闇と光 第63話 真・出会ってしまった2人

匂いのない地点に辿り着く。そこも同じく上空である。なにも見えない。だがなにかがそこにはある。口には出さないで命唱していこう。

 


単発ではなにも見えない。

 


弐連段命唱。まだなにも変わらない。

 


参連段命唱。なにも見えない?気のせいなのか。だがそこに匂いはない。なにもないはずはないのだ。

 


肆連段命唱。なにか空間が歪んでいる。やはりなにかあった。だが4段階目でようやくこれか。見てはいけないものなのかもしれない。だが好奇心が勝っていた。

 


伍連段命唱。より深く歪んでいる。まだ足りぬというのだろうか。前回はここでオレは倒れた。今回はまだなんともない。さらなる先へ行ってみよう。

 


陸連段命唱。くっ・・・頭が痛い。眉間に力が入る。7段階目まで行ってしまうと深く眠ることはなさそうだが・・・また倒れてしまいそうだな。何より怒られるのが怖い・・・ん?何か見えるぞ。光り輝く丸い物体が。

 


「月がでたぁぁぁぁぁ」

 


「なんじゃ?お前儂が見えてるのか?」

 


「月がしゃべったぁぁぁぁぁ」

 


「ばかもの。儂は月ではないわ。よく見ろ」

 


だんだんよく見えてくる。まんまるお月さんに毛が3本。・・・3本?

 


「オバケかっ!!!!」

 


「生きとるわいっ!!」

 


はっきりとその声の主が見えてきた。ああ・・・毛が3本。つるっぱげのムキムキのおっさんだ。光の単一属性持ちでマナが輝いていただけか。もうびっくりさせないでくれよな。気合いれて見にきたから戸惑ってしまったじゃないか・・・。

 


「なんだ・・・輝くおっさんか」

 


「誰がおっさんじゃ。儂はまだほれ現役じゃぞ。こっちの方もバリバリじゃ」

 


「へぇ・・・オレもそっちの方は自信がある。オレの方がバリバリだ」

 


「なんじゃと!?儂の方がバリバリじゃい!!比べてみるか?」

 


「よしいいだろう。負けて泣くんじゃないぞおっさん」

 


やばい争いが街の上空で静かに始まっていた。下々の者達はその戦いを知らない。1人だけその戦いを見守るものがいた。腹を抱えて笑っている。

 


「あははっ!なにやってんのあの2人。あーーお腹痛い。僕としては見ててゾクゾクしちゃうけどね」

 


「・・・小僧なかなかやりおるではないか」

 


「おっさんこそなかなかだな・・・」

 


「だが儂は女の匂いを嗅ぐだけでパワーアップできる。さっきまでは匂いを嗅いでたからずっとマックスだったんじゃぞ。邪魔されてノーマルになってしまったわい」

 


「奇遇だな。オレも女の子の匂いを嗅ぐとパワーアップできるんだ。ここに来る前まではオレもマックスだった。おっさんのとこに来てしまったせいでノーマルになってしまったぞ」

 


「「・・・第2Rだ(じゃ)!!」」

 


「わぁお・・・2人とも立派なものをお持ちで。あ、僕もマックスになっちゃった・・・僕の完敗だ」

 


「小僧。儂の負けじゃ。お主の方が長い」

 


「いやおっさんの勝ちだ。あんたの方が太い」

 


「がははっ!なら引き分けでどうじゃ?儂は清十郎じゃ」

 


「引き分けで構わない。オレはハイロリだ。こんなところで何をしていたんだ?」

 


「女達の匂いを堪能しながら風呂と部屋を透視して楽しんでいたのじゃ」

 


透視だと・・・。オレにはまだできないというのに。どうやったら・・・。

 


「師匠!!オレを弟子にしてください!!」

 


空中で流れるようにスタイリッシュに決める。ジャパニーズ土下座。おっさんって言って悪かった。透視の絶技をオレに教えてくれ。

 


「・・・小僧を弟子にとれとな?儂の指導は厳しいぞ。時に小僧。お主はどんな女子が好みじゃ?」

 


「はい。オレの好みはすらりとした細身。貧乳のキュッキュッキュッ体型。髪の長さは長めのショート以上。顔はどちらかといえば猫、狐系。まぁ鳥や兎系もありですね。ただしガキと清純派は嫌いです。ただのロリは特に嫌いです。セクシーさ、妖艶さが重要です。年齢層は20代前半から30代後半がストライクゾーンです。人によっては年齢は問いません。ただしいい匂いの人に限ります」

 


「ほぅ・・・お主とは仲良くできそうじゃな。ところでさっきまでの口調でよいぞ。堅苦しくてやってられん」

 


「じゃあ遠慮なく。おっさんと同じ好みなのか?」

 


「いや儂の好みはムチムチ、ぽっちゃりの巨乳じゃな。崩れた体型もなかなか。ボンッが重要じゃ。ダイナマイトバデーじゃの。髪の長さは短いか長いか。中途半端は好かん。顔は狸、蛙、犬顔がよいのぉ。儂もガキは好かん。清純派は大好きじゃがの。儂は乳が特に重要じゃ。年齢層は30代後半以上がストライクゾーンじゃ。乳がでかけりゃ歳は気にせん。儂もいい匂いの人に限る」

 


「人によって匂いって全然変わるよな」

 


「小僧若いのによくわかっとるのぅ」

 


「好みが被ってないから獲り合うことはなさそうだな」

 


「ほれどうじゃ?仲良くできそうじゃろ?儂と小僧でこの世の女を味わい尽くそうではないか」

 


「仲良くできそうだな。でもオレは自分の女達だけで充分だ。毎日愛情を注げる人数だけでいい」

 


「わははは!!既に女達を囲っておるのか。何人いるのじゃ?」

 


「今のところ7人。狙っているのが1人。もっといてもいいかなとは思ってるがこれだという女がいなくてな」

 


「なんじゃい・・・それっぽっちでいいのか。儂は数え切れないほどおるぞ。ただ妻が怖くての。隠れてせねばならんのじゃ」

 


「やっぱりかかあ天下だよな。でもオレの女達は全員公認だぞ」

 


「どうすればいいのじゃ!?」

 


「みんなに愛情を等しく最大限あげたらそうなった」

 


「むぅ・・・羨ましいの。儂のところ鬼嫁だからな」

 


「まぁ元気出せよ。ほらあっちにいるのおっさんの好みじゃないのか?」

 


「小僧わかっとるの!ほれそっちはお主の好みじゃろ!?」

 


「おっさんもわかってるぜ。なかなかいい女だ。女の子っていいもんだよな」

 


「あぁ・・・この世で1番ええもんじゃ」

 


ここに出会ってはいけない2人が出会ってしまった。互いに好みが違う2人が互いの大きさを認め、意気投合してしまった。女の子の匂いを堪能する盟友が今ここに誕生した。

 


「時に小僧。この後儂は野暮用があっての。明日の朝同じ場所にこい。稽古をつけてやろう」

 


「あぁ、わかった。オレも野暮用がある。お互いにいい夜を過ごそうじゃないか」

 


そう言うとおっさんはにやりとしながら光に包まれ消えていった。