闇と光 第152話 ゴブロリ軍対ゴブ信軍!?

3つに部隊を分けた呉軍。それぞれ全速力でゴブロリ達に向かって殺到している。呉軍の隊列は崩れ、すっかり伸び切ってしまっている。伸び切った隊列はもれなく3人のゴブロリにより殲滅させられている。ゴブ策が痺れを切らして攻撃を仕掛けたのがことの始まりだ。競い合うように3人が敵軍の先頭集団を始末していく。

 


このままではゴブロリを逃してしまう。そこでゴブ権は3提督に助言を求める。返ってきた答えそれはこうであった。

 


逃げているのはゴブロリ、ゴブ策、ゴブ史慈である。闘い方を見ればわかる。いずれの武も兵を分けては被害が増えるだけだ。故に本物のゴブロリへと全軍で襲いかかるというものであった。

 


進言通りに1人のゴブロリへ全力で追撃を仕掛ける。すると余った2人のゴブロリの行動が変化。背後から呉軍に襲いかかってきたのだ。その瞬間3提督は確信する。今追っているゴブロリが本物であり、背後にいるのはゴブ策とゴブ史慈であるということを。

 


3提督がそれぞれの方向へと散る。追撃を維持しつつ、手の内がわかりきっている背後の2人の息の根を止めるためである。周囲を囲むように後方のゴブロリ達を誘い込む。そして遂に包囲が完成した。

 


ゴブ蒙、ゴブ遜はゴブロリの動きを見て確信が確定に変わる。あれはゴブ策とゴブ史慈であるということに。徐々に追い詰められていく2人のゴブロリ。その時それは起こった。

 


「ロリ来来っ!!」

 


その声に2人は思わず反応してしまう。そこには新たなゴブロリの姿があった。一瞬見せてしまった隙・・・それは致命的なものへと変わる。

 


囲んでいたゴブロリから漆黒の手が大量に展開される。気づいた時には遅かった。手は兵士達の羽と足を拘束している。

 


ゴブロリは好機と見て拾連段状態に変わっていた。囲まれていたゴブロリ。それはゴブロリゲンガーによる分身であったのだ。ゴブロリがゴブ策とゴブ史慈の動きを模倣していたに過ぎない。

 


新たに現れたゴブロリがゴブ策とゴブ史慈なのである。再び囲んでいるゴブロリに視線をやる。一瞬の間に兵士達の両足、両羽が捥ぎ取られていた。状況を確認していると新たなゴブロリが2人のすぐ後ろまで迫っている。振り返った時には遅かった。

 


一撃の元に首を刈り取られるゴブ蒙とゴブ遜。辺りに残されているのは足と羽を失い、這い蹲ることしかできないゴブリン達。

 


ゴブロリはそんなゴブリン達に火を放つ。闇のマナの使い手といえども他属性が使えないわけではない。火のマナはリュカウスと闘いながら嫌というほど見てきたゴブロリ。並大抵のレベルではない。

 


蒼き巨大な篝火が2つ、呉軍の後方に突然現れる。ゴブ策とゴブ史慈はその様子を眺めていた。

 


「これがロリ先か・・・ノータイムでやりやがった・・・敵には一切の慈悲すらない・・・表情もまったく変わってない・・・味方で良かったぜ・・・」

 


「かつての仲間達・・・安らかに眠れ。この星の平和は我らがきっと成し遂げてみせようぞ・・・」

 


ゴブロリの容赦なく命を奪う姿に2人は恐怖すら抱いていた。燃えゆくかつての仲間達に思いを馳せる。

 


「まだ戦は終わってないっ!!ぼさっとするなっ!!ついてこいっ!!」

 


ゴブロリの言葉により現実へと引き戻される。4人のゴブロリは呉軍の追撃を再開した。一方ゴブ権は怯えていた。突如として巨大な炎が2つ背後に現れたからだ。

 


「ゴブ粛っ!!あれはなんだ!?」

 


「・・・わかりません。もしかすると後方のゴブ蒙、ゴブ遜がやられてしまったのかもしれません・・・」

 


「ぐぅ・・・このままではまずいっ!!どうすればよいっ!?」

 


「ゴブ備軍と合流しましょう。もはや我らの方が寡兵。同盟の力を借りる他ありますまい」

 


「ならばゴブ備の元へ行くぞっ!!全軍っ!!敵に悟られるなっ!!追撃すると見せかけて合流するぞっ!!」

 


「「「「ロリ来来っ!!」」」」

 


ゴブ粛の助言通りに行動に移そうとした時、背後からゴブロリ4人衆が呉軍に襲いかかる。

 


「くっ・・・早い。ゴブ権様っ!!ここは私が持たせますっ!!早く合流してくださいっ!!」

 


「す、すまぬ・・・後は頼むぞっ!!ゴブ粛っ!!」

 


ゴブ権は10億の兵を率いてゴブ備の元へ急ぐ。ゴブ権は困惑していた。自身が追撃していたはずなのに追撃される立場に変わっているということに。しかしゴブ香への思いは断ち切ることはできなかった。

 


すべてを犠牲にしてでもゴブロリだけは討たなければならない。そのためには合流する必要がある。ゴブ権の心を弄ぶかのように追撃の手が緩んだ瞬間、反転した男がいた。

 


「ロリ来来っ!!」

 


後方からゴブロリが追撃をかける。ゴブ権もまた反転する。ゴブロリに対して突撃を仕掛ける。その刹那、自身の背後から悪寒を感じる。

 


「みぃー・・・つけた・・・弟よ。ちゃんと逃げないと駄目じゃないか・・・でもゴブ香はオレだけのものだぞ?

 


ロリ来来っ!!」

 


反転したゴブ権の背後にゴブロリファントムで転移してきたゴブロリの姿があった。

 


「おのれぃっ!!ゴブロリめっ!!くらえっ!!」

 


ゴブ権が剣を振る。しかしゴブロリの姿は闇へと変わり、別の方向からロリ来来という声がする。その度にゴブ権は進路を変更し突撃している。もはや合流することは頭から消えていた。目の前のゴブ香を奪ったゴブロリへの殺意しかゴブ権の頭には存在していなかったのだ。

 


ゴブロリに弄ばれながら四方八方に突撃を繰り返す呉軍。何度も繰り返す内に確実に体力が奪われていく。方向ランダムのシャトルランを呉軍の兵達は永遠に繰り返しているのだ。そして進路はゴブロリの手により着実にゴブ備軍の元へと誘導されている。

 


「「「「ロリ来来っ!!」」」」

 


一方、ゴブ粛はゴブロリ4人衆相手に奮戦していた。突然示し合わせたかのように一斉に空中へ飛翔する4人。ゴブ粛の視線は空へと固定されてしまう。そこへ潜んでいたゴブ瑜の剣が突き刺さる。

 


「粛よ・・・視野は広く持ちなさい。これが最後の教えですね」

 


「参りました・・・さすが提督殿・・・」

 


一閃・・・ゴブ瑜の剣が振り抜かれた。ゴブ粛の体は真っ二つに斬り裂かれる。その様子を見て、呉軍の兵士達は武器を捨て投降の構えをしていた。そこへ再び漆黒の手が襲いかかる。武器も持たない兵士達の体は次々に絞め千切られてゆく。

 


「ゴブロリ殿っ!?何をっ!?」

 


「ゴブ瑜よ。禍根は残すな・・・奴らはゴブ策を捨てゴブ権についた裏切り者だ。裏切るやつは何度でも裏切る・・・そのような者を生かしておく必要はない。その甘さが後に己に突き刺さると思えっ!!」

 


「・・・理には叶っているが何故そこまで非情になれるっ!?同族の命を何故簡単に消し去ることができるのですっ!?」

 


「・・・ゴブ瑜よ。何故ゴブ羽軍がある?何故今同族で争っている?何故同族で命の奪い合いをしている?

