闇と光 第95話 叛逆のフーカ

オレは唯、レナと見つめ合っていた。アヤネもそこに並ぶ。視線を外し、離れようとした時弾丸がオレに向かってきていた。遅れて銃声がやってくる。大きく飛び躱す。

 

地面についた瞬間、氷塊がそこから現れる。即座に避ける。避けた先に火柱や竜巻がさらに生じる。再び避けようとするとなにかにぶつかる。・・・岩の壁か。再びオレは大きく跳んだ。

 

空中のオレに対し白黒黄の三色のレーザーが追撃してくる。足場を作り避け続けているが長くは続きそうにない。レーザーの隙間を縫うように銃弾が襲来する。急加速しなんとか回避する。しかし少し体が重い。誰かが干渉してきているな・・・闘気を全開にし地面にようやく降り立つ。

 

「慶太お説教タイムよ。とっと諦めてそこに正座しなさい」

 

「野生のカラスさんを捕獲する。大人しくしてれば痛いことはしないからね?でも抵抗するなら・・・あはっ!真っ赤なカラスさんになっちゃうよ?」

 

美貴とカーチャ・・・5人に囲まれている。結局上しかないのか。オレはまた空中へ逃げる。そこに短剣が数十本ずつの束でいくつも向かってくる。避けながらその者達を見る。姦9か・・・。どうやら彼女達と仲良くやっているようだ。今はお引き取り願いたいものだがな。強引に突破するか・・・。まだ穴はある。超加速し包囲を免れたかに思えた。

 

やべぇ!!

 

風の刃を紙一重で避ける。視界の先には既に高速の刺突の連撃が迫っている。・・・アリスか。フーカが抑えていたはずでは・・・カジノ以来の快感を覚えた。この感覚を再び得ることができてオレは幸せだアリス。ハイロリソードを1本だけ使いなんとか攻撃をしのぐ。おっさんに他は全部壊された。だから今使えるのはこの1本のみなのだ。

 

アリスの重い刺突をくらいオレは地面に叩きつけられる。そこに5人の追撃がやってくる。逃げ道は針の隙間を通す程狭いが一筋だけある。まだ・・・舞えるぞオレはっ!闇を纏いその光明を辿る。包囲網をなんとか切り抜けたオレの体は急に動かなくなる。

 

「捕獲完了よ。愛しのベイビーちゃん」

 

妖艶な愛らしい笑みを浮かべるチャーリーがそこにいた。完全に7人に囲まれた。そしてオレの体は動かない。頭上には吉子サリー、そして鳥軍団が空を覆い尽くしこの場を暗闇に染める。さらに物陰から姦9が睨みを効かせている。万事休すか・・・。

 

その時、空が割れて光が差し込む。

 

「真の漢は遅れてやってくるのじゃよ」

 

脳筋師匠が助けにきてくれた。7人の包囲が上空からの急襲により解かれる。さらに体が動く。

 

「小僧っ!!」

 

オレとおっさんは空へ思いっきり跳ぶ。だがオレは上空へ到達することができなかった。今柔らかいものに顔が埋もれている。この感触と匂いは知っている。フーカだ。彼女に思い切り抱き締められている。7人の女達から注がれる愛情と同じくらいの愛情を感じる。しかし外れないな。というかもう少しこのままでいたい。・・・やはり強い。彼女の手によって身体中撫で回されている。でも嫌ではない。

 

「ハイロリは頂いていくよっ!」

 

「させると思うてかっ!!」

 

おっさんが急降下してくる・・・っていうか早く物持って逃げろやオバケ頭!絶対逃げれてたよね!?バカなの?いや脳筋だったわ。

 

おっさんの体が吹き飛ばされる。だががっちり攻撃を受け止めていたのでおっさんは無傷だろう。

 

「お前の相手はオレだっ!」

 

「命が要らぬと見た。ただでは済まさんぞ!」

 

おっさんとリヒテル様がすさまじい金属音とともに闘り合っている。さすがだなおっさん。明らかにオレの師匠の方が押している。なに・・・増えただと・・・。

 

「加勢するぞリヒテル!」

 

「久しぶりに血が騒ぐねぇ」

 

「その程度で儂を止めれると思うなよ!」

 

アデルソンにラルカスさんもきた。なるほど・・・動きがいいな2人とも。しかし3人相手でも押してるな。相変わらず化け物師匠だ。頭はオバケだけどな。で・・・だ・・・結局オレ連れ去られてるんですけど何しにきたのあの脳筋・・・。あんたが登場しようがしまいが変わらないじゃんかよ・・・。

 

「ハイロリ。あたしが味方してやるからあの子達に話してみろ」

 

「・・・やだ」

 

「そんなこと言ってるとあたしの胸の中で窒息死させちゃうんだからね。ほれぐりぐりぃ〜〜、ついでに挟んじゃお」

 

そんないい匂いに溺れさせるなよ。そしてそんなとこで挟んじゃいけません。擦り付けるのもやめなさい。若干湿って・・・フーカお姉さん?オレはなにもやっていないからな・・・。

 

オレは埋もれたまま連行される。振られるだけなのになぜここまでされなきゃならない。ほらみんなまた怒ってるオーラ出してるし・・・帰りたい。

 

「お前たち取引しようさね。1日ハイロリの彼女になれるならこのままお前らに渡す。なれないなら逃す。あたしはどっちでもいいんだけどねぇ」

 

「ちょっとまはふ。ひゃふほふはひはにゃむにゅ!?」

 

「ほらハイロリもそうしたいってさ。どうするんだいお前達」

 

「・・・お姉ちゃん。ちょっと相談させてください」

 

オレの声は2つの山によって遮られる。いい加減にしないとこのまま頂を食べちゃうぞ。まぁ重ねて言うが嫌ではない。むしろご褒美だ。なにやら神妙な面持ちで会議をしている7人。なんで振るだけなのにそんな真剣に会議できるの?そんなにオレが嫌いなのか・・・悲しくなってきたのでフーカを強く抱き締める。彼女も強く抱き締め返してくれた。お姉ちゃん・・・僕帰りたい・・・。

 

「お姉ちゃん。取引を受けます。ご主人様をそのまま捕まえておいてください」

 

「えっ!?いいの?」

 

なんかくねくねし出したぞ。オレとしては密着度合がさらに高まるから嬉しいけど・・・。7人の女に囲まれる。そしてなによりみんな近い・・・。7つの手によってオレの体は掴まれている。

 

「お姉ちゃん少し離れててください」

 

「このままでもいいじゃんか。アリスのいけずぅ〜〜」

 

「そんな膨れてもダメですよ。約束は守りますがご主人様の女になることは認めてませんからね」

 

「・・・お姉ちゃん悲しい。ほらこれもとっちゃえ」

 

オレの覆面がフーカの手によってとられる。7人にがっつり抱き締められている。産まれたままの姿のオレをホールドする美女達。なにこれ・・・おっさんが助けてくれればまだ逃げる望みもあるけど・・・ダメだあの脳筋・・・。楽しくなってきてるのがわかる。3人がかりでなんとか持ち堪えている。あっ・・・フーカも行った。さすがに戦友は違うな。連携力が凄まじい。互角に闘り合ってる。おっさん援軍ルートはもうないと・・・。

 

こうなってはしょうがない。諦めて別れの言葉を聞くとしよう。考えただけで涙が出てきた。