闇と光 第89話 漢達の企み

「それまでじゃ!」

 


「なんだよ。おっさんまだまだこれから楽しいとこじゃねぇかよ」

 


「がははは。まだまだ相手はしてやる。だがのぉ3分経ったのじゃよ。ようやったのぉ」

 


「え?夢中でわからなかった・・・」

 


「よもやこんなに早く達成できるとは思わなかったぞ」

 


「師匠がいいからじゃないのか?」

 


「そうじゃったわい。偉大な師匠がついておったのぉ」

 


「でその偉大なおっさん。次はなにをすればいいんだ?」

 


「うーむ・・・よしデキウスの元からあるものを盗むぞ」

 


「デキウス?いいけど何を盗ろうってんだ?」

 


「この世界をちょっといじくる鍵じゃよ。ひとつだけでよい。それで儂が手頃な敵を用意してやろう。互角な力を持っている者同士が命を削り合う。それがさらなる成長への道じゃ」

 


「しかしオレは強くなるためにっていう理由で殺しはしたくない。まぁ誰かを殺したことはないんだがな。だけど殺すべき時がきたらその覚悟は既にできている。今はその時じゃない」

 


「ほぅ。甘ちゃんなのかと一瞬勘違いしたぞ。だが強き決意が感じられる。その信念曲げるでないぞ?がははは。安心せい。死んでもその者は蘇ることができる。思う存分にやれい!」

 


「おっさんの言うことだから疑いはしないよ。でその鍵がなんで必要なんだ?普通に呼んでくればいいんじゃないの?」

 


「その鍵を使って儂がお前の相手を第1エリアのボスに降臨させてやろうと思ってな。デキウスの管理する惑星だから簡単に連れてこれんのじゃ」

 


「ふーん。だから必要なのね。でどういう手筈で盗みにいく?」

 


「もちろん正面突破じゃ!!・・・といいたいところだがさすがにこの星はデキウスの権限が強い。そこでだ。今度デキウスのやつが実況という遊びでいなくなる時を狙う」

 


「もうそんな時期か。第4回対抗戦か・・・アリス・・・もうすぐ産まれるのか・・・」

 


「なんじゃ?子供ができとったのか」

 


「あぁ・・・だがオレは必要とされてない。もういいんだ・・・」

 


「お主がそれでよいならよい。だから新たな女を見つけろと言っておるじゃろ。儂など子沢山じゃぞ」

 


「ふっ。さすがオレの師匠だ。なぁ?どうせ盗るなら派手にやろうぜ?」

 


「何をするんじゃ?」

 


「盗みに入る時は予告状というものが定番だろう。それをデキウスが実況中に矢文で届けるんだ。中身には本当のことは書かない」

 


「ほぅ・・・予告状とはなかなか熱いのぉ!!がははは。さすが小僧!お主も悪よのぉ」

 


「そういうおっさんこそ悪い顔をしてるな。とりあえず初日に予告状を送りデキウスを焦らしの計にかけよう。あいつは変態だから勝手に感じることになるだろう。焦らせば焦らすほどいい。その油断をついて盗みにいこうぜ」

 


「なるほど。デキウスのこともよぉわかってるな。さすが同類じゃ!」

 


「ああオレは変態だからな。そういうおっさんもそうだろう?」

 


「がははは。儂も変態じゃ。ここは強盗らしく正装していくぞ?」

 


「それ完全なる変態じゃねーか。どこの裸族だよ・・・まぁ面白そうだから乗っかるけどさ」

 


「さすが我が弟子じゃ。がっはっはっ」

 


その様子を静かに見守る者がいた。

 


「あはは。いいねいいねぇ。やっと見つけたよ。2人で何をしてるかと思ったらこんなことをねぇ・・・ハイロリくん実にいい。素晴らしい。だがこの世界では残念ながら僕には敵わない。だが君に免じて褒美をあげよう。

 


鍵はひとつ好きにするといい。ただ代金はもらうよ。より深い混沌を。ボクの遊びのアクセントとして払ってもらおう。変態紳士達よ!あぁ・・・想像するだけでゾクゾクするぅぅぅぅ。あぁ・・・待ち遠しいよ。僕は恋い焦がれてしまう。その時を」

 


2人の漢は知らない。計画が完全に漏れていることを。デキウスの手の平の上で転がされていることを2人は知らない。

 


「よし小僧!3分達成のお祝いとして風呂へ行こう!」

 


「え?今風呂入ってんじゃん」

 


「お祝いと言うたじゃろ?魅惑のお風呂を見に行くんじゃよ!」

 


「師匠!お供しますっ!!」

 


「がはははっ!そう焦るでないわ。お互いに日本人が好みのようじゃからのぉ。向こうが夜になるまでしばし待て!お楽しみは・・・じっくりとな」

 


「いや早く行こうぜ?夢の着替えルームとかもあるだろ?無防備な状態で産まれたままになる姿を見てりゃ夜なんてあっという間だぜ?」

 


「小僧・・・やはりお前は天才か!ならばまずは前菜から楽しむとしよう。今日はフルコースじゃな!」

 


「デザートがないのが残念だけどな。漢は急げってやつだ!行くぜおっさん!」

 


「がはははっ!わかってきたのぉお主も」

 


漢達は今日も変態道を突き進む。この日、日本という国で銭湯やプール、試着室や更衣室などの照明が一瞬暗くなり明るくなるという事態が起きていた。電球交換が人知れず流行した日となっていた。2人の変態道の探求者によって起こされた事件であるということには誰も気づいていない。そう・・・このアホな漢達2人を除いて・・・。

 


「もうすぐ対抗戦の時期ね。彼女達と会えるの楽しみだね。ハイロリ様がいないのが残念だけど・・・」

 


「ダーリンのことだからまた乱入してきちゃったりして。乱入するの好きだからね」

 


「もうすぐアリスの子供が産まれるのに慶太はなにしてるのよ!?」

 


「ご主人様のことだからきっといつか戻ってきてくれますよ。あっ今蹴りましたよ」

 


アリスのお腹に耳を当てる12人の女達。我が子を待ち望むかのように産まれる子供を皆が待っている。そして皆がハイロリの帰りを待っている。再び彼が彼女達の前に現れる日は近い。