 


すべては星の平和のため・・・目的のためには甘さは捨てよっ!!敵はすべて殺してでも平和を作り上げる・・・たとえそれが同族の命であろうと揺るがない・・・それがゴブ羽とともに旗揚げした我らの誓いであるっ!!」

 


「「「・・・」」」

 


ゴブ策、ゴブ瑜、ゴブ史慈はその言葉を黙って聞いていた。それぞれが覚悟が足りていなかったと自覚する。

 


「ゴブ瑜っ!!次になすべきことはっ!?」

 


「ゴブ権共々裏切り者達の首級をとるっ!!全軍追撃を開始せよっ!!」

 


ゴブ瑜の号令の下、ゴブ策軍は追撃を開始する。3人はスパーキング状態になっていた。その時ゴブロリの姿は消え去っていた。ゴブロリゲンガーを解除したのだ。

 


誘導されていた呉軍は恐慌状態となっているゴブ備軍の姿を捉える。ようやく見えた同盟軍。その背後から再び魔の声が聞こえてくる。

 


「ロリ来来っ!!」

 


視線がそちらを向くと再び背後から声がした。

 


「ロリ来来っ!!」

 


振り返ると、ゴブ権の視界には見渡す限りのゴブロリの姿。ゴブ備軍の姿はすっかり消え去っていた。

 


「信来来っ!!」

 


ゴブ権の背後から声が上がる。ゴブロリは拾乗状態にあった。ゴブ備軍の姿をゴブロリの姿へ。そして呉軍の姿をゴブ信へと変化させたのだ。

 


突然現れた大量のゴブ信を見てゴブ備軍は死を覚悟した。決死の覚悟で呉軍へと突撃してくる。ゴブ権達には大量のゴブロリが迫ってくるように見えている。両軍混乱状態。生き残るには目の前の敵を打ち倒すしかない。己の生存をかけ、全兵士がスパーキング状態に変化する。

 


大量のゴブロリと大量のゴブ信が互いに激突した。ゴブロリ軍団対ゴブ信軍団の殺し合いが始まっている。

闇と光 第151話 合肥新城の闘い

「瑜よ。これでよかったのか?」

 


「ええ。策に火の壁を出してもらうことでゴブ備軍はこちらにこれなくなりました。信くんがきっと暴れ回ってくれることでしょう。策にも暴れてもらいますからね?覚悟しておいてください」

 


「おぅ任せろっ!!信くんにもロリ先にも負けてらんねぇっ!!燃え滾ってくるぜえっ!!」

 


「いや・・・もうちょっと後からでいいんですけどね・・・まぁ今晩はたっぷりお仕置きしてあげましょうかね」

 


ゴブ策の手により燃え盛る壁が作られていた。火のマナの使い手ゴブ策。彼もまた脳筋よりというか脳筋であったのだ。そしてその壁の向こう側では・・・。

 


「オラオラァぁぁぁっ!!もう終わりかっ!!手応えねぇぞごらぁっ!!」

 


ズタズタに斬り刻まれているゴブ忠の姿があった。ゴブ信はスパーキング状態に入っている。一度スパーキングを経験すると自分の意思でオンオフ可能のようだ。ゴブ忠の首が宙を舞う。さらにその首に対して黑き刺突撃の連打が襲いかかる。ゴブ忠の首は木っ端微塵に弾け飛んだ。

 


「我こそはゴブ信っ!!ゴブ忠討ち取ったりぃぃぃぃ!!」

 


「「「「「ひ、ひぃっ!!ゴブ信がまたきたぞぉぉぉっ!!逃げろ・・・逃げろぉぉぉぉっ!!」」」」」

 


ゴブ備軍にはゴブ信の恐怖が刻み込まれていた。目の当たりにした武・・・そして勝ち名乗り・・・兵士達の中に長坂での恐怖が蘇る・・・。

 


「先生の言う通りあいつら腰引けてんなぁ・・・んじゃ蒼愛(ブルーアイ)付き合ってくれよな?」

 


「ブヒヒヒンッ!!」

 


突然変異した蒼き黑兎馬に跨りゴブ信は駆け上がる。

 


「確かこう言えばよかったんだよな。

 


信来(しんらい)っ!!信来っ!!」

 


「「「「「ゴブ信だぁぁぁぁっ!!早く逃げないと首が飛ばされてしまうぞぉぉぉぉっ!!」」」」」

 


ゴブ備軍の兵士達はあっという間に恐慌状態に陥る。ゴブロリが長坂の闘いの後、誇大化させた情報を裏で流していたのだ。ゴブ信による圧倒的蹂躙が始まっていた。

 


一方その頃ゴブロリはゴブ権により新たに建設された呉の拠点。合肥新城に侵入していた。潜入活動に慣れてしまったゴブロリにとってこの程度は朝飯前といったところだ。

 


「伝令っ!!ゴブ権様っ!!火急の報せに付き失礼しますっ!!」

 


ゴブ権に駆け寄る1人の兵。

 


「何用だっ!!早く申せっ!!」

 


「ゴブロリの姿が確認されましたっ!!」

 


「我が仇敵め・・・よくもぬけぬけと現れたな・・・よくぞ知らせたっ!!褒美をとらすっ!!」

 


「それでは・・・ゴブ権様・・・死んでください」

 


漆黒の刃が襲いかかる。完全に虚をつかれたゴブ権は動くことすらできなかった。

 


ガキィンッ!!甲高い音が天守閣に響き渡る。

 


「このゴブ泰がいる限り・・・主君には手出しさせんぞっ!!曲者めがっ!!」

 


「ゴカカカカッ!!バレちゃしょうがねぇ・・・久し振りだなぁっ!!ゴブ権坊やっ!!」

 


「き、貴様はっ!!ゴブロリっ!!白昼堂々と忍び込むとは・・・飛んで火にいる夏の虫・・・その首貰い受けてくれようぞっ!!」

 


「時にゴブ権?ゴブ香は甘美な味わいであったぞ。中々・・・締まりが良い。今ではもう・・・1人の漢の虜となってしまっている。今までの男は男でなかった。私の本当の初めてを奪われてしまったと嬉しそうに言っておったぞ?

 


器だけでなく色んな物も小さいようだなぁゴブ権っ!!もうゴブ香はお前如きには目もくれないであろうっ!!ガキはそこの護衛にオムツでもかえてもらいなっ!?振られた男は黙ってネンネしてろっ!!あばよっ!!」

 


ゴブロリはゴブ蔵から話を聞いていたのだ。ゴブ香の塩梅を・・・ゴブ蔵が嬉しさのあまり、勝手に話してきただけなのだが・・・。プルプルと震え出すゴブ権。バチバチとスパーキング状態に変わって行く。

 


「「「なりませぬぞっ!!殿っ!!」」」

 


「えぇーいっ!黙れぃっ!全軍ゴブロリの首をとるっ!!追撃せよっ!!」

 


「「「殿っ!!お待ちくださいっ!!」」」

 


怒り狂うゴブ権。それを制止する粛、蒙、遜の3提督。そこへひょこっと顔を出す者がいた。

 


「ロリ来来(らいらい)っ!!

