闇と光 第145話 三面楚歌

宛城の闘いを終えて一夜明けた。ゴブ羽軍の将兵クラスともなると半球睡眠は当たり前のテクニックとなっている。ゴブロリが3人に早い段階で教えていた。すべてはより女の子を愛でるためにである。

 


ゴブ妻達も旦那と共鳴していくに従って半球睡眠を会得していく。ただし週に一度だけ交代制で普通に寝る日もある。これは休息のためではない。寝起きの時にのみ、脳天に直撃してくる濃厚な匂いを楽しむためである。この匂いは将兵達の中でもなかなか人気がでている。ゴブロリは何を教えているのかがちょっと理解できない。

 


ゴブ策とゴブ瑜も清々しい表情でゲルの外にいた。彼らはいつも隠れながら共鳴していたのだ。故に思いっきり解放できる悦びを知らなかった。昨晩はとても盛り上がったらしい。

 


「しかし羽ーくん。隠れないというものはいいもんだな」

 


「えぇ。周りの目を気にしなくていいのは心地良かったです」

 


「ん?そんなの毎日だぞ?うちの軍はあれが基本陣形になっている」

 


「策・・・やはりここは・・・」

 


「そうだな。羽ーくん・・・いやゴブ羽殿っ!!我らを配下に加えていただきたいっ!!」

 


「ゴブ羽殿っ!!私達を含めゴブ史慈以下25億の将兵達を受け入れていただきたいっ!!」

 


「・・・えっ?なんで!?来てくれるのは心強いけど・・・呉はいいの?」

 


「ゴブ羽よっ!!我が教えを思い出せっ!!

 


王たるもの・・・」

 


「偽りなき思いはその器にてすべて受け止めるべしっ!!」

 


「なら言うことがあるんじゃないか?」

 


「ゴブ策、ゴブ瑜よ。その申し出・・・受けようっ!!存分に我が軍にて励めいっ!!」

 


「「有難き幸せっ!!」」

 


「まっ普段はいつも通り仲良くしたらいいさ。なっ?ゴブ羽?」

 


「その通りだ。策っち、瑜ーちゃんこれからよろしくな」

 


「おうっ!!よろしく頼むぜ羽ーくんっ!」

 


「ふふ。羽ーくんよろしくお願いします」

 


ゴブ羽軍に心強い味方が加わった。ゴブ策、ゴブ瑜、ゴブ史慈さらには25億の飛行部隊が加わることになる。。兵力順に行くと魏>蜀>妖>呉。兵力で3番目になることができた。隠し黑州兵をいれれば蜀すら抜いているのはゴブロリしか知らない。

 


「失礼しやすっ!!ゴブ羽様っ!!緊急の早馬が届いたでござるっ!!」

 


ゴブ蔵よりもたらされた情報により、ゴブ羽軍に戦慄が走る。

 


魏挙兵。妖軍に向かい進軍中。その数約80億。

 


呉挙兵。妖軍に向かい進軍中。その数約25億。

 


蜀挙兵。妖軍に向かい進軍中。その数約50億。

 


「このままでは3方面から囲まれてしまいますね・・・ちょっと考えたくありませんね・・・」

 


「ええ・・・どうやら昨晩の件で各国の我が軍に対する危険度が増してしまったようですね・・・なにか打開策はないか・・・」

 


「ゴブ良っ!!それにゴブ瑜もだっ!!思考を止めるなっ!!止めた先にはなにもないっ!!常に頭を動かせっ!!幸いにもまだ手はあるっ!!」

 


「まず呉軍に対してはゴブ策、ゴブ瑜に対応してもらう。ゴブ史慈がおそらくゴブ権の猛攻を耐えているはずだ。急行せよっ!!

 


ゴブ信お前も行けっ!!ゴブ瑜の指示をよく聞きことにあたれっ!!時間との勝負だぞ?ひと月内にケリをつけろっ!

 


ゴブ策っ!!小覇王と呼ばれるその名・・・期待させてもらうっ!!

 


ゴブ瑜っ!!億に匹敵するゴブ信を見事に使いこなして見せよっ!!」

 


「「「御意っ!!」」」

 


「次に魏軍。ゴブ良っ!!

 


ゴブ吉、ゴブ子、ゴブリー、ゴブ蔵、ゴブ超さらに黑州兵を50億預けるっ!!ひと月でいい・・・どうにか持ち堪えろっ!!できるなっ!?」

 


「このゴブ良の名にかけて必ずやっ!!

 


しかし・・・ほぼすべての兵力が出揃っていますが蜀軍はどうされるのですか?」

 


「ふっ・・・決まっているだろう。うちの王・・・ゴブ羽がやる。ゴブ羽軍1万そしてオレが行く。さらに黑州兵の愛天地人各隊長とエリート兵100人ずつの計404騎だけでいい。後はなんとかする。

 


今回ばかりは暴れ足りないとは言わせないぞゴブ羽よ?それとも50億でも足らぬか?」

 


「ゴハハハッ!!充分だ・・・叩きのめしてやるよ」

 


「オレも行くから安心して暴れろ。フォローはオレがすべてしてやる。ゴブリンガードは各部隊の連携役として働いてもらうっ!!いいなっ!?」

 


「「「「「御意」」」」」

 


「まぁ仕切ったものの・・・決めるのはゴブ羽殿っ!!貴方様の役目に御座います。ご決断をっ!!」

 


「ゴブロリの策に異論のある者はおらぬようだな。ならば各軍それぞれの敵にあたれっ!!この星の平和のため我らが敗れることは決して許されぬっ!!

 


ゴブ羽軍の恐ろしさ・・・星中に知らしめよっ!!我が覇道の踏み台にしてくれようぞっ!!

 


全軍っ!!生きてまた会おうっ!!」

 


「「「「「ゔぉぉぉぉぉっ!!!」」」」」

 


ゴブ羽軍はそれぞれの闘いへと赴いてゆく。

 


ゴブ良・各将軍50億対魏軍80億

 


ゴブ策・ゴブ信軍25億対呉軍25億

 


ゴブ羽・ゴブロリ軍1万対蜀軍50億

 


妖精の星を舞台に星全土を巻き込んだ闘いが始まろうとしていた。迫り来る各国・・・ゴブ羽軍はこの局面を突破することができるのであろうか・・・。

 


「ゴブ良殿・・・OK牧場なので?かなり厳しい戦になるでござるよ?」

 


「ゴブ蔵殿・・・この程度で根を上げてしまったら師に合わせる顔がありません。我らよりも兄上と師の戦が1番絶望的ですからね。あれほど集中している師を見るのも初めてです。

 


さて・・・軍議をしましょう。相手は最強の軍です。緻密に策を練らなければあっという間に全滅してしまいます」

 


「なぁ?ゴブ信殿・・・羽ーくん達に兵を回した方がいいんじゃないか?」

 


「兄者がやると決めたならやってくれる。そういう漢だ。それにゴブロリ先生もついている。信じて我らのできることをするしかあるまい。ほら?ゴブ瑜殿はやるべきことを既に始めているようだぞ?」

 


「・・・瑜っ!!この小覇王を骨の髄まで絞りつくし使いこなしてみろっ!!必ずひと月でケリつけんぞっ!?」

 


「元よりそのつもりですよ。しかし・・・ゴブロリ殿とはいったい・・・今は目の前のことに集中するとしましょう」

 


さて・・・仲間を信じる他ないな。目の前の敵に集中しなければ簡単にやられてしまうだろう。

 


まずはゴブ羽を餌にし、他の軍への挟撃を避ける。挟撃されたら一気に劣勢に追い込まれてしまう。主君の命を囮に使うのは減点ポイントだが・・・狙いはゴブ羽だ。こちらに蜀軍の目が向いてくれればよい。

 


敵の総督は奇しくもゴブ紹・・・おそらく蜀軍との最終決戦の地は官渡あたりになるだろう。物語通りの兵糧攻めは無理だろうな・・・たぶんゴブ豊(ほう)やゴブ授(じゅ)も従軍しているはずだ。かつて曹操が勝てたのは2人の言うことを袁紹が聞き入れなかったという要因が大きいはずだ・・・果たしてゴブ紹はどうか・・・。

 


二枚看板と言われていたゴブ醜(しゅう)もいるはずだ。ゴブ良の方は既に抑えているのでいないと思いたい。もしいるならば軍神のゴブ羽もいていいはずだ・・・なのできっとそれは大丈夫だろう。

 


