闇と光 第134話 ゴブ允の策略
「美貴!オレは君をずっと待っていた!もう放さないっ!」
「えっ・・・なぁに?帰ってくるなり・・・しょうがないなぁ・・・ってどこ行くのよぉぉぉ!?」
オレは美貴の帰りを待っていた。ついに絶トムちゃんに見向きもされなくなった悲しさと闘いながらも健気に待っていた。ようやく待ち望んでいた彼女がやってきた。喜びのあまり抱き締めてしまった。彼女の反応が可愛かったのだが今はそれどころではない。
「邪魔するぜっ!!」
「んだよ・・・邪魔すんなっ!!さっきやっと糸口が見えたとこなんだよっ!」
「んなもん後でいいから!」
「あん?後でいいってなんだ!?お前の為にやってんだろうがよ!?」
「至急作ってもらいたいもんがある!ヴェルンド頼むぜっ!」
「ん?今度は何が欲しいんだハイロリ」
「・・・だ!できるか!?」
「いやまぁ出来るけど・・・何に使うんだ?」
「さすがっ!やっぱり腕が違うなぁ。大量に作って欲しい」
「あん?大量ってどんぐらいだ?・・・はっ!?そんな数すぐできっかよ!?頭逝かれてんのかっ!?」
「人員を増やせっ!給料を2倍・・・いや5倍出させる!頼むっ!!」
「はぁ・・・お前っていっつもそうなんだよなぁ・・・。サイズ見たいからあっちの部屋に呼んどけよ」
オレは悪爺の金と権力とコネの力でごり押した。いやぁ・・・僕はいいお友達を持ったようだねアデルソンくん。まっ・・・金だけならオレでも払えたんだけどな。これも経費に入るだろ。即造料金的な・・・うんうん。
この日ヴェルンド達は徹夜で作業に追われていた。
翌朝・・・。
「ヴェルンド出来てるかぁ?」
「・・・ばっちりだよ。一応伸縮自在で肌の質感も再現しておいた。昔に闘ったことがあるやつらだったからできたけどな。見たことないやつだったら標本として持ってこいよ。じゃないと作れないから」
「あぁわかった。恩にきるぜヴェルンド。ついでにソードも頑張ってくれると助かる」
「いやおめぇよ・・・それを必死に作ってやろうとしてたのを邪魔したのはどこのどいつなんだよ・・・っていねぇ。あの転移・・・ハイロリに与えちゃいけないものだろう絶対・・・」
よしそれでは試着会を始めましょう。おお・・・みんな似合ってるぞ。
オレが頼んだもの・・・
それは・・・
ゴブリンスーツだ。
伸縮性抜群、肌の質感まで再現された至高の逸品である。侵入者と呼ばれないようにするためだな。たぶんバレないでしょ。ゴブリンって大きさまばらだし・・・目視しないとオレを見つけれないくらいだし・・・まぁバレるとまた詰むので勘弁してもらいたい。
改めてパーティーメンバーを紹介したいと思う。
パーティーリーダー
ハイロリ改めゴブロリ
ナビ
美貴改めゴブ美
獣魔
ピヨ吉改めゴブ吉
ピヨ子改めゴブ子
サリー改めゴブリー
ゴブリン軍団の完成だぜ!他の鳥たちもゴブリンバードに変貌を遂げている。鳥ならいけるかもしれないが万一に備えてだ。決して面白そうだったからという理由ではない。
「ゴシシシッ!似合ってるぞゴブリー」
「ゴシシシッ!そういうゴブ吉兄上もゴブ子姉上も似合っているのです」
「ゴシシシッ!我こそはゴブ子!ゴブ蔵の仇を討つ者なり!」
「「ゴブ蔵ぉぉぉ!!」」
「えぇ・・・これ変じゃない?私大丈夫?」
「ゴブ美の魅力はそんなものでは変わらない。むしろ増しているかもしれない・・・うんスーツの中に濃厚ないい匂いがある」
「えっ?ホントにっ?どれどれ・・・ホントだっ!ゴブロリもいい匂いがする」
しばらくゴブリンパーティーが続いていた。他の嫁達が帰って来た時、みなそれぞれ固まるという反応を見せていた。そしてオレがゴブリンにコスプレするという新たなるプレイにも目覚めてしまった。
だいぶ時間が経ってしまったようだ。それではさっさとゴブ蝉を助けにいこうと思う。うまく村に溶け込めるといいなぁ。
私の名はゴブ允(いん)。昔はゴブロリと名乗っていた。私は村を開拓し発展させた。一代にして財を築き上げた。そして我が妻ゴブ美とともに精魂こめ育て上げた子供がいる。名はゴブ蝉。ミスゴブバースコンテストで優勝を手にするほどの美貌、知性を兼ね添えている自慢の子だ。ここに来るまで悲しみ、怒り・・・様々な感情を経験した。少し昔話を語るとしよう。
