闇と光 第51話 人間

永遠と見せられる過去の弱さ。見終われば最初からまた始まる。すべての彼女からオレは逃げている。自らを売っていた彼女。自傷行為をしている彼女。危ない人の女を奪い取ろうとしたこともあった。様々な問題を抱えた彼女達がいる。すべてオレはその時最大の愛で愛した。最初の彼女を含め2人以外はオレの彼女という立場を持つものとしか関係を持っていない。

 


自分の傷を埋めるため、自分の心をさらけ出し新たな彼女を求める。オレの傷を埋めるには女性しかなかった。その彼女に対し自分のすべてを持って愛情を注ぎ込む。時には自身の体を傷つける。時には自身の心を傷つける。何十人もの女性がオレの前から去っていく。別れた彼女が幸せになるならそれでいい。違う。自分が傷つきたくなかったからだ。ホントは好きで引き止めたくて。でもそれがダメだった時受け止めきれないからだ。ずっと逃げてきた・・・。

 


大好きな彼女達から戻りたいと言われる。オレだって大好きだ。戻りたい。でもまた離れられてしまったら・・・。オレがオレでなくなってしまう。その癖、大好きな彼女以上に好きになった女性達には適当な理由をつけて告白しない。その女性達はオレと正反対。輝いている女性達だ。その人から受け入れてもらえないことが怖い。何十人もの彼女達。それはオレと同じくなにか大きな弱さを持っている女性達だ。弱さを持っている女性はすぐにわかる。匂いでわかる。オレも弱い故に・・・その人の痛みがわかる故にお互い居心地がいいだけなんだ。

 


理紗の記憶は見せるな。殺してやりたい。そう思う。だけどオレはそれでも愛している。どんなことをされたとしても愛している。行き場のない愛がどうしようもなくて子供達への愛情とぶつかり合い殺意に変わっているだけなんだ。そんなこと知っている。

 


身体中をとてつもない痛みが襲い続ける。心の傷が外気に晒されているようだ。あぁ・・・オレは弱い。臆病だ。勇気もない。他人の気持ちを知るのが怖い。1人でいたいけど痛いからそれができない。自分を知られ否定されるのが怖い。愛してること以外なんの魅力もない、つまらない最底辺の男だ。彼女を深く知ろうとできないただの大バカだ。ビビりだよ。チキン野郎だ。誰も幸せにできないくそ野郎だ。きっとオレは何度後悔しても、たとえ生まれ変わったとしても、過去に戻れたとしても同じことをする。人はそう簡単には変われない・・・わかったからもう見せないでくれ・・・頼むから・・・。

 


「思ったより耐えたけどそろそろ限界かな?」

 


「そうかもね。さて君に提案だ。人間を辞める気はあるかい?」

 


「人間を辞め昇華し神という存在になりたいかい?」

 


人間なんてとうに辞めている。神だと?このドン底、底辺にいるようなクソ野郎が神になるだと?そんなことできるか。ふざけたことを言ってんじゃねぇ。

 


「なれるさ。君が望むなら」

 


「そうそう。神へと昇華すればこの苦しみからは解放されるよ?」

 


苦しみから解放。逃げたい。痛いのは嫌だ。神になることで苦しみから解き放たれるのならオレは神になりたい。

 


だがなよく聞けクソ野郎ども。そんな弱っちい神なんて認めない。そんな汚神なんて存在してたまるか!オレは神なんて信じていない。だけどどれだけの人が神を信じていると思う!?それはその人達に対する冒涜だ。

 


その人達の言葉を借りるなら神ってのはもっと崇高なものじゃなくちゃいけねぇんだ。神なんて存在しない。だからこそ神なんだ。オレが神になるということは他者の信仰を奪ってしまうことになる。他人の自由は否定しねぇ。その上でオレの自由は貫き通す。オレが汚神になれば苦しみから逃れられる。そんなんもんクソ喰らえ。

 


「いいか。よく聞けアホ共!オレはこの世界に来た時から人間は辞めている。神になるくらいならその痛み。苦しみ。すべてを受け入れる。オレは人間のままでいい。オレは自由でありたい。他人の自由を踏み躙ることはあっても他人の自由は否定しねぇ。それがオレの自由の掟だ。どんだけ時間がかかっても乗り越えてやるからそこで黙って待ってろクソ野郎ども!」

 


「ホントにそれでいいのかい?後悔しないのかい?」

 


「楽になれるチャンスを棒に振るのかい?君が望むなら神にしてあげるよ」

 


「ああ構わねぇさ。あとで後悔する自分がいるのも知っている。ただな何度選択したとしてもオレは同じ道を選ぶ。無駄に頑固で無駄すぎるほど大バカだからな!神にはならない。人間のままでいい。それでもオレは頂点を目指す。オレは自分になくて他人が持っているものに恋い焦がれ妬み、貪欲にそれを得ようとする。うまく行かなくてなにかに当たる時もあるだろう。

 


いいや・・・いつも通りだと自分に甘えて逃げる時もあるだろう。それでもオレは強く望む。自分の信じる自由のために世界を変えることを。邪魔するものはなんであろうとすべて喰らい尽くしてやる。オレの好みの女もすべて手に入れてやる。美貴を。アリスを。アヤネを。ハイロリさんを。そして名前も知らぬ3人を必ず手に入れて幸せにしてやる。神じゃなくてもできるということを証明してやる。オレは人間のまますべてを成し遂げてやる。だから待ってろ!この弱さの上に立つ仮初めの王の誕生を。歴史的瞬間だ。王として覚醒する時まで黙って見ていろ!!」

 


「なるほどね。望めば神にしてあげたのに残念無念また来週〜〜」

 


「なんだそれ気に入ってたのかい?合格だ。一応それも1つの形だね。その道は茨の道だ。最後にもう一度聞く」

 


「「神になる気はないのかい」」

 


「何度も言わすな。オレは人間という種族の1人でいい。たとえ王になれなくてもいい。弱さに飲まれてもいい。それならオレは最愛の女達に支えてもらう。それだけだ。オレの手元に彼女達さえいればオレはそれでいい。オレは最弱の王となる」

 


そう言うと景色が戻る。もっともただの暗闇なのだがな。痛みもそのまま。1人だよ。今のオレは・・・寂しいよ。早く3人に会いたい。3人の温もりが欲しい。笑顔をまた見せてくれ。

 


「君の力は上がっているだろ?弱さを認め弱さを受け入れた。壁は超えたはずだ」

 


「うん。マナの格が上がっているね。ならば次だ。乗り越えて見せよ」

 


次の相手が現れたようだ。今度は7人か。って待て・・・なんでここにいる。

 


「けっ・・・趣味の悪いことで」

 


「次は君の最愛の人達が相手だよ?」

 


「さぁどうする?」

 


ふざけんな。匂いまで本物と変わりない。改めて思う。いい匂いだな。さすがオレの大好きな女達。痛みが引いてゆく。やはりオレにとっては彼女達の存在がすべてだ。せっかくだ。とりあえず7人の究極のコラボ。レインボーアロマを堪能するとしよう。まずはそれからだ。