなぁ」
「ようやくお主も漢の嗜みを学んできたのぉ」
「ところでおっさんはなんで毎日服を変えてるんだ?男2人しかいねーのに」
「漢たる者身嗜みが重要じゃて。そうゆうお主の服はボロボロになってきたのぉ。儂のを着るか?」
「いやいい。正直ずっと前から服なんて要らないと思ってる。なんでみんな色んな服を着たがるんだ?そりゃ女の子達には可愛い服や綺麗な服を着て欲しいさ。それで彼女達が笑顔になるならオレは嬉しい。それに実際見惚れてしまうしな。でも本当に美しい姿はなにも纏わないありのままの姿だと思っている」
「ワイルドじゃのぉ。まぁ確かに・・・儂もその姿が1番好きじゃのぉ」
「だろ?男も同じだと思うんだ。だからオレはなにも着なくていい。それに別に見られて恥ずかしいもんじゃないし」
「がははは。そんなもん見せつけたら他の者が自信を失くしてしまうぞ」
「そんなへなちょこなやつらどうでもいいんだよ。所詮自然界でモテるのはより優れた雄だ。結局のところ女の子がどう思うかが重要だ。きゃあとか言いながらなんだかんだ手で隠しながら指の隙間からじっくり見てくるだろ」
「そうじゃのぉ。自然の摂理じゃな。なら儂の方が小僧よりモテるのぉ」
「実際おっさんの方がいっぱい女の子いるからその通りだろうよ。まっオレは数人の子がいてくれればそれでいいんだけどな。今じゃ叶わぬ夢だな」
「もったいないのぉ。儂ほどまではゆかぬがお主もモテるじゃろうに」
「だからオレの要らない分は全部もらっていいって。もう怒られて嫌われるのも2度とごめんだからな」
「儂もそうじゃが小僧もなかなかの漢じゃ。戦い方は性に合わんがの。案外怒ってても女は真の漢を嫌いにならないもんじゃぞ?1度儂らを味わってしまったら他のへなちょこになんか惚れることはできなかろうて」
「知的と言え。化け物相手に弱いなりに喰らいついてんだ。そこは褒めるとこだろ。まぁ誰よりもオレは彼女達を愛してる自信がある。この愛に勝てるやつはいないぞ」
「そうじゃの。儂の好みじゃないからそれは負けとるな。初めて小僧に負けた気がするのぉ。儂も負けておれんな」
「あれ?おっさんは剣1本で闘うのが漢だと言ってた割に結局2本で闘うのか?オレは1本増えて3本になるだけなんだけど」
「小僧。教えをひとつ訂正しよう。真の漢はひと振りの武器と立派な武器の2本で闘うのじゃ」
「まぁおっさんも立派だからな。ところで今日はカップラーメンが食べたいな。なんなら三食それに飯つきでいけるぞ」
「小僧なんて贅沢を!!だがそれはよい案じゃ。小僧今から一緒に盗りにいくか?」
「ふっ・・・オレの盗みのテクを見せてやろう。女の子の心を盗むだけじゃないということをな」
「漢は黙って正面突破じゃ!!よしどちらがより多く盗むか勝負じゃ!地球に行くぞ小僧」
「えっ地球に行けんの?なにどうゆうこと?」
「時は漢なりじゃ!さっさと行くぞ小僧」
「・・・だから意味わからんて」
この日、地球の日本という国の大都市すべてからカップラーメンとある飲み物が大量に奪われるという謎の事件が起こった。現在世界中で大量失踪事件についての議論が未だに繰り広げられている。そんな中、日本では令和第2の大迷宮入り事件として報道されることになる。なにしろ手がかりがまったくないのだ。目撃者の証言はみな光が!闇が!と訳の分からないことを言っている。2人の思いつきで起こった事件であることは誰も知らない。
「がははは。大量じゃのぉ小僧。これで毎日贅沢できるぞい。それはそうと儂の勝ちじゃな。ぬ?なんじゃそれは?」
「ふっふっふーー!ついでに盗ってきたんだ。これは女の子に次ぐパワーアップアイテムだ。教えてやろう。エナジードリンク妖怪だ。緑がなかなかいい味をしていてな。これを飲むと時間制限つきだがブーストされるドーピングアイテムだ」
「ほぅ。どれどれ・・・。なかなかいけるの!ほぅ確かに軽くなったわい。こんなものがあったとは・・・。むぅ・・・この勝負引き分けにしといてやろう。ほれ小僧。ひと仕事終えた後の酒は美味いぞ。お主もどうじゃ?そろそろ付き合え」
「別におっさんの勝ちでいいのに。勝ちなんかよりもこの2つを大量にゲットできた方が重要だ。いや実はな・・・断ってるのは理由がある。オレはこの世界に来てから変わったんだ。酒を飲む時は女の子の口からしか呑まん。酒は女の子の調味料だ!女の子なしではまずくなる」