 


そうか・・・諦めてくれたんだな弟くん。これからはお兄様と呼べっ!!じゃあな弟よっ!!」

 


ブチンッ!!ゴブ権の中で何かが切れた音がした。

 


「呉軍全軍に告ぐっ!!総督命令であるっ!!敵は合肥新城にありっ!!ゴブロリを打ち取れぃっ!!」

 


ゴブロリの挑発に乗り、ゴブ権が動き出す。ゴブロリは隠れるのが上手い。呉軍が見失うとどこからともなく現れる。ロリ来来。この言葉が幾度となく城内に響き渡る。そしてゴブロリはゴブ権を煽る。煽る。煽り散らかす。ゴブ泰に攻撃を止めさせたのもわざとである。これをゴブ権が知る由もない。

 


ゴブ権の頭には血が上り切っていた。煮え渡る油のような怒りがゴブ権を支配している。

 


「ゴブ権様っ!!ゴブロリは城内にいるはず・・・ならば城を火攻めし誘き出しましょう。そこを我らが待ち構え、憎きゴブロリを捕らえるのですっ!!」

 


「それは名案だっ!!城に火を放てぇぇぇっ!!」

 


ゴブ権ご乱心・・・呉軍の手により城に火が放たれる。3提督の制止の声はもはや届いてすらいない。あるのはゴブロリへの憎しみ、そしてゴブ香が欲しいという欲求のみであった。

 


城全体に火が回る。外でゴブロリの姿を待つゴブ権達。

 


「なかなか出てこないではないかっ!!よもや火に巻き込まれて死ぬ筈もあるまいっ!!はよぅ出て参れっ!!」

 


「いやぁ・・・よく燃えてますねぇ。心配してくれるなんて優しいな権よ。結婚祝いの炎まで準備してもらって悪いね弟くん」

 


「き、貴様っ!!いつの間にっ!?」

 


「あっ?見つかっちゃった?兄の進言を聞いてもらってどうもありがとう。じゃあまたかくれんぼでお兄ちゃんと遊ぼうか?

 


ロリ来来っ!!」

 


逃げるゴブロリに対して呉軍の追撃戦が始まる。合肥新城はゴブロリの合流からわずか半日足らずで瓦礫と化した。その様子をゴブ瑜達は遠くから見守っている。早々に誘き出す予定だったのだが、ゴブロリがなかなかやってこなかったからだ。よもやゴブロリに何かあったのかもしれないと接近していた。

 


「おいおい・・・ロリ先やっべぇな。あっという間に城を落としてしまったぞ・・・」

 


「ゴシシシッ!!主君がゴブ羽軍に降った理由がよくわかった。主君よ・・・これならゴブ瑜様が待ち侘びてもしょうがないであろう」

 


「・・・こらゴブ史慈。からかうんじゃありません。さてとそれでは誘導地点まで戻りましょうかね。心配することすら必要なかったようですし」

 


「ロリ来来っ!」

 


「ってゴブロリ殿っ!?」

 


「ゴブ瑜作戦変更だっ!あいつらバカだ。尻拭いはすべて任せたぞっ!!ゴブ策っ!!ゴブ史慈っ!!一緒に暴れてもらうぞっ!?」

 


ゴブ策とゴブ史慈の姿がゴブロリの姿へと変わっていく。これはゴブロリチェンジャーによるものだ。

 


「合流地点はゴブ備軍のど真ん中でどうだっ!?面白いように敵が集まってきてくれるぞっ!!」

 


「ゴハハハッ!!いいぜっ!乗ったっ!!」

 


「某も構わぬっ!!たまには主と競い合うのもよかろうっ!!」

 


「・・・しょうがないですねぇ」

 


「なら行くぜっ!!」

 


3人のゴブロリの姿を闇が覆い尽くす。ゴブ権の前に現れるゴブロリ三人衆。

 


「「「ロリ来来っ!!」」」

 


3方向へ分かれ走り去っていく。3人とも黑兎馬にまたがっており判別がまったくつかない。

 


「ええーいっ!!どうなっておるっ!!全軍っ!!すべてのゴブロリの首をとれぇぇぇっ!!」

 


呉軍とゴブロリ三人衆の鬼ごっこが始まった。

闇と光 第150話 合肥の闘い

ゴブ紹率いる蜀軍は白馬の地にて倒れた。残る星下を争う勢力は魏呉妖そしてゴブ備。星下は誰の手に渡るのであろうか。

 


「まずいですね・・・着実に兵力が削られています。こちらの兵士の数は30億になってしまった・・・しかし向こうはまだ70億はいる・・・援軍が到着するまでどうにか持ち堪えなければ・・・」

 


「あるじがくるまでがんばるっ!!」

 


「必ず来てくれますわっ!!」

 


妖精さんもっと血をよこしてくださいっ!!」

 


「ゴカッカッカッ!!ゴブリー殿・・・このゴブ超も付き従いますぞっ!!」

 


「その通りでやんす。このゴブ蔵も微力ながら力を貸すでごわすっ!!」

 


ゴブ良達は魏軍の猛攻を受け、消耗していた。しかしそれでも抗い続ける・・・味方がくると信じて・・・。

 


一方ゴブ策とゴブ権は合肥の地にて対峙している。ゴブ権の猛攻を耐え凌いでいたゴブ史慈と合流。しかし既に10億の兵を失っていた。呉のゴブ粛(しゅく)、ゴブ蒙(もう)、ゴブ遜(そん)による策が原因である。ゴブ瑜がなんとか対抗するも、依然として厳しい状況は打開できない。

 


呉の智に対して妖は武で持ち堪えている。ゴブ策、ゴブ史慈、ゴブ信の3人が無双するが被害は敵軍の智により最小限に抑えられてしまっていた。

 


現在呉18億対妖12億。数の上では劣勢状態。そんな時にゴブガードより報せが届く。ゴブ備軍20億が後方より迫っている。ゴブ瑜はひたすら考えていた。しかし打開策がまったく出て来ない。現状ですら打ち崩すことが難しい。

 


呉軍との膠着状態を崩せぬまま、時間ばかりが過ぎていく。ゴブ備軍はもうすぐそこまで近づいていた。そんな妖軍の元へ1頭の馬が物凄い速度で駆け寄ってくる。その背中にはゴブロリが騎乗していた。黑愛が到着したのである。

 


「ゴブロリ殿っ!!申し訳ありません・・・未だに状況は打開できておりません」

 


「瑜ーちゃん。これは先生の分身体だな。だから意識はないと思う。本体は兄者と共にどんぱちやってるんだろうよ。よしよーし黑愛頑張ったなぁ」

 


「ブルルルゥ!」

 


「なんだ?お腹空いたのか?ずっと走ってきたんだもんなぁ。じゃあご飯にしようぜ」

 


「むぅ・・・瑜よ。そんな待ち焦がれた目でロリ先を見つめられると嫉妬しちまうぜ」

 


「策・・・しょうがないでしょう。私では打開策が見出せない・・・このお方にすがりたくもなりますよ」

 


ゴブロリの体が突然起き上がる。黑愛はそんなゴブロリにすりすりしている。

 


「黑愛よくやってくれたなぁ・・・って馬も腹見せんのか。よしわしゃわしゃしてあげようっ!」

 


蕩けた表情を浮かべる黑愛。妖精の星でもゴブロリのゴッドハンドは健在のようだ。

 


「おっ!先生。兄者の方は大丈夫なのか?」

 


「向こうはもうすぐ終わる。今ゴブ羽が最後の戦をしている頃だろう。蜀軍の兵士も半数以上は吸収できるはずだ。それはそうと・・・暴れ方が足りないんじゃないんか?ゴブ信よ」

 


「げっ・・・まじかよ・・・いやぁ・・・敵に瑜ーちゃんも苦戦するようなやつが3人いてな。なかなか突破できないんだ・・・」

 


「この短時間で絶望的な兵力差を覆し・・・勝利するだと・・・いったいどうやったら・・・」

 


「後で教えてやるよ。まずは状況を話せ」

 


「新たに就任した呉軍の3提督・・・粛、蒙、遜の3人により我が軍の攻撃が通用しません。彼らは私に勝るとも劣らない才覚の持ち主・・・彼らの策は・・・」

 


ゴブ瑜が得ている情報をすべて話し出した。

 


