闇と光 第139話 洛陽炎上
オレと黑兎馬は戦場を駆け抜ける。敵軍は守備兵を僅かに残して追ってきているようだな。ゴブ布の赤兎馬と黑兎馬はほぼ同速・・・1人だけ突出してるけどいいのか?ゴブ布さん。陣形すらない。縦に伸び切ってるぞお前らの軍。ただ逃げてばかりじゃつまらない。慶トラップで遊んでやろう。
ゴブ布・ゴブ軫軍の左右から闇の刃が突然襲いかかる。突然の奇襲に対応し切れていない。
「全軍突っ切れ!!スピードを上げれば避けれないこともないっ!!」
ゴブ軫正解だよ・・・だって避けれるようにしてやってるからな。ゴブ布さんが起爆地点を躊躇なく踏んでくれるから助かるわ。ありがとう赤い妖精さん。ちっ・・・忘れてた。こいつにはこれもあったんだ。
逃げるゴブロリに矢が迫る。ゴブロリは体を反転させた。双鞭刀2刀流で矢を薙ぎ払う。次々に放たれる矢を難なく捌いていく。ゴブロリは後ろ向き騎乗のままスピードを落とさず進んでいる。
「人馬一体の動き・・・只者ではないなっ!?貴様の名は!?」
「我が名はゴブロリ・・・闇に生きる者の名だっ!!お前にとって一生忘れられない名前となることだろうっ!!」
ハイロリソードから漆黒の光線がゴブ布に飛んでいく。ゴブ布もまた大剣を振るい、光線を弾き飛ばしている。
そろそろ砦も見える頃だな。先に行け我が愛馬・・・黑愛(ブラックアイ)よ!!
ゴブロリは黑愛から飛び降りる。まずは脚を奪わせてもらうっ!!
漆黒の手が赤兎馬の脚を掴み取る。ゴブ布はその反動で前方に投げ出される。しかしゴブ布の視線は1人のゴブリンに向いていた。
ゴブロリの脳天に大剣が叩きつけられる。だが体は闇へと姿を変え、上空に飛び立つ。空には漆黒の花が映し出される。
「さすがゴブロリ先生・・・ゴブ堅殿っ!!好機ですっ!!ゴブロリが敵軍の分断に成功しました!突撃の号令をっ!!」
「なに!?籠城すら始まっていないではないか!?しかしこの好機を逃す手はない・・・。
全軍打って出るっ!!敵を蹴散らすのだっ!!
・・・ゴブ羽か。我が覇道の最大の障害となるやもしれぬな・・・」
ゴブ羽軍は事前に打ち合わせしていた。ゴブロリが敵を誘い込む。そしてもし敵軍を分断できた時には合図を出すということを・・・。
「今ですっ!!孤立した歩兵部隊を叩くのですっ!!」
ゴブ良はマナを放出し、漆黒の花を翠色に染めていく。
「・・・良兄の合図か。ゴブ信隊に告ぐっ!!漆黒の閃光となりすべて喰らい尽くせっ!!」
「「「「「ゔぉぉぉぉっ!!」」」」」
ゴブ信隊は伏兵として潜んでいた。ゴブ良の合図を受け、騎兵隊から離れ伸び切っていた歩兵部隊を横から黑兎馬部隊が引き裂く。
「なにっ!?伏兵だとっ!?まずい・・・全軍退却せよっ!!」
挟み込まれる前にゴブ軫が慌てて号令をかける。砦からゴブ堅軍が突撃してくる。闘いが始まる前から退却戦となってしまったゴブ布・ゴブ軫軍。
「ゴブ布っ!!貴様は逃さぬっ!!このゴブ羽が葬り去ってくれようぞっ!!」
「小賢しいわっ!!貴様如き瞬殺してくれようぞっ!!」
ゴブ羽の斧槍とゴブ布の大剣が激しい音を鳴らし続ける。ゴブ羽はゴブ布の動きを止めることに見事に成功していた。
ゴブ堅軍が空から急降下し、敵軍の背中を次々に斬り捨てる。大打撃を受けながらもゴブ軫はようやく砦へと戻っていた。
「門を開けいっ!!」
「すみませんっ!!チキンの話す鳥語は私には理解できませんっ!!」
「貴様っ!?なにを言ってい・・・る?き、貴様はっ!なぜそこにいるっ!?」
「鳥小屋の守りが手薄だったんでな・・・奪わさせてもらったよ」
砦にはゴブロリの姿があった。逃げていたゴブロリは本体ではなかった。ゴブロリゲンガーである。挑発しながらゴブロリは密かに入れ替わっていたのだ。そうして手薄になった砦をちゃっかり頂いていた。
ゴブ布に対してゴブ羽、ゴブ信。ゴブ軫に対してはゴブ堅、ゴブロリの挟撃が迫る。ゴブ布・ゴブ軫軍は総崩れ状態である。
「援軍にきたっ!!門を開けぃっ!!」
ん?敵の増援か?