まずは官渡に至るまでの局地戦を制していかなければならないな・・・物語の曹操もこんな気持ちだったのかな。勢力はそこそこ広げてきたけどしょうがない・・・手持ちのカードはすべて使うしかないよなぁ・・・。

 


勝たなければゲームオーバー・・・またやり直すのはさすがにだるい。ノーコンクリアしてやっからな・・・見てやがれ変態神。

闇と光 第144話 目覚める夜戦の覇王

至福の時間を邪魔されたゴブ羽軍は抜刀された刀がいきり立っている。まるで自身の心を表しているかのように荒ぶっている。

 


次々に薙ぎ倒される敵軍の兵。ゴブ羽軍の兵達はみなスパーキング状態に突入している。兵ひとりひとりが万の兵に匹敵する強さを見せていた。

 


「兄者っ!!無事かっ!?」

 


「無事だよ。ゴブ華もゴブ異も無事なようでよかった。でも・・・このようにゴブ信もっと強めにしないと彼女達は満足できないぞ?ふんぬぉっ!!」

 


「「「「「ゴブ羽様ぁぁ・・・」」」」」

 


ゴブ羽は8人のゴブ妻を抱きかかえていた。さすがゴブ楚の覇王である。スペックは高い。軽く8人を体に抱きつかせながら歩いている。勿論センターポジションを勝ち取っているのはスパーキング状態のゴブ鄒。そこへ2人よりも大きい地鳴りが近づいてくる。

 


「兄上。ゴブ信をあまりいじめてやらないでください」

 


「おお・・・ゴブ良。そんなに強くしてゴブ英にゴブ姫は大丈夫なのか?」

 


「「もっとくださいゴブ良様ぁーーっ!!」」

 


「いつもより弱めなので大丈夫ですよ。それにやはりあのお方には勝てませんねぇ」

 


ゴブ良の視線の先にはゴブロリの姿がある。激しい地鳴りを起こしながら向かってきていた。

 


「さすがに何ともないようだな。ゴブ妻達も幸せそうでよかった。たまには月夜の下で愛し合うのも風情があるな。うんうん」

 


ひとり頷くゴブロリ。動きが止まるとゴブ美が激しい地鳴りを発生させる。

 


「「「「「さすがゴブ美先生っ!!」」」」」

 


ゴブ羽達がオレを先生と呼ぶように、ゴブ妻達はゴブ美を先生と慕っていた。アリスの生徒だったゴブ美のことを思い出すと感慨深いものがあるな・・・。

 


「それはそうと先生・・・愛を邪魔するもの達には2度と邪魔する気が起きないくらい懲らしめる必要がありますねぇ」

 


3人の中でゴブ良はゴブロリと過ごしている時間が1番長い。脳筋2人では政策のせの字すら話せないからである。そのためゴブ良はゴブロリの教えをより深く継承していた。

 


再び地鳴りが近づいてくる。

 


「敵はどうやら魏呉蜀の刺客のようですぜ?」

 


ゴブ蔵とゴブ香である。一途ゴブリンになったゴブ香はミスゴブバースで優勝できるかもしれないほど見違えていた。

 


「懲らしめるでは生温い・・・私の教えを覚えているか?味方には?」

 


「「「甘く、敵は滅殺ですっ!!!」

 


「さすが自慢の弟子達だ。その通りだ。我らが愛の時間を邪魔するやつらは敵以外の何者でもないっ!!各国1人を残して全員死刑だ」

 


「おぉっ!!さすがゴブロリ先生っ!!あえて残して恐ろしさを伝え、今後我らの夜を邪魔をさせないようにするためですねっ?しかしそのためには先に1人ずつ捕らえなければなりませんね。そして愛を邪魔するとどうなるか見せてあげるとしましょう」

 


「なるほど・・・ゴブ良よ。さすがである。敵を前にしては我らは怒りに支配されてきっと皆殺しにしてしまうだろうからな。いい案だっ!!」

 


なんとも物騒な軍である・・・。

 


「その必要はないぜっ!なぁ瑜よ」

 


「ええ。その通りですね。策」

 


そこには呉軍のゴブ策とゴブ瑜が腕を組んでいる姿があった。後ろに引きずっているのは3人のゴブリン。ゴブ瑜・・・脳筋じゃない男の子が新鮮でオレは嬉しいよ。

 


「策っち!なんでこんなところにいるんだ?瑜ーちゃんも久しぶりだなぁっ!」

 


「権の野郎が刺客を放ったって聞いてな・・・羽ーくんのことが心配になったんだ」

 


「お久しぶりです。羽ーくん。しかしここはいい国ですね。兵達は皆立派に抜刀している。甘美な匂いも漂っている。策も私も思わず見惚れてしまいましたよ」

 


「みんな癒しの時間を邪魔されて怒っているからなぁ。そっちも相変わらず仲が良さそうで良かったよ。はっはっはっ!」

 


え?ゴブ羽・・・お前2人の関係知ってたの?まじで?オレ知らなかったんだけど・・・しかも何その呼び方・・・どんだけ仲良くなってんだよ。

 


聞けばゴブ羽は2人が恋人であることに最初から気づいており、それとなく2人の時間を作ってあげていたそうなのだ。脳筋覇王ゴブ羽にそんなことができたなんて・・・すべてはオレの指導のおかげだな。うんうん。王に必要な愛天地人を理解してきたようで師として嬉しいよ。

 


そこに現れる12人のゴブリン。地鳴りの中に突っ込んでくるとは・・・命知らずなのかな?

 


「てめぇ・・・ゴブ寧なにしてやがんだっ!?ゴブ当・・・ゴブ普・・・ゴブ蓋・・・おめぇらもかっ!?ゴブ茂(も)はどうした?あいつがお前らを止めていただろうっ!?あぁん!?」

 


「あぁ・・・そんなゴブリンもいましたね。でも殺してきましたよ?」

 


「ゴブ権様に仇なす逆賊がっ!!」

 


「ゴブ堅様の息子であろうと容赦はせんっ!!」

 


「だそうだ?ゴフフフッ・・・お前の時代は終わったんだよゴブ策っ!!これからはゴブ権様の時代だ・・・このゴブ寧様がついでにてめぇの命もとってやんよっ!!ゴブ策っ!!覚悟しろやっ!!」

 


「・・・この野郎ぉぉぉぉっ!!」

 


「策っ!!いけませんっ!!」

 


ゴブ瑜が腕を引っ張りながらゴブ策を止めている。ゴブ羽が手を突き出し2人を静止させた。

 


「羽ーくん邪魔するなっ!!これはオレんとこの喧嘩だっ!!」

 


「いや・・・離れていないとまずい・・・弟の攻撃の被害に合うといけない・・・邪魔されたことを確かに我らも怒っている。だが1番この時間を楽しみに生きてきているゴブ良がキレてる・・・ここはひとまず下がった方がいい・・・」

 


「「えっ・・・!?」」

 


2人が後ろを振り返る。そうして2人は何も言わずにゴブ羽とともにこっちに下がってきた。おっ!ゴブ良がスパーキングしてるっ!愛の時間を邪魔されるのイラつくもんなぁ。愛でることができる時間は限られてる。時間は有限・・・こんな奴らに時間を割くなんてもったいないもんな。

 


「ゴブ良よ・・・見せてやるがよいっ!!我らの愛の時間がどれだけ貴重なことなのかっ!!邪魔をする罪がどんなに重いことかわからせてやれぃっ!!」

 


「はいっ!!先生っ!!