「なるほどな・・・しかしゴブ瑜よ。相手にする者を間違っている。今相手にしているのは誰なのだ?よく考えてみろ。

 


それにゴブ策もまだまだ暴れ足りないんじゃないか?ゴブ史慈もおとなしすぎる・・・その程度なのか?呉軍の武とやらは?」

 


「面目ねぇ・・・敵にオレらの闘い方がよく知られちまっている」

 


「私達が相手にしているのは・・・呉軍。粛でも蒙でも遜でもない・・・相手にすべきはゴブ権・・・それならば・・・」

 


1人思案し出すゴブ瑜の姿があった。そんな時ゴブガード達により情報がもたらされる。ゴブ備軍との交戦まであと3時間。

 


「ゴブ瑜っ!!使えるものはなんでも使えっ!!」

 


「御意っ!!ゴブ備軍に対しては信くんに対応をお願いしたいっ!!そうですねぇ・・・兵は5億ほど・・・」

 


「ゴブ信っ!!兵なんていらないよな?ゴブ羽は単騎で籠城して単騎で蜀軍を追撃したぞ?単騎でゴブ紹を追い詰めるはずだっ!ゴブ羽にできてお前にできないなんてことないよなぁ!?」

 


「ゴハハハッ!!兄者になんてことやらせてんだよ先生っ!!いいぜっ!兵なんていらねぇ・・・単騎で薙ぎ倒してやらぁっ!!」

 


「だそうだぞ?ゴブ瑜よ。お前は味方に気を遣いすぎだ。こういう脳筋どもはな・・・勝手に暴れさせるのが1番いい」

 


「ゴフフフッ!それはあなただから言えることでしょう。窮地に陥っても助け出す自信があるからだ。

 


それでは呉軍に対してはゴブロリ殿に単騎駆けをお願いしたいっ!!」

 


「わかってきたじゃねぇかゴブ瑜っ!!誘導地点はこの辺でいいか?提督殿?」

 


「話が早くて助かります。誘導方法は任せます。策っ!!ゴブ史慈っ!!我らは全軍で敵を横から叩くぞっ!!」

 


ゴブロリという心強い援軍を手にした妖軍12億と呉軍18億・ゴブ備軍20億が合肥の地にて激突する。

 


「ゴブ備殿・・・まもなく敵陣に到着。拙者に先駆けの役目をお任せ願いたい」

 


「おお・・・ゴブ忠(ちゅう)・・・名だたる将を我らは失ってしまった・・・我が軍の未来はお前の手にかかっている。頼めるか?」

 


「このゴブ忠・・・強靭な矢となりて敵陣を必ずや斬り裂いて見せましょうぞっ!!」

 


崖の上から妖軍を見下ろすゴブ忠の姿があった。その姿はスパーキング状態になっている。

 


「これより妖軍に奇襲を仕掛ける・・・我らひとりひとりが万の兵を屠る矢であるっ!!全軍突撃ぃぃぃぃぃっ!!」

 


崖を垂直に駆け下りるゴブ忠奇襲部隊。その先にはあの男の姿がある。

 


「兄者に負けてらんないよなぁ・・・ん?敵襲か・・・崖を駆け下りてくるとは面白い。そんじゃ暴れさせてもらうかっ!!

 


そこの者っ!!我が黑槍の生贄となれぃぃぃっ!!」

 


「相手にとって不足なしっ!!我こそはゴブ忠っ!!我が弭槍の餌食となれぇぃぃぃぃっ!!」

 


崖の斜面を駆け下りながらゴブ忠はゴブ信に矢を次々に放つ。ゴブ信は槍をゴブ忠に向かい掲げている。矢が迫る・・・しかし矢は勝手に逸れていく。逸れた矢は大地を深く抉り取っていた。燃え盛る壁が後方に立ち上っている。いつのまにか妖軍の姿はない・・・ただ1人を除いて・・・。

 


水のマナの使い手ゴブ信・・・ゴブ備軍相手の単騎駆けが再び始まろうとしていた。

闇と光 第149話 白馬の闘い

ゴブ邦の首が飛び、ゴブ授、ゴブ豊の顔色が青ざめていく。ゴブ紹が手を掲げる。2人の首も宙を舞うことになる。

 


「裏切り者が消えて清々したわっ!ゴブ正よ。次はゴブ羽だな。なにか言い残すことはあるか?」

 


「ゴブ紹よ。その程度の器で我が王の器を砕こうとは片腹痛い。そのような愚行・・・たとえ天が許そうともこの星が・・・愛がお前を許さないだろう」

 


「おのれぃっ!!ゴブ正よっ!首を刎ねろっ!」

 


ゴブ正の剣がゴブ羽の頭上に掲げられる。

 


「斬られる前にひとことあるか?ゴブ羽よ?」

 


「やれるもんならやってみろっ!!てめぇみてぇな小人にやられたりはしねぇっ!!暴れてやるっ!!」

 


「ゴブ正やれぃっ!!」

 


ゴブ正の剣が放たれる・・・そこには首をポキポキ鳴らしているゴブ羽がいた。

 


「動いていないと死んでしまいそうになっちまうよ。先生っ!!」

 


「やれやれ・・・そんな風に育てた覚えはなかったのだがな」

 


ゴブ正はゴブ羽の拘束具を破壊していた。

 


「ゴブ正っ!!貴様っ!!何をしておるっ!?」

 


「これはこれは・・・ゴブ紹殿。お久しぶりですね。木偶の坊の盟主ははりぼての王にしかなれないようですね?」

 


「き、貴様はぁぁ!?おのれぃ・・・謀りおったなっ!!ゴブロリめっ!!」

 


ゴブ正がゴブロリの姿へと変わっていた。

 


「謀る?そんなことしたつもりはないんですけどねぇ・・・勝手にあんたが騙されただけだろ?」

 


「くっ・・・悪名高きゴブロリ・・・ゴブ羽軍の悪魔めがっ!!

 


であえっ!であえぃっ!!ここは我が拠点・・・鼠どもの首をとれぃっ!!」

 


蜀軍の兵士達に取り囲まれるゴブ羽・ゴブロリの両名。しかしまったく慌てた様子はない。

 


「ゴブ紹よ。冥土の土産だ・・・戦の必勝パターンというものを教えてやろう。闘う前に勝ちを確定させる・・・それが最善の手だ」

 


「えっ!?暴れんじゃないのかよ・・・先生っ!!」

 


「戯言を・・・やれぃっ!!褒美はいくらでもとらすっ!!」

 


ボンッ!!

 


「なっ・・・何をしたお前らぁぁぁぁっ!?」

 


「食べてなかったやつもいたのが幸いしたな・・・裸の王様にならなくてよかったなぁ?ゴブ紹くん?」

 


取り囲んでいたほとんどの兵士達の体が四散する。ゴブロリは鳥巣であることをしていた。兵糧に自身のマナを流し込んでいたのだ。

 


兵糧を口にした者の体内にはゴブロリのマナが刻まれている。それを暴発させたに過ぎない。

 


「鳥巣にまとめて貯蔵してはだめでしょ?おかげで工作が簡単だった。兵糧を口にした者はこのオレに命が握られていると思えっ!!

 


投降するものは受け入れるっ!!さぁ自己申告でいいぞっ!!生きたい者はゴブ羽の旗の下に付き従えっ!!」

 


「先生?誰も寝返らないけどどういうことなんだ?」

 


「あぁ・・・さっきこの場にいたやつは全部殺してたわ・・・忘れてた。

 


・・・ほらっ!!暴れていいぞゴブ羽っ!!」

 


ゴブ羽の目の前に闇が蠢いてる。そこから現れたのはゴブ羽の斧槍であった。

 


「よっしゃぁぁぁっ!!任せろっ!!

