闇と光 第98話 好敵手登場
舞台からオレが戻るとみんな戻ってきていた。みんなそれぞれ愛くるしい動作で出迎えてくれる。いやぁ・・・再び彼女達のそばに戻ってきてよかった。あれ?そもそもなんでいなくなったんだっけ?記憶にございません。
デキウスの宣言により花火が上がる。夜空を染める光の花弁が星空に舞う。花が咲く度に歓声が上がる。ふと彼女達を見ると楽しそうな表情をしている。横顔がとても綺麗だ。
「美貴。アリス。アヤネ。唯。カーチャ。チャーリー。レナ。花火なんかよりもずっと綺麗だぞ。この会場で1番輝いている。どれだけオレを惚れさせれば気が済むんだ・・・またさらに好きになってしまった」
みなの顔が少し紅くなる。結果としてまた全員くっつきながら見ている。花火じゃなくてオレに視線をよこすお姉さんはなんなんだ・・・花火見とけよそこは。
「アーサーわかりますぅ?あれですよあれ。自然に言うのがいいんですよ」
「カポネも言ってくれてもいいのよ」
2人の男はこの後恥ずかしい思いをすることになる。勇者に栄光あれ。
花火もクライマックスに差し掛かった時遥か彼方に巨大な蒼き光の柱が天より降り立つ。観客達はデキウスの演出だと思い楽しんでいる。この場でただ1人違う反応をした男がいた。
「・・・あれが相手か」
彼とデキウスだけが知っていた。清十郎が鍵を使い、なにかをボスとして降臨させたのだ。同格と謳われる相手の出現に対し、ハイロリは静かに闘志を燃やしていた。
花火が終わるとデキウスから途中経過の発表があった。日本支部以外は現在第6エリア攻略中。なんと日本支部は第3エリア攻略中であった。おい・・・お前らやる気だせよもっと。他に負けてんぞまったく・・・オレ?オレはまだ第1エリアすら抜けてないよ。
「ここで嬉しいお知らせと残念なお知らせがある。まず嬉しいお知らせからだね。関係のない者がとある支部のボスを1匹書き換えてしまったようだ。ついでだから全部僕が書き換えておいたよ。もちろんその1匹のボスの強さに合わせてね。
その支部とは・・・
日本支部だ。よかったね日本支部のみんな。強敵と戦えるよ。さらなる成長のために頑張ってくれたまえ。特に未だに第1エリアすら突破していない子には頑張って欲しいな。僕なりに日本風にアレンジしておいたエリアもあるから楽しみにしていてくれ」
変態め・・・あいつこっち見たぞ。この発言に対し、文句を言わないオレを見て仲間達がなにか言いたそうな顔をしているな。てか弱体化じゃなくて強化なのな?まぁ好きにしてくれ。興味ないし。しかし一応あいつらのケツを叩いておこうか。
「アサ吉ぃ!カポネぇ!もっと頑張れよっ!もっと熱くなれよっ!そんなんじゃお嫁さん増やせないぞっ!」
「・・・ハイロリのことだから勝手に先に進んでいると思っていたのだが・・・それこそボスエリア無視するとかハイロリならありそうだし・・・というか誰が原因でごたごたしていると思っている?遊んでないでそろそろお前も攻略に参加しろ」
「頑張るっす!ところでアニキは今どのあたりにいるんすか?」
「それはPVに参加したみんなが悪いな。参加は自由にしたはずだしな。うんうん。そしてオレは攻略には興味がない。1人クリアすればいいんだから誰かに任せておけ。
オレは第1エリアで薬草採取したくらいかな。動物はまだ殺してない。博愛主義者だからな・・・あんな可愛い動物達をやっつけるなんてとんでもない・・・そもそもボスエリアすらどこにあるかわからない。そういや最初に入ったきり・・・ほぼ街から出てなかったわ」
2人どころか他支部の仲間達からも突っ込まれた。興味がないことはしない。オレはオレの道を進んで強くなると言ったら誰も文句は言ってこなかった。実際そこそこ強くはなったからな。焼肉定食が自然の摂理だよねぇ。
強くなる秘訣を聞かれた。穴という穴から血が噴き出る程、脳を酷使すればよいと言ったらみんな無言になった。・・・失敬な。彼女達にも怒られる始末だ。ごめんなさいもうしないので笑顔に戻ってください。
