闇と光 第106話 命名
「おぎゃぁ!おぎゃぁ!」
「あれ?お腹空いたのかも?アリス母乳出る?」
「ハイロリあんたわかってるね。でも母乳は必要ない。ミルクに2人のマナを注ぎ込んだ方が栄養も免疫も高いんだよ。あんたら2人だったらとてつもないミルクが出来るだろうよ。にしししっ」
え?そういうことも出来るの?マナちゃんやべぇ。やっぱりマナちゃん最強。
「うふふ・・・ご主人様母乳はちゃんと出ますよ」
ん?それはどういう意味でしょうか?
「ハイロリ。この世界にはね・・・新婚初夜って言葉だけじゃなくて出産初夜って言葉もあるんだよ。まぁあんたらは毎日お迎えもちゃんとしたみたいだけどね。あはは」
・・・お迎えは確かにした。出産初夜?・・・え?なんですと?
「ちゃんとマナで保護するんだよ。まぁあんたらは保護してずっとしてたみたいだけどね」
はい?・・・とすると先程のアリスの言葉は・・・。
「うふふ。私のなんだから嫌じゃないですよね?ご主人様?」
いやまて・・・オレにそんな趣味はない。待つんだアリスよ。
「嫌なんですね・・・私が嫌なんですね・・・」
「いや!喜んで!搾り尽くしたいと思います」
「ですよねぇ。ご主人様大好きです」
こうしてオレは謎の出産初夜というものを体験することになった。意外と癖になるものであった。変態?いやちが・・・違わないな。変態です。アリスのなんだから嫌じゃないのは本当だしな。むしろ好きだっ!堂々とすることが大事である。うんうん。
さすがに今日は少なめで切り上げてすりくんタイムがメインになっている。産まれて来た子供同様にアリスが愛おしくてたまらない。すやすやと眠っているアリスに愛してると声を掛けたりもした。我が子はすやすやと眠っている。
無事初夜を終えたオレ達は部屋の外へ出た。そしたら彼女達がそこで眠っていた。思わず笑ってしまった。ずっとここで待っていてくれたのだろう。たぶん産声は聞いているはずなのでそれで安心してしまったのだと思う。そういえば外が騒がしかった気もするしな。
オレはもう目の前のことで忙しかったから周りに気をかけることもできなかった。
しかし・・・敵に攻められていたら危うかったな。アリス達の命を危険に晒すところであった。これは大きな反省点である。油断大敵とおっさんにオレは教わった。
だがばっちり油断していた。次はそうゆうことのないようにしっかりと勉強しておきたいと思う。命ばかりかアリスの姿まで見せてしまうことになるからな。それは断じて許さん。そんなアリスを見ていいのはオレとオレの女の子達、そしてこの子だけだ。
フーカがオレ達を呼んでいた。立派な木箱である。こないだ上げたものと同じ素材。桐箱であった。何だろうと見てみる。
そこにはへその緒があった。先ほど産まれたばかりだというのにしっかりと乾燥してある。オレはおっさんとの修行の成果を生かし、赤ちゃんのへその緒をしっかりと切り取り、そして治療しておいたのだ。
・・・だってフーカがやれって言うんだもん。自然にとれるの待てばいいじゃんね!?オレなら出来るだろとか言いやがって・・・まぁ出来たんだけどもさ。それをフーカがマナで加工してくれていたのだ。マナちゃん無敵。創造主マナちゃん説をオレは提唱したい。
まぁ素直に2人で見た瞬間ありがとうって礼を言ってしまった。アリスを自分の体に寄りかからせながら彼女達が起きるのを3人で待っている。ほんと・・・幸せそうにみんな寝てるよ。
本来出産後は安静が必要なのだがアリスクラスになるとマナの力を使えば入院はいらないそうなのだ。実際は住人達の中の半数くらいはマナで対応できるそうだ。アリスは飛び抜けているので余裕である。一応何かあるといけないのでできるだけ動くなと命令した。久しぶりの命令。
まさかこういうところで生きるとは思わなかった。それと一応すぐに対処できるように出産後からオレはおっさんやリュカウスとの戦闘時のような警戒レベルに入っている。なにかあったら大変だからな・・・。
「フーカ。みんな起きたら名前を発表しようと思う。実はだいぶ前から決まっていた。他の3人も呼ぶか?」