 


我が名はゴブ羽っ!!死にてぇやつからかかってこいっ!!」

 


スパーキングゴブ羽になってしまったようだ。なに?動かないとストレスで強化されんの?どうなってんのこの脳筋・・・。

 


「ところで盟主殿?今回は逃げなくていいのかい?」

 


以前こいつは真っ先に逃げていた。盟主でありながら行く末を見守ることなく、劣勢と見るやすぐに撤退。上に立つ才器はない。

 


「くっ・・・」

 


逃げ出すゴブ紹。彼にはもはや僅かな兵士達しか残っていなかった。

 


「ゴブ羽あとは任せるぞ?必ずゴブ紹の首をとれ。隊長達に計を授けてある」

 


「先生はどこに行くんだ?」

 


「オレはゴブ策の元に援軍に行く。挟撃を防ぐ予定だったからさすがにまずい。ゴブ備はそっちに漁夫の利を狙いに行ったようだからな」

 


「いいけど間に合うのか?」

 


「オレの分身体を乗せた黑愛がそろそろ向こうに着くはずだ。そこに転移すればひとっ飛びだな」

 


「・・・。いつの間に・・・さすがゴブロリ先生」

 


「ゴブ紹を討ち取ったら残党狩り。オレがさっき言った言葉で脅迫。そして兵を吸収した後・・・ゴブ良の元へ急行しろ。おそらくかなり厳しい闘いになっていると思うからな。

 


ではオレは行ってくる。後は頼んだぞ」

 


ゴブロリは闇に包まれ消えていった。ゴブ羽によるゴブ紹追撃戦が始まる。

 


逃げるゴブ紹。逃げた先に転移し、襲いかかる愛天地人の隊長率いるエリート黑州兵。ゴブ紹は困惑していた。伏兵からなんとか逃げ切ってもすぐ様、また伏兵が現れる。ゴブロリが授けた計。それは無限埋伏の計である。

 


ゴブ紹の退却先はわかっている。黄海を渡り、白馬より後方の砦へ行く。進路がわかっているが故に伏兵を配置するのは簡単である。かつて戦で使われていた難易度の高い十面埋伏の計。それは奇しくも袁紹曹操により追い詰められた計。

 


ゴブロリはそのことを知っていた。そして転移を使えば難易度が遥かに落ちる。十面どころか無限に伏兵を当てられる。この計をゴブ羽の敵に対して成功させる為にひたすら黑州兵の上位を鍛えてきた。ゴブロリ鬼軍曹となり自ら教えてきた。その結果、黑州兵隊長以下各部隊100名・・・全員が転移を習得することとなる。

 


その過程でエリートゴブリン達の体はすらりと変化し、さらに漆黒の体となる。巻きツノが2本ずつ生え、髪型は銀の長髪へと変わっていた。さらに目は銀色と漆黒のオッドアイ

 


天地人の隊長達はそれぞれ漆黒と桃、青、茶、緑のオッドアイ。さらに漆黒の翼が生え、悪魔のような尻尾も生えている。もはやゴブリンとは呼べないほどの変貌を遂げていた。

 


「もうすぐ黄海につくっ!!皆の者持ち堪えろぉぉぉっ!!

 


くっ・・・また伏兵か・・・なんなのだ・・・悍ましき姿の兵士達・・・あれは本当に同族なのか?」

 


「ゴブ紹観念しろっ!!既に黄海の向こう側の拠点はすべて陥落済みであるっ!!黙ってこの刃を受けよっ!!反ゴブ卓連合の盟主の名が泣いておるぞっ!!」

 


「ゴクククッ!!馬鹿めっ!!援軍が到着したわっ!!この戦・・・我が軍の勝利であるっ!!」

 


追撃するゴブ羽の背後に各拠点の兵が地鳴りを起こしながら接近している。

 


「てめぇらの命はゴブ羽軍が握っているっ!!死にたくなければ投降せよっ!!」

 


蜀軍の兵士達はゴブ羽の元で止まり、臣下の礼をとっている。ゴブロリが既に手を回していたのだ。ゴブガード達に残っていた蜀軍の拠点に勧告していた。

 


兵糧を食べた者には爆弾が取り付けられている。死にたくなければゴブ羽に降れ。一方的過ぎる勧告であったが、蜀軍の兵士達は数十人ほど体が四散するとおとなしく勧告を聞いていた。ゴブロリが頃合いを見て一斉に各拠点の兵のマナを暴発させたからだ。かつての主君ゴブ紹に一斉に刃を向ける元蜀軍兵士達。その数20億。

 


「な、なにをしておるのだ貴様らっ!!このゴブ紹様を裏切るつもりかっ!?」

 


「やれやれ・・・観念しろっていったのにな・・・こんな兵に頼らなくても兵力は足りてんだよっ!!

 


ゴブ馬俑っ!!」

 


ゴブ羽がそう叫ぶと、海面からゴブ馬兵達が浮上してくる。その数1億。ゴブ紹の周囲はゴブ羽によって包囲されていた。

 


「や、やめろっ!!まだ死にたくないっ!!私が死んではこの星の平和がっ!!」

 


「死に際くらい華麗に散れよ・・・ゴブ紹・・・お前に王としての器はないっ!!その首貰い受けるっ!!」

 


「ま、待てっ!!そうだ・・・私と手を組もうっ!!星下を治めた暁には星下の半分をやろうっ!!私とお前が手を組めばそれも簡単に行くだろ・・・」

 


ゴブ紹の首が宙を舞っている。

 


「そんなの願い下げだよ・・・木偶の坊めがっ!!

 


我が名はゴブ羽っ!!蜀軍総大将ゴブ紹討ち取ったりぃぃぃぃぃっ!!」

 


ゴブ羽の斧槍からは紅き血が滴り落ちていた。

 


ゴブ紹・・・妖精の星の名門・・・ゴブリン界の巨星・・・白馬の地に墜つ。

 

 

 

闇と光 第148話 第2次長坂坡の闘い

ゴブ羽はかつてゴブ備に追われた地まで撤退していた。長坂。再びこの地で闘いは繰り広げられる。ゴブ郃自ら先頭に立ちゴブ羽を追ってくる。しかし決してゴブ郃はゴブ羽と剣を交えようとはしない。兵を巧みに動かし周囲の兵を着実に削っている。

 


撤退戦は蜀軍優勢。ゴブ郃の中ではゴブ羽を追い詰める算段がついていた。しかしそれは幻・・・ゴブ羽がゴブ馬俑を使えばいつでも兵を補充することができるとも知らずに・・・。

 


「ゴブ羽っ!!観念しろっ!!首を差し出せば兵達の命は助けてやろうっ!!」

 


「てめぇこそ今首を差し出せば部下達の命は助けてやんぞっ!?大局が見えぬ愚かな将を持つとは兵達が可哀想だなっ!!」

 


「残り数百騎程度の貴様が何を言うっ!!全軍ゴブ羽を丸裸にせよっ!!もうすぐ長坂橋に入るっ!!障害物は何もないっ!!突撃せよーーっ!!」

 


ゴブ郃の号令により蜀軍が一斉に速度を上げる。ゴブリン星の長坂橋。それは全長20キロにも及ぶ橋であった。幅は約40メートル。ゴブ羽軍の元へ整った縦列をとりながら追撃してくるゴブ郃軍。その距離は100メートルを切っていた。次々にゴブ羽軍の兵士達が薙ぎ倒される。ゴブ羽に付き従う兵は僅か数騎まで減っていた。

 


「朱愛(レッドアイ)よ。もう少し持ち堪えてくれ。ゴールは目の前だっ!!」

 


「ブヒヒィーンッ!!」

 


かつてゴブ布が乗っていた馬。赤兎馬である。ゴブ羽に懐き、なぜかゴブ羽の愛馬に変わっていた。師の愛馬になぞらえて朱愛という名前をつけた。

 


