闇と光 第153話 砕かれる器達

両軍激突する。それぞれが死に物狂いで闘っていた。

 


「てめぇなかなかやりやがるなっ!?」

 


「当たり前だっ!!ゴブ信っ!!よく見ろっ!?オレだっ!!本物同士が闘ってんだからなっ!!空気読めっ!!この脳筋っ!!」

 


「なんだ先生かっ!?やっぱり先生とやるのはおもしれぇっ!!少ない闘気でよくもここまで抑え込める・・・今日こそは1発いれてやらぁっ!!

 


くらえっ!!龍水閃っ!!」

 


「末っ子脳筋っ!!相手がちげーよっ!!あほっ!!」

 


本物のゴブロリとゴブ信はなぜか闘っていた。ゴブ信のターゲットが歯応えのないゴブ備軍から真のゴブロリへと変わってしまったのだ。脳筋というものは時と場合を選ばないのが玉に瑕である。

 


「あっ!?ちくしょうっ!!逃げやがったな先生っ!!その闇になるやつ卑怯だかんなっ!!」

 


ふぅ・・・危ねぇ・・・本気でぶっ放しやがったなあの野郎。まぁ巻き添えで結構死んだからいっか・・・脳筋には付き合ってらんないわ。拾乗状態とはいえ、ゴブ信の一撃をもらってしまうものなら死んでしまう。またしてもこいつのせいでゲームオーバーになるところだった・・・何度こいつの先駆けからの流れで殺されたことか・・・さて命唱の時間もない・・・あいつだけは始末しておかなければ・・・。

 


「おいおい・・・どうなってんだこりゃ?」

 


「ゴブロリ殿とゴブ信殿が闘っていますな・・・それもなぜか大量に・・・」

 


困惑するゴブ策とゴブ史慈。目の前で味方であるはずの2人が争っている。しかも大量の数が・・・この光景を見ればそれも無理のないことであろう。

 


「ゴフフフッ!!どうせゴブロリ殿の仕業でしょうっ!!全軍ゴブロリ及びゴブ信に突撃せよっ!!皆殺しで構いませんっ!!」

 


「おいおいっ!?それでいいのかよっ!?」

 


「大丈夫ですよっ!!強いのが本物のゴブロリ殿とゴブ信殿ですっ!!この程度でやられる2人ではありませんよっ!!弱い敵から狙いなさいっ!!」

 


「「「「「ゔぉぉぉぉっ!!」」」」」

 


ゴブ策軍の兵士達もスパーキング状態へと変わる。彼らの合流によりさらに戦場が混迷としていく。

 


「権こらぁっ!!潔くその首よこせぇぇぇっ!!」

 


なぜかそのままの姿でいたゴブ権をゴブ策が見つける。ゴブ策の双戟が左右からゴブ権に襲いかかった。その攻撃はゴブ権の目の前で止まることになる。

 


「その身のこなし・・・ゴブ泰だな?権を庇うなら容赦はしねぇぞっ!!」

 


「主君には指1本足りとも触れさせぬっ!!」

 


「おぉゴブ泰よくやった!!褒美じゃっ!!その命置いて行けっ!!」

 


かつてのゴブ堅のように綺麗に心臓を貫かれているゴブ泰の姿があった。

 


「主君・・・ご乱心をば・・・」

 


倒れ行くゴブ泰。その傷を見てゴブ策は思い出していた。以前父の亡骸についていた傷とまったく同じなのである。

 


「・・・ゴブロリっ!!我が父・・・ゴブ堅を殺したのはお前かっ!?」

 


「あぁ・・・オレだ。気付いたのはお前が初めてだよゴブ策・・・ゴブ羽の星下のためにオレが殺した。それが真実だ。今ここで仇討ちでもするのか?したいというならいつでも相手になるぞ?」

 


「いや・・・今はそんなものどうでもいいっ!!親父を殺したからにはゴブ羽軍の星下・・・お前の思い描いた平和を見せてみやがれっ!?そんだけの覚悟を持ってやってんだろっ!?気に食わねぇ時はぶっ殺す・・・覚えとけっ!!ロリ先っ!!」

 


「だったら死ぬ気でついてこいっ!!平和を見届けるまで絶対に死ぬんじゃねぇぞゴブ策っ!!もっと扱き使ってやる・・・こんな雑魚共の相手をいつまでもしてるわけには行かねぇんだよ・・・ゴブ卓軍相手にゴブ良は相当苦戦してるはずだ・・・さっさとぶっ殺すぞゴブ策っ!!」

 


ゴブ権の姿をしたゴブロリとゴブ策が互いに競い合いながら戦場を駆け上がっていく。叶わなかった兄弟の共演。2人の息は噛み合っていた。共通した目標・・・妖精の星の平定のために敵を屠り続ける。

