闇と光 第162話 潼関の闘い

ここはどこだ・・・我は死んだのか・・・暖かい・・・心地よい・・・これが死というものなのか?存外悪くないものだな。

 


ゴブ布が目を開ける。そこには口づけをするゴブロリの姿があった。ゴブ布は慌てて起き上がる。ゴブ布は生きていたのだ。

 


「な、何をしているっ!?ハイロリっ!!

 


・・・で、でもまぁお前なら許してやらないこともないがな・・・」

 


えっ・・・なんでデレたのゴブ布・・・人工呼吸してただけなんだけど・・・お前のデレってどこかに需要あるの?

 


「「「「「ゴブ布様ぁぁぁっ!!」」」」」

 


ゴブ布に駆け寄る真紅の薔薇の面々。彼女達はみんな涙を流している。

 


「ありがとうございますっ!!なんとお礼を言ったらよいかわかりませんっ!!このご恩は一生忘れませんハイロリ様っ!!」

 


ゴブ厳はじめ、隊員達はみなオレに感謝の気持ちを伝えてくる。オレはあの後、水中へ転移した。激流で死にかけたのは言うまでもない。あの水からはゴブ信のマナを感じた。後であいつはしばき倒す。同じ景色を望むゴブ布。そんなやつをオレは見捨てられなかった。

 


真紅の薔薇。彼女達はゴブ卓軍によって玩具にされていた。泣き喚く姿をゴブ卓軍は笑みを浮かべながら乱暴に襲っていたのだという・・・そんな彼女達を救い出したのはゴブ布。

 


ゴブ布は彼女達に優しく接していた。何も見返りを求めない無償の愛。かつての自分の姿を見ていたのだろうか。手を出すわけでもなく娘のように彼女達を守ってきたゴブ布。練兵したのは彼女達が強くなりたいと言ってきたからだ。

 


ゴブ布は彼女達が自分でその身を守れるようにと練兵した。指導者は星下無双。恐ろしいほどに強くなった。彼女達が練兵を求めた理由。それはゴブ布の横に並んで立ちたいからなのであった。

 


星下無双のゴブ布。その優しき姿に彼女達は全員惚れている。女としてゴブ布を支えたい・・・その一心で挫けることなく練兵を乗り越え、成長してきた。すべてはゴブ布のため。

 


そんな中ゴブ卓に目をつけられる。その強さに利用価値を見出したのだ。ゴブ布は彼女達を守るために自身の部隊を結成する。それが真紅の薔薇ができた理由であった。

 


「ゴブ布。ゴブ操はオレ達ゴブ羽軍が必ず叩きのめす。この星の平定・・・そしてその先の世界・・・それはオレに任せておけ。お前は少し隠居してろ。

 


・・・ったく何が愛を知らないだ。500人もいるじゃねぇか。羨ましいくらいの愛がある。とりあえず立ち止まって感じてみろよ・・・待望の愛とやらをな。それに星下無双の大将軍なら全員愛せんだろうよ?ただ優しく愛してやれよ。まぁ幸せに暮らせ」

 


「・・・ハイロリは行ってしまうのか。す、少しだけ寂しくなるなっ!

 


重ね重ね感謝する。彼女達は必ず幸せにしてみせようぞっ!!この星下無双の豪傑に不可能などないわっ!!ゴハハハッ!

 


・・・ハイロリよ。お前らの作る世界・・・楽しみに待たせてもらおう・・・達者でな。た、たまには会いにきてもよいのだぞ!?」

 


背中を向けながら手を振るゴブロリ。闇が姿を包み込み消えていった。星下無双の大将軍ゴブ布・・・真紅の薔薇・・・彼らの愛は育まれてゆくことであろう。

 


一方ゴブ良を救出したゴブ羽軍はゴブ操の追撃の中、退却を繰り返していた。次第にゴブ羽達は追い詰められてゆく。現在は洛陽と長安の間にある孤島潼関にて徹底抗戦の構えである。

 


「兄者・・・先生・・・まだ戻らないな」

 


「ゴブ信のせいでやられちまったんじゃないか?あの水攻めは酷いぞ」

 


「それを言うなら兄者が地面へこませたのも悪いじゃんっ!?」

 