ゴブロリとして名を改めたオレはゴブ蝉を救おうとした。オレの女だといったらゴブ美さんから盛大に怒られた。その間にゴブ蝉は好き勝手されてしまっていたようだ。急いでオレはゴブ蝉を助けた。しかし彼女は涙を流しながら襲われていた男達の剣を奪い、自分の喉元へと突き刺した。これがゴブロリとゴブ蝉の初めての出会いであった。
ゴブロリ、ゴブ美は2人とも大いに反省することとなる。反省する前に大喧嘩をしていた。しかし惹かれ合うゴブリン達は最終的に違うことに夢中になった。なんだかんだ仲が良いのだろう。2人とも満足した後にお互い謝った。ゴブリン達は和解した。そして2人の目的は一致した。ゴブ蝉を早く真面目に助けよう。そうしてオレ達は共に心臓を突き刺しあった。ゴブロリとゴブ美の狂気的な愛はより深まることとなる。
オレ達は本気で駆け抜け、ゴブ蝉の悲鳴が聞こえる前に助けた。するとどうであろう?ゴブ蝉から再び悲鳴が上がった。ゴブリン殺しと罵られた。悲鳴を聞きつけたゴブ信がやってくる。どうやら前回出番がなかったのではりきっているようだった。同様にゴブ布さんもハッスルしていたのは気のせいではないのだろう。
二回の大きな失敗を経験しオレ達は学んだ。今回はちゃんと普通に助けた。そしてオレは名乗る。私の名前はゴブ允だと・・・。ゴブ美と2人でどうせならこの名前でと話し合った結果だ。ゴブ蝉のプロデューサーの名前はこの名前以外ない。
そうしてようやくオレ達はゴブ蝉の村へ入ることができた。ゴブリンスーツを着ただけでこうも変わるとは・・・ゴブリンの世界でも見た目は重要らしい。
ゴブ蝉を立派なゴブ女にしたてあげる計画が始まった。まずこの村は貧しかった。ゴブ卓の悪政により税が高く、作物の収穫量のほとんどを納めなければ税を払うことができなかったのだ。ゴブリンの世の中も所詮、金である。
魔法の世界に消えると新たな知識が得られる美貴ペディア。オレ達は美貴ペディアという魔法の世界の知識を総動員した。オレにもついにチートな頭脳がつくこととなる。生産性を上げ、より質のいいものを生産していった。
税として納めるものは不良品を回す。ゴミ処理場として活用させてもらうことにした。質の良いものは都市へと売り払う。ゴブ允自ら脅迫という名の値段交渉をした。ゴブ允は取引相手の弱みを調べ、それをネタに利用していた。その結果、ゴブ允の村は巨額の富を築くに至った。目には目を・・・悪には悪をである。
ゴブ允は出来る限りゴブ蝉を教育し、さらにゴブ美がコーディネートした。その結果、緑ギャルゴブ蝉が誕生した。なかなかの出来になったと思う。オレ達は満を持してゴブ蝉を送り出すことにした。そう・・・ゴブ布のもとへ・・・。
長い旅路を経てオレ達はゴブ布の邸宅へと着く。道中邪魔する者はゴブ允自ら闇へと葬り去ってきた。大将軍と言う割には質素な家に住んでいるゴブ布。
「ゴブ布様っ!!我が娘を献上したく参上しました!」
「ほぅ・・・その者か?名は?」
「ゴブ蝉と申します」
「そちらのゴブ女の名は?」
「えっ?私?ゴブ美と申します」
「ゴブ美・・・我はそなたが欲しい。我とともに天下をとろうではないか!?」
「てめぇ!オレの女だ!ふざけるんじゃねぇ!ゴブ美は渡さねぇぞ!」
「誰に向かって口を聞いている!?我こそはゴブ布!大将軍であるぞっ!」
「黙れ・・・ゴブ美は絶対に渡さねぇ!!オレのもんだっ!!」
ゴブ布とゴブ允は激突する。しかしそこにゴブ允を庇うようにゴブ蝉が割って入る。
「ゴブ蝉んんんんん!!」
ゴブ蝉はゴブ布の大剣に貫かれる。
「私は・・・ゴブ允さんをずっとお慕いしておりました・・・あの時からずっと憧れておりました・・・私を助けてくれてありがとう」
「ゴブ布もう許さねぇ・・・なにっ!命唱が切れただと・・・」
ゴブ蝉の最後の言葉を聞いていたら命唱時間がまったく残っていなかった。オレ達はゴブ蝉の健気な思いに心を打たれることになる。もう2度とあんないい子を死なせない・・・その思いで育ててきた。そしてオレの命を幾度となく刈り取ってきたゴブ布に引導を渡してやる。
オレ達は気づいた。この星で一定時間を超えると今いる世界で経過する時間は固定されるということに・・・。だから今回はこれでもかと言うほど育てた。惑星中の美ゴブリンが集うコンテスト・・・3回目の挑戦にしてようやく頂点をとることができた。今度こそ我が愛ゴブリンゴブ蝉の魅力で骨抜きにしてやるぞゴブ布よ・・・待っていろ・・・その首必ず取ってやる。