 


そんな2人の姿を見たゴブ策軍の士気は一気に高まる。次々に兵士達の姿が光り出す。兵士達が突然変異を始めたのだ。兵士達の姿は燃えるような茶色の長髪・・・その目は漆黒の中心に燃えるような紅い眼球・・・さらに翼は漆黒と金色の翼へと変化している。

 


ゴブ策の姿も兵士達と同様に変わっていた。ただ1つ違う点は3本の角が頭から生えていたことだ。それはまるで堅、策、権・・・それぞれを表しているかのようであった。

 


「策・・・嫉妬しちゃいましたが許してあげましょう。よりイケゴブに変わりましたからね。

 


さぁ私達も負けていられませんっ!!2人に続いて下さいっ!!」

 


ゴブロリとゴブ信の群れを蹂躙していくゴブ策軍。彼らの通った後には変化の解けたゴブ権の亡骸が転がっていたという・・・この日呉軍は壊滅することになる。そしてゴブ備軍もまた崩壊へと追いやられていた。しかしゴブ備の姿は発見できなかった。

 


「ゴブ備は逃してしまいましたか・・・しかし呉を滅ぼせたのは大きいですね。これで呉と蜀が消えた。残るは魏のみ・・・敵は強大ですがやるしかありませんね・・・」

 


「瑜ーちゃん。心配することはないさ。命に代えても必ずぶっ潰してやるさ」

 


「瑜よ。オレもついている。ゴブ史慈もいる。それになんかみんな強くなったみたいだしなっ!!ゴハハハッ!!」

 


ゴブ信、ゴブ策の一言により兵達の士気は高まっていく。そんな中突然現れる者達がいた。

 


「ゴブロリ様・・・こちらに」

 


ドサッという音とともに投げられたのはゴブ備の姿。ゴブロリは予めゴブジョーカーに指示を与えていた。隊列を離れ逃げ出すやつがゴブ備である。たった一言・・・その言葉によりゴブ備の命運が決まったのである。ゴブガード達もまた漆黒のゴブリンへと変貌していた。強さは以前と比べ物にならないくらいまで成長しているのだ。

 


「ま、待てっ!!命だけはたす・・・」

 


「「「「「・・・」」」」」

 


命乞いをしようとしているゴブ備の首が突然飛ぶ。ゴブロリの仕業だ。それを黙ってみんなは見つめていた。

 


「こんな小器に構っている暇はねぇっ!!勝利に浮かれてんじゃねぇぞっ!!蜀・・・そして呉・・・んなもん勝って当然の雑魚だっ!!真の敵は魏であるっ!!手強い相手だ・・・厳しい闘いが待っているであろうっ!!だがそれでも我らは進まねばならぬっ!!この星の平定のためにっ!!

 


これより死地へと向かうっ!!目標は赤壁っ!!魏軍との決戦を行うっ!!ゴブ良がまだきっと戦線を維持しているはずだっ!!全軍急行せよっ!!」

 


「「「「「ゔぉぉぉぉっ!!」」」」」

 


ゴブロリ達は赤壁へと急ぐ。苦戦している仲間の元へ・・・時は少し遡る。ゴブ良は魏軍の猛攻に苦しんでいた。考え抜いた策もまったく通用しない。

 


宰相ゴブ操そして皇帝ゴブ卓。悪政を貫くゴブ卓であったが戦に関してはとにかく頭がキレる。妖世の奸雄と暴虐の王が混ざり合う。さらに10賢人と呼ばれる才能豊かな家臣もいる。ゴブ良ひとりの智では被害を少しでも減らすことしかできない。幸いにも夜戦の覇王の異名を持つゴブ良に対して夜襲は仕掛けてこなかった。仮に夜襲されていたらひとたまりもなかったであろう。

 


「攻め入ってこない・・・?伏兵を気取られてしまった?」

 


「伝令っ!!伏兵部隊が奇襲されました。現在交戦中。相手は左将軍ゴブ順。右将軍ゴブ遼。さらに10大将のうち5大将の姿が確認できております」

 


「くっ・・・救援すべきか否か・・・救援しようにも対抗できる武がこちらにはない・・・」

 


「伝令っ!!後方より砂塵。味方の援軍。旗印はゴブ羽様に御座います」

 


「・・・!!」

 


苦戦していたゴブ良の元にゴブ羽が駆けつける。援軍はゴブ羽軍20億。しかしゴブ良の軍は既に15億まで数を減らしていた。一方魏軍は未だ60億の兵を抱えている。さらに後方の拠点にはゴブ卓が軍を率いて待機していた。

 


ゴブ羽軍はこの状況を打開することができるのであろうか・・・。