闇と光 第146話 官渡の闘い

ゴブ羽・ゴブロリ軍は急いで蜀軍に進軍した。真っ向からぶつかってもきっと全滅が待っている。各拠点を放棄・後退しながら戦力を削る作戦にしていた。急いだのはひとつでも多くの拠点を利用できるようにするためだ。

 


初戦は蜀軍100万相手に快勝。しかし将兵はまったく投入されていなかった。どうやらゴブ紹は袁紹と違い、部下の進言を素直に聞くようだ。

 


快勝した後は残りの全軍がそこへ向かい押しかけてくる。そして押し止めることができず撤退を余儀なくされる。蜀軍は罠などを警戒し、まず少数の兵で戦を仕掛ける。その後全軍で襲いかかり、勝利の余韻に浸れぬまま絶望感だけを上塗りしていく。こちらの士気が下がり、疲弊する時までじわじわと攻めてくる。向こうの兵力はさほど減っていない。

 


どうやら蜀軍は長期戦に持ち込もうとしているようだ。長期戦なら蜀軍の有利。短期戦においても蜀軍が圧倒的に有利なのだが、万が一が起こるかもしれない。その万が一の芽すらも蜀軍は潰そうとしているのだ。

 


ゴブ羽・ゴブロリ軍は連戦連勝。しかし勝ち星と同じ数だけ撤退戦を強いられている。拠点の数も限られており、このまま続けても敗北は目に見えていた。

 


「このままやっても状況は変わらない。時間だけが過ぎていくだけだ。官渡より前線の拠点をすべて放棄する。門を解き放つだけ解き放っておけ」

 


「先生それだと・・・ただで拠点をやることにならないか?」

 


「空城の計というものがある。今まで徹底抗戦してきたんだ。相手にはそれなりの頭脳がいる・・・警戒してくれるはずだ。それにより少し時間を稼げる。いくつかの拠点にはオレが罠をバラまいておく。

 


しかし本当の狙いはそれではない。相手が城に入ってなにもないと知り、休息に入った段階で奇襲を仕掛ける」

 


「どうやって奇襲するんだ?」

 


「黑州兵のエリート達を舐めないでもらいたい。全員転移できるように鍛えてある。転移からの奇襲を仕掛ける。転移先は拠点の上空。落ちている間に命唱を重ねさせる」

 


「おおっ!さすがゴブロリ先生!」

 


「だけどそれすらも囮だ。今まで放棄した拠点に対して奇襲を仕掛ける。本命は愛天地人部隊の各隊長による将の撃破。生半可な訓練をしたつもりはない。ゴブ布やお前らほどではないがかなり強くしたつもりだ。並の将兵なら相手にならん。将を撃破した後は守備兵程度なら単騎でも制圧できるはずだ。

 


それによりさらに相手の拠点への警戒を強めさせる。しかし奇襲はそれでもやめない。そうすることによりさらに時間をかけさせることができる」

 


「部隊の頭を根こそぎ狩るつもりかっ!・・・行きたい」

 


「だめだ。ゴブ羽には官渡で籠城をして蜀軍の注意を集めてもらいたい。拠点が落ちない程度になら打って出てもいい」

 


「やるやるっ!暴れていいんだろ?先生っ!?」

 


「盛大に暴れろ。ゴブガード達に探らせて将の位置を割り出す。ゴブ羽の籠城にならきっと出てくるはずだ。そこにも黑州兵達の転移奇襲を仕掛ける」

 


「任せてくれっ!バッサバッサと薙ぎ倒してやるっ!」

 


「しかしそれらは陽動だ。真の本命は別にある。オレが蜀軍に潜入する。情報を得ると同時にかき乱せるかもしれない。罠も仕掛けられるかもしれない。やりたいようにやってくる。もし見つかってもオレなら命唱状態を維持したまま転移できる。だからオレが適任だ」

 


「総督すら餌にするとはさすがゴブロリ先生。1週間以上持たせてみせる・・・存分にやってくれ!」

 


「あぁ、任せておけ。黑州兵っ!!死にそうになったらすぐに転移で撤退しろ。蜀軍と違い我らは寡兵。ひとりひとりの命はより重いと思えっ!!なによりオレはお前らを失いたくない。仲間だからなっ!」

 


一斉に頷くゴブリン達。ゴブロリは蜀軍へ潜入していく。ゴブロリチェンジャーを使い姿を変える。そして奪っておいた敵方の防具を身に纏ったゴブリンがそこに立っていた。

 


