闇と光 第147話 鳥巣潜入戦

ゴブ邦・ゴブ門ペアは蜀軍の地下貯蔵施設へと潜入を開始した。この施設の名前は鳥巣。うん。兵糧庫だとオレは確信した。

 


名前の由来は地下で暮らす蟻鳥から取ったらしい。蟻鳥は蟻のような巣を地下に作り、食べ物を貯蔵するという鳥なのらしい。

 


近場にも食料が保管されていたが、せっかくの共演なので奥地まで行ってみようということになった。途中輸送隊の気配を感じても横にある保管のための小部屋へ隠れればやり過ごすことができる。

 


たまに小部屋にゴブリンがいるのだが、声も発する暇も与えない。音も無くゴブ邦とともに始末している。オレ達はどんどん奥へと進んでいった。

 


どうやら各砦にも繋がっているようだった。入り口を開けるのは気づかれる危険性が高いため、ゴブ邦と協議の結果覗くことはしていない。

 


「ゴブ門何してるんだ?毎回食糧を見る度に少し動きが止まるが・・・腹減ってんだったら食べてもいいんだぜ?」

 


「あぁ・・・いや大丈夫だ。もう終わったでござる。それよりももう少しで終点に着きそうですな?」

 


「待て・・・話し声がする。近づいてみるか?」

 


オレ達は気配を消しながら声の響いてくる小部屋へ近づいていった。

 


「ゴブ正殿これでゴブ紹を葬り去ることができますな」

 


「ええ。兵糧に毒を混ぜ終わりました。なので後は時間の問題ですね。ゴブ豊殿とゴブ授殿がこちらについてくれてよかった。ゴブ備殿の星下のためにこれからもお力をお貸し願いたい」

 


「もちろんですよ。ゴブ紹は我々の策をちゃんと聞いてくれない。その点ゴブ備殿は仕えがいがあります。やはり中途半端に有能な者よりも無能で素直な者の方が我々が輝きます。

 


ゴブ備殿は我々の策でゴブ権軍の援軍に向かっていますが・・・もうすぐゴブ権の軍をすべて吸収できることでしょう。ゴブ権とゴブ羽の争いを我らは機会を待ちながら待てばよい。両者疲弊したところをゴブ権ごと叩きましょう」

 


秘密の会議をしていたらしい。しかしこれはいいことを聞いた。ゴブ紹を見限るつもりか。うちの軍に対する攻め手が甘いと感じていたのはこのためか・・・内での争いに頭脳達は本気を出していたようだ。ゴブ羽軍を前によくそんな余裕があるなぁ・・・蜀軍よ。

 


でもやっぱり蜀軍の頭脳達は邪魔でしかない。葬り去るしかあるまいな。

 


「ゴブ邦殿・・・これは大出世のチャンスにござる」

 


「どういう意味だゴブ門?」

 


「それはですね・・・」

 


ゴブ正達がゴブ紹に対して毒を盛ろうとしていたことを密告する。毒の入った食事を食べさせようとしたところを一網打尽にする。頭脳を潰せて弱体化も狙えるいい策だ。ゴブ邦をそそのかしてやろう。

 


「ゴブ邦殿。義侠が表に立つ時が遂にやってきたでござる。表より民達の貧困に立ち向かうのです」

 


「おっしゃ!やってやるぜ」

 


ゴブ邦は潜入中に夢を語っていた。いつか表に立ち民達を救う。その夢を利用させてもらおう。精々束の間の夢を楽しんでくれ。

 


「敵将ゴブ醜っ!!このゴブ羽が討ち取ったりぃぃぃぃ!!

 


オラオラァッ!!死にてぇやつからどんどんかかってこいっ!!まだまだ足りねぇぞっ!!ゴヒャヒャヒャァァッ!!」

 


「ゴブ醜殿が一撃も結ばずにやられてしまうとは・・・」

 


「ゴブ羽軍は化け物だぁぁぁ!!」

 


「黙っとれっ!!このゴブ郃(こう)様がまだ残っとるわっ!!」

 


「あん?てめぇが相手か?かかってこい!遊んでやる」

 


「あいにくゴリラの相手をしている暇はない。相手をして欲しくばついてこい」

 


「どの口が言ってんだ?王に対する非礼ぞっ!!てめぇがついてくんだよ?あぁん?遊んで欲しかったら相手してやるよっ!!