「部隊名とここにいる理由を伺いたいっ!逆賊どもとの戦になっているはずであろう!?」
「我はゴブ雄(ゆう)!救援要請を受け参った!既にゴブ備率いる旧陸軍を蹴散らしてきたところである!」
「我はゴブ栄(えい)!同じく救援要請を受け参上した!こちらもゴブ操率いる旧海軍を蹴散らしてきたところだっ!」
「勇将の援軍感謝いたします!現在敵軍のゴブロリなるものの手により、敵味方区別がつかぬ混迷状態となっております!!同士討ちを防ぐため、ゴブ軫殿の決めた合印を全軍につけまする故、砦内へとお入りください!」
「「あいわかった!」」
ハイロリチェンジャーって便利だなぁ。あっさり騙されてやがる。まぁここの守備隊長の声と姿を真似ているんだけどな。しかし陸軍も海軍も弱いな・・・いやゴブ卓軍が強いだけか?それとも今後を見据えて兵を温存しているとでも・・・?まぁいずれにせよ最後に勝つのはお前らじゃねぇ・・・ゴブ羽軍だっ!
「これで全員つけ終わりましたっ!!まもなく開門しますっ!!」
「素晴らしい手際であったぞ!」
「このゴブ栄がゴブ卓様に推挙してやろうっ!!其方の名前はなんという?」
「私の名はゴブロリ。ちょっと早いですがご飯に致しましょう。今宵のメインディッシュは妖精の丸焼きに御座います」
砦の背後の門が閉まる。そこら中で爆発が巻き起こった。ゴブ雄・ゴブ栄軍に火の手が迫る。
「ゴブロリだと・・・おのれっ!!化けておったか!?」
「貴様っ!!謀りおったな!?正々堂々闘えっ!!」
「生憎・・・命のやり取りにおいては有らん限りの手を尽くす。それがオレの正々堂々の流儀なんでなっ!!それは侮辱の言葉と受け取るがよろしいかな?ゴブ栄殿?そのような者達には星が裁きを与えることになるであろうっ!!」
「くっ・・・全軍っ!!門を突き破りゴブ布・ゴブ軫軍と合流するぞっ!!突撃せよっ!!」
「あぁ勇将殿っ!!このゴブロリには見えますぞっ!!星が騒いでおりまするっ!!今宵の虎牢関は虎すらも逃げ出せぬ模様・・・地面からの亡者の手にお気をつけください」
大量のゴブロリハンドが地面から展開される。その手は兵達の足を握り潰していく。足を失い逃げることも叶わぬ兵達が火だるま状態になっていく。ゴブロリの虚言を聞いた兵達は星の裁きだと信じ込み、恐慌状態に陥ってしまう。数多くの断末魔が鳴り響く。地獄のような光景が汜水関の中に広がる。
「おのれっ!ゴブロリ・・・好き勝手やりおって・・・このままではゴブ卓様の軍が総崩れになってしまう・・・ゴブ雄っ!!ゴブ布を救出するっ!!いけ好かぬやつではあるが奴がいればきっと軍は立て直せるっ!!これより死地に入るっ!!ゴブ卓軍に栄光あれっ!!」
「我こそはゴブ雄なり!!この戦・・・我が最期の戦場とせんっ!!全軍ゴブ布を救出せよっ!!」