朱愛が橋を渡り切った時それは起こった。ゴブ羽が朱愛より高く飛翔する。天には斧槍が掲げられている。

 


「ゴブリンクラッシャーァァァァッ!!」

 


橋に斧槍が叩きつけられる。巨大な地震が橋を襲う。一斉にゴブ郃軍は落馬し、衝撃波に襲われる。そして橋が大爆発を起こしていく。さらに衝撃波が消えるとゴブ郃軍の背後より黑州兵のエリート達が襲いかかった。ゴブ郃軍は橋を落とされたため、退路なき闘いを強いられている。

 


この大爆発・・・実は前回の闘いでゴブガードに仕掛けさせていたものである。予想外のことが起きて使う機会がなかった。それを今回利用した。もったいないから使おうぜというゴブロリの一言によりここに向けて撤退していたのだ。ゴブ羽もまた橋を壊していいと言われていたのでノリノリであった。

 


「ゴシシシッ!!爽快っ爽快っ!!おっと・・・トドメをさせと言われていたんたったな・・・このままじゃ先生にお仕置きされちゃうぜ。

 


ゴブ馬俑っ!!出番だぜっ!!」

 


海中からゴブ羽の作り出した兵達が剣を掲げながら大量に現れる。落ちてくるゴブ郃の兵達は次々と串刺しになる。1人だけ空中に逃げていたゴブリンがいた。

 


「このゴブ郃っ!!その程度ではやられはせんぞっ!!この刃を受けぃっ!!」

 


ゴブ郃が空中よりゴブ羽に襲いかかる。その剣はゴブ羽に届くことはなかった。ゴブ郃の頭はゴブ羽によって握り潰されていた。

 


「三下に用はねぇんだよっ!!」

 


「そこまでですっ!!こちらを見なさいっ!!ゴブ羽よっ!大人しく投稿することをお勧めしますよ?」

 


「朱愛っ!!ゴブ正め・・・」

 


朱愛を人質にとっているゴブ正軍の姿がそこにはあった。黑州兵の隊長達が転移からの奇襲を仕掛ける。しかしゴブ正の手により、転移してくると同時に吹き飛ばされていく。

 


「ブルルルゥ!」

 


「さぁこの子の命が惜しければ捕縛されていただきましょうか」

 


「朱愛・・・!?わかった・・・其方になら捕まってもよい。朱愛にちゃんと餌をやってくれよな?」

 


ゴブ正の手により捕縛されていくゴブ羽。そしてゴブ羽はゴブ紹の待つ白馬へと連れて行かれることになった。この砦はゴブ羽軍が最初の撤退戦で失った拠点である。白馬より後方の砦の将は愛天地人の隊長達によりすべて討たれていることに未だ蜀軍は気づいてすらいない。蜀軍は後方の退路が断たれていることを知らぬまま、捕縛したゴブ羽を場内に招き入れることになる。

 


「ゴブ正よ。見事なりっ!!ゴブ羽を捕らえてくるとは流石であるっ!!それにお主の言う通り鼠が潜んでおったわ。そいつらも連れて参れっ!!」

 


連れてこられる3人のゴブリン。

 


「「んゔぅぅぅっ!んっんっ!」」

 


「この2人諫言ばかり吐きおって・・・五月蝿くてかなわぬ。ゴブ正の言う通りに舌を抜いて正解だったわ」

 


「ん?ここはどこだ!?はっ・・・!!

 


ゴブ紹殿っ!!ゴブ正首謀の元、貴殿に毒を盛る計画が迫っております!!此度はそれを伝えに参った次第でありますっ!!」

 


連れてこられたのは舌を抜かれたゴブ授とゴブ豊、そしてゴブ邦であった。

 


「さすが・・・星下に轟く大悪党・・・口が達者な用だなっ!!ゴブ正に聞いておるぞっ!!首謀者ゴブ邦、ゴブ授、ゴブ豊・・・よくもこの私に毒を盛ろうとしてくれたなぁっ!?」

 


「なんだって!?オレは何もやってねぇっ!!そうだ・・・ゴブ門はどこだっ!?あいつならオレの無実を証明してくれるはずだっ!!一緒にあんたへの献上品のロリ桃を盗みに行っていたんだっ!」

 


「・・・ゴブ正よ?ゴブ門とやらは知っているか?」

 


「いえ・・・知りませぬなぁ。それにロリ桃を盗む?ゴブ羽軍の難攻不落の空中農園・・・貴様ごときの力で侵入できるはずはあるまいっ!!」

 


「・・・だそうだ?ゴブ邦よ・・・観念せいっ!!往生際が悪いぞっ!!」

 


「待ってくれっ!!オレを信じてくれっ!!嘘なんて言っていな・・・」

 


騒ぎ立てるゴブ邦の前にはゴブ正が立っていた。

 


「死ぬ時くらいは観念した方がいいですよ?それに簡単に信じるお前が悪いでござるよ?ねぇ?マヌケな先輩さん?」

 


「き、貴様ぁぁっ!!ゴブも・・・」

 


ゴブ邦の首が宙を舞う。ゴブ正の剣によって首が飛んでいた。ゴブ羽の天敵と成り得る大器はいとも容易く打ち砕かれた。

 


このゴブ正・・・正体はゴブロリである。ゴブ正は既にこの世にはいない。ゴブロリはあの後、ゴブ正達にロリ桃を献上しにいったのだ。

 


ゴブ正達は予約が数十年待ちのロリ桃を見た瞬間にゴブロリ扮するゴブ門に警戒を解いてしまっていた。ロリ桃を見ただけで彼らは抜刀状態になってしまったという・・・魅惑のロリ桃に魅了されてしまったのだ。

 


ゴブロリは後に言う。頭がいいやつほど変態である。持て余す頭脳のどこかに卑猥な妄想が潜んでいる。迸るエロスには抗えない。徹底的に魅力的に仕上げたロリ桃の前では我慢できなくなることであろう。

 


変態ほどロリ桃を好む。ゴブロリとゴブ美、ゴブ羽三兄弟・・・特にゴブ良そしてその妻達・・・変態度が増すほど桃の魅力に取り憑かれてしまう。

 


ロリ桃とは魔性秘めたる魅惑の果実なのである。ゴブロリとゴブ美は毎晩ロリ桃に囲まれながら地鳴りを起こしていた。ゴブロリのお気に入りはただのロリ桃ではない。ゴブ美印のロリ桃が好みの果実のようだ。飽きることなく何度も味わっている。

 


ロリ桃・・・それはエデンの園に置かれた禁断の果実とも言えるような禁忌のフルーツであった。

闇と光 第147話 鳥巣潜入戦

ゴブ邦・ゴブ門ペアは蜀軍の地下貯蔵施設へと潜入を開始した。この施設の名前は鳥巣。うん。兵糧庫だとオレは確信した。

 


名前の由来は地下で暮らす蟻鳥から取ったらしい。蟻鳥は蟻のような巣を地下に作り、食べ物を貯蔵するという鳥なのらしい。

 


近場にも食料が保管されていたが、せっかくの共演なので奥地まで行ってみようということになった。途中輸送隊の気配を感じても横にある保管のための小部屋へ隠れればやり過ごすことができる。

 


たまに小部屋にゴブリンがいるのだが、声も発する暇も与えない。音も無くゴブ邦とともに始末している。オレ達はどんどん奥へと進んでいった。

 


どうやら各砦にも繋がっているようだった。入り口を開けるのは気づかれる危険性が高いため、ゴブ邦と協議の結果覗くことはしていない。

 


「ゴブ門何してるんだ?毎回食糧を見る度に少し動きが止まるが・・・腹減ってんだったら食べてもいいんだぜ?」

 


「あぁ・・・いや大丈夫だ。もう終わったでござる。それよりももう少しで終点に着きそうですな?」

 