「がははは。なかなかグルメじゃのぉ。まぁよい。いつか互いに女を抱きながら盃を交わそうではないか」
「ああ。オレに相手ができればな・・・。あの子達以上の女の子はいると思えないが・・・」
「儂が紹介してやろうか?」
「やめてくれ。おっさんと兄弟になるつもりはない。酒でも注いでやろうか?」
「いや構わん。儂が注ぐでな。年功序列というものが大嫌いなんじゃ。だから女からしか注いでもらわないことにしている」
「奇遇だな。オレも年功序列が大嫌いなんだ。個人的に敬語は必要ないと思っている。差別しているに過ぎない。使いたいやつだけ使えばいいだろ。歳が地位がどうこう言ってるやつってちっちゃいよな。責任とってもらえるならそれでもいいんだけどな」
「ほぅ。小僧やはり気が合うのぉ。責任ってなんのじゃ?」
「このくだらない世界。くだらない国境。くだらないルールとかを作った責任かな。とってやるって言うやつがいるならじゃあ今すぐ死んでくれって話だ。先人達に敬意を払えと言うやつもいるがオレのいない世界で起きたことなど知らん。別に先人がやらなくてもオレがやったかもしれないだろう?誰かにできたことならオレにでもできるはずだ。そういう残す価値がないものはすべてぶっ壊す予定だ」
「がははは。だから強くなろうとしておるのか。やはり自由でなくてはのぉ。しかし小僧。お主には王の器が備わっているな」
「オレの器は確かに大きいとは思う。だが中身は空っぽだよ。底辺のさらに底にいるようなやつの戯言に過ぎないさ」
「いいや王の器じゃよ。儂も持ってるでな。同じ匂いを感じる」
「まっ脳筋師匠は素直に凄いと思ってるよ」
「がははは。面白いのぉ。王の器を持ちながら他者に劣っていることを認めておる。お主なら頭はいいから稀代の賢王になるやもしれんな」
「そんな褒めてもなにも出ないぞ?ほら注いでやるよ。漢が漢に注ぐ酒ならよいだろう?」
「お主も単純じゃのぉ。がはははっ!それなら構わぬよ。女に注がれるのと違って弟子から注がれる酒もまた格別じゃ」
「単純さは師匠譲りなんじゃねぇのか?」
「よいぞ。もっと存分に儂から盗むがよい」
「へいへい」
2人の男は毎日闘っていた。好き勝手やりながらいつのまにか仲良くなっていた。この2人が宇宙中を巻き込む大事件を起こすことになるのだが、それはずっと先の話である。
「ほらほら!へばってきたんじゃないかい!?アヤネ!まだまだいくよ」
「私は負けない!まだまだやれる!」
「アリス。その動きをする時は重心をこっちにずらせ」
「はい!リヒテル様!」
「そうそうもっと早く。もっと重い一撃を意識するんだ」
「その頭ボクがカチ割ってやるから黙ってろ!」
「もっとマナを込めるのを早くするのだ!ただの弾丸では銃など使わない方がましだぞ!?」
「はいっ!!慶太を捕まえるために頑張ります!」
「リヒテル様。あの女達なかなか成長が早いです。すぐに我々を超える影になるかと・・・」
「もっと続けろ。お前らを超えたらあいつらもここに連れてこい。オレらがもっと技術を叩き込んでやる」
「よーし!そろそろお昼ご飯にするよ。うちの娘達が準備できたって言ってるよ」
「「「「もうちょっとだけ!!」」」」
「そりゃあ次に会った時ハイロリを逃がさないくらい強くなれとは言ったのはあたしらだが・・・」
「「「「会った時逃げられたくありません!」」」」
「まぁハイロリはどういうわけかあんたらを避けている。その理由が知りたいんだろ?そんなあいつを無理矢理捕まえて吐かせるために修行してるんだろ?腹が減ってたら捕まえられるもんも捕まえられないよ。冷めないうちに食べてしまいな!いいねっ!?」
「フーカお姉ちゃん・・・。私まだしたいです。この子が産まれる前にご主人様を捕まえたいんです」
「アリス。焦るな。お姉ちゃん達もチャンスがきたら協力してやる。まだその時じゃないよ」
彼女達はハイロリを捕まえるため修行をしている。本来はそんな理由ではなかったのだが、フーカ達はそれを了承し指導していた。彼のくだらない理由によってすれ違っていく両者。彼らの未来やいかに。