闇と光 第140話 迫り来る旧陸軍
連戦連勝を重ねたゴブ羽・ゴブ堅軍はゴブ卓軍を長安まで退却させた。現在は焼け落ちてしまった旧都洛陽の復興の手伝いをしている。ゴブ堅に対してゴブ羽が進言したのが起因である。
ゴブ羽・ゴブ堅に対し、民達の評価は上がっている。さらにゴブ布を追い詰めたゴブ羽軍の噂は星全土へと広がっていく。これはゴブロリが手を回していた。ゴブ蔵達の手により事実を誇大化させ伝えている。またゴブ堅軍の中でもゴブ羽軍の評価は鰻登りに上がっていく。
ある時ゴブ堅は1人復興作業をしていた。その時ある物を見つけることとなる。
「これは・・・伝星の玉璽・・・ゴブ羽とともにいることで我が運気が上がっているようだな。これさえあれば我が覇道・・・大義名分を得ることができる。
誰だっ!?・・・なんだ・・・その方か。ゴブ羽殿のおかげでこのゴブ堅が星下を手中にする時が近いようだ。これを見てみよ」
ゴブ堅に近づいていくゴブロリの姿があった。
「これが伝星の玉璽なのでございますね。綺麗ですねぇ」
「はっはっはっ!そうであろう?この星の皇帝の証である・・・きさま・・・血迷う・・・たか・・・」
「私は先程ゴブ堅殿の血が綺麗だと言ったのですよ?脈打つ生きのよい血管・・・やっぱり綺麗ですねぇ。如何なる時も油断するな・・・我が師からの教えです。冥土の土産に持って行ってくださいな」
ゴブロリがゴブ堅の心の臓を突き刺している。ゴブロリはゴブ堅なら探し出してくれるだろうとこの玉璽を得るために洛陽復興を進言したのだ。
「くっくっくっ・・・これでゴブ羽の王への道がまた一歩進んだ。さっそく届けることにしよう」
この様子を終始見ている人物がいた。ゴブロリが気付けなかったのは無理もない。気配を完全に消していたからだ。彼の名はゴブ権(けん)。ゴブ堅の息子である。ゴブ策の弟にあたる。
ゴブ権には極度のコンプレックスがあった。故にストーカーするのが彼の日課となっていた。バレると怒られるので気配を消すことが神業レベルまで上達していた。
「・・・父上。あいつはゴブ羽軍の者・・・兄上達はゴブ羽のことを信じ切っている・・・姉上に知らせなければ・・・一刻も早く行かねばならないっ!!」
ゴブ権は姉の元へ急ぎ飛んで行く。その頃ゴブ卓の元へある者が訪れていた。
「ゴブ卓皇帝っ!!我はあなたの軍門に降りあなたを皇帝として奉戴致すっ!!」
「ほぅ・・・ゴブ操。幼き皇帝はどうするのだ?」
「はて?誰ですかな?こちらに童の首は御座いますが・・・」
ゴブ操が箱から覗かせた者は幼い皇帝の首であった。
「ゴカッカッカッ!!ゴブ操よ・・・お主も悪よのぉ」
「何を仰いますか・・・ゴブ卓様程では・・・」
「「ゴハッハッハッ!!」」
暴虐無人の王と乱星の奸雄が混ざり合ってしまった。失った兵力を取り戻すかのように旧海軍をゴブ卓は手にする。更なる強化を遂げたゴブ卓軍が誕生した。
「お、おやじぃぃぃぃぃ!!」
「「「「「ゴブ堅様ぁぁぁっ!!」」」」」
ゴブ堅の亡骸を見つけ悲しみにくれる旧空軍の姿があった。
「ゴブ堅殿・・・何たる無惨な姿に・・・先生っ!!いったい誰が!?」
「ゴブ羽よ・・・命とはこうも儚いもの。決して忘れてはならぬぞ。ゴブ堅殿・・・惜しいお方を失くしたものだ・・・しかし悲しんではならぬっ!!