 


全軍官渡を放棄せよっ!!退却を開始するっ!!」

 


ゴブ羽は将兵の首を多数刈り取っていた。挑発されたゴブ羽は挑発し返す。ゴブ羽軍には挑発は通用しない。ゴブロリによって煽り耐性を徹底的に鍛えられたからだ。そしてゴブロリの策の元、籠城を開始した6日後ゴブ羽は撤退を開始する。そんなゴブ羽に向かって、ゴブ醜軍の残党を吸収したゴブ郃軍10億がゴブ羽軍の追撃を開始した。

 


「ゴブ門・・・やるな・・・難攻不落と言われたこの場所に簡単に忍び込むとはな・・・しかし美味そうな匂いがしやがるぜ」

 


「この程度造作もない。1つくらいなら食べてもよいでござるよ。ゴブ紹への手土産なら足りているからな」

 


「この甘美な香り・・・ぱっくり開いたその身・・・ここはまさしく桃源郷と呼ぶに相応しい。我慢できねぇ・・・ゴブ女が欲しくなるな」

 


「ゴブ紹に取り入ったらいくらでも抱けるでござろう?まぁ我慢してこのロリ桃を味わって悶々としてくれや」

 


オレ達は難攻不落と言われていたハイロリ園へ潜入していた。ゴブ紹への手土産を手に入れるためだ。ゴブ美に頼んで警戒レベルを下げてもらってある。

 


ドサッ・・・倒れ行くゴブ邦。

 


ゴブ女の腹の上で眠るような心地よさ。ロリ桃を食べながら夢の世界に行けるんだ。さぞ幸せなことであろう。睡眠成分を強化したロリ桃である。ゴブ邦は今ロリ睡眠状態。こうも簡単に騙されるとはなぁ・・・それでは次に向かうとしよう。

 


一方ゴブ羽軍の撤退戦は続いていた。ゴブ羽軍の兵達はひとりそしてまたひとり土のように崩れていった。これはゴブ羽軍の兵士ではない。ゴブ羽がマナで生み出した兵馬俑ならぬゴブ馬俑である。それにゴブロリチェンジャーをかけゴブリン兵に偽装していた。

 


本当の兵士達は既に撤退が完了している。官渡の闘いの籠城は実際にはゴブ羽単騎の籠城であったのだ。この技は皇帝になるゴブリンならできんだろ?というゴブロリの軽い気持ちでけしかけた結果、生まれた技である。冗談で言ったつもりが本当にできてしまった。マナで兵達を遠隔操作しながら闘う高等技。ゴブロリの扱きによりゴブ羽も異次元の技を扱えるようになっていた。

 


「さすがに敵の数が多い・・・せめてあの場所までは持ち堪えたいところ・・・しかしゴブロリ先生もスパルタだよなぁ・・・1人で籠城しろとはな・・・まぁその方が燃えるんだけどなぁぁっ!!

 


ゴブ羽はここにおるぞっ!!首が欲しければ奪ってみろっ!!雑魚どもがっ!!」

 


総大将を単騎駆けさせるという前代未聞の策をとっていた。本当のゴブ羽軍の兵士達はゴブ羽の妻達の護衛という重大な任務が与えられている。

 


実際にはゴブ羽の妻達は兵士達よりも数倍強い。護衛などいらないのだが・・・それがゴブ羽軍の味である。妻達に護衛をつけないくらいなら単騎で駆ける。ゴブロリの教えがそこにはあった。

 


妻達を護衛する部隊は撤退のついでに砦をいくつも陥落させていた。その時妻達が先頭に立ち、兵を率いていたという・・・。ゴブリン星においても妻という種族は恐ろしいものである。