「待て・・・話し声がする。近づいてみるか?」

 


オレ達は気配を消しながら声の響いてくる小部屋へ近づいていった。

 


「ゴブ正殿これでゴブ紹を葬り去ることができますな」

 


「ええ。兵糧に毒を混ぜ終わりました。なので後は時間の問題ですね。ゴブ豊殿とゴブ授殿がこちらについてくれてよかった。ゴブ備殿の星下のためにこれからもお力をお貸し願いたい」

 


「もちろんですよ。ゴブ紹は我々の策をちゃんと聞いてくれない。その点ゴブ備殿は仕えがいがあります。やはり中途半端に有能な者よりも無能で素直な者の方が我々が輝きます。

 


ゴブ備殿は我々の策でゴブ権軍の援軍に向かっていますが・・・もうすぐゴブ権の軍をすべて吸収できることでしょう。ゴブ権とゴブ羽の争いを我らは機会を待ちながら待てばよい。両者疲弊したところをゴブ権ごと叩きましょう」

 


秘密の会議をしていたらしい。しかしこれはいいことを聞いた。ゴブ紹を見限るつもりか。うちの軍に対する攻め手が甘いと感じていたのはこのためか・・・内での争いに頭脳達は本気を出していたようだ。ゴブ羽軍を前によくそんな余裕があるなぁ・・・蜀軍よ。

 


でもやっぱり蜀軍の頭脳達は邪魔でしかない。葬り去るしかあるまいな。

 


「ゴブ邦殿・・・これは大出世のチャンスにござる」

 


「どういう意味だゴブ門?」

 


「それはですね・・・」

 


ゴブ正達がゴブ紹に対して毒を盛ろうとしていたことを密告する。毒の入った食事を食べさせようとしたところを一網打尽にする。頭脳を潰せて弱体化も狙えるいい策だ。ゴブ邦をそそのかしてやろう。

 


「ゴブ邦殿。義侠が表に立つ時が遂にやってきたでござる。表より民達の貧困に立ち向かうのです」

 


「おっしゃ!やってやるぜ」

 


ゴブ邦は潜入中に夢を語っていた。いつか表に立ち民達を救う。その夢を利用させてもらおう。精々束の間の夢を楽しんでくれ。

 


「敵将ゴブ醜っ!!このゴブ羽が討ち取ったりぃぃぃぃ!!

 


オラオラァッ!!死にてぇやつからどんどんかかってこいっ!!まだまだ足りねぇぞっ!!ゴヒャヒャヒャァァッ!!」

 


「ゴブ醜殿が一撃も結ばずにやられてしまうとは・・・」

 


「ゴブ羽軍は化け物だぁぁぁ!!」

 


「黙っとれっ!!このゴブ郃(こう)様がまだ残っとるわっ!!」

 


「あん?てめぇが相手か?かかってこい!遊んでやる」

 


「あいにくゴリラの相手をしている暇はない。相手をして欲しくばついてこい」

 


「どの口が言ってんだ?王に対する非礼ぞっ!!てめぇがついてくんだよ?あぁん?遊んで欲しかったら相手してやるよっ!!

 


全軍官渡を放棄せよっ!!退却を開始するっ!!」

 


ゴブ羽は将兵の首を多数刈り取っていた。挑発されたゴブ羽は挑発し返す。ゴブ羽軍には挑発は通用しない。ゴブロリによって煽り耐性を徹底的に鍛えられたからだ。そしてゴブロリの策の元、籠城を開始した6日後ゴブ羽は撤退を開始する。そんなゴブ羽に向かって、ゴブ醜軍の残党を吸収したゴブ郃軍10億がゴブ羽軍の追撃を開始した。

 


「ゴブ門・・・やるな・・・難攻不落と言われたこの場所に簡単に忍び込むとはな・・・しかし美味そうな匂いがしやがるぜ」

 


「この程度造作もない。1つくらいなら食べてもよいでござるよ。ゴブ紹への手土産なら足りているからな」

 


「この甘美な香り・・・ぱっくり開いたその身・・・ここはまさしく桃源郷と呼ぶに相応しい。我慢できねぇ・・・ゴブ女が欲しくなるな」

 


「ゴブ紹に取り入ったらいくらでも抱けるでござろう?まぁ我慢してこのロリ桃を味わって悶々としてくれや」

 


オレ達は難攻不落と言われていたハイロリ園へ潜入していた。ゴブ紹への手土産を手に入れるためだ。ゴブ美に頼んで警戒レベルを下げてもらってある。

 


ドサッ・・・倒れ行くゴブ邦。

 


ゴブ女の腹の上で眠るような心地よさ。ロリ桃を食べながら夢の世界に行けるんだ。さぞ幸せなことであろう。睡眠成分を強化したロリ桃である。ゴブ邦は今ロリ睡眠状態。こうも簡単に騙されるとはなぁ・・・それでは次に向かうとしよう。

 


一方ゴブ羽軍の撤退戦は続いていた。ゴブ羽軍の兵達はひとりそしてまたひとり土のように崩れていった。これはゴブ羽軍の兵士ではない。ゴブ羽がマナで生み出した兵馬俑ならぬゴブ馬俑である。それにゴブロリチェンジャーをかけゴブリン兵に偽装していた。

 


本当の兵士達は既に撤退が完了している。官渡の闘いの籠城は実際にはゴブ羽単騎の籠城であったのだ。この技は皇帝になるゴブリンならできんだろ?というゴブロリの軽い気持ちでけしかけた結果、生まれた技である。冗談で言ったつもりが本当にできてしまった。マナで兵達を遠隔操作しながら闘う高等技。ゴブロリの扱きによりゴブ羽も異次元の技を扱えるようになっていた。

 


「さすがに敵の数が多い・・・せめてあの場所までは持ち堪えたいところ・・・しかしゴブロリ先生もスパルタだよなぁ・・・1人で籠城しろとはな・・・まぁその方が燃えるんだけどなぁぁっ!!

 


ゴブ羽はここにおるぞっ!!首が欲しければ奪ってみろっ!!雑魚どもがっ!!」

 


総大将を単騎駆けさせるという前代未聞の策をとっていた。本当のゴブ羽軍の兵士達はゴブ羽の妻達の護衛という重大な任務が与えられている。

 


実際にはゴブ羽の妻達は兵士達よりも数倍強い。護衛などいらないのだが・・・それがゴブ羽軍の味である。妻達に護衛をつけないくらいなら単騎で駆ける。ゴブロリの教えがそこにはあった。

 


妻達を護衛する部隊は撤退のついでに砦をいくつも陥落させていた。その時妻達が先頭に立ち、兵を率いていたという・・・。ゴブリン星においても妻という種族は恐ろしいものである。

闇と光 第146話 官渡の闘い

ゴブ羽・ゴブロリ軍は急いで蜀軍に進軍した。真っ向からぶつかってもきっと全滅が待っている。各拠点を放棄・後退しながら戦力を削る作戦にしていた。急いだのはひとつでも多くの拠点を利用できるようにするためだ。

 


初戦は蜀軍100万相手に快勝。しかし将兵はまったく投入されていなかった。どうやらゴブ紹は袁紹と違い、部下の進言を素直に聞くようだ。

 


快勝した後は残りの全軍がそこへ向かい押しかけてくる。そして押し止めることができず撤退を余儀なくされる。蜀軍は罠などを警戒し、まず少数の兵で戦を仕掛ける。その後全軍で襲いかかり、勝利の余韻に浸れぬまま絶望感だけを上塗りしていく。こちらの士気が下がり、疲弊する時までじわじわと攻めてくる。向こうの兵力はさほど減っていない。

 


どうやら蜀軍は長期戦に持ち込もうとしているようだ。長期戦なら蜀軍の有利。短期戦においても蜀軍が圧倒的に有利なのだが、万が一が起こるかもしれない。その万が一の芽すらも蜀軍は潰そうとしているのだ。