 


・・・てめーら?覚悟はいいよな?英と姫を可愛がってたんだ・・・愛でる時間が減ってしまったじゃねぇかっ!?この落とし前どうつけてくれんだっ!?死んでも足りねぇぞおいっ!!」

 


「・・・何を言っている・・・我が名はゴブ韋っ!!その首貰い受け・・・」

 


ゴブ韋の体が無防備に倒れていく。刺客達は何か起きたのか理解できていない様子だ。遅れて強風が吹き荒れる。

 


「話す時間すらもったいねぇ。お前ら・・・もう既に死んでるぞ?」

 


ゴブ良が刺客達に背を向けると、11人の名だたるゴブリン達が倒れていく。またもや刺客達に向かって強い風が吹いている。刺客達の眉間と心臓には綺麗に穴が空いていた。これは初見殺しのゴブ良の必殺技。

 


風のマナ使いであるゴブ良は射線上の周囲を風で覆っている。その風で空気を急速に吸引。射線上には真空状態が出来上がる。

 


今度は射線上に吸引した空気に風のマナをのせてすべて一気に放出。すると射線上を風の弾丸が通り抜ける。

 


真空を伝っていく風の弾丸。真空波。

 


これがゴブ良の得意技である。普通に風のマナの塊を弾丸としてぶつけるよりも遥かに速さも威力も高い。

 


マナの操作速度も見違えたなぁ。そして被害が出ないように射線の角度も計算し尽くされている。弟子の成長を見るのはいいものだ。ゴブ美がその技を見て反応しているな。銃使いとして学ぶところもあるだろう。相方が止まってる時は代わりにオレが頑張らないとな。

 


「あぁ・・・そうだ。殺されたくなかったら伝えておけっ!夜のゴブ羽軍に戦を仕掛けるならばそれ相応の覚悟をしておけ。見てみろ?もう生き残りはお前達だけだ。死体の山を作ってやるからいくらでもかかってこい。このゴブ良が相手してやる。さっさと消えろやボケナスどもっ!!」

 


ゴブ良が風のマナを使い、各国の方向へと特大ホームランを3発叩き込む。

 


「そうだっ!策っちに瑜ーちゃん。場所貸してあげるから一緒に地鳴り起こしちゃうっ?ここならいくら大声を出しても大丈夫だよ。みんなそれぞれ愛し合ってるからさ」

 


「それはホントかっ!?」

「まことですかっ!?」

 


「よぅーしっ・・・敵は去ったっ!!みな励めいっ!!」

 


ゴブ羽が咆哮を上げる。するとゴブ策、ゴブ瑜とゴブ羽軍一同は行軍速度の数百倍の速さで自身のゲルへと戻っていった。

 


「ゴブ美っ!!やっぱり2人きりでするのが1番だな。少し恥ずかしがってるのもいいけど乱れてるゴブ美が1番可愛いっ!ゴブ美愛してるっ!!」

 


「ゴブロリもっとぉぉぉぉっ!!あぁん・・・好きぃぃぃっ!!」

 


ゴブ羽軍陣営には地鳴りの震源地が新たに1つ増えていた。

 


「策よっ!!ここがいいのかっ!?」

 


「瑜ぅぅぅぅっ!!もっとくれぇぃっ!!」

 


「「えっ!?そっちなのっ!?」」

 


ゴブロリとゴブ美は仲良く突っ込んでいた。魏呉蜀のゴブ羽暗殺は失敗に終わる。そして三国の間で夜のゴブ羽軍だけは絶対に手を出してはいけないという暗黙の了解が誕生する。強さが数十倍に膨れ上がるためだ。

 


そしてその中心にいるのがゴブ良。夜戦の覇王ゴブ良の名もまた星下に轟くこととなる。

闇と光 第143話 宛城の闘い

ゴブ羽がゴブ備を打ち破ったことにより、ゴブ羽軍は4つ目の勢力へと名乗りをあげる。ゴブ羽軍は星の分水嶺とも言われる激戦区周辺に本拠地を構える。

 


ゴブ羽軍を中心に星の北半球の8割以上を手中に収めるゴブ卓・ゴブ操軍は魏国を建国。ゴブ布が大将軍なのは相変わらずである。宰相にはゴブ操が就任。強力な軍を再編しているという噂だ。今のところ内政・軍備強化のため目立った動きはない。

 


南半球の半分を収めるのはゴブ策軍。呉国を建国する。ゴブ羽とは同盟関係にあるのだが、現在内戦が勃発。内戦の原因は戻ってきたゴブ権によるものであった。ゴブ羽友好派とゴブ羽排除派の2つに国は割れている。

 


残りの北半球そして南半球の半分を手中に収めるのはゴブ紹軍。反ゴブ卓連合軍盟主の座は伊達じゃない。流浪していたゴブ備軍も吸収し、蜀国を建国する。最近大規模な遠征を計画しているという噂だ。

 


魏呉蜀・・・その3つの勢力のど真ん中に突如と名乗りを上げた4つ目の国。それが我らがゴブ羽の国である。名は妖(よう)国。星の名前である妖精から名前をとった。

 


新たにゴブ超なる将ゴブリンも加わっている。ゴブ雲との一騎討ちの際、実はゴブロリが闇のマナを展開し体内で刃を止めていた。その結果致命傷を免れ、一命を取り留める。

 


ゴブロリと数刻の対談をした後、ゴブ超はゴブ羽の軍門に降るという選択をした。現在は黑兎馬奇襲部隊を練兵させているところだ。やはり黒い馬が良く似合う。

 


忘れてはいけない存在があったな。ゴブ香だ。あまりにしつこかったのでゴブロリは邸宅の中に案内する。邸宅と言ってもゲルのようなテントを使っていた。

 


妖国は移動式国家なのである。彼らがいる場所が妖国なのだ。妻達の好物であるロリ桃を置いてくることはできなかった。そこでゴブ美さんが無駄な技術を使い、空中移動農園へと進化させ、ロリ園は名前をハイロリ園へと改めた。

 


妻達がロリ桃を好きな理由は味だけではない。食べているところを旦那が見ると抜刀状態になってくれるからだ。抜刀した刀は鞘に納刀しなければならない。つまりそうゆうことである。

 


あの後、鬼神化したゴブ美さんに事情を話すとゴブ香はゲルの中に案内された。そこでゴブ美の激しき嫉妬心が爆発する。それにゴブロリも応える。魅せつけるかのようにお互いを求めあっていくゴブ美とゴブロリ。ゴブ香は激し過ぎる様子を見て落胆していた。

 


自分では受け止めきれない。あれほどの激しさでは体が引き裂かれしまうだろうと言っていた。ゴブ香はゴブロリを諦め、ゴブ羽三兄弟のゲルも見学する。

 


しかしどこを見学しても結果は同じであった。ゴブ羽軍名物である地鳴り。夜の戦場は想像以上の激戦を繰り広げていたのだ。ゴブ香は衝撃を受ける。後にゴブデミー賞主演女優となった彼女は語る。あの時の私は井の中のゴブリンであったと・・・。

 


そんなゴブ香を見て15人の妻達が諭す。ゴブ香には愛が足りない。1人の人を命が震えるほど愛せなければあの激しさは受け止めきれない。愛があれば痛くない。愛が大きくなるにつれて激しさにも慣れてくる。妻達は愛があれば激しさの中には愛しか感じなくなるのだという。

 


ゴブ香は心を入れ替える。ビッチゴブリンを卒業し、一途ゴブリンへと変貌を遂げる。そんなゴブ香を見てゴブロリはあるゴブ男を紹介する。

 


ゴブ蔵である。勇敢なゴブリンであったにもかかわらずまだゴブ嫁がいなかったのだ。ゴブ蔵も4人には劣ってしまうがそれなりの名刀を持っていた。2人はすぐに意気投合。2人の初夜はゲルを揺らすほど盛り上がったようである。

 


2人が愛を育む。ようやく2人は地鳴りを発生させられるようになった。ゴブ羽軍名物地鳴りもパワーアップすることとなる。ついでと言ってはなんだが、ゴブ蔵も更なる進化を遂げていた。その風貌は忍者と呼ぶには失礼にあたってしまう。その名前ではかっこよさが追いついていない。アサシン。その言葉の似合うスタイリッシュなゴブリンとなった。

 


そんなゴブ羽軍は今宛城の中にいる。ゴブ羽が突然嫁宅で共鳴したいと言い出したのが原因である。ゴブ羽はシチュエーション型共鳴にハマっていた。しょうがないなぁとゴブ良、ゴブ信、ゴブロリは快諾。瞬く間に魏軍の宛城を攻め落とす。そう・・・こいつらは結構自由過ぎる旅をしているのである。

 


宛城の中でスパーキングゴブ鄒とゴブ羽が一段と激しい地鳴りを起こしている中、外では様々なゴブリン達が恐怖に震えていた。各国は台頭してきたゴブ羽が邪魔で仕方がなかった。故に暗殺を試みたのである。偶然にも三国が鉢合わせてしまっていた。そうして仲良く地鳴りに怯えている。

 


このまま帰っても叱責されるだけなので各国のゴブリン達は一時休戦、そして武勲を他国に奪われたくないので意を決する。ゴブ羽軍と魏呉蜀連合軍による闘いが宛城の地で勃発しようとしていた。

 


ゴブ羽軍と相対するのは

 


魏国3大将ゴブ韋軍

 