「ほんとかい?もちろん呼ぶさね。アデルソンが泣き虫だからたぶん泣くぞ。にしししっ」
その一言でオレはフーカとシンクロして笑みを浮かべた。アリスにキスをせがまれたのは秘密だ。
しばらく待っていると、1人目を覚ました子がいるようだ。
「あ・・・おはよう。慶太とアリスは元気そうね。・・・あれ?その腕にいるのは・・・きゃぁぁぁ!可愛いっ!」
寝ぼけている美貴さんであった。ローテンションからのハイテンション。名人芸を見ているかのようだ。その声を聞き、他の女の子達も一斉に目覚める。
みんなが一斉に我が子を見ている。それぞれの表情が可愛かった。目を輝かせていたり、悶えていたり、笑顔だったり、泣いていたり・・・美貴もまた師匠譲りで泣き虫なのであった。
自分のことのように喜んでくれている。喧嘩することもなく嬉しく思う。バチバチだったらどうしようってなるもんな。アリスとアヤネの初対面は酷かったな・・・。今ではこんなにも仲が良いもんな。なんだかんだこの世界に長居してしまっている。この星はどの辺にあるんだろうな。地球から遠くなければ迎えに来やすいんだけどな。もはやオレの中でここを現実以外と考えることはできない。
肉体は地球にある。美貴が治療してくれたからな。しかし精神はこちらにある。この体は肉体とリンクしている別のなにかだ。呼び方はわからないが器に精神をいれた形なのだろう。いわば・・・精神体といったところかな?どんな技術がそれを可能にしているかわからない。デキウスは自分を神と言った。だからたぶん神なのだろうと思う。そもそもまともに戦ったらはっきりいって今のオレでは絶対に勝てない。それくらいの強さを持っている変態だあいつは。
ところでなんでみんなうちの子を抱っこしようとしないのだろうか・・・あぁそうか・・・ビビってるわけだな。オレも最初はそうだった。首座ってないと怖いもんな。
「ほらみんなビビってないで抱っこしたいならしていいんだよ?こんなことしても大丈夫なんだぜ?」
オレは我が子を高速で空中移動させる。彼女達から悲鳴が上がる。美貴に至っては何してんのよとキレている始末だ。アリスだけはにこにこしている。さすがアリス。ちゃんとわかっている。
「マナで首も保護しているし、実際揺れを感じてないから大丈夫だよ。可愛い子にそんなことできるわけないじゃん」
「紛らわしいのよっ!!なんで慶太はいつもそんな意味のわからないところに高等技使ってるのよ!?」
タネをバラしたのになぜ怒られてしまったのだろうか。やはり女心は難しいぜ・・・。そうこうしているうちにリヒテル叔父様とラル爺、そして悪爺がやってきたようだ。
悪爺・・・ほんとに泣いてら・・・悪人の目にも涙とはこのことか・・・。
「ハイロリ。極悪人の目にも涙だよ?」
「さすがお姉ちゃん!」
「口に出さずとも息ぴったりになっているだと・・・」
可愛い声でフーカが乗ってきてくれた。考えていることが彼女にはどうやらわかってしまうらしい。愛し合った結果かなこれは。アリスの顔が膨れているのが可愛いぞ。
「さてこの子の名前だが・・・知りたい?」
一斉にみんなから突っ込まれる。最近みんなのノリが良くなってきて嬉しく思う。あんまりもったいぶってもあれなので発表しようと思う。アリスに目で合図する。
「「六花(りっか)ちゃんです!」」
命名理由はアリスに譲るとしよう。
「5英雄・・・そして私の父が私の命を繋いでくれました。そのお陰でこの子がいます。6英雄の産み落としてくれた花です。花のように美しく色んな可能性を持った子・・・そして6英雄のような子に育って欲しいと思って2人でつけました」
おや?アデルソンの様子が・・・。
「そんなメソメソしてっからリヒテルさんに負けるんだよ!アデルソン!」
「・・・違いない」
「あはは。そうだねぇ」
「さっすがハイロリぃ。わかってるぅ」
「うるさい!でも今は泣かせろ・・・」
悪人のガチ泣きが見れたようだ。と言いつつも残りの3人も涙を浮かべていた。もらい泣きしてしまったのでやめてください。師匠の涙が弟子達にも伝染する。
発表会は涙に包まれたのであった。