「・・・2人ともやめてください。いつまでも先生に頼るわけにはいきません。あの方が戻るといったら必ず戻る。しかし私達もひとり立ちをしなければなりません。我々だけでゴブ操を討ち取るのです」

 


「ロリ先がいなくてもなんとかするしかねぇだろうよっ!!ここは妖精の星・・・オレら妖精族がなんとかしねぇでどうすんだっ!?」

 


「そうですね。策の言う通りです。ゴブロリ殿は我らと同じ見た目はしているがゴブリン族ではない。あのお方は他種族です。何も得はないはずなのに我らに力を貸してくれている・・・しかし頼り切ってしまっては妖精の名折れ・・・妖精のけじめは妖精がつけなくてはなりません。そろそろ反撃に移りましょう」

 


ゴブ羽達は気づいていた。ゴブロリ改めハイロリが妖精族ではないことに。ゴブリンの秘法スパーキング。ゴブリン族にのみ許された強化術。感情や思いが爆発することでその状態になることができる。

 


しかし仲間達を大事に思っているゴブロリは一度もこの状態になることはなかった。鉄の掟・・・他種族との交流は禁じられている。しかしゴブロリは身を投げ打ってこの星のために力を貸してくれた。

 


薄々気づいてはいた。掟を破ってでも彼らはゴブロリを仲間として認めている。この星ではゴブリン族以外は命唱回数が制限されている。それはかつてこの星を守るため創造した神に願い、発現した理。

 


ゴブリン同士でバトルフィールドが出ないのも神の力によるものである。これはデキウスがハイロリを招き入れるために、無理矢理世界を改変しねじ込んだもの。この星は時がある程度進むと逆行し常に争いを繰り返しきた。しかしハイロリの到来で妖精の星の時の流れは再び動き出そうとしている。すべてはデキウスの思惑の中・・・。

 


ゴブロリはすでに命唱を使い切っている。仲間達は知っている・・・もうゴブロリに力は残されていないことを。師の掲げた・・・仲間の掲げた星平定。妖精の星は最終局面へ突入ししようとしていた。妖軍5億と魏軍30億の星下獲りをかけた戦が始まる。

 


孤島潼関に攻め入るため魏軍は船団を編成し海を渡ろうとしている。妖軍はそこを狙った。

 


ゴブ信の水のマナを使い海を凍らせた。氷海と化した海で魏軍は身動きがとれなくなる。妖軍はゴブ操を海上で奇襲。しかし鉄壁のゴブ褚が立ちはだかる。

 


ゴブ策とゴブ瑜のコンビネーションで苦戦を強いられながらもゴブ褚の堅い守りをついに打ち崩す。ゴブ褚はこの闘いで討死。ゴブ操はゴブ褚の奮戦の中かろうじて退却する。

 


ゴブ羽とゴブ良は魏軍の頭脳を潰すことにした。優れた頭脳の恐ろしさは師から学び取っている。この闘いで魏軍の10賢人はすべて討ち取られた。

 


ゴブ操が陸地へ逃げようとした時、ゴブ信が立ちはだかった。そこへゴブ遼が突撃。再び激闘を繰り広げる2人。その隙をつきゴブ操が包囲を抜け出す。

 


ゴブ遼が下邳城のお返しと言わんばかりに氷海を打ち砕き追撃を阻止。この闘いで魏軍は大打撃を受ける。魏軍は20億以上の兵をここで失ってしまう。

 


元海軍である驕り。ゴブ操らは海戦であれば圧倒的に有利であると思っていた。ゴブ操最大の失態。妖軍の海を凍らせるという奇策の前に機動性はすべて失われ、さらに兵が恐慌状態となり混乱に陥る。

 


この闘いを経て魏軍の残り兵力は8億となる。対する妖軍は残り3億。圧倒的な兵力差はここまで縮まった。ゴブ操は自身の本拠地である許昌城へ退却した。

 


許昌城への攻城戦のための軍議をしている妖軍。そこへ1人の漢がついに合流する。

 


「ふっ・・・いない間に弟子達は随分立派に成長したものだな。最後の戦・・・オレも混ぜろや」

 


一同一斉に声のする方へと振り返る。忘れもしないその声・・・自分達を成長させてくれた師・・・ゴブロリの登場だ。役者は揃った。ついに妖軍と魏軍の最終決戦が始まる。