呉国ゴブ権派3大将ゴブ寧軍

 


蜀国ゴブ備配下ゴブ延(えん)軍

 


宛城の門は三方からいとも容易く破られる。ゴブ羽軍の野営は基本独身ゴブリン以外は地鳴りモードに入る。ゴブ羽軍にはゴブ女が常に従軍しており、他の軍とは違ったいい匂いがするのが特徴である。独身ゴブリン達はゴブ女の甘美な声を盗み聞きして1人で地鳴りを起こそうと試みている。故に警戒すらしていない。そんな隙をつかれてしまったようだ。

 


しかしゴブ羽軍は虚をつかれようとも関係ない。ゴブ羽軍の兵達は自身のゴブ妻への独占欲が強い。地鳴りモードのゴブ妻を見られることを酷く嫌う。故に独身ゴブリンも覗きだけは暗黙の御法度として周知の事実となっている。

 


さらにそれ以上に愛を邪魔されることを最も嫌う。それこそゴブ羽の発令がない限りは各将ですら邪魔できない。音を聞きつけたゴブ羽軍の兵達がゲルの外へと出てくる。大量の抜刀状態の裸ゴブ兵が出現する。怒りゲージは既にマックスまで振り切り、士気ゲージも壊れた時計のようにぶん回っているほど振り切っている。

 


ゴブ羽軍の将兵であるゴブ羽三兄弟、ゴブロリ、ゴブ蔵はやはり格が違う。ゴブ超も直に仲間入りを果たすことになると思われる。彼はまだ日が浅い。まだ経験値が足りないのである。

 


ゴブロリはゴブ美を持ち上げ、抱きかかえながらゲルの外に出てきていた。もちろんゴブ美の顔と四肢以外は闇のマナで覆い隠している。歩く度に地鳴りが鳴り響く。動かずともゴブ美により地鳴りが起こされる。

 


宛城内に入った刺客達は異様な光景、そして迫り来る地鳴りを前に闘う前から恐慌状態に陥ってしまう。

 


怒り荒れ狂うゴブ羽軍による蹂躙戦が開始された。しかし敵の将兵は流石に鍛え方が違う。するすると兵達の群れを抜け、地鳴りの元へ一直線に向かう。

 


共闘関係なのでゴブ寧軍が空から将を運んでいた。

 


魏軍

ゴブ韋副将ゴブ晃(こう)ゴブ惇(とん)ゴブ禁(きん)

呉軍

ゴブ寧副将ゴブ当(とう)ゴブ普(ふ)ゴブ蓋(がい)

蜀軍

ゴブ延(えん)副将ゴブ維(い)ゴブ顔(がん)ゴブ倉(そう)

 


12人のゴブリン達がゴブ羽達の元へと迫っていた。

闇と光 第142話 尚と香開演

次々に味方を斬り殺し突き進むゴブ雲。ゴブロリは手で合図を出し、黑州兵達に道を開けさせる。そしてゴブ備軍が殺しあう中、ちゃっかりゴブ信には斬り込めという合図を送っていた。さらに黑州兵には包囲するかのようにゴブ備軍への攻撃の指示を出す。混乱極まる戦場でゴブ信隊・黑州兵が暴れている。

 


自軍の包囲網を抜けたゴブ雲を確認して、ゴブ備はようやく諦めゴブ正の進言を聞くことにしたようだ。反転し退却に移ろうとした時、背後から伏兵が現れる。ゴブ羽・ゴブ良軍である。敵軍総督ゴブ羽の登場に狼狽えるゴブ備軍。

 


さらに上空からは漆黒のゴブリンバード達が襲いかかる。ゴブロリが好機と見て呼び出していたのだ。ゴブ吉、ゴブ子の姿もある。ゴブ美はなんとゴブリーに騎乗している。

 


ゴブ美のマナで巨大化したゴブリー。交わってはいけないものがそこにはあった。空中から固定砲台と化し、ゴブリン兵を薙ぎ倒すその姿。ゴブリン戦艦美サ貴の初陣である。

 


「ゴブ蔵・・・あいつを死なせるなよ」

 


「ガッテン承知の介でござるっ!!」

 


口調がおかしいのは確実に空を飛んでる奴らのせいだな・・・。

 


「義弟を離してもらおうかっ!!私の愛のためにっ!!」

 


おお・・・ついにやってきた。ゴブ雲さんにビッチゴブリン・・・あれ?なんか熱い視線をオレに向けてらっしゃる?もしかして次のターゲットにされてます?

 


しかし・・・愛のためにあそこまで力を出すとは敵ながら天晴・・・利用価値はあるが・・・ゴブ雲に免じて返してやろう。そうゆうやつは嫌いじゃない。

 


「ゴブ雲っ!!お前の愛に免じて解放しよう。後は好きにしろっ!ゴブ備の手の届かぬところで仲良く暮らすのだな・・・」

 


「・・・かたじけない。さぁ義弟の権くん・・・兄である私の胸に飛び込んできなさいっ!!これからは共に仲良く過ごしましょう」

 


「兄上ぇぇぇぇぇっ!!」

 


・・・はっ!?ゴブ権くん!?なにやってんの!?

 


「いやぁぁぁぁっ!!うぅぅぅぅぅんっ!!」

 


感動の抱擁シーンが待っているかに思われた。しかし真逆ともいえるような光景がオレの目に映っていた。オレがゴブ堅にしたようにゴブ権はゴブ雲の心臓を綺麗に突き刺している。さすがにボクの頭ではもう状況がよくわからないよ・・・。

 


「感謝するぞっ!!ゴブロリとやらっ!!憎き父を殺してくれたこと・・・そして其方のおかげで邪魔者も排除できたっ!礼を言うっ!!これで姉上は私のものだっ!!」

 


「ちょっと!!権っ!!何してんのよっ!?雲とは中々相性が良かったのに何してくれてんのよっ!?」

 


「・・・ごめん。状況が理解できない。周りには誰もいないから説明してくれないか?頭の整理が追いつかない・・・」

 


ゴブ堅はゴブ香が小さな時からゴブ女として見ていた。そして夜な夜な関係を持っていたのだという・・・そこでゴブ香は女として目覚めた。次第に父とだけでは満足できず、家族を求め始めた。ゴブ香大好きゴブリンだったシスコンゴブ権はその様子を見ながら1人でしていたらしい。

 


そんなゴブ権の姿に気づいていたゴブ香は弟とも関係を持つことになる。ゴブ堅よりもゴブ権の方が良かったらしい。毎日のように交わっていたというのだ。ゴブ策について聞いてみた。オレは聞かなければよかったと後悔した。

 


ゴブ策はゴブ女には興味がない。親友のゴブ瑜と毎晩関係を持っているという情報がもたらされた。ゴブ香は2人同時に誘ったけれども、相手にされず喧嘩になる。そしてゴブ策はゴブ瑜がとられてしまうのではないかという危機を感じ、各将にゴブ香には気をつけろと注意喚起してしまったのだ。それにより元空軍の将兵からゴブ香はまったく相手にされなくなってしまったのだという・・・相手にしてくれるのは堅権コンビのみ。

 


そんな状況に耐えきれず、新たなゴブ男を求めてゴブ香は政略結婚をゴブ瑜に持ちかける。ゴブ瑜にとってはゴブ策を誘惑する嫌な相手である。喜んで策を練ったそうだ。

 


そうして陸軍総督ゴブ備の元へ嫁ぐこととなった。ゴブ権は父が自分と姉の関係を引き裂くためにやったことだと勘違いし、ゴブ堅をさらに逆恨みするようになる。元々姉を独占したかったので関係を持つ父が許せなかった。ずっと殺害の機会を伺っていたのだ。だから代わりに殺してくれたオレに感謝している。

 


ゴブ香はゴブ備に毎晩求められていたのだが、小さ過ぎて満足できなかった。それ故に陸軍の将達を誘惑し、密かに味見していった。そんな中見つけたゴブ男。それがゴブ雲である。容姿も性格も良い。そして相性もばっちり。次第に不倫回数が増えていく。

 


ゴブ羽軍に攻めた理由は酷いものである。ゴブ権は姉のそばにいたいがために父の死を口実に姉に会いに行った。しかしそれだけである。ゴブ権に非はない。原因を作ったのはゴブ香。

 


ゴブ香は黑巾の乱や陽人の闘いでオレ達を見て密かに狙っていた。なんでも匂いでわかるのだそうだ。たしかにオレ達4人は全員それなりの物は持っている。オレが自分の好みの女の子を匂いでわかるように、ゴブ香にも違うセンサーがついているらしい。