「次に残念お知らせだ。昨日僕は怒った。なかなか戦おうとしないからだ。だからペナルティーとして全員のアバターを取り払う。ありのままの姿を見せておくれ。そもそもそんなものを身に付けてるなんてやる気あるのかい?ふふ」
デキウスがそう言うとみんなが光に包まれる。カポネ組もチャーリー、レナの部下もそのまんまなのな。男は基本どうでもよかったので元の姿は知らない。そんでアサ吉はと・・・なんだこいつ!?アバターよりイケメン化してやがるぞどういうこった。阿鼻叫喚の地獄絵図となっているな。まぁオレらには関係ないな。そのままだし。
でも・・・お姉さん達の胸のサイズが全体的に小さくなっていい感じだな。豊胸するよりも貧胸しといてくれよ・・・同志達と熱く語り明かせそうだな。アデルソンの貯蔵庫からいろいろくすねて、祝いの貧宴会を開きたいなぁ。
デキウスはその様子を見終わると消えていった。今回の名場面集が流されていたが特に見る必要はないかな。赤子の遊びのようだ。しかし・・・ぱちもんだらけのパレードは酷かった。ちゃんと権利とっておけよ・・・。彼女達がいなきゃ帰ってるわ。
0時までしか一緒にいれないのでみんなとお部屋でまったりしようと思う。マナで星の川を作ったらいつでも会いに行くことが出来たりしないのかな?そうだ、今日はプールがいいなぁ。
閉会フェスティバルは終わりを告げた。その頃デキウスの元に1人の漢が遊びにきていた。
「君が勝手にしたから僕もいじらせてもらったよ」
「儂はそんなこと知らんのぉ・・・ひゅーひゅー」
「口笛吹けてないからね?それに誤魔化しきれてもないよ?」
「まったく五月蝿いのぉ。儂は弟子を稽古していただけじゃ。それじゃ帰るでな」
「君の権限を無くそうかと思うんだ」
「なんじゃと!?覗きが出来んくなるではないか!?」
「じゃあ・・・」
「ほぅ・・・熱いのぉ。あいわかった。遥か高みにて弟子を待つとしよう」
おはよう。昨日はプールでみんなと泳いでみた。水着姿もまた良い。みんな際ど過ぎる水着を着ていた。オレの好みに合わせたと言っていたが、みんなわかってるじゃないか。アリスに至っては別のところを隠して際立たせるという高等水着をつけていた。それはヤバ過ぎるよ・・・即座に、水中ネオをして盛り上がった。また3人と来年一緒に過ごしたいな。
今日は第1エリアのボスに会いにいこうと思う。おっさんが用意した相手というのがどこかにいるはずだ。ボスエリアってどこにあるんだろうな?
動物達を愛でながら男は散歩している。彼を見た動物達は本能的に逆らうことをやめ、服従することを選ぶ。結果として今こうなっているわけだ。
「お前らいいもふもふしてるな。でもちょっと臭いからお風呂入んないとダメだぞ。温泉作ってやるからうちにくるか?」
彼の周りは動物園と化していた。喉を鳴らしながら動物達は気持ち良さそうだ。彼の言葉を聞くと動物達は引っ越すことを決意したようだ。彼のゴッドハンドにかかれば動物達もメロメロになってしまう。
「うん。子供のためにペットをいっぱい用意できたな。鳥とトカゲだけじゃ味気ないし。よかったよかった」
彼は満足そうな顔をしてまた道を歩く。辺りは静かになっている。同じように森の一部分に切り取られたかのような静かな場所があることに彼は気づいた。誘われるようにそこへ向かっていく。しばらくすると不思議な感覚が体を通り抜けることになる。彼はボスエリアに入った。
彼が見たものは人型の獣だった。明らかに強いマナを秘めているのがわかる。
「お前が相手か?」
「主の言っていた弟子というのはお前か?」
「脳筋オバケ頭の弟子ならオレだ」
「おのれっ!主を愚弄する気か!?」
「愚弄はしていない。普段からそう呼んでいる。それに理解できてる時点でお前もそう思ってんじゃねーか」
「減らず口を・・・。なぜお前のようなか弱き人間風情があのお方をそう呼べる!?」
「ならそのか弱き人間風情とやらの力を見てみるか?」
「どうやら威勢だけは一人前のようだな」
「口を動かすことしかできないのか?しかし脳筋を主に持つなら当然のことか」
「・・・(こいつ強ぇな)
・・・(こやつ強いな)」
静けさの中2つの生物は互いの強さを悟る。これがハイロリにとって永きに渡る好敵手との出会いであった。