闇と光 第127話 ボスエリア突入

オレは妖精の村を探索した。小さすぎるお姉さんと小さすぎるおっさんがいっぱいいた。妖精探しゲームという違うゲームをしている気になった。隠れているとかじゃない。NPCのサイズの問題だこれは・・・。

 


一応家の中も物色した。タンスを開けようにも小さい。開けたところで切り刻んだ布切れのようなものしかでてこない。ただ妖精のお姉さんの匂いはいい匂いだった。オレを匂いの迷宮の中へと誘い、閉じ込めるような甘い匂い。それだけが収穫である。

 


ひと通り会話をしたと思われる。情報をまとめてみようと思う。

 


この村を出ると妖精の国がある。妖精の国は軍事国家。多数の兵を抱えているらしい。そして1番重要な情報だ。強い者ほど体が大きい。ということはだ・・・強いお姉さんならよく見える。うんそれだけだ。

 


それに妖精の長と言ったら超絶美形のエルフっぽい女王様と相場が決まっているはずだ。どさくさに紛れて堪能できるかもしれない。この先には夢がいっぱい広がっているな。

 


あれだけ苦労したにもかかわらず大した情報を得られていない・・・。悔しかったので妖精のお姉さんを全員もれなく指で触りまくってやった。やりきったオレには虚しさしか残されていなかった・・・。

 


それでは行ってみましょうか。第2エリア妖精さんの国へレッツラゴー!

 


おお・・・ゲームっぽく頭の中に直接ムービーが流れている。この間は動けないようだな。ただ辺りの景色を映しているだけの映像だけどな。これできるんならもっと違うところも拘って欲しかったよ変態神・・・。

 


果てしなく続く1本道。道の両脇には木々が生い茂っている。それ以外変わったものはない。

 


てか・・・国なのに建物ないってどうゆうことよ。結構広範囲見えるのに・・・もしかしてめっちゃ広いのかな?軍事国家って言ってたよね?・・・無双って言ってたよな?・・・嫌な予感しかしないのは気のせいなのか・・・。お、メッセージが出てきた。

 


妖精の国を制圧せよ

勝利条件

妖精の長の撃破

敗北条件

ハイロリの死亡

 


うん・・・要らないところに力を入れてるね。制圧か・・・結局長は倒さないといけないのな。絶理はボス用にとっておくべきだから・・・道中は3つの命唱しか使えないわけだな。あとは闘気で乗り切るしかないと・・・とりあえず道を歩いていこう。止まっていても何にも始まらないし・・・。

 


索敵にはなにもかからないか・・・。闘気だけじゃ半径10キロくらいしかまだカバーできない。地平線まで続く道。オレはいつまで歩き続けるのだろう。ん?地震?いや地鳴りか。あれ?妖精って空飛んでるよね。どうなってるの?

 


・・・はい。理解しました。敵は確かに妖精だ。まごうことなき妖精である。でもオレこの妖精の別名を知っている。

 


ゴブリン。

 


緑の妖精さんの名前はゴブリン。妖精なのは違いない。なんでこれをチョイスした・・・長ってことはキングか。絶対そうだよなゴブリンキングを倒せ。そういうことか。向かってくる敵は10万はいるな。数は尋常じゃない・・・まぁ命唱温存してどの程度までやれるか確認しましょうかね。

 


ハイロリシールド・・・連装っ!

 


いくぜぇぃ!

 


オレはゴブリンの軍団に向かって駆け抜ける。激突まで50メートル。その時それは起こった。

 


・・・体が動かねぇ。

 


再びあるものが頭の中を駆け巡る。そうムービーだ。槍を振り回しているゴブリンがいる。

 


「我こそはゴブ信(しん)!!陸軍第7大隊第16中隊第38小隊長なり!」

 


・・・ちょっと待て。結局小隊の隊長なのかゴブ信は。小隊にして10万の兵・・・そして大隊中隊とも言っていた。しかもナンバリング付き・・・やべぇぞこれ。敵の総数が膨大な数でしかない。どこまで番号あるんだよ・・・しかも陸軍とか不吉なワードにしか聞こえない・・・。まだ体が動かんな。まだ続きがあるというのか?

 


「名乗らぬとは我を愚弄する気かっ!!愚者には裁きをっ!!」

 


・・・えっ?はっ?

 


辺りに次々と光が現れる。転移してくるゴブリン達。ハイロリの周辺はゴブリンによって埋め尽くされる。空は翼の生えたゴブリン達によって光が消えてしまうほど埋め尽くされている。

 


っていきなりムービー終わるんじゃねぇ!ちくしょう・・・数が多い・・・やってやらぁ!!