体が動かない・・・ムービーか。ゴブ布を助けるだと?どうなってやがる。スパーキング状態に強化された?っ・・・門が破られた。体に火が回りながらもゴブリン達が進軍している。ゾンビ映画もびっくりだな。やっぱりゴブリンハザードじゃねぇか・・・。
「ゴブ布観念しろっ!!ここが貴様の墓場だっ!!行くぞゴブ信っ!!」
「おうっ!!兄者!!星下無双の大将軍ゴブ布・・・ここで討ち取ってくれるわっ!!」
「我が名はゴブ布・・・星下無双の大将軍であるぞ?この首簡単にくれてやるほど安くはないわっ!!」
2対1で押されながらも持ち堪えているゴブ布。ところで何でバトルフィールドが出ないのだろう?妖精さん同士だから?妖精の七不思議だな・・・まぁどうせあの変態がなんかやってんだろうな。
そこへゴブ雄、ゴブ栄が突貫してくる。
「ゴブ布引けぃっ!!ゴブ卓軍を立て直せるのはお前を置いて他におらぬっ!!ゴブ卓様の元へ引き、お主が軍を再編しろっ!!我はお主が嫌いだ・・・しかし力は認めておる。我らはここで散ることになるだろうが頼りにしとるぞゴブ布」
「ゴブ布殿っ!!この馬をお使いください!!我らが殿を務めます!!後は頼みましたぞっ!!」
何を見せられているんだろうか・・・ゴブ卓軍の友情イベントが発生してしまったぞ・・・ゴブ布ちゃん泣いてら・・・これがホントの鬼の目にも涙・・・見た目が赤鬼さんだけにな。
「ゴブ雄殿っ!!ゴブ栄殿っ!!かたじけない・・・我が必ずや星下無双の軍を築きあげて見せる・・・無念は必ずや晴らしてみせようぞっ!!」
ゴブ雄の馬にまたがり駆け抜けていくゴブ布・・・あぁ・・・こっちまで駆け抜けて来やがったな。
「ゴブロリっ!!貴様の名前を覚えたぞっ!!我らが同胞の無念・・・必ず報いてやるからなっ!!」
なんか名前覚えられてしまったぞ?おいおい・・・砦を馬でひとっ飛びってどうなってんだよ・・・赤兎馬を超えてんじゃねぇかその馬・・・。
「敵将ゴブ雄っ!!ゴブ羽軍が将っ!!ゴブ信が討ち取ったりぃぃぃぃ!!」
「敵将ゴブ栄っ!!ゴブ羽が討ち取ったりぃぃぃ!!」
「兄上っ!!ゴブ信っ!!このまま洛陽まで追撃しますっ!!この勢いのまま向かいましょうっ!!」
おぉ・・・三兄弟が馬に乗り駆けていく・・・熱い光景だな。しかしゴブ羽さん?確かにオレ捕獲はしたけどさ・・・なんで赤兎馬に乗ってるんだよ・・・。
汜水関・・・またの名を虎牢関。ゴブ堅・ゴブ羽軍の活躍により陥落。そのままの勢いで洛陽へ攻め入ろうとしていた。この後ゴブ布はゴブ卓の元まで退却する。すぐ様洛陽を放棄。残った軍を率いて長安まで撤退した。
洛陽には火の手が上がっている。そこにはとあるゴブリンの姿があった。
「そのまま放棄じゃいけないんだよ・・・大事の前の小事・・・真の平和に向けて犠牲は不可欠・・・この星の平和のためならこの手・・・いくらでも汚そう。もっと悪名を重ねてもらわないと困るんだよっ!!そんなんじゃ悪名が霞んでしまうよゴブ卓・・・ひゃはははっ!綺麗だねぇ」
今度は放火にハマるゴブロリがいた。