これだけ兵がいると簡単に潜り込めるようだな。やはり多くなればなるほどスパイ対策は必要のようだ。

 


兵糧の輸送の守備に5億も兵を割り振っているのか。さすがに兵站線に重きを置いているようだな。襲うことは可能だが時間がかかれば全軍が集結する。兵糧を断つのはやはり難しいか・・・。

 


しかし兵の数が情報より少ない?・・・どうゆうことだ?将兵探しをしてみるかな。

 


いるにはいるがゴブ備軍の姿が見えない。聞いた方が早いかもしれない。

 


「ゴブ備様の姿見れるど思って参加したんだげどなぁ・・・どごさもいねじゃねぇか」

 


「なんだ?新入りか?ゴブ備様の軍は蜀呉同盟締結して別方面からゴブ羽軍を挟撃するって話だよ。だからここにはいないぞ」

 


「んだながぁ・・・残念だのぉ」

 


ゴブ備め・・・いやゴブ正?ゴブ授?ゴブ豊?誰かわからないが・・・してやられた。ゴブ策達がまずいな・・・。

 


「しっかし腹が減っては戦ができぬだぁ・・・おら腹ペコペコだよ・・・ご飯はまだだが?」

 


「さっき飯の時間終わっただろう・・・食いしん坊なやつめ・・・ゴッシッシッシッ・・・つまみ食いしに行くか?」

 


悪ゴブっぽいのは匂いでわかっていたがやっぱり悪いことをしていたなこいつ。そうゆうやつの方が気が合うぜ。それにしても食料のありかを教えてくれるとはどうやら運がいいようだな。

 


オレはそのゴブリンとともに食料のある場所へ向かった。食料は地下に保管されているようだ。地下にゴブリンの目を盗み潜入した。すると中は迷路のような構造になっていた。

 


「この中は輸送部隊も通るからな?気をつけるんだぞ。地上の輸送は囮でこっちが本命だ。だから見つかったら殺されてしまう・・・音を立てるなよ?」

 


だから地上の輸送の守備に5億もいたのか。兵糧は真っ先に狙われる。こちらが餌に釣られて狙いにきたところを叩くつもりだったか・・・やっぱり脳を潰さないことには勝利はない・・・しかしこの悪ゴブなかなか手馴れているな。気配を消すのもうまい・・・何者だ・・・。

 


「先輩。あんたのお名前を聞いでもいがぁ?」

 


「オレか?オレの名前はゴブ邦(ほう)だ。軍を渡り歩いてこうやって食べ歩いている。お前の名は?なかなか筋がいい。オレ様の潜入についてこれるやつなんてそうそういないぞ?それに下手な芝居はもうやめろ・・・ゴシシシッ」

 


いたぁぁぁぁっ!ゴブ邦さん発見っ!!道理で街や村を探しても見つからないわけだ・・・大盗賊になってるのか。芝居が下手とは心外であるが・・・まぁ利用できるだけ利用させてもらおう。その後は・・・くくくっ・・・こいつがいたらゴブ羽の星下がやばそうだからな。

 


「その身のこなし・・・只者ではないと思っていたが闇の世界に名高いゴブ邦殿だったとは・・・拙者の名前はゴブ門(もん)にござる。未だ若輩者故・・・指導を賜りたい」

 


適当に言ったけどたぶん大丈夫だろ。ゴブ蔵並の身のこなし。名前が広まっていないということはあり得ないだろう。

 


「ゴシシシッ!お前が最近有名なゴブ門だったとはな。似たような匂いを感じたから話しかけてみたが・・・まさか出会うことになるとはな。

 


聞いたぜ?悪どい富裕層から根こそぎ奪って再起不能まで追い詰める。そして奪った財は貧しい民達に配っている。なかなかゴブ気溢れる奴だと思っていた」

 


ゴブ蝉の村興しの資金を得るために悪どいゴブリンの金をすべて奪っておいたのだ。そして財に関してはそういう情報をゴブ蔵に流布させておいた。実際は村の開発費や黑州兵達にすべて使っているがな。何かに役立つかもと流布させたのがここで生きてくるとは思わなかった。情報操作というものは恐ろしい武器だな。

 


「せっかく2人が揃ったんだ。ゴブ門。派手にやろうぜ?義賊界の大物2人による夢のコラボといこうぜっ!」

 


「もちろんでござるっ!ゴブ邦殿のお手並み是非とも拝見したいっ!」

 


蜀軍の地下貯蔵施設へ義賊界2大スターが潜入を開始した。