 


ゴブ香は闘いで勝ち、捕らえた後に牢獄に繋がれた無抵抗なオレ達をじっくり味見しようとしていた。自分の体で骨抜きにしてあげるつもりだったのだ。

 


この戦はオレ達と関係を持ちたいがために、ゴブ備を誑かしたゴブ香主導の戦なのである。それが今回の戦の背景の出来事なのであった。

 


空軍のやばい事情を知ってしまった。しかしゴブ橋姉妹を嫁がせて置いて正解だったな・・・あのままじゃずっと酷い生活だったろうに・・・健気でいいゴブ女達なので本当に良かった・・・。

 


「ねぇ?ゴブロリ様ぁ?今晩どぅ?私のこと好きにしていいわよ?・・・あらっ!?標準装備でこれなのっ!?戦闘モードに入ったら・・・良さそう・・・今までで1番いい男ね・・・やっぱり・・・あなたこそ星下一の無双よっ!!」

 


さりげなく触ってくるんじゃない・・・ゴブリンスーツの上からなのにこいつ上手い・・・いったい何ゴブの刀を納めてきたというのだ・・・。フーカに勝るとも劣らない絶技・・・ゴブ香できるな・・・。

 


「ゴブロリ貴様ぁぁぁぁぁっ!!姉上は私のものだっ!!」

 


「あら?権・・・まだいたの?私はゴブロリ様の物よ?あなたじゃこのお方の足元にも及ばないわ。これからゴブロリ様との初夜が待ってるから帰ってくれる?熱い夜を過ごすのに邪魔なのよね?わかってくれるよね?気が向いたらまた相手してあげるから・・・でもこれを見た後じゃあなたになんてまったく興味はわかないと思うけどね・・・ばいばい権」

 


「・・・。絶対許さぬからなぁぁぁ!!ゴブロリぃぃぃぃぃ!!」

 


ゴブ権泣きながら飛んで行っちゃったよ・・・しかしやべぇ・・・オレ全然この子に興味がないんですけど・・・どうしたらいいの・・・こんな堂々としたビッチ初めて見たわ・・・。

 


・・・ひ、ひぃっ!!

 


美サ貴から砲撃を受けるゴブロリ。一応ゴブ香をお姫様抱っこしながら避けている。彼は無駄にレディーには優しかった。さらにうっとりしているゴブ香。周囲に巻きこまれる味方がいなくてよかったなゴブロリよ。

 


長坂坡の闘いはかくして幕を閉じる。ゴブ羽軍の将兵達の活躍により、ゴブ備軍は半数以上の兵を失う大打撃を受ける。加えてゴブ羽軍1万がゴブ備軍40億を打ち破ったという報せが星中を駆け回った。そしてゴブ羽が弟にしてゴブ羽軍大将軍ゴブ信。その武勇は億の兵に匹敵するとゴブロリの狙い通りに星下に轟くこととなる。

 


さらにゴブ堅の家で繰り広げられる愛憎劇が明らかとなる。昼ドラもびっくりするようなどろどろの世界がそこにはあった。このような話は人間の世界だけでなく、違う種族の中でもあるようだ。

 


後に平和を築き上げた妖精の星で放送されることになる愛憎ドラマ尚と香。ゴブ主婦達に留まらず、色々な年代の間で話題となる。瞬間最高視聴率は驚異の80%超え。ゴブ香主演ドラマが一大ブームを巻き起こすことをゴブロリが知るよしもない。

闇と光 第141話 長坂坡の闘い

ゴブ備率いる元陸軍が近づいてくる。殿役を担当するのはゴブ信とゴブ信隊2000。ゴブロリそして民に偽装している黑州兵その数3億。

 


ゴブ羽とゴブ良はそれぞれ4000ずつを率いて先頭にいると見せかけて伏兵として配置してある。大将自ら突撃させるわけだ。まぁ本人が行きたいって言ったのでじゃあ・・・どうぞどうぞ。そんな軽い流れで決まった配置である。

 


ゴブ羽軍の軍議は結構雑である。ゴブ良とゴブロリが策を言い合い、それらを合わせる。そしてその間ゴブ羽とゴブ信はそわそわしている。ゴブ羽もゴブ信も間違いなく脳筋よりの戦闘狂なんだよなぁ・・・ゴブ良がいなかったらやばかったと思う。

 


現在民を挟んで我慢比べをしているところである。ゴブ備軍が民の隊列を乱そうと圧をかけてくる。だがこれは民ではない。手塩にかけ育て上げた黑州兵達である。

 


それも精鋭部隊を集めている。そんな圧に屈するほどヤワじゃない。黑州兵は愛・天・地・人部隊の4つに分けられている。それぞれの部隊の上の中クラスを集めた。

 


もっと連れてくることもできたのだが別の狙いがあったので今回は3億に踏みとどまっている。隊長含め上の上クラスは厳しい修行をさせているのでそもそも連れてくることはできない。今回は黑州二軍兵といったところだな。

 


この闘いを通してゴブ信の名前を売ろうかと思う。ゴブ飛のモデルであろう張飛さんを真似させる。ゴブ超・ゴブ飛コンビでこない限りは手助けはいらないと思われる。ゴブ雲は個としてはそこまで強くない。ゴブ備軍の中において、この長坂という地形の上でならゴブ信を止められるパターンは1つしかない。ということで確定無双をしてもらう。

 


さてさて・・・そろそろ痺れを切らしそうなのでゴブ信を最後尾に下げるか。ゴブ備もそうなのだが、どちらかというとゴブ信が暴れたくてうずうずしている。ぜひ盛大に暴れてゴブ備軍に恐怖を叩き込んでもらいたいところだ。

 


「ゴブロリ様・・・こちらに」

 


「いいタイミングだ。次の指令は・・・。

 


ということなので先回りして置いてくれ」

 


「「「「「御意」」」」」

 


ゴブ権の身柄がゴブロリの元に届けられる。さてどうしてやろうかな・・・いろんな使い道のありそうな物が手元にある。

 


「我こそはゴブ信っ!!我が黑槍の餌食となりたいものからかかってこいっ!!」

 


ゴブ信の声がここまで届く。かなり気合が入っているようだな。体動かすの好きだからなぁ・・・まぁ盛大にやってくれや。

 


ゴブ信が次々にゴブ備軍の将を討ち取っていく。士気も下がってきている。やはり三軍の中で陸軍は最弱だな。そろそろ大将クラスが出てきて欲しいが・・・おっ!ムービーきたっ!!これは期待できるはずっ!

 


「我こそはゴブ飛っ!!星下に轟く万に匹敵するゴブリンなりっ!!ゴブ信その首貰い受けるっ!!」

 


ゴブ飛さんきたぁぁぁぁ!しかもスパーキングしていらっしゃる。

 


「相手にとって不足なしっ!!我こそはゴブ信っ!!億に匹敵するゴブリンなりっ!!貴殿を討ち取り、この名・・・星下に轟かせてくれようぞっ!!」

 


おっ・・・きたきた。ゴブ信もスパーキングしてくれた。もしかしたらしてくれるかなと期待してたんだよね。ゴブ信って褒めれば伸びる子だから、事前に褒めてやる気を出してある。ここで暴れ回れば億に匹敵する兵って呼ばれるぞってこっそり耳打ちしたのが功を奏したようだな。うんうん。

 


ゴブ信の元にゴブ飛が突貫してくる。槍と槍が激突するかに思われたその時・・・突然ゴブ飛の体が一瞬止まる。

 


「おのれぃっ!!ひきょ・・・」

 


ゴブ飛の首が宙を舞い、ゴブ備軍の兵の元へ放物線を描きながら落ちていく。

 


「これが我らの正々堂々である。一騎討ちなど受けたつもりはない。我が師の正々堂々を我らは受け継いでおるのだ。命の奪い合いにおいてそれは甘いのではないか?ゴブ飛よ・・・。

 


ゴブ羽が将っ!!我が名はゴブ信っ!!陸軍3大将ゴブ飛討ち取ったりぃぃぃぃぃ!!」

 


ゴブ信が高らかに勝ち名乗りを上げる。たった一撃でゴブ飛が討ち取られたため、ゴブ備軍には激震が走った。

 