 


ゴブ羽・ゴブロリ軍は連戦連勝。しかし勝ち星と同じ数だけ撤退戦を強いられている。拠点の数も限られており、このまま続けても敗北は目に見えていた。

 


「このままやっても状況は変わらない。時間だけが過ぎていくだけだ。官渡より前線の拠点をすべて放棄する。門を解き放つだけ解き放っておけ」

 


「先生それだと・・・ただで拠点をやることにならないか?」

 


「空城の計というものがある。今まで徹底抗戦してきたんだ。相手にはそれなりの頭脳がいる・・・警戒してくれるはずだ。それにより少し時間を稼げる。いくつかの拠点にはオレが罠をバラまいておく。

 


しかし本当の狙いはそれではない。相手が城に入ってなにもないと知り、休息に入った段階で奇襲を仕掛ける」

 


「どうやって奇襲するんだ?」

 


「黑州兵のエリート達を舐めないでもらいたい。全員転移できるように鍛えてある。転移からの奇襲を仕掛ける。転移先は拠点の上空。落ちている間に命唱を重ねさせる」

 


「おおっ!さすがゴブロリ先生!」

 


「だけどそれすらも囮だ。今まで放棄した拠点に対して奇襲を仕掛ける。本命は愛天地人部隊の各隊長による将の撃破。生半可な訓練をしたつもりはない。ゴブ布やお前らほどではないがかなり強くしたつもりだ。並の将兵なら相手にならん。将を撃破した後は守備兵程度なら単騎でも制圧できるはずだ。

 


それによりさらに相手の拠点への警戒を強めさせる。しかし奇襲はそれでもやめない。そうすることによりさらに時間をかけさせることができる」

 


「部隊の頭を根こそぎ狩るつもりかっ!・・・行きたい」

 


「だめだ。ゴブ羽には官渡で籠城をして蜀軍の注意を集めてもらいたい。拠点が落ちない程度になら打って出てもいい」

 


「やるやるっ!暴れていいんだろ?先生っ!?」

 


「盛大に暴れろ。ゴブガード達に探らせて将の位置を割り出す。ゴブ羽の籠城にならきっと出てくるはずだ。そこにも黑州兵達の転移奇襲を仕掛ける」

 


「任せてくれっ!バッサバッサと薙ぎ倒してやるっ!」

 


「しかしそれらは陽動だ。真の本命は別にある。オレが蜀軍に潜入する。情報を得ると同時にかき乱せるかもしれない。罠も仕掛けられるかもしれない。やりたいようにやってくる。もし見つかってもオレなら命唱状態を維持したまま転移できる。だからオレが適任だ」

 


「総督すら餌にするとはさすがゴブロリ先生。1週間以上持たせてみせる・・・存分にやってくれ!」

 


「あぁ、任せておけ。黑州兵っ!!死にそうになったらすぐに転移で撤退しろ。蜀軍と違い我らは寡兵。ひとりひとりの命はより重いと思えっ!!なによりオレはお前らを失いたくない。仲間だからなっ!」

 


一斉に頷くゴブリン達。ゴブロリは蜀軍へ潜入していく。ゴブロリチェンジャーを使い姿を変える。そして奪っておいた敵方の防具を身に纏ったゴブリンがそこに立っていた。

 


これだけ兵がいると簡単に潜り込めるようだな。やはり多くなればなるほどスパイ対策は必要のようだ。

 


兵糧の輸送の守備に5億も兵を割り振っているのか。さすがに兵站線に重きを置いているようだな。襲うことは可能だが時間がかかれば全軍が集結する。兵糧を断つのはやはり難しいか・・・。

 


しかし兵の数が情報より少ない?・・・どうゆうことだ?将兵探しをしてみるかな。

 


いるにはいるがゴブ備軍の姿が見えない。聞いた方が早いかもしれない。

 


「ゴブ備様の姿見れるど思って参加したんだげどなぁ・・・どごさもいねじゃねぇか」

 


「なんだ?新入りか?ゴブ備様の軍は蜀呉同盟締結して別方面からゴブ羽軍を挟撃するって話だよ。だからここにはいないぞ」

 


「んだながぁ・・・残念だのぉ」

 


ゴブ備め・・・いやゴブ正?ゴブ授?ゴブ豊?誰かわからないが・・・してやられた。ゴブ策達がまずいな・・・。

 


「しっかし腹が減っては戦ができぬだぁ・・・おら腹ペコペコだよ・・・ご飯はまだだが?」

 


「さっき飯の時間終わっただろう・・・食いしん坊なやつめ・・・ゴッシッシッシッ・・・つまみ食いしに行くか?」

 


悪ゴブっぽいのは匂いでわかっていたがやっぱり悪いことをしていたなこいつ。そうゆうやつの方が気が合うぜ。それにしても食料のありかを教えてくれるとはどうやら運がいいようだな。

 


オレはそのゴブリンとともに食料のある場所へ向かった。食料は地下に保管されているようだ。地下にゴブリンの目を盗み潜入した。すると中は迷路のような構造になっていた。

 


「この中は輸送部隊も通るからな?気をつけるんだぞ。地上の輸送は囮でこっちが本命だ。だから見つかったら殺されてしまう・・・音を立てるなよ?」

 


だから地上の輸送の守備に5億もいたのか。兵糧は真っ先に狙われる。こちらが餌に釣られて狙いにきたところを叩くつもりだったか・・・やっぱり脳を潰さないことには勝利はない・・・しかしこの悪ゴブなかなか手馴れているな。気配を消すのもうまい・・・何者だ・・・。

 


「先輩。あんたのお名前を聞いでもいがぁ?」

 


「オレか?オレの名前はゴブ邦(ほう)だ。軍を渡り歩いてこうやって食べ歩いている。お前の名は?なかなか筋がいい。オレ様の潜入についてこれるやつなんてそうそういないぞ?それに下手な芝居はもうやめろ・・・ゴシシシッ」

 


いたぁぁぁぁっ!ゴブ邦さん発見っ!!道理で街や村を探しても見つからないわけだ・・・大盗賊になってるのか。芝居が下手とは心外であるが・・・まぁ利用できるだけ利用させてもらおう。その後は・・・くくくっ・・・こいつがいたらゴブ羽の星下がやばそうだからな。

 


「その身のこなし・・・只者ではないと思っていたが闇の世界に名高いゴブ邦殿だったとは・・・拙者の名前はゴブ門(もん)にござる。未だ若輩者故・・・指導を賜りたい」

 


適当に言ったけどたぶん大丈夫だろ。ゴブ蔵並の身のこなし。名前が広まっていないということはあり得ないだろう。

 


「ゴシシシッ!お前が最近有名なゴブ門だったとはな。似たような匂いを感じたから話しかけてみたが・・・まさか出会うことになるとはな。

 


聞いたぜ?悪どい富裕層から根こそぎ奪って再起不能まで追い詰める。そして奪った財は貧しい民達に配っている。なかなかゴブ気溢れる奴だと思っていた」

 


ゴブ蝉の村興しの資金を得るために悪どいゴブリンの金をすべて奪っておいたのだ。そして財に関してはそういう情報をゴブ蔵に流布させておいた。実際は村の開発費や黑州兵達にすべて使っているがな。何かに役立つかもと流布させたのがここで生きてくるとは思わなかった。情報操作というものは恐ろしい武器だな。

 


「せっかく2人が揃ったんだ。ゴブ門。派手にやろうぜ?義賊界の大物2人による夢のコラボといこうぜっ!」

 


「もちろんでござるっ!ゴブ邦殿のお手並み是非とも拝見したいっ!」

 


蜀軍の地下貯蔵施設へ義賊界2大スターが潜入を開始した。