 


ハイロリは迫り来るゴブリン達を次々と薙ぎ倒す。その様子はまさしく無双。しかし倒せども倒せどもその場から動くことはできない。

 


くっそ!全く数が減る気配がない・・・一兵卒の強さは大したことはない。それでも数の暴力が文字以上に暴れ過ぎている。もはや妖精(ゴブリン)無双じゃねぇ・・・ゴブリンハザードだっつーの・・・。

 


ハイロリソードからマナフルバーストしても焼け石に水だしな・・・こうなりゃ命唱を使って突破するか?制限時間があるんだよな?というか重ねられるのか?殲滅は無理だな。敵陣を切り裂いて離脱するしかない。うん・・・それしかない。

 


「命唱。我はハイロリ。新人類の王なり」

 


重ねるのは問題なさそうだ。無事に拾連段に入れた。ちなみに命唱にある特性を見つけたのだ。11段以上にしようとすると強化度合ががくんと下がる。1段ずつの強化度合を上げるのが重要のようだ。ところで最初の起点を唱えた時点で時間のカウントスタートなのか?時間もどれくらいあるのかすらわからない・・・いくか。

 


ハイロリ!いざ参るっ!!

 


ハイロリはまっすぐに敵陣を切り裂いていく。その行く手にはゴブ信の姿がある。

 


「ゴブ信どけぇぇっ!」

 


「よかろう・・・このゴブ信がお相手致す」

 


2人は激突する。ハイロリの通った道にはゴブ信の首が転がっていた。

 


えっ・・・弱いっ!!そうだよなぁ。小隊長で強かったら本気で詰むもんなぁ。っていうかゴブリン多過ぎっ!進んでも進んでも見渡す限りのゴブリン・・・。

 


あっ・・・命唱が強制的に解除されてしまった。持続時間は10分といったところか。上の命唱だと普通に考えればもっと短くなるよな。

 


進めなくなったハイロリに対し再びゴブリンの波が終わることなく向かってくる。

 


さっき名乗らなかったのがいけなかったのかな?単純に名乗るだけならいいけど・・・違う気がする。起点の命唱には名乗りの意味が込められていると第1エリアの星で学んだ。命唱を使わなければ名乗りにならない?この考えが当たっているのだとしたら・・・いや考えたくないな。

 


次は多乗命唱だこら!・・・拾乗!!

 


ゔぉぉぉぉぉっ!!

 


うん。切れたわ。効果時間は5分ってとこな。だいぶ進んだけど景色が変わらない。広過ぎだろこの国・・・。初見でクリアできるほど甘くないってか。次は多界命唱いってみよう。

 


捌界!!

 


手を抜けば拾界まではいけるんだけど、本気でやると捌界までが限界である。込める言葉、込める思いによって強化度合が変わるというのが改めて実感できるね。うんうん。

 


おっ・・・水場らしきものが見えてきた!地平線に広がる水。・・・どう考えても海っていうやつだよね?命唱もここで切れるか・・・時間にして3分か。となると絶理は1分?

 


海っていったらそうなるよね。陸、空ときたら鉄板だよね。そうだよね・・・。

 


海上から海軍らしきゴブリンが現れている。しかしハイロリは海を目の前にして進めない。

 


建物すらない・・・。とりあえず情報を得ることに徹した方が良さそうだな。

 


肆の理っ!!からの・・・アイシステム起動!!海の向こうにきっとなにかあるはずだっ!

 


ゴミのような数ほどのゴブリン達がいる。海軍、空軍の数は別視点で把握しておこう。軍隊の全貌がそれで掴めるはずだ。

 


新たな陸地発見・・・建物あった。あれは砦?立派な街もあるな。こっちは村か?武装していない。ゴブリン国民ってところか?やべぇ・・・国民の数が多い。

 


・・・あった!あれがきっと首都だ。だいたいここの真下にある。強いマナを感じる。あれがゴブリンキングか。イケメンちっくなゴブリンだな・・・。オレの妖精女王様という淡い夢は一瞬で砕かれてしまったな。まぁゴブ信軍に遭遇した時点で諦めてたけどさ。

 


てかキングの隣にいる赤いゴブリン。あいつの方がやべぇぞ・・・大将軍ってやつか?この状態以外で闘り合える気がしない。そしてひとつだけわかったことがある。

 


ここは国じゃねぇ・・・星だ。

 


地球の数十倍?でかすぎだろうよ・・・。ん?王がこっちを見てきた・・・ニヤリ?

 


ばかやろう!屈強なゴブリン引き連れて転移してくんじゃねぇよ!!アホなのか!?赤いのもいるし・・・あっ・・・終わった。やっぱり持続時間は1分だったようだ。

 


うん。詰んだね。あぁ赤い妖精さんがゆっくりと剣をお抜きになさってる・・・。やっぱり死ぬ時は捨て台詞が必要だよね。

 


「我はハイロリっ!!オレが死んでも第2、第3のハイロリが必ず貴様らを打ち倒してくれようぞっ!!」

 


テンション上げるのって大事ですよね。消えた・・・ってことはそうですよね。高い所から眺めるゴブリン達。壮観だねぇ。そしてオレの体から紅い噴水が吹き出している。またくるよ妖精ちゃん・・・。