敵味方問わず命に優劣などない。死は等しく機会を与えてくださる。死というものは最上の楽園である。再び器を得るまで無という楽園へと旅立ったのだ。穏やかに漂うゴブ堅殿の魂をいたずらに騒ぎ立ててはならない。
ゴブ堅殿は今安寧の地におられるのだっ!!静かに安らかに眠りにつかせてやれっ!!いつまでも悲しむことは死者への冒涜であるっ!!それが残された者がゴブ堅殿に捧げられる最期にして最上の愛である」
ゴブロリの言葉を聞き、悲しむことを止めたゴブ堅軍とゴブ羽達。
「さぁ前を見て進むのだっ!すべてはこの星の平和のためにっ!!」
「ゴブ羽殿は良き師をお持ちのようですな」
なぜかゴブロリの評価が上がっていく。ゴブロリよ。貴様がやったのであろう・・・抜け抜けしいことを言うな。ゴブ堅軍はこのあと息子のゴブ策が継ぐことになる。ゴブ策の代わりに3大将の座に就いたものはゴブ泰(たい)というゴブリンだった。
ゴブ策の総督就任の儀式のため、ゴブ策軍は一度故郷へ帰ることとなる。ゴブ策らと別れたゴブ羽達は引き続き洛陽の復興に邁進する。
ようやく瓦礫も粗方片付いた頃、ゴブ羽達の元にある報せが届く。ゴブ蔵よりもたらされた緊急の情報である。
旧陸軍挙兵。ゴブ羽軍に対し全軍進軍中。退却されたし。首謀者はゴブ堅の息子ゴブ権。そしてゴブ備の妻、ゴブ権の姉であるゴブ香(こう)。ゴブ堅殺害への報復を大義名分に掲げており、敵軍の士気は高し。
ゴブ権?どこに隠れていたのだ・・・まさか見られていた?まぁよい・・・せっかく攻めてきてくれている。ゴブ羽軍の名声上げに利用させてもらおうじゃないか。
「ゴブ羽っ!!ゴブ蔵から報せが入った!ゴブ備率いる旧陸軍が言いがかりをつけてこちらに進軍中だっ!一時撤退するぞ!!」
「しかしゴブロリ先生・・・我らを慕ってくれるこの民達を置いてゆくことはできませぬ・・・」
「「「「「私どもも連れていってください!!心優しきゴブ羽様とともにありたいのです!!」」」」」
「・・・ゴブ羽。軍議を行う。旧陸軍と戦に入る。これは退却戦ではない。民達を守る防衛戦である。心せよ」
ゴブロリの言葉によりゴブ羽軍は軍議に入る。そしてゴブ羽達は民を連れ、撤退の準備へと入る。ゴブロリは準備で慌ただしい中、1人空を眺めていた。
「・・・ゴブロリ様ご用命を」
ゴブロリの背後に立つ5人のゴブリン。
「ゴブガード達に特命を与える。ゴブ権の小僧を音も無く攫ってこい。ゴブ備達の出方にもよるが・・・上手く行けば亀裂をいれることができるかもしれない」
「「「「「御意」」」」」
実は洛陽に火をつけた時こいつらがオレの元に現れていたんだ。ゴブジョーカー達は都に火を放つというオレの悪逆非道ぶりに惹かれてしまったらしい。暗殺しまくっていたのもこいつらは知っていた。ゴブ卓よりもオレの方が魅力的なんだってさ。やったねゴブ卓に勝ったよ。
共に手を汚す同志ができた。さぁもっと影からゴブ羽の星下のために尽力しようではないかっ!!
ゴブ羽軍は民達とともに行軍する。その行軍スピードは恐ろしく速かった。
こんなこともあろうかと、ゴブ美監修の元に作らせた黑兎馬専用馬車を大量に生産しておいたのだ。研究者の探究心というものは恐ろしいものである。もはや美しさしかない完成された設計。闘えぬ民を引き連れているから進軍速度が遅いというのはもはや間違いである。
ゴブ蔵に命じてゴブ羽が民を引き連れて退却しているという情報は流布しておいた。ゆっくりと歩いているのは民ではない。練兵に練兵を重ねた元民達。元黑巾兵である。さぁ黑州兵の恐ろしさ・・・とくと味わうがよい。
逃げる側から追う側になったようだが・・・結局追い詰めらる側ということには変わりない。ゴブ備よ・・・身の程を知れ。地球では話が盛られてゴブ備の軍は強いように聞こえるがその実はそこまで強くない。強い将は確かにいる・・・しかしゴブ堅やゴブ操の元には同等以上の将達がさらに存在している。
ゴブリン達の能力値も地球での能力に近くしてあるようだ。デキウスのことだからそれらしい名前を割り振ったということも考えられる。無駄なところに力をいれすぎなんだよなぁ・・・あの変態・・・。
さぁ地球の物語と同じように逃げ回ってもらおう。ゴブ備よ・・・貴様には王としての器は備わっていない。ゴブ羽の踏み台となれっ!
「後方に砂塵確認っ!!ゴブ備軍かと思われますっ!!」
「偵察部隊より伝令っ!!ゴブ備軍総数40億。将兵も多数従軍している模様」
ゴブ羽軍1万・ゴブロリ黑州兵とゴブ備軍40億との闘いが始まろうとしていた。