残念でした。一騎討ちはすべてゴブ羽に禁止するように命じてあるんだよ・・・ひゃはははっ!!考えが生温い・・・甘すぎるっ!!一騎だけ確かに下がった・・・でもそれは1対多をしているに過ぎない。さっきから将兵が1人ずつ挑んできて吹き出すのを我慢するのが大変だったぜ。

 


ゴブロリはゴブ信の前方に慶トラップを配置していた。ちなみに挑んできたすべての将に対して同じことをしている。ハイロリチェンジャーにより景色と同化させたステルスハイロリハンドで敵の体を拘束している。もちろん気配はゴブロリのフルパワーで隠蔽している。ゴブ信には隙を作るからばしゅっとやれ。その一言しか伝えていない。脳筋の扱いには慣れているゴブロリであった。

 


ゴブ備軍は最強の将を失った。兵達は恐慌状態になってしまっている。ゴブ備は退却の指示を出そうとしていた。

 


「全軍っ!!退「いいのかっ!?逃げるならこいつの首が飛ぶぞ!?」」

 


ゴブ備の声をゴブロリが遮る。ゴブロリが漆黒の十字架を掲げている。十字架にはゴブ権が磔にされていた。

 


「姉上ぇぇぇぇぇっ!!」

 


「けぇぇぇぇぇぇん!!ゴブ備様早く権を助けてっ!」

 


「ゴブ香には悪いがこれ以上の損害を出すわけにはいかない・・・全軍退却せよっ!!」

 


「ゴブ香っ!!乗れっ!!」

 


一騎のゴブリンがゴブ香を後ろに乗せ、味方を薙ぎ倒しながらこちらに向かってきている。

 


「何をしているっ!?ゴブ雲っ!?退却するのだぞっ!?」

 


「ゴブ備様・・・あなたみたいな叔父さんはもうごめんだわ。私の願いも聞いてくれないなんて酷いゴブ男ね・・・あははっ!!私はもうゴブ雲様の物なのよ?ゴブ雲様に近づきたくてあなたに嫁いできたのよっ!!もう汚い物を見なくて済むと思ったら清々するわっ!!」

 


「・・・なんだと・・・ゴブ香・・・偽りの婚姻だったというのか・・・おのれっ!!ゴブ雲っ!!我を騙しておったのかっ!!全軍ゴブ雲の首を討ち取れぇぇぇっ!!」

 


「なりませぬっ!!ゴブ備様っ!!ここは退却あるのみです!!いたずらに兵を失うのは避けねばなりませぬっ!!」

 


「えぇぃっ!!止めるなゴブ正っ!!全軍奴を殺せぇぇぇぇっ!!」

 


ゴブ正の静止も虚しくゴブ備の怒りは止まらない。ゴブ雲は趙雲の如き一騎掛けを魅せている。その体はスパーキングしていた。ゴブ権の元へと一直線に駆け抜ける。ゴブ備軍の兵を薙ぎ倒しながら・・・。

 


「止まれぃっ!!ゴブ雲っ!!我がその首貰い受けるっ!!」

 


「邪魔ですっ!!私の愛道(ラブロード)を阻むと言うならば貴殿と言えども容赦はしませんっ!!ゴブ超ご覚悟をっ!!」

 


ゴブ備軍3大将同士が馬上での一騎討ちの構えになる。両者がすれ違う。片方のゴブリンが馬から落ちる。

 


「愛の勝利ですっ!!義弟の元へ急ぎますよ。愛しのゴブ香・・・共に行きましょうっ!!」

 


「はいっ!!ゴブ雲様っ!!お慕い申しておりますっ!!」

 


・・・オレはいったい何を見せられているんだ?ゴブ超よ・・・本気で同情しちゃうわ・・・ゴブ備さんも気持ちわかるわぁ・・・不倫ってダメよね。

闇と光 第140話 迫り来る旧陸軍

連戦連勝を重ねたゴブ羽・ゴブ堅軍はゴブ卓軍を長安まで退却させた。現在は焼け落ちてしまった旧都洛陽の復興の手伝いをしている。ゴブ堅に対してゴブ羽が進言したのが起因である。

 


ゴブ羽・ゴブ堅に対し、民達の評価は上がっている。さらにゴブ布を追い詰めたゴブ羽軍の噂は星全土へと広がっていく。これはゴブロリが手を回していた。ゴブ蔵達の手により事実を誇大化させ伝えている。またゴブ堅軍の中でもゴブ羽軍の評価は鰻登りに上がっていく。

 


ある時ゴブ堅は1人復興作業をしていた。その時ある物を見つけることとなる。

 


「これは・・・伝星の玉璽・・・ゴブ羽とともにいることで我が運気が上がっているようだな。これさえあれば我が覇道・・・大義名分を得ることができる。

 


誰だっ!?・・・なんだ・・・その方か。ゴブ羽殿のおかげでこのゴブ堅が星下を手中にする時が近いようだ。これを見てみよ」

 


ゴブ堅に近づいていくゴブロリの姿があった。

 


「これが伝星の玉璽なのでございますね。綺麗ですねぇ」

 


「はっはっはっ!そうであろう?この星の皇帝の証である・・・きさま・・・血迷う・・・たか・・・」

 


「私は先程ゴブ堅殿の血が綺麗だと言ったのですよ?脈打つ生きのよい血管・・・やっぱり綺麗ですねぇ。如何なる時も油断するな・・・我が師からの教えです。冥土の土産に持って行ってくださいな」

 


ゴブロリがゴブ堅の心の臓を突き刺している。ゴブロリはゴブ堅なら探し出してくれるだろうとこの玉璽を得るために洛陽復興を進言したのだ。

 


「くっくっくっ・・・これでゴブ羽の王への道がまた一歩進んだ。さっそく届けることにしよう」

 


この様子を終始見ている人物がいた。ゴブロリが気付けなかったのは無理もない。気配を完全に消していたからだ。彼の名はゴブ権(けん)。ゴブ堅の息子である。ゴブ策の弟にあたる。

 


ゴブ権には極度のコンプレックスがあった。故にストーカーするのが彼の日課となっていた。バレると怒られるので気配を消すことが神業レベルまで上達していた。

 


「・・・父上。あいつはゴブ羽軍の者・・・兄上達はゴブ羽のことを信じ切っている・・・姉上に知らせなければ・・・一刻も早く行かねばならないっ!!」

 


ゴブ権は姉の元へ急ぎ飛んで行く。その頃ゴブ卓の元へある者が訪れていた。

 


「ゴブ卓皇帝っ!!我はあなたの軍門に降りあなたを皇帝として奉戴致すっ!!」

 


「ほぅ・・・ゴブ操。幼き皇帝はどうするのだ?」

 


「はて?誰ですかな?こちらに童の首は御座いますが・・・」

 


ゴブ操が箱から覗かせた者は幼い皇帝の首であった。

 


「ゴカッカッカッ!!ゴブ操よ・・・お主も悪よのぉ」

 


「何を仰いますか・・・ゴブ卓様程では・・・」

 


「「ゴハッハッハッ!!」」

 


暴虐無人の王と乱星の奸雄が混ざり合ってしまった。失った兵力を取り戻すかのように旧海軍をゴブ卓は手にする。更なる強化を遂げたゴブ卓軍が誕生した。

 


「お、おやじぃぃぃぃぃ!!」

 


「「「「「ゴブ堅様ぁぁぁっ!!」」」」」

 


ゴブ堅の亡骸を見つけ悲しみにくれる旧空軍の姿があった。

 


「ゴブ堅殿・・・何たる無惨な姿に・・・先生っ!!いったい誰が!?」

 


「ゴブ羽よ・・・命とはこうも儚いもの。決して忘れてはならぬぞ。ゴブ堅殿・・・惜しいお方を失くしたものだ・・・しかし悲しんではならぬっ!!

