闇と光 第138話 陽人の闘い

ゴブロリは扇動した民達をゴブ蔵、ゴブ吉、ゴブ子、ゴブリーに本隊を練兵させながら安全圏へと移動させていった。散らばった民達は配下の鳥達に扇動させゴブ卓軍の砦へ攻めさせた。

 


そしてゴブロリは民達の様子を目にしてきた各軍に対し檄文を送りつける。

 


民の笑顔無き現状許してよいのか?諸侯は許しても星は許すまい。民達の声を聞け。平和な星を築き上げるために今こそ立ち上がる時!星が我らにはついている。星のためにゴブ卓を討つ!!

 


ゴブリン星への民達を黑巾の乱で目にしてきた各軍はゴブ紹の離反を皮切りに増えていった。もちろん陸海空軍も離反した。現在反ゴブ卓連合に参加する諸侯達との会議が行われている。名前を見れば錚々たる顔触れである。黑巾の乱で名を上げたゴブ羽もまた参加していた。

 


誰を盟主にするか揉めている。くだらねぇ争いだな・・・負けた時の責任逃れ・・・その癖自分がなりたがっている。勝てれば英雄だもんな・・・バカバカしい。地位がないやつが名乗り上げてもなんだかんだ理由をつけて賛成しない。元より決まっているだろうがよ・・・この闘いの盟主といったらあいつしかいねぇんだよ。

 


「ゴブ紹殿なら家柄も良く、地位もある。ゴブ紹殿こそ盟主に相応しいのではないかっ!?」

 


ハイロリチェンジャー。新たな技である。声や姿などをマナごと変換し偽装するための技だ。今は声色を変えて言ってやった。くっくっくっ・・・誰の声かもわかるまい。ゴブ羽、ゴブ良はオレの発言だと知っている。ゴブ羽軍の軍議で既に決定していることなのだからな。

 


「ならばこの不肖ゴブ紹が盟主を務めさせていただく。各軍には兵を捻出していただきたい。これよりゴブ卓に対し戦を仕掛ける」

 


戦を前に武勲を得るため、スカウト合戦が始まっている。当然ゴブ羽の元にはたくさんのスカウトがきた。だが選ぶ軍は決まっている。ゴブ羽軍は空軍と共に参戦する。この闘いならゴブ堅軍のはずだ。ゴブ術はもういない。ゴブ堅無双のはじまりであろう。

 


ゴブ羽軍はマナによる遺伝子操作など禁断の技術を盛大に使い品種改良した馬を採用している。ロリ桃に用いた技術を応用したのだ。黑兎馬(こくとば)。ゴブ布の赤兎馬に勝るとも劣らない出来である。黑兎馬は配下の鳥達の管理により、育成そして量産されている。ゴブ羽軍は黑いゴブリンが黑い馬に騎乗する漆黒の騎兵隊へと成長していた。

 


元空軍の将兵達がゴブ羽に話し掛けてくる。ゴブ策やゴブ瑜まで・・・気分は寝取ってやったという悦楽に溺れてしまいそうになってしまう。まぁ彼らは婚姻すらしていないのでそんな気はまったくないのだろうがな。

 


ゴブ堅軍は汜水関を攻めることになった。配置に着いた時それは起こった。ムービーだ。

 


「我ら一丸となりてゴブ卓の首を獲るっ!!恐れるな!我らには星がついている!そして黑巾の乱の首謀者ゴブ角を討ち取ったかの漆黒の部隊もついておるっ!!好機なるぞっ!!今こそゴブ卓を討つ時である!!」

 


「「「「「ゔぉぉぉぉぉっ!!」」」」」

 


ゴブ堅が檄を飛ばす。するとゴブ堅軍がスパーキング状態になった。海軍にも引けをとらなくなったな。これは・・・期待できる。ゴブ羽の王への道への踏み台にさせてもらおう。

 


汜水関の敵軍の布陣は・・・っ!あの野郎出て来るっていうのかよ!!上等だ・・・我らがゴブ羽の餌となれ!ゴブ布よっ!!