 


敵味方問わず命に優劣などない。死は等しく機会を与えてくださる。死というものは最上の楽園である。再び器を得るまで無という楽園へと旅立ったのだ。穏やかに漂うゴブ堅殿の魂をいたずらに騒ぎ立ててはならない。

 


ゴブ堅殿は今安寧の地におられるのだっ!!静かに安らかに眠りにつかせてやれっ!!いつまでも悲しむことは死者への冒涜であるっ!!それが残された者がゴブ堅殿に捧げられる最期にして最上の愛である」

 


ゴブロリの言葉を聞き、悲しむことを止めたゴブ堅軍とゴブ羽達。

 


「さぁ前を見て進むのだっ!すべてはこの星の平和のためにっ!!」

 


「ゴブ羽殿は良き師をお持ちのようですな」

 


なぜかゴブロリの評価が上がっていく。ゴブロリよ。貴様がやったのであろう・・・抜け抜けしいことを言うな。ゴブ堅軍はこのあと息子のゴブ策が継ぐことになる。ゴブ策の代わりに3大将の座に就いたものはゴブ泰(たい)というゴブリンだった。

 


ゴブ策の総督就任の儀式のため、ゴブ策軍は一度故郷へ帰ることとなる。ゴブ策らと別れたゴブ羽達は引き続き洛陽の復興に邁進する。

 


ようやく瓦礫も粗方片付いた頃、ゴブ羽達の元にある報せが届く。ゴブ蔵よりもたらされた緊急の情報である。

 


旧陸軍挙兵。ゴブ羽軍に対し全軍進軍中。退却されたし。首謀者はゴブ堅の息子ゴブ権。そしてゴブ備の妻、ゴブ権の姉であるゴブ香(こう)。ゴブ堅殺害への報復を大義名分に掲げており、敵軍の士気は高し。

 


ゴブ権?どこに隠れていたのだ・・・まさか見られていた?まぁよい・・・せっかく攻めてきてくれている。ゴブ羽軍の名声上げに利用させてもらおうじゃないか。

 


「ゴブ羽っ!!ゴブ蔵から報せが入った!ゴブ備率いる旧陸軍が言いがかりをつけてこちらに進軍中だっ!一時撤退するぞ!!」

 


「しかしゴブロリ先生・・・我らを慕ってくれるこの民達を置いてゆくことはできませぬ・・・」

 


「「「「「私どもも連れていってください!!心優しきゴブ羽様とともにありたいのです!!」」」」」

 


「・・・ゴブ羽。軍議を行う。旧陸軍と戦に入る。これは退却戦ではない。民達を守る防衛戦である。心せよ」

 


ゴブロリの言葉によりゴブ羽軍は軍議に入る。そしてゴブ羽達は民を連れ、撤退の準備へと入る。ゴブロリは準備で慌ただしい中、1人空を眺めていた。

 


「・・・ゴブロリ様ご用命を」

 


ゴブロリの背後に立つ5人のゴブリン。

 


「ゴブガード達に特命を与える。ゴブ権の小僧を音も無く攫ってこい。ゴブ備達の出方にもよるが・・・上手く行けば亀裂をいれることができるかもしれない」

 


「「「「「御意」」」」」

 


実は洛陽に火をつけた時こいつらがオレの元に現れていたんだ。ゴブジョーカー達は都に火を放つというオレの悪逆非道ぶりに惹かれてしまったらしい。暗殺しまくっていたのもこいつらは知っていた。ゴブ卓よりもオレの方が魅力的なんだってさ。やったねゴブ卓に勝ったよ。

 


共に手を汚す同志ができた。さぁもっと影からゴブ羽の星下のために尽力しようではないかっ!!

 


ゴブ羽軍は民達とともに行軍する。その行軍スピードは恐ろしく速かった。

 


こんなこともあろうかと、ゴブ美監修の元に作らせた黑兎馬専用馬車を大量に生産しておいたのだ。研究者の探究心というものは恐ろしいものである。もはや美しさしかない完成された設計。闘えぬ民を引き連れているから進軍速度が遅いというのはもはや間違いである。

 


ゴブ蔵に命じてゴブ羽が民を引き連れて退却しているという情報は流布しておいた。ゆっくりと歩いているのは民ではない。練兵に練兵を重ねた元民達。元黑巾兵である。さぁ黑州兵の恐ろしさ・・・とくと味わうがよい。

 


逃げる側から追う側になったようだが・・・結局追い詰めらる側ということには変わりない。ゴブ備よ・・・身の程を知れ。地球では話が盛られてゴブ備の軍は強いように聞こえるがその実はそこまで強くない。強い将は確かにいる・・・しかしゴブ堅やゴブ操の元には同等以上の将達がさらに存在している。

 


ゴブリン達の能力値も地球での能力に近くしてあるようだ。デキウスのことだからそれらしい名前を割り振ったということも考えられる。無駄なところに力をいれすぎなんだよなぁ・・・あの変態・・・。

 


さぁ地球の物語と同じように逃げ回ってもらおう。ゴブ備よ・・・貴様には王としての器は備わっていない。ゴブ羽の踏み台となれっ!

 


「後方に砂塵確認っ!!ゴブ備軍かと思われますっ!!」

 


「偵察部隊より伝令っ!!ゴブ備軍総数40億。将兵も多数従軍している模様」

 


ゴブ羽軍1万・ゴブロリ黑州兵とゴブ備軍40億との闘いが始まろうとしていた。

闇と光 第139話 洛陽炎上

オレと黑兎馬は戦場を駆け抜ける。敵軍は守備兵を僅かに残して追ってきているようだな。ゴブ布の赤兎馬と黑兎馬はほぼ同速・・・1人だけ突出してるけどいいのか?ゴブ布さん。陣形すらない。縦に伸び切ってるぞお前らの軍。ただ逃げてばかりじゃつまらない。慶トラップで遊んでやろう。

 


ゴブ布・ゴブ軫軍の左右から闇の刃が突然襲いかかる。突然の奇襲に対応し切れていない。

 


「全軍突っ切れ!!スピードを上げれば避けれないこともないっ!!」

 


ゴブ軫正解だよ・・・だって避けれるようにしてやってるからな。ゴブ布さんが起爆地点を躊躇なく踏んでくれるから助かるわ。ありがとう赤い妖精さん。ちっ・・・忘れてた。こいつにはこれもあったんだ。

 


逃げるゴブロリに矢が迫る。ゴブロリは体を反転させた。双鞭刀2刀流で矢を薙ぎ払う。次々に放たれる矢を難なく捌いていく。ゴブロリは後ろ向き騎乗のままスピードを落とさず進んでいる。

 


「人馬一体の動き・・・只者ではないなっ!?貴様の名は!?」

 


「我が名はゴブロリ・・・闇に生きる者の名だっ!!お前にとって一生忘れられない名前となることだろうっ!!」

 


ハイロリソードから漆黒の光線がゴブ布に飛んでいく。ゴブ布もまた大剣を振るい、光線を弾き飛ばしている。

 


そろそろ砦も見える頃だな。先に行け我が愛馬・・・黑愛(ブラックアイ)よ!!

 


ゴブロリは黑愛から飛び降りる。まずは脚を奪わせてもらうっ!!

 


漆黒の手が赤兎馬の脚を掴み取る。ゴブ布はその反動で前方に投げ出される。しかしゴブ布の視線は1人のゴブリンに向いていた。

 


ゴブロリの脳天に大剣が叩きつけられる。だが体は闇へと姿を変え、上空に飛び立つ。空には漆黒の花が映し出される。

 


「さすがゴブロリ先生・・・ゴブ堅殿っ!!好機ですっ!!ゴブロリが敵軍の分断に成功しました!突撃の号令をっ!!」

 


「なに!?籠城すら始まっていないではないか!?しかしこの好機を逃す手はない・・・。

 


全軍打って出るっ!!敵を蹴散らすのだっ!!

 


・・・ゴブ羽か。我が覇道の最大の障害となるやもしれぬな・・・」

 


ゴブ羽軍は事前に打ち合わせしていた。ゴブロリが敵を誘い込む。そしてもし敵軍を分断できた時には合図を出すということを・・・。

 


「今ですっ!!孤立した歩兵部隊を叩くのですっ!!」

 


ゴブ良はマナを放出し、漆黒の花を翠色に染めていく。

 


「・・・良兄の合図か。ゴブ信隊に告ぐっ!!漆黒の閃光となりすべて喰らい尽くせっ!!」

 


「「「「「ゔぉぉぉぉっ!!」」」」」

 


ゴブ信隊は伏兵として潜んでいた。ゴブ良の合図を受け、騎兵隊から離れ伸び切っていた歩兵部隊を横から黑兎馬部隊が引き裂く。

 


「なにっ!?伏兵だとっ!?まずい・・・全軍退却せよっ!!」

 


挟み込まれる前にゴブ軫が慌てて号令をかける。砦からゴブ堅軍が突撃してくる。闘いが始まる前から退却戦となってしまったゴブ布・ゴブ軫軍。

 


「ゴブ布っ!!貴様は逃さぬっ!!このゴブ羽が葬り去ってくれようぞっ!!」

 