 


ゴブ堅・ゴブ羽軍VSゴブ布・ゴブ軫(しん)軍

 


くっくっくっ・・・その組み合わせでいいのかゴブ布さんよ・・・お前ら仲は良くないよなぁ?事前にゴブ羽軍のみで軍議を行なう。方針は決定した。ゴブ堅軍での発言は任せたぞ。ゴブ良。

 


「これより軍議を行う。ゴブ羽殿は何か策はあるか?」

 


「ゴブ羽に変わりましてこのゴブ良が進言させていただきます。

 


敵軍は急行軍をしてきています。故に疲労している。ここは打って出るべき・・・誰しもがそう思うでしょう。しかし歴戦の猛者を舐めてはいけません。こちらが手痛い目を見ることになります。

 


そこでこちらのとる策は籠城。砦で防戦に徹します。向こうとてこちらから仕掛けた戦。当然こちらが打って出るかと思われるでしょう。ゴブ布とゴブ軫は不仲という情報を掴んでおります。おそらく互いに足を引っ張り合うに違いありません。

 


向こうに攻めさせ敵が疲弊するのを待ちます。疲弊し撤退をしようとした時が好機。打って出て相手に撤退戦を強制させます。いかにゴブ布といえども総崩れになるでしょうぞ。そしてゴブ布は我が軍のゴブ羽、ゴブ信の両名が抑えます故・・・ご安心ください」

 


一斉に黙るゴブ堅軍の将兵達。沈黙がこの場に流れる。

 


「・・・異論はないようだな。成る程・・・ゴブ角を討つだけのことはある。優れた頭脳を抱えているなゴブ羽殿」

 


「我が自慢の弟です。では敵を攻めさせる誘導のため、我が師でもあるゴブロリに敵陣をつついてきてもらいましょう。

 


頼んだぞっ!!ゴブロリよ!!」

 


「お任せくださいゴブ羽様」

 


すべては手筈通りである。では行ってこようかな。ゴブ布さんよ・・・早く出てきなよ。君もゴブ羽のための餌なのだから。ゴブ羽軍に加わったことにより一騎討ちは発生しなくなった。一騎討ちをするにはゴブ羽の許可がいるのだ。安心して接近できるようになったというのは嬉しい。

 


「あれあれっ!?天下の大将軍様がゴブ堅軍にビビって進軍できないでいらっしゃる!!大将軍とは腑抜けにしかできないものだもんなぁっ!?しょうがないよなぁ!!チキンなゴブ布くんだもんなぁ!?

 


ゴブ軫もチキンなのか!?チキンはチキン同士穴でも掘り合う予定があったのかな!?そんなんだから出世できないんだよなぁ!だからゴブ布ごときの小童に遅れをとんだよっ!!まぁ本人がもっと小童なんだから救いようがないよな!?ひゃはははっ!!」

 


ぷるぷるしているということは・・・。

 


「「・・・貴様ぁぁぁぁっ!!」」

 


ふふっ、単細胞で助かるよ。

 


「ゴブ布軍打って出る!!全軍突撃せよっ!!」

「ゴブ軫軍も打って出る!!ゴブ布ごときに遅れをとるなっ!!」

 


おお・・・いい感じにばちばちじゃないですか。さて頼むよ黑兎馬・・・まぁいざとなったら命唱して助けてやるからさ。あとで綺麗な鬣をブラッシングして上げるからね。レディーは身嗜み大事だもんなぁ。

 


やる気になってくれて何よりだ。この黑兎馬は女の子である。気性が荒く、獣魔達とよく喧嘩になっていた。しかしよくわからんがオレを気にいってくれた。オレには甘えん坊の可愛い馬子である。後で名前をつけてあげようと思う。