「小賢しいわっ!!貴様如き瞬殺してくれようぞっ!!」

 


ゴブ羽の斧槍とゴブ布の大剣が激しい音を鳴らし続ける。ゴブ羽はゴブ布の動きを止めることに見事に成功していた。

 


ゴブ堅軍が空から急降下し、敵軍の背中を次々に斬り捨てる。大打撃を受けながらもゴブ軫はようやく砦へと戻っていた。

 


「門を開けいっ!!」

 


「すみませんっ!!チキンの話す鳥語は私には理解できませんっ!!」

 


「貴様っ!?なにを言ってい・・・る?き、貴様はっ!なぜそこにいるっ!?」

 


「鳥小屋の守りが手薄だったんでな・・・奪わさせてもらったよ」

 


砦にはゴブロリの姿があった。逃げていたゴブロリは本体ではなかった。ゴブロリゲンガーである。挑発しながらゴブロリは密かに入れ替わっていたのだ。そうして手薄になった砦をちゃっかり頂いていた。

 


ゴブ布に対してゴブ羽、ゴブ信。ゴブ軫に対してはゴブ堅、ゴブロリの挟撃が迫る。ゴブ布・ゴブ軫軍は総崩れ状態である。

 


「援軍にきたっ!!門を開けぃっ!!」

 


ん?敵の増援か?

 


「部隊名とここにいる理由を伺いたいっ!逆賊どもとの戦になっているはずであろう!?」

 


「我はゴブ雄(ゆう)!救援要請を受け参った!既にゴブ備率いる旧陸軍を蹴散らしてきたところである!」

 


「我はゴブ栄(えい)!同じく救援要請を受け参上した!こちらもゴブ操率いる旧海軍を蹴散らしてきたところだっ!」

 


「勇将の援軍感謝いたします!現在敵軍のゴブロリなるものの手により、敵味方区別がつかぬ混迷状態となっております!!同士討ちを防ぐため、ゴブ軫殿の決めた合印を全軍につけまする故、砦内へとお入りください!」

 


「「あいわかった!」」

 


ハイロリチェンジャーって便利だなぁ。あっさり騙されてやがる。まぁここの守備隊長の声と姿を真似ているんだけどな。しかし陸軍も海軍も弱いな・・・いやゴブ卓軍が強いだけか?それとも今後を見据えて兵を温存しているとでも・・・?まぁいずれにせよ最後に勝つのはお前らじゃねぇ・・・ゴブ羽軍だっ!

 


「これで全員つけ終わりましたっ!!まもなく開門しますっ!!」

 


「素晴らしい手際であったぞ!」

 


「このゴブ栄がゴブ卓様に推挙してやろうっ!!其方の名前はなんという?」

 


「私の名はゴブロリ。ちょっと早いですがご飯に致しましょう。今宵のメインディッシュは妖精の丸焼きに御座います」

 


砦の背後の門が閉まる。そこら中で爆発が巻き起こった。ゴブ雄・ゴブ栄軍に火の手が迫る。

 


「ゴブロリだと・・・おのれっ!!化けておったか!?」

 


「貴様っ!!謀りおったな!?正々堂々闘えっ!!」

 


「生憎・・・命のやり取りにおいては有らん限りの手を尽くす。それがオレの正々堂々の流儀なんでなっ!!それは侮辱の言葉と受け取るがよろしいかな?ゴブ栄殿?そのような者達には星が裁きを与えることになるであろうっ!!」

 


「くっ・・・全軍っ!!門を突き破りゴブ布・ゴブ軫軍と合流するぞっ!!突撃せよっ!!」

 


「あぁ勇将殿っ!!このゴブロリには見えますぞっ!!星が騒いでおりまするっ!!今宵の虎牢関は虎すらも逃げ出せぬ模様・・・地面からの亡者の手にお気をつけください」

 


大量のゴブロリハンドが地面から展開される。その手は兵達の足を握り潰していく。足を失い逃げることも叶わぬ兵達が火だるま状態になっていく。ゴブロリの虚言を聞いた兵達は星の裁きだと信じ込み、恐慌状態に陥ってしまう。数多くの断末魔が鳴り響く。地獄のような光景が汜水関の中に広がる。

 


「おのれっ!ゴブロリ・・・好き勝手やりおって・・・このままではゴブ卓様の軍が総崩れになってしまう・・・ゴブ雄っ!!ゴブ布を救出するっ!!いけ好かぬやつではあるが奴がいればきっと軍は立て直せるっ!!これより死地に入るっ!!ゴブ卓軍に栄光あれっ!!」

 


「我こそはゴブ雄なり!!この戦・・・我が最期の戦場とせんっ!!全軍ゴブ布を救出せよっ!!」

 


体が動かない・・・ムービーか。ゴブ布を助けるだと?どうなってやがる。スパーキング状態に強化された?っ・・・門が破られた。体に火が回りながらもゴブリン達が進軍している。ゾンビ映画もびっくりだな。やっぱりゴブリンハザードじゃねぇか・・・。

 


「ゴブ布観念しろっ!!ここが貴様の墓場だっ!!行くぞゴブ信っ!!」

 


「おうっ!!兄者!!星下無双の大将軍ゴブ布・・・ここで討ち取ってくれるわっ!!」

 


「我が名はゴブ布・・・星下無双の大将軍であるぞ?この首簡単にくれてやるほど安くはないわっ!!」

 


2対1で押されながらも持ち堪えているゴブ布。ところで何でバトルフィールドが出ないのだろう?妖精さん同士だから?妖精の七不思議だな・・・まぁどうせあの変態がなんかやってんだろうな。

 


そこへゴブ雄、ゴブ栄が突貫してくる。

 


「ゴブ布引けぃっ!!ゴブ卓軍を立て直せるのはお前を置いて他におらぬっ!!ゴブ卓様の元へ引き、お主が軍を再編しろっ!!我はお主が嫌いだ・・・しかし力は認めておる。我らはここで散ることになるだろうが頼りにしとるぞゴブ布」

 


「ゴブ布殿っ!!この馬をお使いください!!我らが殿を務めます!!後は頼みましたぞっ!!」

 


何を見せられているんだろうか・・・ゴブ卓軍の友情イベントが発生してしまったぞ・・・ゴブ布ちゃん泣いてら・・・これがホントの鬼の目にも涙・・・見た目が赤鬼さんだけにな。

 


「ゴブ雄殿っ!!ゴブ栄殿っ!!かたじけない・・・我が必ずや星下無双の軍を築きあげて見せる・・・無念は必ずや晴らしてみせようぞっ!!」

 


ゴブ雄の馬にまたがり駆け抜けていくゴブ布・・・あぁ・・・こっちまで駆け抜けて来やがったな。

 


「ゴブロリっ!!貴様の名前を覚えたぞっ!!我らが同胞の無念・・・必ず報いてやるからなっ!!」

 


なんか名前覚えられてしまったぞ?おいおい・・・砦を馬でひとっ飛びってどうなってんだよ・・・赤兎馬を超えてんじゃねぇかその馬・・・。

 


「敵将ゴブ雄っ!!ゴブ羽軍が将っ!!ゴブ信が討ち取ったりぃぃぃぃ!!」

 


「敵将ゴブ栄っ!!ゴブ羽が討ち取ったりぃぃぃ!!」

 


「兄上っ!!ゴブ信っ!!このまま洛陽まで追撃しますっ!!この勢いのまま向かいましょうっ!!」

 


おぉ・・・三兄弟が馬に乗り駆けていく・・・熱い光景だな。しかしゴブ羽さん?確かにオレ捕獲はしたけどさ・・・なんで赤兎馬に乗ってるんだよ・・・。

 


汜水関・・・またの名を虎牢関。ゴブ堅・ゴブ羽軍の活躍により陥落。そのままの勢いで洛陽へ攻め入ろうとしていた。この後ゴブ布はゴブ卓の元まで退却する。すぐ様洛陽を放棄。残った軍を率いて長安まで撤退した。

 


洛陽には火の手が上がっている。そこにはとあるゴブリンの姿があった。

 


「そのまま放棄じゃいけないんだよ・・・大事の前の小事・・・真の平和に向けて犠牲は不可欠・・・この星の平和のためならこの手・・・いくらでも汚そう。もっと悪名を重ねてもらわないと困るんだよっ!!そんなんじゃ悪名が霞んでしまうよゴブ卓・・・ひゃはははっ!綺麗だねぇ」

 


今度は放火にハマるゴブロリがいた。